カテゴリー別アーカイブ: 裁判資料

◆第33準備書面関係 原告提出の書証

証拠説明書 甲第341~342号証(第33準備書面関係)(PDFファイル 93KB)
2017年4月10日

  • 甲第341号証(PDFファイル 2.21MB)
    行政文書不開示決定通知書(原子力規制委員会)及び対応する開示請求書
  • 甲第342号証(PDFファイル 1.41MB)
    行政文書不開示決定通知書(資源エネルギー庁)及び対応する開示請求書

◆原告第33準備書面
行政文書紛失にかかる国に対する求釈明

原告第33準備書面 (PDFファイル 364KB)

2017年(平成29年)4月10日

被告国に対する求釈明

原告らは、次回(5月9日)の口頭弁論において、活断層や活断層から発生する地震動を事前に想定できないことについて証拠とともに弁論する予定であるが、この点について、想定外の巨大な地震動が発生し、原発が大きく損壊し、いくつかの原子炉については、いまだにその修理が終わったという報告すらなされていない典型事例として「2007年中越沖地震」がある。

この地震の震源域については、地震前の2003(平成15)年6月、東京電力株式会社が旧原子力安全保安院の指示により作成し、原子力安全・保安院に提出した、柏崎刈羽原子力発電所海域活断層の評価に関する報告書(いわゆる「15年報告」)が存在する。

「15年報告」については、東京電力株式会社が2007年中越沖地震の後の平成19年12月21目付で作成し、原子力安全・保安院に提出したと思われる「平成15年に実施した柏崎刈羽原子力発電所海域活断層の再評価に関する調査結果について」で、その存在と旧原子力安全・保安院への提出が明記されている。引用すると同文書には以下のように書いてある。

(2)平成14年7月の原子力安全・保安院による海域活断層再評価指示から中越沖地震発生(H19.7.16)まで

(1) 平成14年7月、原子力安全・保安院から、当時行われていた北海道電力株式会社泊地点における安全評価において、褶曲を考慮したことを踏まえ、電力各社においても、海域活断層再評価を実施するよう口頭にて指示があり、当社は、自社の記録の再解析、地質調査所、石油公団から開示を受けた記録に基づく再解析等を実施し、F―B断層については、褶曲構造を考慮すると、20キロメートル(従来の認識は、最大8キロメートルの断層)の長さを有する活断層の可能性があるとの再評価を行った。

しかし、F―B断層が活断層であると仮定し、発電所敷地への地震動の影響について、当時の地震動を評価する標準的な方法である「大崎スペクトル」を用いた評価を行った結果、すべての周期帯において、重要な設備の設計に用いる基準地震動S2を、余裕を持って下回るものであったことから、安全上の影響はないと判断した。

当社は、以上の調査結果について、平成15年6月、原子力安全・保安院に書類で報告(以下、この報告を「15年報告」という)したが、新潟県、柏崎市、刈羽村、および地域の皆さまへの説明、さらにはプレスへの公表は行わなかった。

ところが、この「15年報告」について、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づき、原子力規制委員会に情報公開請求したところ「取得しておらず、保有していないため。」との理由で不開示決定が出た(平成28年12月26目付原規規発第1612262号)。

そこで、解体前の原子力安全・保安院が所属していた資源エネルギー庁に同様の情報公開請求を求めたところ「保有していないため」との理由で不開示決定が出た(平成29年2月14日 20170116公開資第1号)。

実際に発生し、原発が大きな損害を被った地震の直前の時期に、震源海域周辺の「活断層」について、発電事業者が行った検討結果の報告文書は、原発において将来発生する地震を、人類の現在の科学において予測可能であるか、ということを推認するためには、極めて証拠価値の高い文書である。

このような、証拠価値の高い文書が、客観的には、原子力安全・保安院と、原子力規制委員会によって、証拠隠滅されたに等しい状態になっているのが現状である。

そこで、被告国に対して以下の点の釈明を求める。

1「15年報告」を政府傘下にある東京電力株式会社から再度取得する等して、本件の証拠として提出されたい。

2 原発の安全性に関して、行政機関である原子力安全・保安院が発電事業者に対して報告を求めた件について文書で提出を受けた以上、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第2条2項の「行政文書」に該当すると思われるが、何故紛失したのか、経緯を説明されたい。

また、いずれにせよ、上記のような資料の紛失が判明しても、公に何の発表もせずに平気でいる原子力規制委員会は、東日本大震災前の原発行政の隠ぺい体質を何ら改善しておらず、原発について適正な規制などしようもないことは付言する。

以上

◆原告第32準備書面
(既存準備書面の訂正)

2017年(平成29年)2月23日

原告第32準備書面 (PDFファイル 90.4KB)

原告第29準備書面および原告第31準備書面について、以下の部分につき脱字、誤植があったので、別紙のように訂正する。

1.原告第29準備書面訂正箇

  1. 12頁目下から3行目
    (甲第  号証83頁「2、太陽光発電の爆発的普及」参照)

    (甲第301号証83頁「2、太陽光発電の爆発的普及」参照)
  2. 15頁目6項本文4行目
    の差 → 両の差

2 原告第31準備書面の訂正箇所

2頁目冒頭部分「原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面では木津川市における避難計画の問題点についての主張を行う。」を削除する。

以上

◆私たち原告の主張:ハイライト
 コスト的に成り立たない原発事業

大飯原発差止訴訟(京都地裁)原告第29準備書面の第2より。
(2017年2月13日第14回口頭弁論)

原子力発電のコスト・非経済性について

 1 はじめに

◆本書面では、原子力発電(以下、「原発」という。)のコストの高さについて主張する。(後記2)

◆あわせて、原発事業者が、原子力損害の賠償に関する法律(以下、「原子力賠償法」という。)により原子力損害について無過失の賠償責任を負担しているにもかかわらず、もはやその賠償能力がないことが明らかとなっており、その事業リスクの高さ、非経済性から、原発事業自体がいかなる経済体制・社会体制・法制のもとにおいても成り立ち得ないことを主張する。(後記3)

 2 原発のコストの高さについて

  (1)被告関西電力の説明(同社ホームページより)

◆「2014年時点での、国の試算による発電コストは、太陽光発電が1kWhあたり約30円、石油を使った火力発電が約30円以上と高い傾向にあります。天然ガスを使った火力発電は13.7円程度、石炭を使った火力発電は12.3円程度です。原子力の発電コストは、10.1円程度と他の発電方法と比較しても遜色ない水準です。また、原子力発電は化石燃料に比べて発電コストに占める燃料費の割合が小さいため、燃料価格の変動による影響を受けにくいという特徴があります。」等と説明されている。

