◆原告ら第44準備書面
地域特性の補充

原告ら第44準備書面
地域特性の補充

2018年(平成30年)1月12日

原告第44準備書面

目 次

1 はじめに
2 PS検層
3 試掘坑弾性波探査
4 反射法地震探査について
5 単点微動観測
6 地盤の地震波減衰構造と地震波増幅率
7 速度構造と破砕帯の関係
8 調査が表層部にとどまること
9 被告関電は主張を裏付ける根拠資料を提出しておらず主張立証責任を果たしていないこと
10 まとめ



1 はじめに

原告らは、これまで各地の原発で基準地震動を超える地震が繰り返し起きてきたことを指摘し、その原因は基準地震動が「平均像」に基づいて策定されていること、従って、これからも基準地震動を超える地震の発生する危険があると主張している。

これに対して、被告関電は、基準地震動が「平均像」に基づいて策定されていることを認めながら、大飯原発の地域特性を十分に把握しており、その地域特性に照らせば基準地震動を超える地震発生の可能性を否定できると反論している。このように地域特性は、被告関電の地震動に関する主張を支える柱に位置付けられている。

この被告関電の地域特性の主張に対して、原告らは、第35及び37準備書面で、被告関電の地域特性に関する主張の問題点を明らかにした。
即ち、被告関電は、地域特性のうち①震源特性と②伝播特性について具体的な主張立証をしていない。被告関電は、③地盤の増幅特性(サイト特性)について、地下構造には特異な構造は認められないと主張をしているが、基準地震動が小さくなる方向で調査結果の無視、恣意的な解釈がおこなわれており、特異な構造は認められないとは到底言えないと批判した(甲357、意見書「大飯発電所の基準地震動の策定における問題点 -地盤の速度構造(地盤モデル)について-」赤松純平)。

被告関電は、原告らのこの指摘に反論しないままであるが、原告らは、赤松純平元京大助教授作成の意見書「大飯発電所基準地震動策定における問題点―地盤構造モデルについて―」[1](甲422)にもとづき、以下のとおり主張を補充する。

[1]

甲357「大飯発電所の基準地震動の策定における問題点―地盤の速度構造(地盤モデル)-」2017年4月17日付 略称『赤松意見書(第1次)』 被告関電の丙28「大飯発電所の基準地震動について(平成27年1月)」を検討批判した意見書。
甲422「大飯発電所基準地震動策定における問題点―地盤構造モデルについて―」2018年1月8日付 略称『赤松意見書(バージョンアップ版)』 丙28の他、平成29年11月1日弁論期日で取調べられた以下の被告関電提出証拠を検討批判した意見書。
丙178「大飯発電所発電用原子炉設置許可申請書(3、4号炉完本)」(平成29年5月作成)の添付資料六「変更に係る発電用原子炉施設の場所に関する気象、地盤、水理、地震、社会環境等の状況に関する説明」
丙179「大飯発電所地震動評価について(平成28年2月19日)」
丙196「大飯発電所の地盤モデルの評価について(平成26年3月5日)」

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2 PS検層

(1)PS検層とは、ボーリング孔の中に地震計(受震器)を設置して、人為的に震動を起こし(起震器)、受震器で振動を観測して震動の伝わる時間から、深さ毎の地震波の伝播速度を測定する方法である。

(2)被告関電は、4号炉と3号炉敷地におけるPS検層結果から「ほぼ均質な地盤と考えられ」、「敷地内の浅部構造に特異な構造は見られない」と主張している。これに対して、原告らは第35準備書面で、低速度層が、地表付近と深度100m前後付近に認められ、「ほぼ均質な地盤」と言えないこと、②PS検層は4号炉と3号炉の敷地のデータが示されているが、2号炉と1号炉の敷地のデータが示されていないが、2号炉と1号炉の敷地は、4号炉と3号炉の敷地と比べて、さらに地震波伝播速度が低いと考えられ、不開示は問題であることを指摘して批判した。

