◆原告第14準備書面
第2 津波について

原告第14準備書面
-津波の危険性について 目次

  第2 津波について

 1津波のメカニズム

(1)津波発生のメカニズム

津波を引き起こすのは、基本的には海底地形の変化[3]である。

地震により、海底が隆起すると、その上の海水がもち上げられて、水面も隆起する。隆起した海水は、直後に重力によって一気にくずれ、波となって四方へ伝わる。

これが津波発生のメカニズムである。

(2)津波の速さ

津波の伝わる速度は水深の平方根に比例する。したがって、底の深い沖合に比べ、沿岸部での津波のスピードはぐっと遅くなる。この現象は「津波はジェット機並の速さで陸地に近づき、新幹線並みの速度で海岸を襲う。」と表現されている。

(3)津波の高さ

一方、津波の高さは、水深が浅い場所ほど高くなる性質を有する。

すなわち、津波のスピードは浅瀬に向かうにつれて急激に落ちるため、後から来た波が前の波に追いつき、次から次へと重なった波が一度に押し寄せる結果、波高が高くなるのである。

そのため、津波が浅瀬に設置されている防波堤に達すると、大量の海水がせき止められるが、後ろから来た速い波が次々重なっていき、防波堤を越える高さに達するのである。そして、いったん防波堤を越えた海水は、一気に陸地になだれ込むことになる。

従って、もし仮に波高5mの津波を防波堤でせき止めようと思ったら、防波堤の高さは5mでは不十分であり、より高くしなければならないのである。

[3] 地すべり等によっても津波は発生する。

(4)津波に関する用語

本書面で使用する、津波の高さに関する用語を説明する。

  1. 津波波高:
    検潮所や沖合の波高計で計測された津波の高さ。気象庁発表の津波観測記録はこの値が用いられる。
  2. 浸水高:
    陸上での津波高さを表す。建物に残った水跡や付着したゴミなどで測定されることが多い。現地盤を基準とした値は浸水深と言われるのが一般的である。
  3. 遡上高:
    陸上で最も高い位置に到達した箇所の高さのこと。
  4. 痕跡高:
    津波の発生後、建物や樹木、斜面上などに残された変色部や漂着物までの高さ

[甲210:気象庁 HP]【図省略】

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 2津波に対する規制

津波については、「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」第5条が規制しているが、その詳細は「規則の解釈」に委ねられている(丙6)。また、発電用軽水型原子炉施設の設置許可段階の基準津波策定に係る審査において、規則及び解釈の趣旨を反映させた「基準津波及び耐津波設計方針に係る審査ガイド」(丙27)が用いられる。

解釈のうち、特に重要な部分を以下に引用する。

[規則]
(津波による損傷の防止)
第5条 設計基準対象施設は、その供用中に当該設計基準対象施設に大きな影響を及ぼすおそれがある津波(以下「基準津波」という。)に対して安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない。

[規則の解釈]

第5条

2 上記1の「基準津波」の策定に当たっては、以下の方針によること。

五 基準津波による遡上津波は、敷地周辺における津波堆積物等の地質学的証拠及び歴史記録等から推定される津波高及び浸水域を上回っていること。また、行政機関により敷地又はその周辺の津波が評価されている場合には、波源設定の考え方及び解析条件等の相違点に着目して内容を精査した上で、安全側の評価を実施するとの観点から必要な科学的・技術的知見を基準津波の策定に反映すること。

七 津波の調査においては、必要な調査範囲を地震動評価における調査よりも十分に広く設定した上で、調査地域の地形・地質条件に応じ、既存文献の調査、変動地形学的調査、地質調査及び地球物理学的調査等の特性を活かし、これらを適切に組み合わせた調査を行うこと。また、津波の発生要因に係る調査及び波源モデルの設定に必要な調査、敷地周辺に襲来した可能性のある津波に係る調査、津波の伝播経路に係る調査及び砂移動の評価に必要な調査を行うこと。

八 基準津波の策定に当たって行う調査及び評価は、最新の科学的・技術的知見を踏まえること。また、既往の資料等について、調査範囲の広さを踏まえた上で、それらの充足度及び精度に対する十分な考慮を行い、参照すること。なお、既往の資料と異なる見解を採用した場合には、その根拠を明示すること。

