◆原告第15準備書面
被告関電準備書面(3)(地震)に対する反論(1)

2015年(平成27年)10月15日

原告第15準備書面

原告第15準備書面
被告関電準備書面(3)(地震)に対する反論(1)

被告関電は、基準地震動を856ガルと設定し、本件発電所の「安全上重要な設備」は基準地震動に耐えられると主張する。地震に関する被告関電の主張に対する原告の反論(1)は以下のとおりである。追って、反論(2)を追加主張する予定である。

 被告関電の主張は、新規制基準に合致する旨の主張である。しかし、同基準は安全基準ではない。原子力規制委員会の委員長田中俊一は、「原子力規制委員会の審査は安全審査ではなくて、基準の適合性の審査であり、基準の適合性は見ているが、安全だということは言わない」「基準をクリアしてもなお残るリスクというのは、現段階でリスクの低減化には努めてきたが、一般論として技術であるから、人事で全部尽くしている、対策も尽くしているとは言い切れない。自然災害についても、重大事故対策についても、不確さが伴うので、基準に適合したからといって、ゼロリスクではない」と述べている(原告第5準備書面末尾)。従って、被告関電が同基準へ適合すると主張しても、本件発電所が安全であると論証したことにはならない。

 同基準の耐震設計審査指針は、基準地震動を、(1)敷地毎に震源を特定して策定する地震動と(2)震源を特定せず策定する地震動から策定するとしている。そして、

(1)敷地毎に震源を特定して策定する地震動は、検討用地震を選定して行なわれる。

被告関電は、検討用地震として、FO-B~FO-A~熊川断層による地震と、上林川断層による地震が選定している。被告関電はそれぞれの検討用地震による地震動を検討して基準地震動を策定したと言うが、以下のとおり根本的な問題がある(図1)。

図1若狭湾周辺の主な活断層の分布(関電側準備書面(3)51頁より引用)。【図省略】

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 FO-B~FO-A断層と熊川断層について

(1) 連動すること

被告関電は、FO-B~FO-A断層と熊川断層が約15km離れていることや連動を示す地質構造が認められないことを理由に連動しないと主張していた(p53)。

しかし、「1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震(M7.3)の場合、震源領域の長さ50km超、深さ約5~18kmの断層面が一度に破壊することを示唆する長い活断層がこの位置に存在することは事前に認識されていなかった。それまでは神戸市側では短い断層が雁行する六甲断層系と淡路島側では野島断層などの短い断層が何本か存在することが知られていたに過ぎない。」また、「これまでにわが国で起こった内陸地殻内地震の最大のものとして、1891年10月28日の濃尾地震(M8.0)が知られているが、この地震の長さ約76kmに及ぶ地震断層は、温見断層北西部、根尾谷断層、梅原断層などの活断層が連動して起こったものである。」以上のとおり、独立した断層だと考えられていた断層間で、過去に連動が起きた事例が知られている。
被告関電は、規制委員会の指摘を受けた後、連動を前提に地震を評価したが、上記のとおり連動して活動したケースが存在するのに、規制委員会から指摘されるまで連動を前提に検討せず、かつ今なお連動を否定している。被告関電に対して、安全性に対する真摯な姿勢を有するのか、疑問を抱かざるを得ない。

(2) 地震動評価

FO-B~FO-A~熊川断層は、本件発電所の最も近くを通る断層であり、本件発電所との最短距離は3kmにすぎず、FO-B~FO-A~熊川断層による地震は、本件発電所に及ぼす影響が大きいことが予想される。従って、FO-B~FO-A~熊川断層による地震による地震動評価は、より慎重に、あらゆる可能性を十分吟味して行う必要がある。

ところが、被告関電の地震動評価は極めて不十分である。

被告関電は、これから起きる地震によって形成される断層について、断層の地表に現われる位置は、過去の地震によって地表に現われている位置と一致すると決めつけ、その場合だけしか検討していない(図2)。

図2 地震断層面の断層傾斜角(被告関電準備書面(3)168頁より引用)。【図省略】

しかし、地震は、地中深くの震源(破壊開始点)から岩石の破壊(ずれ)が始まり、破壊(ずれ)が断層面に広がり、その断層面が地表に及ぶ場合もあって、その場合には地表に断層が露出して地上でも断層を認めることができる。
しかも、その破壊(ずれ)は、FO-B~FO-A~熊川断層の場合、64km×15kmという巨大な断層面である(図3は断層面を地表面に乗せた図であり、断層面の巨大さがよくわかる)。