(3)地盤が均質でない
地盤が均質でないことについて補充する。

PS検層結果を分析すると、①O1-11孔とO1-3孔とでは速度構造が異なる、②低速度層が挟在する、③深度60mまでで1.17~2.44km/sと地震波伝播速度に2倍以上の違いがあることから、「ほぼ均質な地盤」であるとか、「浅部構造に特異な構造がない」とは到底言えない。

図2【図省略】

(4)低速度帯が東に拡がる
西から東に向けて地震波伝播速度が低くなっていることが、PS検層からも明らかであるので、補充する。

4号炉と3号炉の敷地の4つのボーリング孔の深度60mまでで観測された地震波伝播速度(Vs)は、下記の図に書き込んだとおり、西側で高く東側で低いことが明らかである。

図1【図省略】

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3 試掘坑弾性波探査

 (1)試掘抗弾性波探査とは

「試掘坑弾性波探査とは、原子炉敷地に横穴(試掘坑)を掘り、適当な間隔で地震計を置き、別の場所で発破や起震器などで人為的に震動を起こして、震動の伝わり方を測定して弾性波(地震波)の伝わる速さ(伝播速度)を調べるものである。一本の坑道内では地震計は直線上に配置する(測線)。①この測線上やその延長線上で振動を与える屈折法探査と、②測線から離れた別の坑道内で振動を与える試掘坑内坑間弾性波探査(ファン・シューティング)があり、これらを組み合わせて岩盤の地震伝播速度を推定する」ものである(原告ら第35準備書面p6)。

 (2)原告らのこれまでの主張

原告らは、第35準備書面で、屈折法探査において、被告関電が「大飯発電所の基準地震動について」(丙28)で、本件原子炉敷地の地震伝達速度を過大に評価することで、地震動を過小に評価していることを明らかにして批判した(「大飯発電所の基準地震動の策定における問題点」甲357)。

地震伝播速度を実際より大きく評価して地震動を小さく見せようとしている【表省略】

 (3)試掘坑内坑間弾性波探査(ファン・シューティング)

ファン・シューティングの結果を踏まえて批判を補充する。

丙28は、試掘坑弾性波探査について、屈折法探査の結果だけを掲載しておりファン・シューティングの結果を掲載していなかった。そのため、原告ら第35準備書面はこの屈折法探査結果だけを分析して批判した。ファン・シューティングの結果が、丙178の添付資料六の第3.5.114図として掲載されていることから、これに基づく批判を補充する。

起震器の設置場所は以下の図の扇の要箇所である。

図5 【図省略】

図6(1)がファン・シューティングの結果図であり(4つのうちの一つ)、起震器から放射状に描かれた線と試掘坑の交点に受震器が設置されており、放射状に描かれた線の中途の円弧状の空白部分に描かれている折れ線グラフが各放射状に描かれた線で測定された地震波速度である(km/s)。

図6(1)【図省略】

4つのファン・シューティングに記録されている全ての観測データから、一本ずつ速度を読み取って、場所毎に平均して地震波速度を算出して図化したものを以下に引用する。

図10【図省略】

被告関電は、上記のとおり、P波について、地震伝播速度を4.6km/sとして地震動を評価している。しかし、3号炉の敷地の過半は地震伝播速度の平均が4km/sを下回っており、平均速度が3.7km/sの地盤が拡がっている。

さらに、これら速度値は平均値であり、実際には3.7km/sを下回る速度値が少なからず観測されている。

図7【図省略】

被告関電の地震伝播速度の評価が著しく過大で、そのため地震動が著しく過小に評価されている。

上記のとおり、4号炉と3号炉敷地の地盤の地震波速度は、西から東方向に急激に低下し、さらに3号炉直下に東から低速度帯が延びている。3号炉の東には、2号炉、1号炉の敷地が続いているが、反射法地震探査が実施されず、観測データが明らかにされていないままである。上記のとおり、この問題は放置することが許されない。

