◆原告第39準備書面
第7 使用済燃料の貯蔵施設(甲369の146~167p)

2017(平成29)年10月27日

原告第39準備書面
-原子力規制委員会の「考え方」が不合理なものであること-

目次

第7 使用済燃料の貯蔵施設(甲369の146~167p)
1 使用済燃料の危険性
2 福島第一原発事故の教訓:使用済燃料の冠水状態が維持できない事態も生じ得ることを想定すべきこと
3 国会事故調報告書が指摘した技術的問題が解消されていないこと
4 原子力学会の提言
5 使用済燃料の貯蔵施設
6 使用済燃料貯蔵施設の不合理な耐震重要度分類
7 計装系をSクラスとすべきであること


第7 使用済燃料の貯蔵施設(甲369の146~167p)


 1 使用済燃料の危険性

(1) 「考え方」は,使用済燃料から放射線及び崩壊熱が発生していることには言及しているものの,どの程度の放射線が発生するかについて言及せず,また,崩壊熱は,時間とともに減少するとして,発電時に発生する熱との比較にしか言及していないため,使用済燃料から発生する放射線及び崩壊熱の危険性を十分に明らかにしていない。

(2) 原子炉の核エネルギーは,原子炉圧力容器の水を数分間で空にする程のペースで,毎時約5600トンもの蒸気をタービンへと送り出しているため,崩壊熱は,原子炉停止から1日後には0.5%,100日後には0.1%のように減少するが,元の値が膨大であるだけに,0.1%といっても依然かなりの発熱量に相当する[65]。この崩壊熱を除去しなければ,使用済燃料が損傷し,大量の放射性物質が放出されてしまうし,また,過熱によるジルコニウム火災の危険性も生じる。

原子力規制委員会の委員長に就任する前の田中俊一氏の講演においても(甲369の147p以下)[66]同氏は「原子炉停止から3日後でも1時間に8.3トンの水(100℃)を蒸発させるだけの熱(5.2MW)を発生」と崩壊熱の危険性について正面から言及していた。

下表は,国会事故調報告書が使用済燃料の取扱いに関する長期的配慮の必要性を示唆する数値として,2003年にMIT(マサチューセッツ工科大学)が発行した「The future of Nuclear Power」記載の情報をまとめたものである[67]

経過年数別の放射能量と崩壊熱,放射能毒性(PWR燃料1t当たり)【表省略】

「放射能毒性」とは,含有される毒物をどれだけの水量で希釈すれば飲用として使えるかという特性で,ここでは,1トンの使用済燃料に含まれている全ての放射性物質の希釈に必要な水量として表している。例えば,1トンの使用済燃料に含まれる放射性物質は,1000年後に琵琶湖の水で希釈してもまだ飲めない程である。

[65] 「国会事故調報告書」(WEB版)135頁

[66] 田中俊一「福島原発の現状について」4頁

[67] 「国会事故調報告書」(WEB版)136頁

(3) 上記のような使用済燃料から発生する放射線及び崩壊熱の危険性を十分に明らかにしないばかりか,崩壊熱について発電時に発生する熱との比較のみを行うことで崩壊熱の危険性は低いといった誤った印象を与えかねない「考え方」の記述は,妥当でない。


 2 福島第一原発事故の教訓:使用済燃料の冠水状態が維持できない事態も生じ得ることを想定すべきこと

(1) 「考え方」は,福島第一原発事故の教訓として,①事故発生時に外部電源が利用できなくなった際に使用済燃料プールの水位が把握できなかったこと,②使用済燃料貯蔵施設の補給水系が損傷した場合の代替手段が用意されていなかったことを挙げ,新規制基準がこれらの教訓を踏まえた要求をしていると述べるが,福島第一原発事故から学ぶべき教訓は,これらで足りるのであろうか。

(2) 福島第一原発事故では,4号機の使用済燃料プールの冷却機能が喪失し,当時の原子力委員会委員長であった近藤駿介氏が「強制移転を求めるべき地域が170km以遠にも生じる可能性や,年間線量が自然放射線レベルを大幅に超えることをもって移転を希望する場合認めるべき地域が250km以遠にも発生することになる可能性がある」として,東日本壊滅の危険性を指摘した,俗にいう「最悪シナリオ」を作成した[68]

