◆原告第27準備書面
第1 高浜原発広域避難訓練の概要

原告第27準備書面
―高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点― 目次

第1 高浜原発広域避難訓練の概要

 1 2016(平成28)年8月27日、内閣府、3府県(福井県、京都府、滋賀県)及び関西広域連合による合同原子力防災訓練が実施された。なお、当該訓練の主要な内容が住民の広域避難訓練であったことから、本準備書面においては「高浜原発広域避難訓練」ないしは「本件訓練」との呼称を用いる。内閣府広報資料等による本件訓練の概要は以下のとおりである。

  1. 実施日:2016(平成28)年8月27日(土)
  2. 訓練対象施設:関西電力株式会社高浜発電所
  3. 参加機関:
    政府機関:内閣府、海上保安庁、防衛省、原子力規制庁等
    地方公共団体:福井県、京都府、滋賀県、関西広域連合、福井県高浜町、小浜市、おおい町、若狭町、京都府福知山市、舞鶴市、綾部市、宮津市、南丹市、京丹波町、伊根町、滋賀県高島市、福井県敦賀市、美浜町、越前市、鯖江市、越前町、京都府八幡市、兵庫県、兵庫県宝塚市、三田市、徳島県等
    原子力事業者:関西電力株式会社等
    関係機関:国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構等
  4. 実施場所:福井県庁、京都府庁、滋賀県庁、福井県高浜原子力防災センター、関西広域連合広域防災局(兵庫県庁)、福井県高浜町、小浜市、おおい町、若狭町、京都府福知山市、舞鶴市、綾部市、宮津市、京丹波町、伊根町、滋賀県高浜市、兵庫県宝塚市、三田市、丹波市等
  5. 訓練参加者(京都府広報発表より):防災業務従事者(政府機関、地方公共団体職員等)約2030人、住民約7000人(避難訓練約1200人、屋内退避訓練等約5800人)

 2 訓練の主な内容

(1)事故想定

2016(平成28)年8月27日、関西電力株式会社高浜発電所3号機が定格熱出力一定運転中、若狭湾沖における地震発生により外部電源が喪失し、原子炉が自動停止するとともに、全交流電源が喪失。その後原子炉冷却材が漏えいし、かつ非常用炉心冷却装置による注水不能により、全面緊急事態となる。さらに事態が進展し、放射性物質が放出され、その影響が発電所周辺地域に及ぶ。
(なお、4号機は地震発生により原子炉が自動停止した後、発生した直流電源系統の不具合を復旧し低温停止に移行し、安定となる。)

(2)主な訓練内容

  1. 災害対策本部の設置・運営等の初動対応訓練
  2. 施設敷地緊急事態及び全面緊急事態を受けた実動訓練(府県内外避難の実施)
  3. 避難退城時検査実施訓練及び安定ヨウ素剤配布訓練
  4. 避難先施設における受入訓練 等

(3)訓練のポイント

「高浜地域の緊急時対応」に基づく避難計画について、実効性の検証を行うとともに、訓練結果から教訓事項を抽出し、緊急時対応等の改善を図る。

福井県の住民が、京都府内に設置する避難退城時検査場所(綾部市)経由し、避難先である兵庫県(宝塚市、三田市)に避難する広域避難訓練の実施。
道路の寸断等の複合災害を想定した実働部隊等による住民避難等の実施。

 3 本件訓練のスケジュール

午前6時 地震発生(想定)
午前8時 訓練開始、施設敷地緊急事態(PAZ(5キロ圏内)要支援者避難要請)
午前8時10分 現地事故対策連絡会議(PAZ要支援者の避難実施方針の確認)
午前8時55分  全面緊急事態
午前9時  緊急事態宣言、PAZ住民避難・UPZ(30キロ圏内)屋内退避指示
午前9時10分  合同対策協議会(1)(PAZ住民の避難実施方針の確認)
~24時間経過後と想定~
午前9時35分  合同対策協議会(2)(OIL2(20ミリシーベルト毎時)超過対象区域の一時移転の実施方針の決定)
午前10時  OIL2超過対象区域住民の一時移転指示
午後2時  合同対策協議会(3)(住民の避難状況のとりまとめ)
午後3時  訓練終了、講評及び会見

 4 具体的な住民避難計画の内容(一部を抜粋)

(1)舞鶴市成生地区(PAZ圏に準じた避難を行う地域)住民(参加予定10名)
午前9時の緊急事態宣言とともに一時集合場所である成生漁村センターに集合し、船舶によって舞鶴西港に避難する。

(2)舞鶴市大山地区(PAZ圏内)在宅避難行動要支援者(参加予定5名)
午前9時の緊急事態宣言とともに、大山公民館にいる在宅避難行動要支援者を福祉車両を用いて放射線防護対策施設である大浦会館まで搬送する。

(3)舞鶴市大浦地区(UPZ圏内)住民(参加予定150名)
午前9時の緊急事態宣言から24時間(想定)の屋内退避を経て、翌日(想定)午前10時より地域の避難時集結場所である大浦小学校でヨウ素剤の配布を行い、バスで避難。丹波自然運動公園(京都府京丹波町)でスクリーニング検査と除染を受ける。

(4)宮津市上宮津地区(UPZ圏内)住民(参加予定110名、ただし広域避難は40名)
午前9時の緊急事態宣言から24時間(想定)の屋内退避を経て、翌日(想定)午前10時より地域の避難時集結場所である旧上宮津小学校でヨウ素剤の配布を行い、バスで避難。丹波自然運動公園(京都府京丹波町)でスクリーニング検査と除染を受けた後、そのうち一部の住民がさらにバスで八幡市民体育館へ広域避難する。

(5)福井県高浜町青郷・高浜地区(PAZ圏内)住民(参加予定80名)
午前9時の緊急事態宣言とともに、自家用車及びバスで丹波の森公苑(兵庫県丹波市)へ避難し、その後バスで宝塚市役所へ広域避難を行う。

(6)福井県高浜町和田地区(UPZ圏内)住民(参加予定45名)
午前9時の緊急事態宣言から24時間(想定)、保健福祉センターにて屋内退避を行い(地震による建物倒壊を想定)、翌日(想定)午前10時より保健福祉センターでヨウ素剤の配布を行い、バス及び自家用車で避難。あやべ球場(京都府綾部市)でスクリーニング検査と除染を受けた後、バス及び自家用車で丹波の森公苑を経て、三田市消防本部(兵庫県三田市)まで広域避難を行う。

(7)福井県おおい町本郷・佐分利地区(UPZ圏内)住民(参加予定40名)
午前9時の緊急事態宣言から24時間(想定)の屋内退避を経て、翌日(想定)午前10時よりふるさと交流センター等でヨウ素剤の配布を行い、バス及び自家用車で避難。あやべ球場(京都府綾部市)でスクリーニング検査と除染を受けた後、バス及び自家用車で丹波の森公苑まで避難する。

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