以上、ファン・シューティングの結果は、第35準備書面で指摘した原告らの主張の正しいことを一層明瞭にした。

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4 反射法地震探査について

 (1)反射法地震探査

反射法地震探査とは、起震した地震波の地下の不均質構造による反射波を多数の地震計で測定して地下構造を探査する方法である。石油探査のために研究開発実用されてきたもので、医療用超音波エコーはその応用である。

 (2)被告関電の主張

被告関電は、反射法地震探査について、「500m位まで反射面が確認され、その範囲内では特異な構造は認められない」と主張している。

 (3)原告らのこれまでの主張

これに対して、原告らは、第35準備書面で(1)通例、深度断面に記載されるはずの速度値が記載されていないこと、(2)深度断面図からは層境界の不連続部分が認められ「特異な構造は認められない」と言えないことを指摘して、被告の評価が誤っていることを批判した。

 (4)深度断面図の速度値の非開示

被告関電は、深度断面毎の速度値を、その後も開示していない。被告関電は深度断面毎の速度値を持っているのであり、改めてその開示を強く求める。

 (5)深度断面図の評価について補充する。

原告らは、深度断面図の読解(評価)について、芦田譲京都大学名誉教授に意見を求めた。芦田名誉教授は、物理探査学会の会長を務めた反射法物理探査の権威である。芦田名誉教授は「特異な構造は認められない」という被告関電の評価は「科学的事実から逸脱した虚偽の判断」であるとの意見であった(甲423)。芦田名誉教授の意見を踏まえて、改めて、被告関電の「特異な構造は認められない」との評価の誤りを強く批判する。

図11【図省略】

 (6)3次元探査が必用であることについて補充する。

同じく物理探査学会の元会長である石井吉徳東大名誉教授(甲424)と、芦田名誉教授は、被告関電が、反射法地震探査に関して、2次元探査に終始し3次元探査を実施していない問題点を指摘した。芦田名誉供述は、以下のとおり述べている。

「地盤調査の技術は、石油探査の必要等から発達してきました。反射法地震探査は石油探査の現場では、以前は二次元調査をしていましたが、1975年頃から三次元調査が用いられるようになり、最近では三次元調査が一般になっております。二次元探査は、震源と受振器を線上に並べて地下断面を得ますが、これでは地下の地層状況を正確に把握することができません。一方、三次元探査では、多数の震源と受振器を面的に配置します。このデータを計算機により映像化することにより、医療分野で用いられているCTスキャン映像のように、恰も地下に潜っているかのような仮想現実(Virtual Reality)として地下構造を立体的に捉えることができます。例えれば、二次元探査はレントゲン写真、三次元探査はCTスキャンのようなものです。

二次元探査の場合、受振したデータには直下から反射して戻ってくるデータの外に、直下でない周囲から反射して戻ってくるデータが含まれています。それらを全て直下からのデータとして把握するため、不正確、場合によっては誤って把握してしまうことがあります。これに対して三次元探査の場合、地層の境界や断層の位置、角度、傾斜、落差や連続性等をビジュアル化し、且つ正確に捉えることができます。したがって、二次元探査では抽出しえなかった複雑な地下構造まで抽出することができます」

芦田名誉教授が指摘するとおり「原子力発電所のような重要な施設の場合・・・地下構造を高精度な手法で調査をし、より正確な地下情報に基づいて、地下構造形態や断層の詳細を把握して議論すべき」ことは当然である。

この点、新規制基準も「最先端の調査手法」を用いるべきことと、「地下構造が成層かつ均質」でない限り「地盤モデルの設定にあたっては、解放基盤面の位置や不整形性も含めた三次元地盤構造の設定が適切である」と定めている(甲425:「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(7.2.1(1)(2))、甲426:「敷地内及び敷地周辺の地質・地質構造調査に係る審査ガイド」(はじめに5、5.1(4)))。本件地盤が「成層かつ均質」でないことは上記のとおりである。