 (2)被告関西電力の説明の欺瞞性

  ア 立命館大学国際環境学部大島堅一教授(環境経済学)の分析

◆同教授は、ヤフーニュース2016(平成28)年12月9日(金)13時8分配信の「原発は高かった~実績でみた原発のコスト~」という記事(甲309号証)の中で、最新の原発のコストに関する分析内容を記述している。

  (ア)分析内容の抜粋

◆経産省が2016年12月9日に示したところによると、福島原発事故のコストが21.5兆円になるという。すさまじい金額だ。さらに、それを国民負担にするという案を経産省は提示している。 にもかかわらず、世耕・経産大臣は、原発は安いとの発言を2016年12月7日におこなっている(テレビ朝日の報道による)。原発のコストは安いのか高いのか。一体どのように理解したら良いのだろうか。

◆原発のコスト計算の方法には、1)実績コストを把握する方法と 2)モデルプラントで計算する方法の2つがある。2)の方法で計算した値は、政府のコスト検証ワーキンググループが2015年に試算したものが最新だ。ここでは、原発のコストを10.1円/kW時としている。おそらく世耕大臣は、この計算結果を言っているのだろうと思われる。政府の計算には、いくつもの前提があって問題点もあるが、長くなるのでここでは詳しくは述べない。さしあたってこの計算方法の特徴を一言でいえば、想定や計算式で数値は変わってくる。

◆これに対して、実績コストは、想定も何もないので誰が計算しても同じになる。過去の原発のパフォーマンスを知るのに最適だ。では、原発の実績コストはどれくらいなのだろうか。まず、発電コスト。これは、電気料金の原価をみれば把握することができる。データは、電力各社の有価証券報告書にある。また計算方法は、電気料金を算定する際にもちいる省令に書いてある。この2つをもちいて計算する方法は、室田武・同志社大学名誉教授が開発した。計算すると、8.5円になる。次に、政策コスト。原発には、研究開発費や原発交付金といったものに国費が投入されている。つまり国民の税金だ。財政資料を丹念にひろうとこの費用も計算できる。これは1.7円。最後に、事故コスト。これは経産省により21.5兆円という数値がでた。そこで、これまでの原発の発電量で割って単価を計算すると、2.9円となる。つまり、原発のコスト=発電コスト+政策コスト+事故コストで、13.1円(kW時当たり)となる。

◆原発以外の電源も計算すると、火力は、発電コスト9.9円、政策コスト0.0円(値が小さいので四捨五入するとこうなる)で合計9.9円。一般水力は、発電コスト3.86円、政策コスト0.05円で合計3.91(ほぼ3.9)円だ。これらのコストも原発のコストと同じように計算できる。

◆以上をまとめると、原発(13.1円)>火力(9.9円)>水力(3.9円)。つまり、過去の実績(1970-2010年度)でみると、原発は安い、どころか、原発は最も経済性がない電源だったと言える。

  (イ)分析内容に基づく原告の主張

◆被告関西電力は、大島堅一教授が引用するところのモデルプラントで計算する方法により、「火力発電等のコストより原発のコストの方が安い」という結論を導いている。しかし、かかる結論は、大島堅一教授が指摘されているように、人為的な想定や計算式の用い方等によって異なりうるものであり妥当な比較検討結果とはいえない。大島教授が指摘するとおり、客観的な比較検討を可能にする実績コストを把握する方法により比較検討がなされるべきである。それによると、上記のとおり、原発は火力や水力よりも高いという結果となる。

  イ 事故コスト(事故炉の賠償・廃炉にかかるコスト)、廃炉コストを踏まえた詳論

  (ア)はじめに

◆大島堅一教授が上記のように指摘する原発の事故コストについて、及び、その余の原発の廃炉コストについて、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会と電力システム改革貫徹のための政策小委員会とは、それらのコスト問題をも踏まえて取りまとめた「電力システム改革貫徹のための政策小委員会中間とりまとめ(案)」(甲310号証)(以下「中間とりまとめ」という。)を了承したと報道されている。
この中間とりまとめによれば、

A.東京電力福島第1原発の廃炉費用
B.同賠償費用、
C.同原発以外の原発の廃炉費用

の負担に関する方針がまとめられている。

  (イ)中間取りまとめの詳細

   A.東京電力福島第1原発の廃炉費用について

◆中間とりまとめのP.20の「3.3.福島第一原子力発電所の廃炉の資金管理・確保のあり方」の「(2)送配電事業の合理化分の充当」の部分がこの点について記載部分である。その抜粋は以下のとおりである。

◆「総括原価方式の料金規制下にある東京電力パワーグリッド(送配電部門、以下、「東電PG」という。)においては、例えば、託送収支の超過利潤が一定の水準に達した場合、電気事業法の規定に基づき託送料金の値下げを求められることがあり、合理化努力による利益を自由に廃炉資金に充てることはできない。したがって、東電PGにおける経営合理化分を確実に1F(※注釈一福島第一原子力発電所一号機のこと。)廃炉に充てられるようにするため、託送収支の事後評価を例外に設けるべきである。具体的には、毎年度行われる託送収支の事後評価において、東電PGの合理化分のうち、東電PGが親会社(東京電力ホールディングス)に対して支払う1F廃炉費用相当分について、(a)超過利潤と扱われないように費用側に整理して取り扱われるようにする制度的措置、・・・・が適当と考えられる。」
これは、即ち、東京電力福島第1原発の廃炉費用は東京電力の送配電事業における利益を、電気料金の値下げの実施という形で利用者・消費者に還元することとせず、この利益でもって賄う方針をとるということである。これにより、東電管内の電気料金が高止まりする可能性が惹起され、一種の国民負担が生まれることとなる。

   B.東京電力福島第1原発の賠償費用について

◆中間とりまとめのP.17の「3.2.原子力事故に係る賠償への備えに関する負担の在り方」の部分がこの点について記載部分である。その抜粋は以下のとおりである。

◆福島第一原発事故後、原子力事故に係る賠償への備えとして、従前から存在していた原子力損害賠償法に加えて新たに原賠機構法が制定され、現在、同法に基づき、原子力事業者が毎年一定額の一般負担金を原賠機構に納付している。しかし、原子力損害賠償法の趣旨に鑑みれば、本来、こうした万一の際の賠償への備えは、福島第一原発事故以前から確保されておくべきであったといえる。受益者間の公平性等の観点から、福島第一原発事故前に確保されておくべきであった賠償への備え(以下、「過去分」という。)は、本来であれば、福島第一原発事故前の電気の需要家から電気料金の一部として回収されるべきものであり、・・・