米国NRCも,福島第一原発から50マイル(80.5km)の地点で99mSvの被ばくをするおそれがあるとして,在日米国人に対し,50マイル圏内からの脱出を呼び掛けた[69]

田中俊一氏も,使用済燃料プールの冷却機能が停止したため,崩壊熱によって冷却水が温められて蒸発し,燃料被覆管及びウラン燃料が溶けて核分裂生成物が放出され,重大な汚染が生じることを危惧していた[70]

[68] 近藤駿介「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」

[69] 田中俊一「福島原発の現状について」9頁,「国会事故調報告書」(WEB版)168頁

[70] 田中俊一「福島原発の現状について」7頁

(3) 上記のような悲観的推測が出た背景として,国会事故調報告書は,次の技術的理由を指摘している[71]

①使用済燃料プールに水位計がなく,テレビカメラによる状況確認もできなかったこと
②強い地震と爆発があったため,使用済燃料プールの損傷と漏えいを懸念するだけの理由があったこと
③放射線レベルに関する情報が,それ以前に発生した3号機の影響とも重なり,正しく分析し難かったこと
④ジルコニウム火災の現象に関する実験など過去の知見が充実しておらず,現実的な推測を行うための解析ツールも整っていなかったこと
⑤米国では既に運用されていた高熱量の使用済み燃料の市松模様配列が,日本ではまだ検討さえ始まっておらず,その結果,高熱量の使用済燃料が局所的に集中して配列されていた可能性が認識されていたこと
⑥米国では既に運用されていた「B.5.b」[72]への対策が,日本ではいまだ検討さえ始まっておらず,使用済燃料プールを外部水源で冷却する設備が設置されていなかったこと

[71] 「国会事故調報告書」(WEB版)168~169頁

[72] 「B.5.b」については「政府事故調最終報告書」325頁「NRCにおけるB.5.b」も参照されたい。

(4) 4号機の使用済燃料プールの冷却機能が喪失したにもかかわらず,結果的には使用済燃料の冠水状態が維持され,最悪シナリオが現実にはならなかった。この点に関し,「考え方」は,「なお,実際には使用済燃料貯蔵槽からの水の喪失には至っていない」と結論を述べるのみで,理由には触れていないため,確認する。

4号機は,2011年3月11日当時,定期検査中で,使用済燃料プールに隣接する原子炉ウェルと呼ばれる場所に普段はない水が入れられていたため,この原子炉ウェルの水が意図せざる仕切り壁のずれでできた隙間を通って使用済燃料プールに流れ込んだと考えられている。さらに,当初のスケジュールでは,同月7日までに原子炉ウェルの水抜きを完了する予定であったが,工期の遅れにより原子炉ウェルに水が張られていた状態で同月11日を迎えたという偶然も重なったことが明らかになっている[73]。また,4号機建屋で水素爆発が起きたにもかかわらず使用済燃料プールの保水機能は維持されたが,爆発の規模や場所が異なることなどにより使用済燃料プールの損壊の規模がさらに激しかったときは,冷却水が保持できず,危険な状況となっていた可能性もある[74]甲369[4 MB]の150p以下、特に151pの図)。

このように福島第一原発事故では,僥倖といえる程に偶然に偶然が重なったことで使用済燃料が冷却されたのであり,東日本壊滅という最悪シナリオが現実のものになる危険性も十分にあった。

[73] 奥山俊宏「震災4日前の水抜き予定が遅れて燃料救う福島第一原発4号機燃料プール隣の原子炉ウェル」

[74] 「国会事故調報告書」(WEB版)124頁

(5) 上記福島第一原発事故において実際に生じた事実ないし生じるおそれがあった事実に鑑みれば,福島第一原発事故から学ぶべき教訓としては,まず,使用済燃料ないし使用済燃料プールの危険性を十分に認識しなければならないということである。このような教訓は,改めて論じるまでもないことのようにも思えるが,福島第一原発事故以前に使用済燃料ないし使用済燃料プールの危険性がクローズアップされる機会は,多くなかった。

