◆原告第37準備書面
-被告関電は大飯原発の地盤特性を把握していないこと-

2017年(平成29年)7月20日

原告第37準備書面
-被告関電は大飯原発の地盤特性を把握していないこと-

原告第37準備書面


目次

第1 2007年新潟県中越沖地震のメカニズムについて
1.2007年新潟県中越沖地震は想定外の地震であったこと
2.同地震が「想定外」になったことに関する東京電力の後付けの説明の内容

第2 大飯原発の地盤特性がほとんど把握されていないこと
1 陸域の反射法調査は地下500m位までしか反射面が確認されていないこと
2 海域については更に浅い範囲でしか把握されていない
3 地震波干渉法では低速度帯の存在が示唆されること

第3 まとめ


本書面は原告第34準備書面第35準備書面を踏まえた上、さらに、被告関西電力が大飯原発の地盤特性を把握していないことを述べるものである。

 


第1 2007年新潟県中越沖地震のメカニズムについて

 

 1.2007年新潟県中越沖地震は想定外の地震であったこと

2007年新潟県中越沖地震及びそれによる東京電力柏崎刈羽原発への被害については、すでに第34準備書面11頁以下で述べた。
要旨以下のことを述べている。

活断層が認識されていなかった海底で地震が発生したこと
地震後も海底の地震断層が発見されなかったこと
営業中の原子力発電所の構内で想定を遙かに上回る地震動が発生したことについて事前に原因を予測できなかったこと
その原因を後付けで探し出したこと
マグニチュード6クラスの地震でも原発の重要設備に深刻な損害が生じた可能性があり、10年が経過した現在も設備健全性に関する報告書が提出されていない原子炉が3つあること

 

 2.同地震が「想定外」になったことに関する東京電力の後付けの説明の内容

訴外東京電力は、同地震により柏崎刈羽原発に「想定外」の地震動が到達したことについて、下図のように3つの要因によって説明している。

東京電力「柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性向上の取り組み状況」より【図省略】

要因1:地震規模から推定される揺れが通常より大きかった(約1.5倍)
要因2:発電所周辺の地表から4~6kmの深部地盤の傾きにより波が同時集中した(約2倍)
要因3:発電所の地下2kmの敷地地盤の褶曲構造により1~4号機に波が集中した(約2倍)

これらの「要因」のうち2と3については、科学的に正確な調査をおこなうことも、再現性の検証を行うことも、少なくとも現代の文明社会の経済感覚、時間感覚では不可能であり、仮説の域を出るものではないというべきだろう。

そして、2007年の新潟県中越沖地震の前に作られたと思われる東京電力は、ホームページ上で、原発の「地震対策」として「揺れの少ない強固な岩盤上に建てています。」「原子力発電所の重要な機器・建物等は、表層の軟らかい地盤を取り除き、地震による揺れが小さい固い岩盤の上に直接固定して建設しています。岩盤上の揺れは、新しい年代の軟らかい地盤の揺れに比べ1/2から1/3程度になることが分かっています。」などと記載していた。この東京電力のページは、インターネット上のアーカイブサイトに保存されていたものであるが、現在の東京電力のホームページにはこのページは存在していない【図省略】。

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第2 大飯原発の地盤特性がほとんど把握されていないこと

いずれにせよ、仮説レベルのものであれ、発電所周辺の地表から4~6kmの深部地盤及び発電所の地下2kmの敷地地盤という地盤特性に原因が求められたのである。

 

 1 陸域の反射法調査は地下500m位までしか反射面が確認されていないこと

大飯原発については、原子炉周辺のA側線、B側線について、反射法地震調査が行われている(丙28号証「大飯発電所の基準地震動について」17~18頁)。A側線について丙28号証の17頁を図示すると以下の通りである【図省略】。

ここでは、そもそも、1500mまでの深さまでしか断面図が存在しない上、「地下500m位まで反射面が確認され、その範囲内では特異な構造は認められていない。」と記されている(傍点は原告代理人が付した【ここでは下線】)。

同号証18頁では、B側線についても同様の記載がみられる【図省略】。

この地下500m程度の範囲でも、特異な構造が認められることはすでに第34準備書面でのべたところであるが、被告関西電力は、地下500m位より深い場所については、そもそも反射法による地盤特性を把握していないことになる。

 

 2 海域については更に浅い範囲でしか把握されていない

また、関西電力は、FO-B、FO-A、熊川断層の連動の可能性の評価やFO-C断層の評価をするについて、周辺海域の反射法の調査を行っている様子が見てとれる(丙29号証20頁、丙50)。逆に言えば、その目的以上での調査はそもそも行っていないと思われる。

この点、丙29号証の関電職員の陳述書では20頁で以下のような断面図が示されており、FO-A断層の評価との関係でせいぜい地下122.5m程度までしか断面図が示されていない反射法の調査結果が示されている【図省略】。

また、丙50号証では、FO-C断層の評価との関係でせいぜい地下75mまでしか断面図が示されていない反射法の調査結果が示されている【図省略】。

その他、被告関西電力が本訴訟に証拠で提出していない、インターネット上で収集可能な資料を前提に善解しても、海域については、せいぜい、地下2~300mまでしか地盤特性が把握されていないうえ、原発周辺海域を網羅的に調査するものではない。

 

 3 地震波干渉法では低速度帯の存在が示唆されること

関西電力は、地震波干渉法による調査に基づく評価を地下4kmまで行ったとしているが、これが恣意的なものである上、地震波を増幅させる低速度帯の存在が示唆されることについては、すでに、第34準備書面で述べた。

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第3 まとめ

結局、2007年新潟県中越沖地震の前には、揺れの少ない強固な地盤の上に立っているはずだった柏崎刈羽原発は、実際に想定外の1699ガルの地震動に襲われ、大きなダメージを受けた。その原因は後付けで、地下4~6kmの周辺地盤、地下2kmの敷地地盤の特性に求められたが、これは仮説の域をでないものである。

仮にこの仮説を援用するにしても、関西電力は敷地及び周辺について、せいぜい地下500mまでの範囲でしか地盤特性を把握していないし、その範囲でも特異な地盤特性の存在が示唆されている。

そして、東京電力が2007年新潟県中越沖地震で問題にしたような、地下4~6kmとか地下2kmの地盤特性については、そもそもまともな調査すらされていない。

被告関西電力が、大飯原発の地盤特性を把握していないことは明らかである。
このような状態を「特異な地盤特性は存在しない」などと評価することは不可能であり、むしろ、自然界に多数存在する複雑な要因を発見できていないだけと考えるべきだろう。

以上

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