原告らは、被告関電に対し、「特異な構造は認められない」という誤った主張を改めること、新規制基準に従って原則どおり反射法地震探査の三次元探査を直ちに実施すること、そしてその結果を当法廷に提出することを強く求めるものである。

 (7)速度断面図

速度断面図について新たに補充する。

・速度断面図は、反射法地震探査の屈折法解析によって明らかになる地震波伝播速度を図化したものである。

層毎に地震伝播速度が異なるところ、起震器の発する地震波は、第1層を通って受震器に到達するものもあれば、その下の第2層を通って受震器に到達するものもある。起震器に近い受震器には第1層だけを通る直接波が最初に到達する、しかし、一般的には浅い層ほど地震伝播速度が遅いため、ある程度遠くの受震器には地震伝播速度が第1層より速い第2層を通る屈折波の方が早く到達する。受震器までの距離と到達時間を分析することで、層の厚さや地震伝播速度を解析することができる。

速度断面図は、このようにして解析された地下の地震伝播速度を図化したものである。

図13【図省略】

被告関電は、この速度断面図について「屈折法解析結果より、表層から50m程度で弾性波速度4km/s以上となる。」と主張している。

しかし、速度断面図を拡大して見れば明らかであるが、4号炉と3号炉付近では、2.5km/sの低速度層が標高-30mの深さまで沈み込んでいる。
「低速度帯の顕著な落ち込み等の特異な構造はなく、地下構造は水平方向に連続的である」とは到底言えない。

また、解放基盤表面とされる標高0m付近の地震波伝播速度は2.0km/sに過ぎない。
被告関電は、地震動評価のための地盤モデルを4.6km/sとしているが、実際の弾性波速度はその半分以下で、非常に低い。上記被告関電の評価は著しく過大で明らかに誤りである。

 (8)はぎ取り法

はぎ取り法について新たに補充する。

はぎ取り法は、屈折法地震探査の解析方法である。屈折法解析は、概ね水平な多層構造を想定するが、実際には地表にも地層境界にも凹凸によるばらつきがある。そのため、屈折法地震探査では、こうした凹凸によるばらつきを踏まえて、各層の速度や層厚を求めなければならないが、そのための解析方法がはぎ取り法(萩原の方法)である。

図14【図省略】

被告関電は、はぎ取り法による解析の結果、「やや深部を伝わる誤差の少ない平均的な最下層速度」が、A測線ではVp=4.5km/s、B測線ではVp=4.8km/sであったと主張している。

しかし、はぎ取り法の結果は(図14)、Vp=4.5km/s層の上面の深さは120mであり、標高に換算すると-80~-90m、その深さまでの表層の平均P波速度が1.9km/sに過ぎないことを示している。表層のP波速度は非常に低い。これは、屈折法による速度断面図の分析結果と一致している。被告関電の「最下層速度がVs=4.5km/s」という上記主張は、はぎ取り法の解析結果を歪めて評価するものである。

また、A測線の測定位置は、ボーリング孔O1-3に近接しているところ、PS検層の結果、O1-3孔においては標高-60mまでVs=1.17~1.92km/sと低い地震伝播速度が観測されている。また、4号炉と3号炉の敷地が東に向かって地震伝播速度が顕著に低くなり深く沈み込んでいることが明らかになっている。
はぎ取り法の解析結果も、PS検層の結果と一致して、この事実を明らかにしている。

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5 単点微動観測

(1)単点微動観測について、新たに主張を補充する(被告関電の主張に対する批判)。車両交通などの人間活動や海洋波浪などの自然現象によって常に発生している人間には感じることができないような小さな振動のことを微動と言う。地表面における微動のうち水平成分(水平成分を水平スペクトルとも言う)を上下成分で除すと(H/V),主に表層地盤のS波速度や層厚などの構造が把握できるとされている。

(2)被告関電は、単点微動観測結果(H/Vスペクトル)から、解放基盤深度が推定でき、解放基盤相当の上面深度は概ねEL(東京湾平均海水面)-25m~+65m程度で、敷地全体にわたって著しい高低差がないことが確認された、従って、三次元探査は不要だと主張している(上記4(6)p9)。