(後、略)

(前略)・・・福島第一原発事故前に確保されておくべきであった賠償への備えを今後とも小売料金のみで回収するとした場合、過去に安価な電気を等しく利用してきたにもかかわらず、原子力事業者から契約を切り替えた需要家は費用を負担せず、引き続き原子力事業者から電気の供給を受ける需要家のみが全ての費用を負担していくこととなる。こうした需要家間の格差を解消し、公平性を確保するためには、過去分についてのみ、全ての需要家で公平に負担することが適当・・・(後、略)

(3)全ての需要家から公平に回収する過去分の額 現在、原子力事業者が毎年納付している一般負担金は、経過的に措置されている小売規制料金により回収されていることから、全ての需要家からの過去分の公平な回収は、現在経過的に措置されている小売規制料金が原則撤廃される 2020年に開始することが妥当であると考えられる。・・・(中略)・・・全ての需要家から公平に回収する過去分の算定に当たっては、2011年から2019年までに納付される一般負担金を全需要家から回収する過去分と同様のものと扱い、過去分の総額から控除する。2019年度末までに原子力事業者が納付することが想定される一般負担金は、今後の負担金が2015年度と同条件で設定されると仮定すれば約1.3兆円であり、これを過去分総額から控除すると、約2.4兆円となる。

(4)過去分の回収方法  (前、略)・・・過去分を国民全体で   負担するに当たっては、特定の供給区域内の全ての需要家に一律に負担を求める仕組みとすることが適当と考えられる。約2.4兆円の過去分を託送料金の仕組みを利用して全需要家から回収する場合、・・・回収期間を40年(年間回収額600億円)とするのが妥当と考えられる。

◆これらは、即ち、東京電力福島第1原発の賠償費用の内、過去分2.4兆円について、本来、事故前から備えておくべきだったものという説明で今後40年間に渡って大手電力会社が所有する送電網の使用料(託送料金)に上乗せして賄うということを方針とするということである。これにより、原発をもたない新電力会社を含めて使用業者が当該費用を負担し、ひいてはその利用者に転嫁され、ここにも一種の国民負担が生まれることになるのである。

   C.東京電力福島第1原発以外の原発の廃炉費用について

◆中間とりまとめのP.21の「3.4.廃炉に関する会計制度の扱い」の部分がこの点について記載部分である。その抜粋は以下のとおりである。

(前、略)・・・、2015年3月の廃炉に係る会計制度検証ワーキング・グループ報告書(「原発依存度低減に向けて廃炉を円滑に進めるための会計関連制度について」)においては、競争が進展した環境下においても制度を継続させるためには、『着実な費用回収を担保する仕組み』として、総括原価方式の料金規制が残る送配電部門の料金(託送料金)の仕組みを利用することとされている。

(前、略)・・・着実な費用回収の仕組みについては、現在経過的に措置されている小売規制料金が原則2020年に撤廃されることから、自由化の下でも規制料金として残る託送料金の仕組みを利用することが妥当である。

◆これは、即ち、託送料金システムを利用して東京電力福島第1原発以外の原発の廃炉費用を賄うことを方針とするということである。これにより、原発をもたない新電力会社を含めて使用業者が負担し、ひいてはその利用者に転嫁され、ここにも一種の国民負担が生まれることになるのである。

  (ウ)中間取りまとめの結果を受けての主張

◆この中間とりまとめについては、それ自体に、原発を忌避して発電事業を始めた新電力事業者やかかる事業者の電気を使用したいと考える市民に原発の費用を負担させるという問題点がある。この一点からしても、原発に経済的合理性がないことは明らかである。

◆それを超えて、この中間とりまとめから明らかとなった点は、事故コストや廃炉コストは、もはや民間事業体である原発事業者がその資産・収入だけでは賄えず、国民負担のもとでなければ賄えないという点である。

◆地震国日本で、被告関西電力の原発が福島第一原発と同様の事故を起こせば、東電福島第一原発と同程度の廃炉コスト・賠償コスト(21.5兆円)が発生することになる(ちなみに、我が国の2016年度における一般会計予算は96.7兆円である。)。このコストは現状の推計に過ぎず、今後も拡大は不可避であろう。

◆被告関西電力という一企業の所有する原発が事故を起こした場合、その廃炉コスト・賠償コストは被告関西電力自身が負担するというのが個人責任の原則、及び後述するところの、原子力賠償法の無過失責任原則の帰結である。東京電力福島第一原発事故が現実に発生するという経験をした現時点においては、被告関西電力は、当該コストを全て備蓄しておくべきであり、かかる備蓄分は原発コストである。

◆事故コストと廃炉コストを含めて原発コストが求められるべきことを前提とした上、その額が国民負担によらなければ賄えない額となることを併せ考えれば、原発のコストは他の電力に比べて極めて高くなることは自明の理である。

 3 原発事業自体がその非経済性故に成り立ち得ない事業であることについて

◆原発事業者は、原子力賠償法によって、原子力損害について無過失の賠償責任を負担することとされている。その立法趣旨は、原子力損害の甚大生に鑑み、原子力を利用して収益を上げる事業者に、民法の過失責任の原則を修正して特別に加重な責任を課し、原子力事業者に、相当因果関係を有する全損害を賠償させることにある。

◆それ以前の問題として、公害事件分野で確立された「原因者負担の原則」が原発災害に適用されることは言うまでも無く、ひとたび事故を起こせば、原発事業者は原因者として事故によって発生した結果の全責任を負担しなければならない。

◆しかるに、福島第一原発と同規模の原子力損害を一事業者が発生させた場合、数兆円に上る損害賠償費用が発生することが公知の事実となっているが、一事業者においてはそのような賠償を行うことができないことは、中間とりまとめが賠償費用についての国民負担を想定していることから明らかとなっている。

◆そうであれば、原発事業は、その事業リスクの高さから、経済的合理性を著しく欠き、責任を負える者がいないのだから、凡そ成り立ち得ない事業であることが明白となっているといわなければならない。

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◆私たち原告の主張:ハイライト
 裁判官にのぞむこと

大飯原発差止訴訟(京都地裁)原告第29準備書面の第4より。
(2017年2月13日第14回口頭弁論)