図3 FO-B~FO-A~熊川断層(関電側準備書面(3)75頁より引用)。【図省略】

これから起きる地震が、過去にFO-B~FO-A~熊川断層を形成した過去の地震と、震源も断層面も全く同じになるとは考え難いところである。震源が同一であるとしても、断層面の進み方の角度がわずかに異なるだけで、地表面では大きく異なる位置に断層が現われる(図4)。

図4 地表に現れる地震断層 【図省略】

そうだとすると、地表に現れる断層が本件敷地内を横切る場合さえ考えられるはずである。

被告関電は、「より安全側に立って」「敷地での地震動がより大きくなりうる条件を設定して」検討したというが、被告関電のこの説明は欺瞞に満ちていると言わなければならない。

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 上林川断層について

上林川断層は、本件発電所の南西に、北東-南西に斜めに傾いて存在する断層であるが、北東端の延長線上に本件発電所がある。

被告関電は、南西端は、不明瞭であるとして、断層の存在を明確に否定できる福知山付近まで延長して評価する。しかし、北東端については、延長の検討すらしない。

しかし、知られていた断層の延長線上で地震が起きた例がある(福岡県西方沖地震は、知られていた警固断層の延長線上で起きている、図5)。

図5 福岡県西方沖地震(M7.0、2005年3月20日)、地震調査研究推進本部。
(http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/katsudanso/f108_kego.htm) 【図省略】

上林川断層について、北東方向におおい町笹谷付近まで追跡されることを指摘する研究がある(図6)。

図6 図1を加工 【図省略】

従って、被告関電は、上林川断層の北東端が東北方向に伸び、大飯原発に近づく可能性を踏まえて地震動を評価すべきところ、これを怠った被告関電の地震動評価は失当である(1乃至4項につき文献[1])。

[1] 竹本修三:大飯原子力発電所近傍の活断層の挙動に関する一考察,NPO法人あいんしゅたいん附置機関基礎科学研究所「紀要」,原著論文,pp1-4,2015.
(http://jein.jp/jifs/bulletin.html).

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 内陸地殻内地震のマグニチュード

被告関電は、内陸地殻内地震は、最大のものでも1891年1月18日の濃尾地震のマグニチュード8であり、通常はマグニチュード7級どまりであり、若狭湾周辺の断層型地震もマグニチュード7どまりであると考えて原発の安全設備を考えている。
しかし、根拠とされているのは、わが国の気象台に地震計が配置され、地震波形の観測データが残されるようになった明治18(1885)年以降の高々130年の主な被害地震の分布図である。この間に海・陸のプレート境界に近い太平洋側ではM8超の海溝型地震がたびたび起こっている。しかし、関電側準備書面(3)でも指摘されているように、このような太平洋側の海溝型巨大地震は、若狭湾の原発群に直接大きな影響を及ぶすとは考えなくてもよいであろう。
一方、若狭湾の原発群にも大きな影響を及ぼす内陸地殻内断層地震の最大のものとしては、上記のとおり1891年の濃尾地震(M8.0)が知られているが、これは、高々130年の観測データから求められたものであり、それ以前の地震マグニチュードは、古文書に残されている震災記録から見積もられているが、記載漏れ等もあって、実際のマグニチュードが小さめに見積もられている可能性がある。1000年オーダーで考えれば、内陸地殻内地震のマグニチュードが8を超える可能性を否定することはできないはずなのである。

 既往最大

(1) 飛び石現象

原告の、1984年の長野県西部地震で報告されている飛び石現象では15000ガル以上の加速度が働いていたと考えられるとの主張(第2準備書面12頁)に対して、被告関電は、飛び石現象があったことを認めた上で、翠川ほか(1988)の論文を引用し、「このような現象は、地球の重力加速度の2倍(1960ガル)程度でも起こりうる」(関電側準備書面(3)136頁)と述べている。

この場合に、飛び石の最大の寸法は、33×28cm、高さ26cmで、重さ20~25kgと見積もられている。深さ16cmも土に埋まっていた大きく重たい石が、35cmも飛んだのである(図7)。