この点に関し,憂慮する科学者同盟のエドウィン・ライマン氏の知見(甲369の152,158pなど)も参照されたい[75]

[75] エドウィン・ライマン「日本における使用済み燃料貯蔵の安全性とセキュリティー」(「科学」2015年12月号)1191頁

(6) では,福島第一原発事故から学ぶべき教訓としては,使用済燃料ないし使用済燃料プールの危険性を十分に認識した上で,どのような対策が規制上要求されるべきであろうか。

上記のとおり福島第一原発事故において実際に生じた使用済燃料の冷却機能の喪失という事実及びこれにより生じるおそれがあった壊滅的な被害に鑑みれば,使用済燃料の冷却に関する合理的な対策はすべて,規制上要求されるべきである。とりわけ,上記のとおり福島第一原発事故において生じるおそれがあった使用済燃料の冠水状態が維持できない事態及びこれにより生じるおそれがあった壊滅的な被害に鑑みれば,使用済燃料の冠水状態が維持できない事態も生じ得ることも想定した合理的な対策が規制上盛り込まれていなければ,かかる規制基準は不合理というほかない。

ページトップへ


 3 国会事故調報告書が指摘した技術的問題が解消されていないこと

(1)前記2(3)記載の国会事故調報告書が指摘した技術的問題について,新規制基準の要求等によって解消されているか否かを検討する。

①使用済燃料プールに水位計がなく,テレビカメラによる状況確認もできなかったこと
②強い地震と爆発があったため,使用済燃料プールの損傷と漏えいを懸念するだけの理由があったこと ×
③放射線レベルに関する情報が,それ以前に発生した3号機の影響とも重なり,正しく分析し難かったこと

④ジルコニウム火災の現象に関する実験など過去の知見が充実しておらず,現実的な推測を行うための解析ツールも整っていなかったこと ×
⑤米国では既に運用されていた高熱量の使用済み燃料の市松模様配列が,日本ではまだ検討さえ始まっておらず,その結果,高熱量の使用済燃料が局所的に集中して配列されていた可能性が認識されていたこと ×
⑥米国では既に運用されていた「B.5.b」への対策が,日本ではいまだ検討さえ始まっておらず,使用済燃料プールを外部水源で冷却する設備が設置されていなかったこと

(2) 上記①及び③について,新規制基準は,外部電源が利用できない場合においても,使用済燃料プールの温度,水位等の状態を示す事項を監視することができるものとすることを要求しているが,使用済燃料プールの計装系の安全重要度分類及び耐震重要度分類は,最低クラスに据え置かれたままとなっている。

このことは,基準地震動以下の地震動により使用済燃料プールの計装系が機能喪失し,使用済燃料プールの温度,水位,放射線レベル等の状態を把握することすらできなくなる事態が生じることを意味する。

この点に関し,国会事故調報告書は,福島第一原発事故では,電源喪失による計装系の機能喪失が大きな問題であったが,仮に電源があっても炉心溶融後は,設計条件をはるかに超えており,計測器そのものがどこまで機能するか,既設原発での計器類の耐性評価を実施し,設備の強化及び増設を含めて検討する必要があると指摘している[76]

福井地裁2015年4月14日高浜原発3・4号機運転差止仮処分決定も,事故時の事態の把握の困難性から,使用済燃料プールの計測装置がSクラスであることが必要だとし,使用済燃料プールの計測装置の耐震クラスをCクラスとしている新規制基準は,緩やかにすぎ,合理性を欠くと判示している[77]

[76] 「国会事故調報告書」(WEB版)104頁

[77] 44~45頁

(3) 上記②について,新規制基準の地震対策に係る要求事項が不十分であることや,使用済燃料プールが堅固な施設に囲い込まれていないことからすれば,使用済燃料プールの損傷と漏えいの懸念は解消されていない。

(4) 上記④について,福島第一原発事故後においても,ジルコニウム火災の現象に関する実験など過去の知見が充実しておらず,現実的な推測を行うための解析ツールも整っていない状況に変わりはない。

