◆原告第17準備書面
-「舞鶴市原子力災害住民避難計画」の概要と問題点-

原告第17準備書面
-「舞鶴市原子力災害住民避難計画」の概要と問題点-

2016年(平成28年)1月12日

原告第17準備書面[101 KB]

目次

第1 舞鶴市の避難計画の問題点
1 避難計画の策定
2 舞鶴避難計画の内容と問題点

第2 結論

 

本準備書面では、「舞鶴市原子力災害住民避難計画」の概要と問題点について述べる。

第1 舞鶴市の避難計画の問題点

 1 避難計画の策定

2013(平成25)年3月、舞鶴市防災会議によって、「舞鶴市原子力災害住民避難計画」(以下「舞鶴市避難計画」という(甲77号証))が策定された。

 2 舞鶴避難計画の内容と問題点

  (1)計画の対象範囲

舞鶴市避難計画は、計画の対象範囲としてPAZ(予防的防護措置を準備する区域:高浜発電所から概ね5km)とUPZ(緊急時防護措置を準備する区域:高浜発電所から概ね30km、大飯発電所から概ね32.5km の範囲)を定めており、舞鶴市全域の住民が対象となっている。

しかし、重点的に防災計画を定める地域を半径30km限定することに問題があることは、原告第6準備書面で主張したとおりである(45頁から47頁)[14 MB]【リンク先:「第3 避難計画の問題点 2.区域設定」以降】

  (2)避難等の指示と対応手順

舞鶴市避難計画は、避難時の指示と対応手順を(1)PAZの対応(2)UPZの対応(3)一部地域に限る場合の3つの場合に分けて定め、避難手段としてバス、自家用車等によるとしている。

PAZの対応としては、国の指示に基づき、府、市が直ちに避難の指示を出すとされており、UPZの対応としては、国が示す判断基準に基づき、国、府及び原子力事業者が行う緊急時モニタリング結果及びSPEEDIの拡散予測等により、国が判断し、府、市が避難等の指示を出すとされている。

しかし、SPEEDI自体、電源が無くなった場合、放出された放射線の種類・量を把握できず、放射性物質の拡散状況などの適切なデータ解析ができないものである。さらに、そもそもSPEEDIはあくまでもシュミレーションにすぎないのであるから、SPEEDIがあるからといって物質の拡散状況が確実に把握できるというわけではない。そして、そもそも国や事業者が迅速・的確な情報を伝達すること自体、何ら担保のないものである。したがって、住民が迅速的確な情報を得られる確実性が全くないことは明らかである。

  (3)避難にあたっての基本的な考え方

舞鶴避難計画は、避難にあたっての基本的な考え方として、避難対象範囲、避難手段、避難指示、避難先、避難者の把握方法について定め、避難先として、京都市内(65,000人)、宇治市(14,000人)、城陽市(6,000人)、向日市(4,000人)を指定している。

しかし、このような大多数の避難者の具体的な避難施設及び避難方法については、何ら定められておらず、「今後、関係市と調整の上、決定することとする」とされているに過ぎない。

実際に、避難が必要となった場合に、自家用車による避難は、渋滞、避難受入先に駐車可能な車両台数が少ないことにより現実的ではないこと及びバスによる避難もバス及び運転手の確保が困難であることは、原告第6準備書面において主張した(49頁から64頁)とおりである[14 MB]。【リンク先:「4.各原発周辺自治体における避難計画の問題点」以降】

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第2 結論

これまで提出した原告準備書面において主張してきたとおり、福島第一原発事故により、原発事故を防ぐことはできないこと及び事故により甚大な被害が発生することは明らかになった。

このことを考慮とすれば、事故後の段階である第5層の防護として、放射性物質が外部環境に放出されることによる放射線の影響を緩和するためにオフサイト(発電所外)での緊急時対応を準備するという措置を行うことは、原発再稼働の最低条件であると言わざるを得ない。

この点について、IAEA基準では、設計段階で、第5層の防護として、事故時の放射性物質による放射線の影響を緩和する緊急時計画を定め、それが実行可能であることが確認されなければならないとされている。
しかし、舞鶴市避難計画においては、的確な情報に基づいた現実的な避難方法は定められていない。

したがって、第5層すなわち放射性物質が外部環境に放出されることによる放射線の影響を緩和するため、オフサイト(発電所外)での緊急時対応を準備するという措置はなされておらず、IAEAの安全基準すら満たされていないのである。

以上