◆原告第33準備書面
行政文書紛失にかかる国に対する求釈明

原告第33準備書面[364 KB]

2017年(平成29年)4月10日

被告国に対する求釈明

原告らは、次回(5月9日)の口頭弁論において、活断層や活断層から発生する地震動を事前に想定できないことについて証拠とともに弁論する予定であるが、この点について、想定外の巨大な地震動が発生し、原発が大きく損壊し、いくつかの原子炉については、いまだにその修理が終わったという報告すらなされていない典型事例として「2007年中越沖地震」がある。

この地震の震源域については、地震前の2003(平成15)年6月、東京電力株式会社が旧原子力安全保安院の指示により作成し、原子力安全・保安院に提出した、柏崎刈羽原子力発電所海域活断層の評価に関する報告書(いわゆる「15年報告」)が存在する。

「15年報告」については、東京電力株式会社が2007年中越沖地震の後の平成19年12月21目付で作成し、原子力安全・保安院に提出したと思われる「平成15年に実施した柏崎刈羽原子力発電所海域活断層の再評価に関する調査結果について」で、その存在と旧原子力安全・保安院への提出が明記されている。引用すると同文書には以下のように書いてある。

(2)平成14年7月の原子力安全・保安院による海域活断層再評価指示から中越沖地震発生(H19.7.16)まで

(1) 平成14年7月、原子力安全・保安院から、当時行われていた北海道電力株式会社泊地点における安全評価において、褶曲を考慮したことを踏まえ、電力各社においても、海域活断層再評価を実施するよう口頭にて指示があり、当社は、自社の記録の再解析、地質調査所、石油公団から開示を受けた記録に基づく再解析等を実施し、F―B断層については、褶曲構造を考慮すると、20キロメートル(従来の認識は、最大8キロメートルの断層)の長さを有する活断層の可能性があるとの再評価を行った。

しかし、F―B断層が活断層であると仮定し、発電所敷地への地震動の影響について、当時の地震動を評価する標準的な方法である「大崎スペクトル」を用いた評価を行った結果、すべての周期帯において、重要な設備の設計に用いる基準地震動S2を、余裕を持って下回るものであったことから、安全上の影響はないと判断した。

当社は、以上の調査結果について、平成15年6月、原子力安全・保安院に書類で報告(以下、この報告を「15年報告」という)したが、新潟県、柏崎市、刈羽村、および地域の皆さまへの説明、さらにはプレスへの公表は行わなかった。

ところが、この「15年報告」について、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づき、原子力規制委員会に情報公開請求したところ「取得しておらず、保有していないため。」との理由で不開示決定が出た(平成28年12月26目付原規規発第1612262号[1 MB])。

そこで、解体前の原子力安全・保安院が所属していた資源エネルギー庁に同様の情報公開請求を求めたところ「保有していないため」との理由で不開示決定が出た(平成29年2月14日 20170116公開資第1号[2 MB])。

実際に発生し、原発が大きな損害を被った地震の直前の時期に、震源海域周辺の「活断層」について、発電事業者が行った検討結果の報告文書は、原発において将来発生する地震を、人類の現在の科学において予測可能であるか、ということを推認するためには、極めて証拠価値の高い文書である。

このような、証拠価値の高い文書が、客観的には、原子力安全・保安院と、原子力規制委員会によって、証拠隠滅されたに等しい状態になっているのが現状である。

そこで、被告国に対して以下の点の釈明を求める。

1「15年報告」を政府傘下にある東京電力株式会社から再度取得する等して、本件の証拠として提出されたい。

2 原発の安全性に関して、行政機関である原子力安全・保安院が発電事業者に対して報告を求めた件について文書で提出を受けた以上、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第2条2項の「行政文書」に該当すると思われるが、何故紛失したのか、経緯を説明されたい。

また、いずれにせよ、上記のような資料の紛失が判明しても、公に何の発表もせずに平気でいる原子力規制委員会は、東日本大震災前の原発行政の隠ぺい体質を何ら改善しておらず、原発について適正な規制などしようもないことは付言する。

以上