傍観者ではなくプレーヤーとして

◆元最高裁判事、故中村治朗氏は、昭和43年11月、司法研修所の判事補実務研究で行った講演「傍観者としての裁判官」(司法研修所論集 1969年9月)で、次のように語っている。少し長くなるが、引用したい。

【以下,引用】

■ 思うに、裁判所が、社会的葛藤の舞台において、これらの葛藤の直接の当事者からある程度の距離を保つ地位にみずからを置き、その意味である程度傍観者的立場をとらなければならないことは、おそらく誰しも異論の無いところでありましょう。しかし他面において、裁判所ないし裁判官があらゆる場合に完全なる傍観者として終始することができず、またそれが許されないこともまた、やはりこれを認めざるを得ないのではないかとわたしは思います。

■ 裁判官は、ある場合にはサッカー試合のレフェリーのように競技ルールに従って笛を吹かなければならない場合もあるでしょうし、社会的葛藤の舞台においてそれ自身社会的価値の実現のために積極的に機能しなければならない場合もあると思われるのです。問題は、いかなる場合に、いかなる程度まで傍観者としてとどまり、いかなる場合に笛を吹き、いかなる場合にいかなる形でみずからもプレーに参加するかということであります。

■ そしてここに、大は基本的なフィロソフィーそのものの対立から小はその具体的場合における適用についてのそれに至るまで、様々な見解の相違が生ずるのではないかと思うのです。しかも、わたしのみるところでは、この場合、いずれのフィロソフィーが正しく、いずれの適用の仕方が妥当であるかについて、客観的な判定のきめ手がなく、しかもその当否自体時と場合によって必ずしも同一ではあり得ないと思われるのであります。

■ 例えば、ホームズの司法的自己抑制の理論は、かれの時代においてはきわめて適切であり、その後における憲法解釈や違憲審査に関する理論の発展にも大きな足跡を残しました。しかし、ホームズと対蹠的に、行動人であり、すぐれた政治家であったジョン・マーシャルは、創造的な憲法解釈の展開によってアメリカの連邦国家の確立や産業資本主義の発展を助けたのです。

■ 二人とも、それぞれの時代の要求にマッチした気質・性格と天分の持主であり、そしてそれを存分に発揮してそれぞれの時代の要求に沿う理論を展開し、裁判活動をしたわけであります。そしてそれが、歴史の評価において、かれらが偉大な裁判官とされるゆえんなのです。

■ してみると、裁判官として偉大たりうるためには、何よりもまずそのような時代の要求に対する深い洞察とそれに基づく実践が必要であるといわなければならないようです。しかし、実をいえば、何が時代の要求であるかは、その時代のその社会に生きる者にとっては最もつかみにくい問題なのでありまして、現代のような対立と変動のはげしい価値状況の下では特にそうであると言ってよいでありましょう。理性的な人々の間でも見解がわかれるような基本的問題については、わたしたちは、究極的には自己の採る見解の正否を歴史の審判に賭けざるをえないものであるかも知れません。

■ そこに、現代に生きる裁判官にとって最大の悩みがあるとわたしは思います。このような悩み、このような問題に対して、いかんながら、わたしはなんら提示すべき解答を持ちあわせておりません。ただひたすら次のような考え、信条、願望といったものにすがりつくのみです。

■ すなわち、いろいろな条件の制約や人間としての認識の限界の下においても、なおかつ不断の勉強と思索、討論と自己反省の過程を経ることによって、自分の認識や判断の軌跡が多少とも正しい方向へ近づきうるという可能性を信じて努力することが唯一の進むべき道であるということ、そして特にわたしたち裁判官にとっては、それは一種の道徳的な義務であるとすらいいうるのではないかということ、これであります。

【以上,引用】

◆ここでは、裁判官が裁判活動をするうえで、裁判官には、時代の要求に対する深い洞察とそれに基づく実践が必要であると強調されている。福島第一原発事故によって露わになった原発事故の本質は、この法廷において、宮本憲一名誉教授が述べたように、足尾銅山事件以来最大の公害事件であると言うことにあるが、それは福島第一原発事故が筆舌に尽くしがたい途方もない人権侵害事件であることをも示している。

◆本日相代理人が述べた、原発コスト安価論の欺瞞、そこから見えてくる原子力賠償法体系の崩壊、また原発開発を担ってきた世界及び日本の各社の原発事業からの撤退、逃走、そして原発事業自体の崩壊の予兆が示すものは、原発の再稼働の不可能性はもちろん、原発そのものが、もはや人間の手によってコントロールすることができない存在になってきていると言うことである。

◆また、本日詳しく述べたように、現在の技術は、人間社会と自然環境に対して致命的かつ不可逆的な損害を齎す原発に代わる、安全なエネルギー、再生可能エネルギーの創出に成功し始めている。いまや時代は、原発を廃棄し、再生可能エネルギーによる社会の構築を図ることを求めていると言って過言ではない。

◆本件を担当する裁判官に対しては、この時代の要求を見据えて、本件に正面から取り組んでもらいたい。元最高裁判事、故中村治朗氏が述べるように、本件は、「究極的には自己の採る見解の正否を歴史の審判にかけざるを得ない」問題の一つと言ってよいと思われるが、本件においてこそ、裁判官は、社会的葛藤の舞台において、社会的価値の実現のために積極的に機能し、自ら傍観者ではなくプレーヤーとしてプレーに参加することが求められていると確信するものである。

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◆私たち原告の主張:ハイライト
 原発は産業発展の妨げ

大飯原発差止訴訟(京都地裁)原告第29準備書面の第3の3より。
(2017年2月13日第14回口頭弁論)

原発の不経済性が産業発展すら妨げる

  (1)原発の維持・推進と製造技術の維持は表裏一体であること

◆脱原発の政策を明確に打ち出したドイツのシーメンス社が原発製造技術をアレバ社に売却して、事実上、押しつけたに等しい。

◆米国ではエネルギーシフトにより原発が不採算になり新規建造ができない中で、GE社の経営者が原発製造技術に見切りを付ける発言をした。同社は核燃料部門の撤退に見られるように今後も次々に手を引くこととなろう。その度に、原発関連資産は、日立が引き取らざるを得なくなる。そして、加圧水型原子炉を開発したWH社は売却東芝に売却された。これも、結果から見れば不良資産を押しつけられたと評価する以外無いだろう。

◆一方で、政府が原発を推進しているフランスでは、アレバ社が5期連続赤字を計上しても、フランス政府が支援を続け、内部からリスクを指摘されながら、原発の新規建造に乗り出している。