3 第5条の「安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない」
を満たすために、基準津波に対する設計基準対象施設の設計に当たっては、以下の方針によること。

四 水位変動に伴う取水性低下による重要な安全機能への影響を防止すること。そのため、非常用海水冷却系については、基準津波による水位の低下に対して海水ポンプが機能保持でき、かつ冷却に必要な海水が確保できる設計であること。また、基準津波による水位変動に伴う砂の移動・堆積及び漂流物に対して取水口及び取水路の通水性が確保でき、かつ取水口からの砂の混入に対して海水ポンプが機能保持できる設計であること。

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 3 津波高の試算方法

(1)津波評価技術2002策定に至る経緯

津波高の具体的な計算方法として、実務上、土木学会策定の「津波評価技術」という津波高シミュレーションが利用されている。「津波評価技術」以前においては、平成9年3月策定の「太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査報告書」(農林水産省ほか3省庁)、及び、「地域防災計画における津波対策強化の手引き」(以下、「手引き」という。農林水産省ほか6省庁)が存在する。同「手引き」の発表以前においては、原子力発電所において既往最大の歴史津波および活断層から想定される最も影響の大きい津波を対象に設計津波を想定していたが、「手引き」は、「現在の知見により想定し得る最大規模の地震津波を検討し、既往最大津波との比較検討を行った上で、常に安全側の発想から沿岸津波水位のより大きい方を対象津波として選定するものとする。」とされた。

以上の事情のもと、平成11年、原子力発電所の津波に対する設計の信頼性向上を目的として、土木学会原子力土木委員会の中に津波評価部会が立ち上がり、平成14年2月、同部会が、津波の波源や数値計算に関する知見、及び、技術進歩の成果をとりまとめ、原子力施設の設計津波の標準的な設定方法である「原子力発電所の津波評価技術」(以下「津波評価技術」という。)を公表した(甲204:「原子力発電所の津波評価技術」)。

津波評価技術は、土木学会の規格ではあるが、現在、津波高試算方法として実務上利用されている。

(2)津波評価技術の津波試算の方法

「津波評価技術」は原子力発電所の設計津波水位[4]の標準的な設定手法を示したものである。

「津波評価技術」は、「現在の知見により想定し得る最大規模の地震津波を検討し、既往最大津波との比較検討を行った上で、常に安全側の発想から沿岸津波水位のより大きい方を対象津波として選定するものとする」とする「手引き」の設計思想を反映させるため、「既往津波」(過去に、日本沿岸に被害をもたらした津波)を参考にして、「想定津波」(将来発生することを否定できない地震に伴う津波)を設定する。そして、「想定津波」の不確定性(誤差)を、数値計算(パラメータスタディ)により反映させて、「評価地点に最も大きな影響を与える津波」(設計想定津波)を選定する。最後に、「設計想定津波」に、潮位条件を足しあわせ、数値計算により評価地点における「設計津波水位」を評価する。

【図省略】

[4]「津波評価技術」は、[設計津波水位]を「設計に使用する津波水位を指し、設計想定津波の計算結果に適切な潮位条件を足し合わせたもの」と定義する。

(3)具体的な評価方法

ア 既往津波の再現と再現性の確認(1)

文献調査等に基づき、評価地点に最も大きな影響を及ぼしたと考えられる既往津波を評価対象として選定し、痕跡高の吟味を行う。沿岸における既往津波の痕跡高をよく説明できるように、当該津波の原因となる断層運動(地震)の断層パラメータを設定し、既往津波の断層モデルを設定する。

[甲204 1-20] 【図省略】

津波計算において、断層モデルは、以下の静的断層パラメータで記述される。

(i)基準点位置(N、E)、(ii)断層長さL、(iii)断層幅W、(iv)すべり量D、(v)断層面上縁深さd、(vi)走向θ、(vii)傾斜角δ、(viii)すべり角λ

L、W、Dは、地震モーメントM0と次式で関連付けられる。

M0=μLWD (「μ」は震源付近の媒質の剛性率)