(5) 上記⑤について,米国NRCの命令「B.5.b」は,使用済燃料の使用済燃料プールにおける燃料配置について,崩壊熱の高い新しい使用済燃料と古い使用済燃料の配置を市松模様状に配置することを要求しているところ,前記のとおり福島第一原発4号機では,このような運用がなされていなかったため,壊滅的な被害が生じるという悲観的観測がなされ,国会事故調も,この市松模様状の配置の導入を提言しているにもかかわらず[78],新規制基準は,これを要求していない。

これは,使用済燃料の冠水状態を常に維持できるという前提の下で要求していないものと考えられるが,前記のとおり福島第一原発事故において生じるおそれがあった事実に鑑みて,使用済燃料の冠水状態が維持できない事態も生じ得ることを想定した合理的な対策も規制上要求されるべきであり,とりわけ使用済燃料の市松模様状の配置のように新たな設備を設置することなしに実行可能な運用すら要求しない新規制基準は,不合理というほかない。

[78] 「国会事故調報告書」(WEB版)124頁

(6) 上記⑥について,新規制基準は,代替注水設備として可搬型代替注水設備を配備することなどにより,使用済燃料の冠水状態を維持することを要求している。
このような可搬式設備の配備は,安全性を向上させるものではあるが,人為的な作業を伴うため,不確実性が高い。人為的な作業の不確実性が明らかになった福島第一原発事故の教訓を踏まえれば,使用済燃料プールを外部水源で冷却する可搬式設備とともに人為的な作業を伴わない「恒設設備」の設置も要求すべきである。

ページトップへ


 4 原子力学会の提言

(1) 原子力学会は,2011年5月9日,福島第一原発事故から教訓を得て,世界で稼働中の原発で同じような事故を二度と起こさないようにするため,「福島第一原子力発電所事故からの教訓」という提言をまとめ,この提言の中で,使用済燃料プールの冷却に対する教訓として,a「使用済み燃料貯蔵プールの冷却に失敗した」,b「建屋が破損した後の使用済み燃料の閉じ込めに課題がある」として,5つの提言を行った[79]。(甲369[4 MB]の156p)

しかし,これらのうち、短期的な2つの提言すら実現されたといえないことは前記3(2)及び(6)記載のとおりである。中期的提言はいうまでもない。

[79] 一般社団法人日本原子力学会「福島第一原子力発電所事故からの教訓」9頁


 5 使用済燃料の貯蔵施設

(1) 「考え方」は,「崩壊熱は原子炉の停止後,時間とともに減少するものであり,使用済燃料を炉心から取り出し,使用済燃料の貯蔵施設へ移動する段階では原子炉の停止から数日経過しているため,崩壊熱はかなり小さくなっている」と述べ,使用済燃料の貯蔵施設が堅固なものでなくてよいと強弁する。

しかし,前述のとおり原子炉の核エネルギーは,原子炉圧力容器の水を数分間で空にするほどのペースで,毎時約5600トンもの蒸気をタービンへと送り出しているため,崩壊熱は,原子炉停止から1日後には0.5%,100日後には0.1%のように減少するが,元の値が膨大であるだけに,0.1%といっても依然かなりの発熱量に相当する。この事実に触れずに原子炉停止時の熱との比較のみに言及することにより使用済燃料の崩壊熱は小さいという誤った印象を与えかねない「考え方」の記述は,事実を述べないものである。

(2) さらに「考え方」は,「使用済燃料は放射性物質を閉じ込める役割を果たす燃料被覆管の健全性を維持するために使用済燃料の冠水状態の維持を行い,崩壊熱を除去すれば,放射性物質が放出されるような事態は考えられないため,原子炉容器,原子炉格納容器のような耐圧性を有する施設として設計することまでは必要ではない」と述べる。

これは,裏を返せば,使用済燃料の冠水状態を維持できなくなれば,崩壊熱により燃料被覆管の健全性が維持できなくなり,大量の放射性物質が放出されること,新規制基準は,使用済燃料の冠水状態が維持できなくなることを想定していないことを認めているということである。