◆2016年10月27日の日立の社長の「原子力を手がけた企業として責任がある。事業をやめるとは言えない」という発言も、国内の原発を維持し、新規建造すら否定せず、海外へ積極的に原発輸出をしようとする日本政府の政策とは表裏一体のものであろう。

◆このように、原発に見切りをつけることと、原発の製造技術を捨てることはほぼ同義であり、一方で、原発の維持・推進と原発製造技術の維持は表裏一体なのである。

◆日本やフランスのように、政府が原発の維持・推進に固執すると、その国の企業が各国の原発関連資産を引き取らされることになり、最後は、その国の国民が負の資産を背負わされることになる。

  (2)脱原発しなければ「ババを引く」ことになる

◆本書面の第3では、あえて、日経新聞や保守的な立ち位置にある産経新聞や時事通信の記事を多く引用した。特に「経済紙」を名乗る日本経済新聞社が、東芝の粉飾決算追及の急先鋒となり、原発の将来性に対する深刻な懸念を(全体からは目立たない形で)繰り返し記事にしていることは重要であろう。

◆日本国が脱原発の政策に舵を切れないことで、将来、日立の社長が予言したように原発産業が統合され、それでも不採算となったとき、現に仏アレバ社や、東京電力がそうなっているように、国民が電力料金や税金の形で負担させられることは想像に難くないであろう。そして、そのアレバ社の救済にすら、三菱重工が乗り出していることはすでに述べたとおりである。国際的な原発の負の資産の「ババ抜き」はすでに始まっているのである。

  (3)原発の不経済性が日本の産業発展を妨げさらなる原発の危険因子ともなる

◆将来性のない不採算事業に固執すると、第1で述べた再生可能エネルギーへの投資やインフラ整備が遅れる。これは単にこの種の新電力の普及が遅れるだけでなく、その分野の国際競争で敗れる、ということを意味する。そして、第2で述べたように、経済性のない原発を維持・推進するための費用は、電力料金や税金の形で、結局、国民が負担させられる。そして、第3で述べたように、原発の不経済性が日本の産業基盤そのものを傷つけることになる。

◆そして、そのような不採算部門が要する原発の技術自体も、どんどん劣化していくと考えるべきであろう。三菱重工業が引き起こしたサン・オノフレ原発の蒸気発生器の欠陥は、2012年の部品納入後2年で発覚している。技術の拙劣さは目を覆うばかりである。苦境に立たされた日立の社長が技術者の不足を述べていることもそのことを裏付ける。

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◆私たち原告の主張:ハイライト
 原発御三家の東芝,三菱重工,日立

大飯原発差止訴訟(京都地裁)原告第29準備書面の第3の2より。
(2017年2月13日第14回口頭弁論)

多額の損害賠償請求を受け、負の資産を押しつけられる日本企業

  (1)東芝の粉飾決算の原因は原発部門の不採算でありそれが原因で経営破綻寸前であること

◆東芝は2015年度に4600億円の赤字を計上した。この赤字計上は「日経ビジネス」という経済系の雑誌に粉飾決算を暴かれた結果であった。そして、東芝が粉飾決算に走ったきっかけは、すでに述べた、東芝が2006年に社運をかけて買収したWH社が収益を上げることができず、福島第一原発事故後にいよいよ不良資産化したことを隠ぺいするためのものだった。

◆しかし、同社は2015年度の経営再建で、原発部門を切り離して処分するのではなく、収益性の高く将来性も見込まれる医療機器部門を約7000億円で売却するなどして資金を捻出して乗り切った。

◆ところが、上述のように、WH社が買収したS&W社が巨額の損失を含んでいたことが発覚し、2016年度にさらに7000億円程度の損失が発生し、これにより数千億円規模の赤字を計上する見込みである。

◆同社は、主力であり、収益性が高く、将来性もある「メモリー半導体事業」を分社化して、株式の一部を売却することで債務超過を回避する計画である。同社は、海外の原発建設事業からの撤退も表明しはじめた。

◆素人目にも明らかであるが、東芝は、採算性・将来性の高い部門を次々に切り売りして、不採算部門であり、粉飾決算の元凶である原発部門を残そうとしている。先述のシーメンス社やGE社と比較しても、およそ常識的な経営判断を行えない状況になっている。

◆また、東芝の損失が建設中の原発の不採算から生じている以上、それらの原発の建設にさらに困難が生じれば、当然、損失は今後も拡大していくのであり、東芝の解体が現実的な課題となっている。

  (2)米国で7000億円の損害賠償請求を受けながらアレバの救済に乗り出す三菱重工

◆新規の原発建造が思うに任せない以上、原発製造部門の赤字構造自体は三菱重工も東芝と同じと推測せざるを得ないが、この点について、今のところ報道はない。

◆しかし、三菱重工は、すでに述べたように現状でも、米国の原発運営企業から7070億円の損害賠償請求を現実に受けており、巨額の損失につながる可能性がある。同じような問題が他の既存原発やこれから建設する予定の原発で起きる可能性もある。

◆また、三菱重工が仏アレバ社の救済に乗り出していることはすでに述べたが、今後、アレバが負債を拡大するほど、三菱がさらに救済に乗り出さなければならない可能性が出てくる。三菱重工によるアレバ社の救済自体が、東芝によるWH社の買収と似た構造を持っているのである。この点、三菱重工の出資と、中国企業の締め出しが表裏一体になっており、アレバが中国での新案件を受注できない構造に直結している。

  (3)日立の悲鳴

◆2017年2月1日、日立は、先述のGE社との合弁企業である米国の「GE日立ニュークリア・エナジー」がウラン燃料の濃縮事業から撤退するため、700億円の営業外損失を計上すると発表した

◆日立は、すでに述べたように、英国内で原発建設を手がけるホライズン社を買収した。同社がイギリスで建設する計画の「ウィルファ原発」は、二基で2.6兆円と見込まれる事業について、日本政府が政策投資銀行等を通じて1兆円を融資することとなっている。これでは、ほとんど、日本政府による日立の救済に近い。また、この原発についても、最初から経済性がないし、各種の援助・補助を踏まえても、ヒンクリーポイント原発と同様、事業の赤字化の危険性は常にあると考えるべきだろう。