被告関電は、飛び石現象は「地震の揺れによって振動する際に相互に押し引きし合い、互いの振動に影響を与え合った」ことで生じたと主張するが、科学的に根拠のある合理的な説明とは到底言えない。

地表に浮いている石は、地球の重力加速度(980ガル)を超える地震加速度を受けると地上に跳び上がる。しかし、地中に埋まっている石が地上に跳び上がるためには、地球の重力加速度をはるかに超える地震加速度が働かなければならないはずである。

図7 1984年の長野県西部地震(M6.8)で見られた飛び石現象(黒磯・他、1985)。【図省略】

この現象は、M6.8の地震で、3km×1kmのごく狭い範囲に限られたピンポイント的な場所で見つかったことはあるとはいえ、埋まっていた20kgを超える石が飛びだして、30cm以上も飛んだということは紛れのない事実である。

関電は、この事実を説明するために、どれだけの大きさの地震加速度が働かなければならないかを実験的に解明する必要がある。それは、このような現象が大飯原発でも起こりうると考えれば、基盤にしっかりと固定された原子炉本体はともかく、敷地内の地表面に置かれた送受信施設や細部配管装置などが重大な被害を受けることになるからである。

福島第原発の過酷事故の際には、津波ではなく、地震の振動によって、送電線遮断機の2mを超える碍子部が落下したり、地震による液状化現象で送電線
(夜の森線1・2号線)の鉄塔が倒壊したりした。このような事故が、大飯原発では絶対に起こりえないという納得できる説明を求める。

被告関電が引用する論文においても、M6.8の長野県西部地震の震源近くで、少なくとも2000ガル程度の重力加速度が生じたとされている。そうだとすれば、大飯原発から至近距離で、FO-B~FO-A~熊川断層が連動した場合の長さ63.4km、マグニチュード7.8想定地震を考える際に、最大地震加速度を856ガルとしているのはおかしい。M6.8の地震の震源近傍で2000ガル程度の地震加速度を認めながら、7.8の地震で856ガル以上の地震加速度が生じないとしているのは矛盾している。

(2) 一関西で観測された4022ガル

原告の、2008年6月14日の岩手・宮城内陸地震の際、一関西で4022ガルが観測された旨の主張(原告第2準備書面12頁)に対して、被告関電は、地盤の増幅特性に差異があり本件発電所敷地に援用できないなどと主張している。

しかし、4022ガルの観測は、4000ガルまで測定できる計器で観測されているところ、4000ガルまで測定できる計器は、岩手・宮城内陸地震の数か月前に一関西に配置されたところであった。そして、4000ガルまで測定できる計器は、まだ20km間隔の三角網を目安に全国に1000点余りしか配置されていない。より大きなガルを観測できる計器が、より密に配置されてゆけば、一層大きな加速度が観測される可能性がある。現在の新規制基準は、発展途上にあり、まだまだ改善の余地があると考えるべきである。

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 基準地震動856ガルの策定の欺瞞性

原子力安全委員会が定めた原子力発電所の耐震設計審査指針は、2006年に改訂され、従来「基準地震動S1」と「基準地震動S2」の2種類の基準地震動を策定することとなっていたものが「基準地震動Ss」に一本化され、基準地震動の策定にあたって震源として考慮する活断層の活動時期の範囲が拡張されるとともに、基準地震動の策定方法も高度化された。「基準地震動Ss」は、震源を特定した「検討用地震」を選定して策定される「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」と国内外の観測記録をもとに策定される「震源を特定せず策定する地震動」とに基づいて策定されることとされた。

その後、2011年の福島第一原発事故を受けて、原子力安全委員会は原子力規制委員会に改組され、規制委員会は「新規制基準」を定めた。これに伴い、被告関電は、大飯原発の基準地震動をより保守的で厳しいものとなるように見直し、2013年7月の規制委員会への「大飯原発規制基準の適合審査」の申請に際しては、700ガルの「基準地震動」を提示した。

この時点で被告関電は、15kmの隔離を有しているFO-B~FO-A断層と熊川断層は連動しないと判断していた。しかしながら、その後の規制委員会の議論も踏まえて、FO-B~FO-A~熊川断層の3つの活断層が連動する可能性を認めたうえで大飯原発の「基準地震動」の値として、2013年12月に759ガルを提示した。
さらに関係者の間で検討を進めた結果、2014年5月には、この値を856ガルに見直した。

