◆私たち原告の主張:ハイライト
 原発御三家の東芝,三菱重工,日立

大飯原発差止訴訟(京都地裁)原告第29準備書面の第3の2より。
(2017年2月13日第14回口頭弁論)

多額の損害賠償請求を受け、負の資産を押しつけられる日本企業

  (1)東芝の粉飾決算の原因は原発部門の不採算でありそれが原因で経営破綻寸前であること

◆東芝は2015年度に4600億円の赤字を計上した。この赤字計上は「日経ビジネス」という経済系の雑誌に粉飾決算を暴かれた結果であった。そして、東芝が粉飾決算に走ったきっかけは、すでに述べた、東芝が2006年に社運をかけて買収したWH社が収益を上げることができず、福島第一原発事故後にいよいよ不良資産化したことを隠ぺいするためのものだった。

◆しかし、同社は2015年度の経営再建で、原発部門を切り離して処分するのではなく、収益性の高く将来性も見込まれる医療機器部門を約7000億円で売却するなどして資金を捻出して乗り切った。

◆ところが、上述のように、WH社が買収したS&W社が巨額の損失を含んでいたことが発覚し、2016年度にさらに7000億円程度の損失が発生し、これにより数千億円規模の赤字を計上する見込みである。

◆同社は、主力であり、収益性が高く、将来性もある「メモリー半導体事業」を分社化して、株式の一部を売却することで債務超過を回避する計画である。同社は、海外の原発建設事業からの撤退も表明しはじめた。

◆素人目にも明らかであるが、東芝は、採算性・将来性の高い部門を次々に切り売りして、不採算部門であり、粉飾決算の元凶である原発部門を残そうとしている。先述のシーメンス社やGE社と比較しても、およそ常識的な経営判断を行えない状況になっている。

◆また、東芝の損失が建設中の原発の不採算から生じている以上、それらの原発の建設にさらに困難が生じれば、当然、損失は今後も拡大していくのであり、東芝の解体が現実的な課題となっている。

  (2)米国で7000億円の損害賠償請求を受けながらアレバの救済に乗り出す三菱重工

◆新規の原発建造が思うに任せない以上、原発製造部門の赤字構造自体は三菱重工も東芝と同じと推測せざるを得ないが、この点について、今のところ報道はない。

◆しかし、三菱重工は、すでに述べたように現状でも、米国の原発運営企業から7070億円の損害賠償請求を現実に受けており、巨額の損失につながる可能性がある。同じような問題が他の既存原発やこれから建設する予定の原発で起きる可能性もある。

◆また、三菱重工が仏アレバ社の救済に乗り出していることはすでに述べたが、今後、アレバが負債を拡大するほど、三菱がさらに救済に乗り出さなければならない可能性が出てくる。三菱重工によるアレバ社の救済自体が、東芝によるWH社の買収と似た構造を持っているのである。この点、三菱重工の出資と、中国企業の締め出しが表裏一体になっており、アレバが中国での新案件を受注できない構造に直結している。

  (3)日立の悲鳴

◆2017年2月1日、日立は、先述のGE社との合弁企業である米国の「GE日立ニュークリア・エナジー」がウラン燃料の濃縮事業から撤退するため、700億円の営業外損失を計上すると発表した

◆日立は、すでに述べたように、英国内で原発建設を手がけるホライズン社を買収した。同社がイギリスで建設する計画の「ウィルファ原発」は、二基で2.6兆円と見込まれる事業について、日本政府が政策投資銀行等を通じて1兆円を融資することとなっている。これでは、ほとんど、日本政府による日立の救済に近い。また、この原発についても、最初から経済性がないし、各種の援助・補助を踏まえても、ヒンクリーポイント原発と同様、事業の赤字化の危険性は常にあると考えるべきだろう。

◆このような中、実際、日立の社長が2016年10月27日に講演し、原発事業について「いつまでも不採算な状況では成り立たない。一緒にジョイント(提携)的な方向で考える方がいい」と述べた。記事には「国内の原発事業」と書いてあるが、海外で儲かっているのならトータルでは採算性に問題ないはずなので、結局、原発事業自体が大幅に赤字だと考えざるを得ないだろう。さらに、同じ講演で「ビジネスの負荷をどう軽減していくか、ジョイント(提携)の形などで全体を考えていく」とし、技術者不足といった課題を挙げた上で、再稼働や廃炉問題については「相当議論して方向性を出さないといけない」とも述べた。一方で、同社長は「原子力を手がけた企業として責任がある。事業をやめるとは言えない」(同記事)とも述べており、要するに、政府の政策が脱原発の方向に切り替わらないと、原発製造部門を切り捨てられないと言ったと評価せざるを得ないだろう。

◆実は、我が国の原発事業は、すでに、赤字化している核燃料事業から、切り離しと統合が始まっている。不採算だが捨てることもできない核燃料事業を統合しはじめたのである。国内三社の核燃料事業の切り離し・統合は、米国の「GE日立ニュークリア・エナジー」の核燃料事業からの撤退とも機を一にしている。

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