◆このような中、実際、日立の社長が2016年10月27日に講演し、原発事業について「いつまでも不採算な状況では成り立たない。一緒にジョイント(提携)的な方向で考える方がいい」と述べた。記事には「国内の原発事業」と書いてあるが、海外で儲かっているのならトータルでは採算性に問題ないはずなので、結局、原発事業自体が大幅に赤字だと考えざるを得ないだろう。さらに、同じ講演で「ビジネスの負荷をどう軽減していくか、ジョイント(提携)の形などで全体を考えていく」とし、技術者不足といった課題を挙げた上で、再稼働や廃炉問題については「相当議論して方向性を出さないといけない」とも述べた。一方で、同社長は「原子力を手がけた企業として責任がある。事業をやめるとは言えない」(同記事)とも述べており、要するに、政府の政策が脱原発の方向に切り替わらないと、原発製造部門を切り捨てられないと言ったと評価せざるを得ないだろう。

◆実は、我が国の原発事業は、すでに、赤字化している核燃料事業から、切り離しと統合が始まっている。不採算だが捨てることもできない核燃料事業を統合しはじめたのである。国内三社の核燃料事業の切り離し・統合は、米国の「GE日立ニュークリア・エナジー」の核燃料事業からの撤退とも機を一にしている。

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◆私たち原告の主張:ハイライト
 世界各国における原発産業の状況

大飯原発差止訴訟(京都地裁)原告第29準備書面の第3の1より。
(2017年2月13日第14回口頭弁論)

2011年3月11日後の世界各国における原発産業の状況

  (1)米国の状況

  ア 沸騰水型のGE、加圧水型のWH

◆もともと、米国は、いわゆる「旧西側先進国」において、商業発電用の原子炉を最初に開発した国である。もともと、原子炉は、原子力潜水艦など、燃料補給をせずに長時間・長距離を航続できる兵器の製造のために開発されたものである。商業用の原子炉は軍事技術を商業用に転換したものであったため、最初から、安全性の観点からは不合理な側面を抱えていたが、本書面ではその点には触れない。

  イ GE=日立・東芝、WH=三菱重工・アレバ

◆米国で商業用原子炉の技術を保有していたのは、沸騰水型原発については、トーマス・エジソンが創業者であるゼネラル・エレクトロニック社(以下「GE社」)であり、加圧水型の原発についてはウェスチングハウス社(以下「WH社」)であった。
日本国内では、GE社から沸騰水型(BWR)の原子炉製造技術を移転されたのが株式会社日立製作所(以下「日立」)と株式会社東芝(以下「東芝」)であり、WH社から加圧水型(PWR)の原子炉製造技術を移転されたのが三菱重工業株式会社(以下「三菱重工」)であった。

◆ヨーロッパでは、WH社から加圧水型の原発製造技術を移転されたのが現在の仏・アレバ社の子会社である「アレバNP」であり、「欧州加圧水型原子炉」(EPR)を製造する技術を保有している。

  ウ GE社の原発からの撤退と日立への「押しつけ」の現状

◆その後、GE社の原発製造技術は、本体から切り離され、ビジネスパートナーである日立との合弁企業である「日立GEニュークリア・エナジー」(茨城県日立市、出資比率は日立80%、GE20%)、日本以外の世界各地で原発の新規建設受注を目指す「GE日立ニュークリア・エナジー」(ノースカロライナ州、GE60%、日立40%)とに移転され、現在に至っている。

◆米国では1979年のスリーマイル島原発事故の後、2012年まで原発の新規建造は凍結されていた。2012年に数機の原発の建設が許可されたが、その後のエネルギーシフトにより、同年、GEの経営者が原発について「(経済的に)正当化するのが非常に難しい」(上記新聞記事)と発言した。その後、後述のように「GE日立ニュークリア・エナジー」は、2017年になって核燃料部門の撤退により日立出資分だけで700億円の営業外損失を計上している。

  エ WH社を取得し経営破綻寸前の東芝

◆WH社は2006年に売却され、その後の追加出資を含め、6000億円で同社を取得したのが東芝である。

◆直近の公知の事実にも属するが、後述のように、現在進行形で、東芝を経営破綻の危機に追い込んでいるのが東芝の子会社であるWH社である。

  オ 米国の現状

◆2016年12月末、東芝は数千億円規模の特別損失の計上予定をプレスリリースした。その原因は、以下の通りである。

◆すなわち、WH社が米国で建設中の4基の原発を巡り、福島第一原発事故を受けて米国での原発の安全規制が強化されたことで、設計変更が必要になり、また、工期の遅延により、建設コストが増加していたところ、WH社がビジネスパートナーであり、原発建設会社である「ストーン・アンド・ウェブスター」(以下「S&W社」)との間でトラブルが発生したため、WH社がS&W社を「0円」で買収することで両社のトラブルを決着させた。しかし、これが東芝の7000億円とも言われる特別損失につながることになった。つまり、東芝による「0円」査定が甘く、買収の時点でS&W社は、実は大幅な債務超過だったのである。これらの4基の原発は、建設途中であるから、当然ながら今後も、損失が拡大する可能性は充分ある。

◆三菱重工も、すでに原告第10準備書面18頁以下で紹介したように、2012年に米国サン・オノフレ原発に納入した蒸気発生器の細管の不具合により、同原発を運営する会社から7070億円の損害賠償請求を受けている。

◆2012年時点でのGE社の経営者の発言にも見られるように、米国では、福島第一原発事故後の規制基準強化やエネルギーシフトにより、原子力発電は、もはやコストの見合わない発電方法であると認識されており、現在進行形の新規の原発建造も巨額の赤字を出している状態なのである。既存の原発についても、日本企業に対する巨額の損害賠償請求に発展している。

◆後述のように、そのような中で、米国の資本が原発製造技術から次々に手を引き始めており、それを買収させられたのが東芝なのである。今後、日立が原発製造技術に固執すれば、GE社との関係で同じ道を歩む可能性がある。

  (2)欧州の状況

  ア ドイツ

◆ドイツでは、総合電機企業であるシーメンス社(戦前の海軍高官への収賄事件で高校の日本史教科書に登場する「シーメンス事件」の会社である)が原子炉の製造技術を保有していた。しかし、同社は、2011年3月11日直後の同年4月、早くも、WH社から技術を導入して欧州の原発を建設してきた「アレバNP」の出資分(34%)をフランスのアレバ社に売却し、同年9月に、正式に、原発製造から撤退した。

◆ドイツは、原発製造技術を持つ国では、産業レベルで脱原発を果たした最初の国となったと言える。シーメンスがアレバNPの出資分をアレバ社に売却して押しつけた理由は「事業への十分な発言権がなかったため」(上記日経新聞2011年4月12日)などとされており、ドイツの「脱原発」が、単に国民世論や政治が主導したものではなく、資本の冷徹な論理により行われた側面もあることを示している。