この値を求めるにあたって、被告関電は大飯原発敷地内で55ケースを詳しく検討したうえで、最終的にSs-1~Ss-19の基準地震動を求め、最大はSs-4ケースの856ガルと策定された。これは、規制委員会の定める「新規制基準」を十分満足しており、地震に対する安全性は確保されているという主張である。

2013年7月には、「基準地震動」として700ガルという有効数字が1桁の値が提示されていたが、2013年12月には759ガル、さらに2014年5月には856ガルと3桁の有効数字で「基準地震動」が示されるようになった。被告関電は、この間にいかに詳細な検討を行ったかということを示したかったものと推察されるが、基準地震動の策定過程を追跡すると、3桁の有効数字で表示されている856ガルという値そのものには、確たる根拠はないと判断される。

以下に被告関電が大飯原発の基準地震動として、856ガルの値を策定した過程を簡単に紹介した後、有効数字3桁の856ガルという値そのものに確たる根拠はないと判断した理由を述べる。

被告関電は、大飯原発の基準地震動を策定する過程で、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」と「震源を特定せず策定する地震動」を検討した結果、「震源を特定せず策定する地震動」はその影響が小さいと判断し、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」のなかでは、FO-B~FO-A~熊川断層の連動による63.4kmの断層と上林川断層の39.5kmによる地震の2つを検討用地震の基本ケースとして選定し、「応答スペクトルに基づく地震動評価」及び「断層モデルを用いた手法による地震動評価」で評価した。その結果、上林川断層の地震の影響は小さいとして、FO-B~FO-A~熊川断層の連動を考えた想定地震について、断層モデルを用いた手法による全55ケースを評価したという。

この際、「応答スペクトルに基づく地震動評価」では、評価の手順としては、「応答スペクトルに基づく地震動評価」を最初に試みて、岩盤における合理的な設計用地震動評価手法である「耐専式」(62頁の脚注100)を用いて評価しようとした。しかし、「この想定地震(M7.8)は等価震源距離が11.0kmであり,耐専式における『極近距離』に比べて著しく短いため、その地震動評価に耐専式を用いるのは適当ではないと判断した」(66頁)と書かれている。要するに「耐専式」は発電所敷地のごく近傍を地震断層が走る場合には基準地震動(最大加速度)を評価するのには使えないということである。

そこで被告関電は、「断層モデルを用いた手法による地震動評価」を試みている。
この手法では、断層長さ、断層上端・下端深さ、断層面積(S)、地震モーメント(Mo)、短周期レベル(A)、アスペリティ面積(Sa)、平均応力降下量(Δ、σ)、破壊伝播速度(Vr)等の震源特性に関する様々なパラメータ(震源断層パラメータ)を細かく設定して、55ケースを評価した。基本ケースとして、断層の上端深さ3km及び下端深さを18km、左横ずれ断層傾斜角90°、すべり角0°(すべりが断層面に対して水平方向を向く場合)、破壊伝播速度0.72β(βは地震発生層のS波速度)とし、アスペリティを各断層の主に敷地に近い位置に配置した震源断層モデルを設定したということである。また、断層傾斜角は、基本的に鉛直(90°)方向と考えていたが、断層傾斜角を西向きに75°とすると発電所敷地との距離が近くなり、より大きな地震動になるので、この断層傾斜角のケースも検討したが、最終結果に影響を及ぼさなかったということである。

ここで、短周期レベル(A)とは、震源特性のうち、短周期領域における加速度震源スペクトルのレベルを表す値(単位:N・m/S2(Nはニュートン))で、地震観測記録(観測波)から地震波の伝播特性及び地盤の増幅特性(サイト特性)の影響を取り除くことにより求められるという。また、アスペリティとは、断層面のなかで通常は強く固着しているが、地震時に大きな地震波(強震動)を発生させる領域の意味である。