(3) そうであれば,また福島第一原発事故において生じ得た壊滅的な被害に鑑みれば,使用済燃料の冠水状態が維持できない事態も生じ得ることを想定した対策が規制上要求されないのは不合理である。

(4)さらに,新規制基準は,「トルネード・リリーフ・ベント」の設置を要求していないため,建屋の上を竜巻が通過した場合には,その時急激に生じる大きな差圧のため屋根が破壊されてしまうおそれがあるし[80],また,竜巻による飛来物が建屋の屋根や外壁を貫通して使用済燃料プールに侵入することも許容するものとなっている[81]

[80] 「国会事故調報告書」(WEB版)204頁

[81] 関西電力株式会社「高浜3号炉および4号炉竜巻影響評価について」42,46,56頁等

(5) 上記のとおり福島第一原発事故において生じるおそれがあった使用済燃料の冠水状態が維持できない事態及びこれにより生じるおそれがあった壊滅的な被害に鑑み,使用済燃料の冠水状態が維持できない事態も生じ得ることを想定すべきこと,原発の安全確保の最も主要な部分は,核分裂生成物の拡散を防止するための壁の健全性をいかにして維持するかであるところ,使用済燃料は,原子炉内の燃料よりも核分裂生成物を遥かに多く含むこと,格納容器に外部からの不測の事態に対する防護機能も期待されていることからすれば,使用済燃料を堅固な施設によって囲い込むという対策は,合理的であり,規制上要求されるべきである。

福井地裁2015年4月14日高浜原発3・4号機運転差止仮処分決定も,使用済燃料も原子炉格納容器の中の炉心部分と同様に外部からの不測の事態に対して堅固な施設によって防御を固められる必要があるとし,かかる規制を行っていない新規制基準は,緩やかにすぎ,合理性を欠くと判示している[82]

[82] 39~45頁

ページトップへ


 6 使用済燃料貯蔵施設の不合理な耐震重要度分類

「考え方」によると,使用済燃料プールに関しては,自ら放射性物質を内蔵していることを根拠に,補給水設備については,その安全機能を維持するために必要であることを根拠に,それぞれSクラスと分類する。その一方で,使用済燃料プールの冷却系(以下「冷却系」という。)については,その機能を喪失したとしても,補給水設備により水が補給できれば不都合がないことを根拠に,Bクラスに分類する。

つまり,プール及び補給水設備については,高度の信頼性を要求するのに対し,冷却系については,そのような高度の信頼性を要求しない。

しかしながら,補給水設備も冷却系も,どちらも使用済燃料プールを冷却してその安全機能を維持するために重要な設備であり,深層防護の観点からはいずれもSクラスとするべきである。

福島第一原発事故の際には,使用済核燃料プールの冷却機能も補給水機能も喪失し,東日本を壊滅させるような事態に発展することが懸念された[83][84][85]。そのようなリスクの甚大さを考えれば,冷却系をSクラスとすることは僅かなコストといえるのであり,新規制基準は不合理である。

[83] 近藤駿介「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」

[84] 田中俊一「福島原発の現状について」7頁,9頁

[85] 「国会事故調報告書」(WEB版)168頁


 7 計装系をSクラスとすべきであること

福島第一原発事故の際に前記のような悲観的推測が出た原因として,国会事故調査報告書は,使用済み燃料プールに水位計がなく,テレビカメラによる状況確認もできなかったことを指摘している[86]

新規制基準は,外部電源が利用できない場合においても,使用済み燃料プールの温度,水位等の状態を示す事項を監視することができるものを要求しているが,耐震重要度分類に関しては,最低クラスに据え置いて,高度の信頼性と安全性を要求していない。新規制基準では,基準地震動以下の地震により,使用済み燃料プールの温度,水位等を把握することすらできなくなってしまう事態を想定しているということになるが,そのことは地震時(それも基準地震動以下の)における壊滅的な事態を引き起こしかねないものである。

[86] 「国会事故調報告書」(WEB版)168~169頁

ページトップへ