  イ フランス

◆フランスでは、アレバ社(同社の子会社である「アレバNP」)が原子炉製造技術を保持しており、現在でも、フィンランドのオルキルオト原発、フランス国内のフラマンビル原発の建設を続けている。しかし、オルキルオト原発やフラマンビル原発については、福島第一原発事故を受けた規制の強化で建設費用が一基2兆円以上に高騰している。

◆また、その過程で、1960年代に遡って、アレバの子会社である「クルゾ・フォルジュ」や「日本鋳鍛鋼株式会社」が製造していた原子炉の鋼鉄製部品の規格違反(炭素含有量の超過)が発覚し、急激な温度変化により亀裂が発生する可能性を指摘されている。この部品はオルキルオト原発にも納入される予定であり、今後、同原発の完成はさらに遅れるかもしれない。当然、建設費用の高騰につながる可能性がある。

◆アレバ社はオルキルオト原発の建設で費用が膨らみ、2015年12月期まで5期連続で最終赤字を計上し、その間の累計赤字は1兆円を超えた。同社は、2015年12月末現在、フランス政府が直接・間接に86.52%の株式を保有しており、事実上、仏国の国営企業である。東京電力株式会社が国営企業化していることと同じように、民間資本では経営が成り立たない状況と言える。

◆このようなアレバ社やアレバNPに対しては、一方で、三菱重工が救済に乗り出している。

◆すなわち、三菱重工はすでに述べたように、アレバNPとともに、WH社から加圧水型の原発製造技術を移転された企業であり、もともと三菱重工とアレバは関係が深かったが、アレバ社がオルキルオト原発建設部門を切り離して新規に設立する新会社「NewCo(ニューコ)」に三菱重工が5%出資し、日本の電力会社9社及びその子会社である日本原子力発電が主要な株主である「日本原燃株式会社」も5%出資することとなった。

◆これとは別に、三菱重工は2016年6月28日以降、アレバNPとの合弁事業、同社への少数株主としての出資について、協定を締結した上、検討進めている。

  ウ 欧州の現状

◆結局、欧州では、福島第一原発事故後のドイツ資本の撤退、規制強化とそれによる建設遅延、日本企業もかかわった従前からの粗悪な部品使用の発覚などにより、アレバ社が大幅な赤字を計上しており、原発製造技術自体、原発大国であるフランス政府の支援無しには維持できない状態になっているのである。

◆英国では原発の新規建造が計画されているが、例えば、フランス電力公社(EDF)が事業主体となる予定の英国ヒンクリーポイント原発は、二基2兆4000億円以上の建設費について、英国政府が同原発の電力を35年間にわたって現行の電力卸売価格の約2倍の高値で買い取ると保証したうえ、資金調達に政府保証するなどして計画が成立しているだけで、買い取り価格が倍額であることの一点をみても経済性がないことは明らかであり、現に専門家からその旨の指摘がされている。内部で事業を進めることの危険性を指摘した最高財務責任者が辞任に追い込まれるなど、異常事態となっている。

◆そこへ、三菱重工のアレバへの出資と中国企業のアレバへの出資見合わせ(前掲日経新聞2017年2月4日)という事態が生じており、中国企業も出資予定だったヒンクリーポイント原発建設事業の先行きに不透明さが増していると言える。さらに、日立による英国「ホライズン社」の買収による日立の英国での原発建設事業への参入、という状態が発生している(。

◆経済原理による採算性がなく、先行きの不透明な事業に、原発にしがみつくフランスと日本の企業が前のめりに挑んでいる状況なのである。

  (3)アジアの状況

  ア ベトナムの建設計画白紙撤回

◆ベトナムでは、三菱重工が加圧水型の原発を建設する計画になっていたが、2016年11月22日、ベトナムの国会が計画の白紙撤回を決めた。

◆福島第一原発事故後の安全意識の高まりは、アジア諸国にも及んでいるのである。

  イ 台湾の脱原発決定

◆台湾では、現在、GE社、WH社が1970~80年代に建設した合計6基の原発が稼働中である。さらに東芝、日立が受注して「第四原子力発電所」の建設が着工し、進められてきたが、この計画は福島第一原発事故後の2014年4月27日に凍結された。

◆そして、2017年1月11日、台湾の立法院は2025年までに原発をゼロとする法改正を可決した。

  ウ トルコの計画の不採算・政情不安

◆トルコでも原発建設計画がある。シノプ原発は、もともと韓国が優先交渉権を持っていたが交渉決裂、その後、東芝・東京電力の連合体が交渉に入ったが、福島第一原発事故を受けて東京電力が撤退して白紙撤回となった。さらに、三菱重工・アレバの連合体が受注を2013年5月に受注内定した。事業化可能性調査(FS)を2年かけて行い、事業主体には伊藤忠商事が10%超出資することが予定されていた。

◆その2年後、出資を検討していた伊藤忠商事が

本事業への参画については今後協力を行う事業か調査の過程で検討されるものでありますが、本事業を取り巻く環境等を踏まえた場合、総合商社である当社の持つ機能や果たせる役割等を勘案すれば本事業への出資者としての参画は極めて困難であると現時点で認識しております。

とのプレスリリースを発表した。事実上、事業化可能性が否定されたに等しい。

◆また、その後、トルコは隣国のシリアに軍事介入したことで国内でテロ活動が活発化したり、軍部がクーデターを画策するなど、政情が不安定となっている。三菱重工も、現地事務所にスタッフが10名いる程度であり実際の計画は進んでいない。

◆そもそも、同国は日本と同じ地震国であり、原発が事故を起こした場合の賠償問題も起きえる。伊藤忠商事がいみじくも述べたように、事業可能性には極めて困難がある。

  エ メーカーが二の足を踏む日印原子力協定

◆日本とインドは2016年に原子力基本協定を結び、日本から原発の輸出が可能となったが、協定は一方的な破棄が可能な上、その場合の企業への補償等について定められていない。また、インドの原子力損害賠償法では、米国やそれをそのまま導入した日本や欧州のそれとことなり、メーカーの免責条項がない(例えば、日本の場合「原子力損害の賠償に関する法律」4条でメーカーの免責が明記されている)。そのため、実際の輸出には日本メーカー自身が二の足を踏んでいる。