イ 断層の設定方法(2)

大飯原発が立地する日本海南西部では、地震地対構造論上プレート境界面が形成されていないとされている。そこで日本海南西部においては、北海道西方沖.
新潟県西方沖(日本海東縁部)に発生する地震(i)、及び、既存の海域活断層の長さに応じた地震(ii)を元に、津波予測を行うものとしている。

(i)日本海東縁部に想定される地震のモーメントマグニチュード

日本海東縁部については明確なプレート境界面は形成されていないと考えられているが、北海道西方沖~新潟県西方沖にかけて、M7.5クラスの地震とこれに伴う津波が空間的にほぼ連続して発生していることを考慮し、海域活断層に想定される地震に伴う津波の評価とは別に地震地体構造の知見を踏まえた想定津波を評価する。

既往最大の津波の痕跡高を説明できる断層モデルに基づくモーメントマグニチュードをもとに、想定津波を起こす地震のモーメントマグニチュードとしてこれと同等以上の値を設定する(甲204.1.34、35「津波評価技術」)。

【甲2041.60津波評価技術資料編「黒く塗った活動域全体で、1993年北海道南西沖地震津波が最大であり、Mw7.8である。」と記載】 【図省略】

【甲204 1.61頁津波評価技術本編参考資料3基準断層モデルの設定方法日本海東縁部-】 【図省略】

(ii)海域活断層に想定される地震のモーメントマグニチュード

「津波評価技術」は西南日本周辺海域においては、海域活断層による津波が沿岸で最大規模と評価している。そこで、この地域については活断層調査に基づき断層パラメータを設定し、原則として、評価する海域活断層の長さに基づき適切なスケーリング則[5]を適用して最大モーメントマグニチュードを設定する(甲204.1.36乃至38「津波評価技術」)。

この海域については、他の海域と異なり、「既往津波の痕跡高を説明できる断層モデル」がないことから、「文献調査」「堆積物調査」等により、海域活断層の存在を推測する必要がある。

【甲204 1.62本編参考資料4基準断層モデルの設定方法-海域活断層-】 【図省略】

[5] 断層長L、幅W、すべり量Dの比率が地震の規模に拘わらずほぼ一定で相似、とする法則。量の概算を行う際に用いる。

ウ 設計想定津波の確定(3)

想定津波の波源(津波の発生源)の不確定性(誤差)を設計津波水位に反映させるため、基準断層モデルの諸条件(パラメータ)を合理的範囲内で変化させた数値計算を多数実施し(パラメータスタディ)、その結果得られる想定津波群の波源の中から評価地点に最も影響を与える波源を選定する。

【甲204 1.15「津波評価技術」図表を加工】 【図省略】

エ 設計津波水位の算定(4)

以上より得られた設計想定津波に、適切な潮位条件を足し合わせて、設計津波水位を求める。

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 4 津波に対する安全裕度は「倍半分」である

(1)津波に対する安全裕度は「倍半分」である

それでは、「津波評価技術」は確立された津波シミュレーションといえるか。
ここで福島第一原発事故当時、東京電力は、土木学会が平成14年に策定した津波シミュレーションモデル「津波評価技術2002」にもとづき津波想定をO.P.+5.7mとして保安院に報告し、津波対策として非常用海水ポンプの高さをO.P.+6.1mに嵩上げした。しかし実際に到来した津波は、O.P.+11.5mを超える津波であったとされている。

事故後、政府事故調等により「津波評価技術」策定時に大した議論もなく工学的な安全裕度(補正係数)を「1.0」としたことが判明した。すなわち、津波予測精度が低い場合、予測を超える津波高の津波が発生する可能性があるため工学的に安全裕度をとるべきであるが「津波評価技術」はこれを考慮していていない。
そして安全裕度については、福島第一原発事故後に問題となったにも関わらず、修正されずに現在の津波予測がなされているのである。

