◆原告第20準備書面
第6 結論

原告第20準備書面
-基準地震動未満の地震による炉心損傷の具体的危険性- 目次

第6 結論

 1 結論1-炉心損傷の具体的危険

東京大学地震研究所纐纈一起教授は、外部電源喪失による事故の可能性を認めた福井地裁判決(甲91)に対して、地震学者の立場より、「700ガル未満の地震動が発生することはかなりの確率で起こり得ることであり,外部電源の設備がそれにより被災することは同じくかなりの確率で起こり得ることである。外部電源設備の被災は福島原発事故の原因のひとつであったことを考えれば,これをもって大飯原発が事故を起こす危険性があるとすることは科学的に妥当であるように見える。さらには,原子力規制委員会による新規制基準において,この問題に対して外部電源設備の重要度分類をSクラスに格上げするのではなく,Bクラス[17]のままで独立した2系統の外部電源を用意させるとしていることは適切ではないとこの判決では判断されていることになり,その判断は科学的に正しいように見える。」(甲274[110 KB]:「大飯原発運転差止判決における科学の問題」)と述べている。纐纈教授の見解は原告の主張に合致するものである。

本書面で説明したとおり、基準地震動未満の地震であっても、耐震Cクラスの複数の機器が同時に損傷することによる炉心損傷の具体的危険[18]が認められる。

[17] Cクラスの誤記と思われる
[18] 炉心が冷却できない場合の炉心溶融については訴状[1 MB]第3,1参照

 2 結論2-新規制基準の瑕疵

審査ガイドは耐震Sクラスの施設として、「(1)地震により発生する可能性のある事象に対して、原子炉を停止し、炉心を冷却するために必要な機能を持つ施設、…」を挙げている。
福島第一原発事故により外部電源の重要性が明らかになったにも関わらず、新規制基準が外部電源を耐震Cクラスとすることの問題点についてはすでに第5準備書面で述べたとおりである(上記纐纈論文も同旨)。

また、本書面にて詳述したとおり、非常用取水設備は崩壊熱の最終的な排熱のために必要不可欠な設備であるから、「炉心を冷却するために必要な機能を持つ施設」に該当し、Sクラスとして耐震性を審査されるべきである。しかるに、非常用取水設備を耐震Cクラスとして許容している点で耐震重要度分類に関する新規制基準には重大な瑕疵がある。

以上

トップページへ