◆ 原告第42準備書面
―原発以外では政府が地震の予測不可能性を前提に最大クラスの巨大な地震・津波を想定して災害対策をしていること―

原告第42準備書面
―原発以外では政府が地震の予測不可能性を前提に最大クラスの巨大な地震・津波を想定して災害対策をしていること―

2018(平成30)年1月12日

原告第42準備書面

目 次

1 原発以外の政府の政策は地震の予測ができないことを前提にあらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波を想定し、それに対する対策を事前に取る方向に変わってきていること
2 大規模地震対策特別措置法(昭和53年)
3 地震防災対策特別措置法(1995年)
4 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成25年)
5 政府の調査部会が地震が予測不可能であることを認めたこと
6 まとめ



1 原発以外の政府の政策は地震の予測ができないことを前提にあらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波を想定し、それに対する対策を事前に取る方向に変わってきていること

すでに原告が主張しているように、1995(平成7)年1月17日の兵庫県南部地震(M7.3)のあと、2016年4月の熊本地震(M7.3)の直前までの約20年間に、M7以上の内陸の地殻内断層地震は、2000年に鳥取県西部地震(M7.3)、2005年に福岡県西方沖地震(M7.0)、2008年に岩手・宮城内陸地震(M7.2)、2011年福島県浜通り地震(M7.0)と、5~3年間隔で広範囲な地域でバラバラと起こった。これらの地殻内断層地震の明瞭な前兆的ひずみ変化は国土地理院の電子基準点の観測データを見ても検出されなかった。2016年4月の熊本地震(M7.3)のあと、次に日本でM7クラスの地殻内断層地震がどこに起きるかは、地震学者でも全くわからない。若狭湾・近畿地方かも知れないし、首都圏かも知れない。既存の活断層だけに注目していてはならないのである。

このような学術的知見の進歩に合わせて、我が国の行政の上でも、大規模地震に対する対策は、直前に予知可能で、それを前提に対策を取ればよい、という方向性から、地震の規模や時期の予測はできず、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波を想定し、それに対する対策を事前に取る方向に、変わってきたのである。以下、2017(平成29)年9月に政府が発表した「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応のあり方について(報告)」(甲381)をもとに、このような法制度、行政施策の変化の状況を述べる。

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2 大規模地震対策特別措置法(昭和53年)

南海トラフ(駿河湾から四国の南方の海まで伸びる海底の4000m級の溝)沿いの大規模地震に関しては、昭和50年代前半に駿河湾周辺を震源域とする東海地震の切迫性が高いことが指摘され、地震の直前予知が可能であるとの考えの下、地震予知情報に基づく警戒宣言の発令後にあらかじめ定めておいた緊急的な対応を的確に実施することで被害を軽減する仕組みを主要な事項とする大規模地震対策特別措置法(以下、「大震法」という。)が1978(昭和53)年に施行された。

<南海トラフの概要および南海トラフでの地震の発生状況> 【図省略】

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3 地震防災対策特別措置法(1995年)

しかし、1995(平成7)年に発生した阪神・淡路大震災では、1項で述べたように、地震の予測は全くできなかった。犠牲者のうちの8割以上が住宅倒壊等による圧死であり、特に1981(昭和56)年の建築基準法施行令改正前の木造建築物の被害が大きかった。

この教訓を踏まえ、大規模地震が全国どこでも起こり得ることを前提に、平成7年に「地震防災対策特別措置法」が制定され、全都道府県における「地震防災緊急事業五箇年計画」の策定や、この計画に基づく事業に係る国の財政上の特別措置により、地震防災施設等の整備などの地震防災対策を推進することとなった。

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4 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成25年)

2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災は、それまでの想定をはるかに超える巨大な地震・津波により一度の災害で戦後最大の人命が失われるなど甚大な被害をもたらした。このため、南海トラフ沿いで発生する大規模地震対策を検討するに当たっては、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波」を想定することが必要になった。

これらを踏まえ、いかなる大規模な地震及びこれに伴う津波が発生した場合にも、人命だけは何としても守るとともに、我が国の経済社会が致命傷を負わないようハード・ソフト両面からの総合的な対策の実施による防災・減災の徹底を図ることを目的として、平成25年に東南海・南海法を改正する形で、南海トラフ全体を対象とした「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」(以下、「南海トラフ法」という。)が制定され、科学的に想定し得る最大規模の地震である南海トラフ巨大地震も対象に地震防災対策を推進することとされた。

この法律により、南海トラフ地震により著しい被害が生ずるおそれのある地域が南海トラフ地震防災対策推進地域として指定され、同地域においては、大震法や東南海・南海法と同様に、国、地方公共団体、関係事業者等が、調和を図りつつ自ら計画を策定し、それぞれの立場から予防対策や、津波避難対策等の地震防災対策を推進することとされた。

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5 政府の調査部会が地震が予測不可能であることを認めたこと

このようななか、平成25年にとりまとめられた政府の「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」の下に設置された「南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する調査部会」(以下、「平成25年調査部会」という。)の報告において、「現在の科学的知見からは、確度高い地震予測は難しい。」(甲381の14頁)とされた。ここで「地震予測」とは「確度の高い地震の予測」とは、地震の規模や発生時期を確度高く予測すること」とされ、前述の「予知」を含む概念とされた。

さらに、平成29年、政府の「南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する調査部会」において、近い将来発生が懸念される南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性について最新の科学的知見を収集・整理して改めて検討した結果、「現時点においては、地震の発生時期や場所・規模を確度高く予測する科学的に確立した手法はなく、大規模地震対策特別措置法に基づく警戒宣言後に実施される現行の地震防災応急対策が前提としている確度の高い地震の予測はできないのが実情である。」(甲381の15頁)と、とりまとめられた。

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6 まとめ

このように、現在、行政や民間の地震防災一般は、震の予測は不可能であることを前提に「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波」を想定したものになってきている。この理は、内陸型地震である阪神淡路大震災を契機として全体の知見が進んだように、海溝型の地震でも、内陸型の地震でも、異ならない。

このようななか、原発の耐震設計については、依然として、原発の敷地に襲来する地震動を事前に予測可能であることを前提とし、特定の「活断層」が発生させる地震動を予測する方針が採られている。
絶対の安全性を求められる原発について、特定の「活断層」を前提とし、かつ、そこから発生する地震動を予測可能とする、すでに覆された前提を墨守する考えは、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波」、すなわち地震動について言えば、少なくとも我が国の観測史上最大の地震動を想定する考え方に反し、不合理と言うほかないだろう。

以上

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