ここで、津波の精度は現在でも「倍半分」であること。すなわち、工学的には試算の「2倍」の安全裕度を取る必要が有ることを述べる。

(2)「津波評価技術」の補正係数は「1.0」である

「津波評価技術」の補正係数は「1.0」とされている。これは何を意味するか。

ここで、想定を上回る津波の可能性を考慮(自然現象の不確定性を考慮)するためには、[想定津波水位]に一定の係数[補正係数]を掛けあわせて津波水位の評価を行う。補正係数が大きければ、設計津波水位に余裕がある(=より安全である)ということになる。他方、補正係数を「1.0」とすることは、数値補正を行わないことを意味する。この意味で、「津波評価技術」は安全裕度が緩和されたシミュレーションモデルである。

「津波評価技術」策定のための第6回津波評価部会では、「津波評価技術」の補正係数を「1.0」と設定することが妥当か否かについての議論がなされたが、首藤主査より、「現段階ではとりあえず1.0としておき、将来的に見直す余地を残しておきたい」との発言がなされ、結果的に補正係数を「1.0」と決定した。その後、津波評価部会は、「補正係数」を修正しないまま、福島第一原発事故に至った。

当時津波評価部会委員であった東北大学今村文彦教授は、政府事故調のヒアリングに対し、「安全率は危機管理上重要で1以上が必要との意識はあったが、一連の検討の最後の時点での課題だったので、深くは議論せずそれぞれ持ち帰ったということだと思う。」と回答している。(以上、甲92-379~381:政府事故調中間報告)

この意味で、「津波評価技術」は安全裕度が緩和されたシミュレーションモデルであり、「保守的」な設計想定津波が得られるように配慮されているとはいえない。

(3)4省庁報告書及び7省庁手引きにおける裕度の取り扱い

前述したように、平成5年北海道南西沖地震津波発生を契機に関係省庁により津波対策の再検討が行われ、一般の海岸施設の防災対策のために、平成9年3月に「太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査報告書」(農林水産省等4省庁作成)、及び、「地域防災計画における津波対策強化の手引き」(7省庁作成、以下「7省庁手引き」という)が公表された。7省庁手引きは津波高シミュレーションの嚆矢である。

同報告書の調査委員は通産省顧問である首藤伸夫東北大教授及び阿部勝征東大教授が参加しており、同報告書の「精度は倍半分」(2倍の誤差があり得る)と発言していた。これは安全裕度として「2倍」までは考慮すべきという意味である。平成97年6月、通産省は上記顧問の発言を受けて、電気事業連合会に対し、数値解析の2倍の津波高さを評価した場合、その津波により原子力発電所がどうなるか、さらにその対策として何が考えられるかを提示するよう指示した(甲32.44:国会事故調参考資料)。

平成9年7月25日付電気事業連合会津波対応WG名義の「『太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査』への対応について」(甲206)と題する資料には、「数値解析結果の2倍値」についての報告がなされている。

すなわち、7省庁手引きにおいては、2倍の裕度が妥当とされていた。

(4)溢水勉強会における保安院の指摘

平成18年1月、保安院、及び、原子力安全基盤機構は、内部溢水及び外部溢水に関する原子力施設の設計上の脆弱性の問題を検討する「溢水勉強会」を立ち上げた。平成18年6月29日付の溢水勉強会の配布資料(甲207:「内部溢水及び外部溢水の今後の検討方針(案)」、同資料には署名がないが、記載内容から保安院作成のものと考えられる)においては、

「1.外部溢水(想定外津波)について
これまで、代表プラント(1F.5及びHT.2)において、現地調査を実施し、敷地高さ+1mの場合の影響を確認した。
今後は
(1)土木学会手法による津波評価の保守性
土木学会手法による津波高さ評価がどの程度の保守性を有しているか確認する。

・評価手法、解析モデル、潮位・台風などの影響の重ねあわせ
・既往最大津波高さとの比較

(5)影響防止対策の検討
・電力は、想定外津波対策については津波PSAによる評価結果を待ちたいとのことであるが、津波PSA表か手法の確率には長期を要することから、当面、土木学会評価手法による津波高さの≪1.5≫倍程度(例えば、一律の設定ではなく、電力が地域特性を考慮して独自に設定する。)を想定し、必要な対策を検討し、順次措置を講じていくこととする(AM対策との位置づけ)。」