  オ アジアの現状

◆そもそも、福島第一原発事故を引き起こした日本国が原発の輸出などできるのか、という大問題がある上、日本が輸出を狙っているすべての国で、原発の建設は進んでいない上、抱え込むリスクは膨大である。むしろ、台湾やベトナムのように、福島第一原発事故を教訓化して脱原発し、あるいは、原発導入を断念するケースが広がっている。

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◆2/13 第14回口頭弁論の報告

京都地裁 大飯原発差止訴訟 第14回 口頭弁論は
2/13(月)14:00より開催されました。
以下,その報告です。

(1) 開廷前のデモ…いつも通り,市民に脱原発裁判を訴えるためのデモ。12:15スタート。前回よりも多い58人。ごく少し時雨れがありましたが,この季節としては恵まれました。賑やかなデモができました。
アピールとコール→こちら

(2) 傍聴席…88席の傍聴席に対して,120人ほどの希望があり,抽選になりました。関電社員と思われる人もいました。

(3) 法廷での内容

・原告の陳述は,福島県から避難してきている宇野朗子さん。→こちら
・証拠説明書,書証 →こちら
・原告側の第29準備書面 →こちら。再生可能エネルギーの可能性と原発の不経済性…第1 自然再生可能エネルギー利用で脱原発は可能であり、危険な原発は子孫に残すべきでない。第2 原子力発電のコスト・非経済性について。第3 原子力発電の不経済性が産業の健全な発展すら阻害すること。第4 傍観者ではなくプレーヤーとして。
・原告側の第30準備書面 →こちら。木津川市避難計画の問題点について
・原告側の第31準備書面 →こちら。被告関電の地震・津波の想定の問題点(概論)

(4) 報告集会

・弁護士会館地下ホール満席。「模擬法廷を充実させて欲しい」などの意見,質問が出て,応答が行われました。
・カンパ…多額。ありがとうございましたm(_ _)m
・竹本団長の本『日本の原発と地震・津波・火山』,7冊頒布。
・ 缶バッジやクリアファイルのご協力…感謝。

(5) 第五次追加提訴

・184名の原告が加わり,原告総数は,3270名になりました。
・引き続き,2017年中をめどに,第六次原告募集を行っています。
・提訴以来の原告の増加→こちら

(6) 次回,大飯原発差止訴訟,第15回口頭弁論の予定。

★5/9(火)★…14:00~,京都地裁101号法廷。
傍聴席抽選のリストバンド配付は,13:20~13:35。
模擬法廷,報告集会は弁護士会館。

◆【書籍】竹本修三・原告団長の著作
 『日本の原発と地震・津波・火山』

  • 『日本の原発と地震・津波・火山』。大飯原発差止京都訴訟原告団長・京都大学名誉教授の竹本修三 著。発行日は2016/5/5。
  • 地震大国日本では,原発はどだい無理という第1章「地震大国ニッポン」。
  • 第2章「原発と地震」,第3章「原発と津波」,第4章「原発と火山」は,京都地裁での原告側の主張について,原告団長としての考えを示したもの。これらの章では主に大飯原発について述べているが,すべての原発再稼働にとって普遍性のある問題点を指摘している。
  • 第5章は「原発,高レベル放射性廃棄物の処分問題」,子や孫の世代に禍根を残さないように。
  • 原発稼働の是非を考える多くに人に読んでもらいたい内容です。
  • 四六判210ページ。¥1000円+税。amazonでも扱いあり。

s-takemoto
【本書は,大飯原発差止訴訟の原告団長としての考えを示したものです。】
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◆目 次
1.地震大国ニッポン
…長周期地震動,近畿・中部地方の地震と地殻変動,わが国の地震予知研究の現状,など。
2.原発と地震
(1)関電側の大飯原発についての地震対策。
(2)大飯原発周辺の想定地震についての原告側の疑問。
(3)基準地震動を3桁で提示する欺瞞性。
(4)若狭湾の地殻内断層地震は短周期成分が卓越するか?
(5)「新規制基準」は原発の安全性を確保するものか。
3.原発と津波
…福島第一原発の津波被害,日本海側の津波,若狭湾の津波-大飯原発の津波被害,など。
4.原発と火山
…海溝型巨大地震と火山活動,日本の巨大カルデラ噴火とその原発への影響について,など。
5.原発,高レベル放射性廃棄物の処分問題
…わが国で原子力発電が行われるようになった経緯に関して,など。
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“ 地震大国ニッポン ” に 原発は土台無理

新刊著で竹本さん(大飯原発差止京都訴訟原告団長)警告
*救援新聞 2016年4月25日号。橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

4月14日から連続的に熊本,大分県などにマグニチュード7を超える大きな地震がありました。4月18日現在,42人の死亡,200人を超える方が重傷,倒壊した家屋も2千を超え,10万人近くが避難し,10人を超える行方不明者がいるとの報道で,すでに救援活動もされています。被災,被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。救援会は中央本部が熊本県本部と連絡をとり,会員の安否,被害状況の把握につとめ,募金などの救援を呼びかけています。被害情報,受け入れ情報に耳を傾け支援に参加しましょう。

この地震とかかわり,今唯一稼働中の鹿児島の川内(せんだい)原発の事故を危惧し停止を求める多くの声が政府に寄せられていますが,政府は「安全基準内」と主張して稼働をつづけさせています。

「『地震大国ニッポン』に原発は土台無理」と,すべての原発の稼働停止と廃炉を主張している,大飯原発差止京都訴訟原告団長の竹本修三さん(京都大学名誉教授)が,裁判で述べたことも含めた,学説(地球物理学)と思いを新刊本としてこのほどまとめました。『日本の原発と地震・津波・火山』がそれ。本体は1000円+税,全210ページです。竹本さんは,福島の原発事故があるまでは「原子力の平和利用」もあり得ると考えていたが,孫も生まれて,よりよい地球環境を残すことに危惧を覚え,そこへ福島の原発が起こり,これは原発と人類はとても共存できないと考えるようになり,孫たちの世代に辛い思いはさせられない,と訴訟の原告となり稼働反対の運動をするようになったと,「はじめに」で告白,さらに「おわりに」では,「日本の国土面積は全世界の約0.25%しかないのに,そこで世界のM6以上の地震の20%が起こっている。この日本に,世界に約400基ある原発のうちの54基が設置されていることはきわめて異常」と警告を発しています。

熊本での大地震は,日本列島のいたるところに活断層が走っている地層の上で,いつでも大地震発生の恐れがあり,本著の警告がより身辺な問題であることを裏書きしています。救援会員の購読を訴えます。ブックショップの発売は5月20日からですが,注文は受け付けます。救援会京都府本部でも取り扱います。