このように、細部にわたる地震断層パラメータの数値の与え方には、かなりの任意性がある。被告関電は、専門家に依頼して、これらのパラメータを合理的に決めたということである。しかし、現在の学問レベルの認識から考えて、実際に目で見て確認することのできないこれらのパラメータにどんな数値を採用するかについては、専門家の間でも意見の分かれるところである。被告関電が採用したパラメータの妥当性を狭い範囲の専門家以外の人が評価するのは極めて困難であると言える。

いずれにせよ、被告関電は、膨大な量の計算結果を示したうえで、得られた最大加速度は、103頁の図表47[基準地震動Ss-1~Ss-19]に示されている19例のなかで、Ss-4ケースの水平方向(EW成分)が856ガルであったという。図表47からSs-4ケースだけを取り出すと下記のようになる【表省略】。

上記の表を見ると、856ガルという最大の地震加速度(基準地震動)が得られたのは、短周期1.5倍ケースで、破壊開始点を3とした場合であるということであり、短周期の地震動レベルを1.5倍としたのは、新潟県中越地震の知見を踏まえたものだと説明されている(72頁)。
この短周期の地震動レベルが1.4倍とか1.6倍でもよいとすれば、856ガルの最大加速度の少なくとも3桁目は変わってくるであろう。このことから考えても、856ガルと3桁の表示をしている基準地震動の信頼性は揺らいでくる。
このほかの断層パラメータについても数値の与え方に任意性がある。例えば、上の表では、破壊開始点3を採用しているが、破壊開始点の選定と断層傾斜角及びすべり角の選定の仕方によって基準地震動の値は変わってくる。破壊開始点3よりも大飯原発の敷地に近い破壊開始点4か5を選定し、断層傾斜角及びすべり角を変化させて計算を行えば、856ガルを超える基準地震動が得られる可能性がある。さらに、FO-B~FO-A~熊川断層の連動を考えた想定地震を図3に示すような3つの領域に分け、それぞれの領域をさらに細かい微小領域のメッシュに分けているが、どの部分がアスペリティ面積に入るかは、任意性がある。被告関電が仮定したアスペリティ面積が唯一解ではない。
いずれにせよ、断層パラメータの全ての数値を3桁以上の精度で確定するのは無理である。極言すれば、断層パラメータの数値の与え方によって、最大加速度はどんな値でも作りえる。
以上のことから、基準地震動856ガルの策定には多くの疑問があり、これを提示した被告関電の欺瞞性を断罪するものである。

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 大地震発生の可能性について

そして、国土地理院が1883~1994年の過去111年間の測量結果のデータを用いて明らかにしたところによれば、原告第2準備書面で述べたとおり、多くの活断層が見出されている近畿及びその周辺地域においては、ほぼ東西方向に年間1×10-7程度の割合で縮む方向のひずみ変化を示している。地殻内に約10-4のひずみが蓄積すると、地殻はそのひずみに耐えられずに破壊し、地殻内断層型地震が起こることになる。年間1×10-7の割合でひずみが蓄積すると、1000年で10-4に達するから、地域を限って考えれば、同じ場所で早ければ1000年に1度、地殻内断層型地震が繰り返することになる。図8に福知山-彦根間の10年間の基線長変化を示してある。この図は、近畿地方北部の平均的な地殻ひずみの進行状態を表すと考えてよい。

図8 福知山-彦根感の10年間の基線長変化(国土地理院のGPSデータによる)【図省略】

図8を見ると、2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震(M9.0)が起こるまでは、福知山-彦根間の基線長変化は、年間約1cm弱の割合で一様に縮んでいた。福知山-彦根間は、ほぼ東西に並んでいて、約100km離れている。
この2点(福知山と彦根)の間の距離が年間1cm縮むと、この周囲で10-7(1cm/100㎞)/年の割合でひずみが蓄積することになる。ところが、図8からわかるように、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の際に、福知山彦根間の基線長間の距離は、2cm近く延びた。この地震の後に近畿地方のひずみ変化のトレンドは小さくなったが、1年後くらいから再び縮みのトレンドが優勢になった。しかし、まだ地震前の10-7/年に近い縮みのトレンドには戻っておらず、地震前のトレンドに戻るまでにはあと2~3年はかかりそうである。

こうしてひずみが蓄積し、ひずみの蓄積が10.4に至れば地震が発生する。しかし、若狭湾岸地域で起きる次の地震が何年何月かは予知できないのである。

以上

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