との記載がある。

以上より、保安院は「津波評価技術」について「潮位・台風などの影響の重ねあわせ」等を考慮する必要があり、これらの要素については「津波評価技術」が十分な保守性を有しているかについて検証の必要性を示している。さらに、これらの不確実性を考慮して裕度を1.5倍に設定し対策を講じることを指示している。

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(5)政府事故調査委員によるヒアリング結果

政府事故調査委員会は、報告書作成のために収集した関係者に対するヒアリングを非公開としていたが、その後の世論により順次公開した。ヒアリング結果より、「津波評価技術」作成に関与した関係者も安全裕度(補正係数)については
「倍半分」との認識があったことを示している。

ア 東北大学大学院工学研究科今村文彦教授のヒアリング結果

東北大学大学院工学研究科今村文彦教授は津波評価技術策定時に土木学会津波評価部会の部会員であった。平成23年8月19日、同人は、政府事故調事務局のヒアリングに対し、補正係数については津波評価部会にて議論を行わなかったこと、及び、議論すべきだった補正係数の案として「1.5」、及び『従来の土木構造物並び』で「3.0」を指摘している(甲208-3、4:聴取結果書(政府事故調査報告書の原聴取内容で公開されたもの))。

同人の聴き取り結果からは、津波評価技術策定時において、安全裕度を従来の土木構造物と同じように考えれば「3.0」倍まで考慮すべきだったことがわかる。

イ 元原子力安全保安院統括安全審査官高島賢二氏のヒアリング結果

平成24年4月11日、政府事故調事務局は、津波評価技術策定当時(平成14年)原子力安全保安院統括安全審査官であった高島賢二氏に対しヒアリングを行った(甲209:聴取結果書(公開された政府事故調査報告書の原聴取内容))。

このヒアリングにおいて、同人は、「自分は、津波評価技術の議論がずっと以前から■(ママ)先生[6]にはお世話になっており、津波の計算は非常に難しく■(ママ)を含むものであり、極端な場合は■(ママ)が倍または半分あるものと認識していた。」と述べている。

高島賢二氏のヒアリングの結果からは、被告国の規制担当者自身が、津波高の予測精度は「倍半分」、すなわち2倍の誤差があることを当然の事実として認識していたということがわかる。

[6] ここで挙げられた氏名非開示の学者は、当時通産省顧問であり、4省庁報告、津波評価技術の策定にも関わった、首藤伸夫東北大教授、または阿部勝征東大名誉教授と考えられる。

(6)気象庁が津波の予測精度を「倍半分」と公表していること

気象庁はHPにおいて、一般市民向けの津波の解説ページ「津波について」を設けている(甲210:気象庁HP[7])。同解説ページは、Q&A形式を採用しており、「津波の高さ○mと予報される場合、どこの地点で言うのですか?例えば、海岸線ですか。内陸部100m地点等のことですか。」との問いに対し

「津波情報の中で発表している「予想される津波の高さ」は、海岸線での値であり、津波予報区における平均的な値です。場所によっては予想された高さよりも高い津波が押し寄せることがあり、その旨を津波情報に記載することでお伝えしています。また、現在の津波予測技術では、「予想される津波の高さ」の予想精度は、1/2~2倍程度です。

なお、「津波の高さ」とは、津波がない場合の潮位(平常潮位)から、津波によって海面が上昇したその高さの差を言います。

さらに、海岸から内陸へ津波がかけ上がる高さを「遡上高(そじょうこう)」と呼んでいますが、「遡上高」は気象庁から発表される「予想される津波の高さ」と同程度から、高い場合には4倍程度までになることが知られています。・・」

と回答している。

すなわち、被告国の機関である気象庁は、現在でも津波予測の精度は「倍半分」すなわち予測値の2倍程度を考慮すべきとの見解を示している。

[7] http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq26.html

 5 小括

以上より、津波高さの予測の精度は、平成14年の津波評価技術策定時において2倍の誤差を含むものとして認識されていた。また、津波評価技術は、現在でも新規制基準において適用されており、以上の認識は現在でも有効である。

したがって、津波高を「保守的」に判断するには、「津波評価技術」によって得た津波高の「2.0」倍を考慮しなくてはならない。

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