(3)しかし、H/Vスペクトルから、下層(基盤岩層)の速度値を精度良く求めることは不可能である。

①被告関電は、上層(堆積層など)Vs=472m/s、下層Vs=2.2km/sとして上層の厚さを求め解放基盤の深度としているが、下層がVs=1.6km/sとしても同様の深度分布が得られる(図17)。

図17【図省略】

②被告関電がH/Vスペクトルから得られるとする深度分布は、反射法地震探査屈折法解析の速度断面図と30m近くの違いがある(図19)。被告関電のH/Vスペクトルから解放基盤深度が推定できるとする主張は、反射法地震探査屈折法解析結果(観測データ)と矛盾しており誤りである。

図19【図省略】

以上、単点微動探査結果は「成層かつ均質」であることを示しておらず、上述のとおり三次元探査の実施が必要なのである。

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6 地盤の地震波減衰構造と地震波増幅率

地震波減衰について原告ら主張を補充する。

(1)地震波減衰 地震波は地殻内を伝播することで減衰する。①一つは幾何減衰である。伝播距離とともに波の振幅が減少する現象である(P波S波の振幅は伝播距離に反比例する)。②二つ目は内部減衰である。地震波が媒質(地殻内の場合は岩石)を伝わる間に、摩擦などにより波のエネルギーが吸収されて起きる。③三つ目は散乱減衰である。地殻内の不均質構造のために地震波が散乱され起きる。不均質構造による散乱は、不均質構造の大きさと波長の関係に規定される。

内部減衰と散乱減衰によりQ値が定まる。Q値が大きい媒質ほど減衰しにくい関係にある。

(2)原告らは、第35準備書面で、被告関電がQ=50f1.1を用いていること(丙28 p42)に対して、①上記式を用いる根拠が示されていないこと、②地域性を考慮したのか否か明らかでないことを批判した。

(3)被告関電は、本件地盤の減衰特性について、「敷地のPS検層結果から、速度構造の不均質性と減衰定数の関係に着目して不均質強度を評価した結果から減衰定数は3%程度と考えられる。敷地内でのQ値測定を実施した結果、減衰定数は3%程度以上となっている。→浅部の減衰定数を3%とする」と主張している(減衰定数:h=1/(2Q))。

(4)しかし、①上記のとおり速度構造の不均質性と減衰定数の関係は、散乱減衰に関する問題で、減衰の大きさは、散乱体(不均質)の大きさと波長の関係によって決せられ、波長即ち周波数に依存する。ところが、被告関電の上記主張は、周波数とは関係なく一般的にh=3%としており、地震波動理論に矛盾すする。②また被告関電は、敷地内でQ値を測定したと主張し、振幅分布図を示して、その傾きからh=3%が説明できるとする。しかし、振幅分布図を子細に検討しても、P波S波はいずれも深度によって一様に減衰しておらず、むしろ増加する区間が存在する。敷地内でのQ値観測結果からh=3%が導けたとの被告関電主張の信頼性は大変低い。

図38【図省略】

さらに被告関電は、180mまではh=3%、それ以深3kmまではh=0.5%とも主張するが、その根拠については何の説明もなされていない。

地盤構造モデルにおけるQ値の設定は、現在のところ確定した評価方法がない。そのため、例えば、中央防災会議・東海地震に関する専門調査会は、「500m/s<Vs<3000m/sのQ値の解析例が少ないので、Vs>3000m/sの場合の平均的なQ値であるQ=100×f0.7を用いる」として高周波域で減衰が小さく、地震動が大きくなる「安全サイド」の値を用いている。中央防災会議の考えに従う減衰構造モデルと被告関電モデルの増幅特性を比較すると、10Hz以上の周波数帯域での増幅率が被告関電モデルは中央防災会議モデルの半分程度になる(図38)。被告関電は、減衰定数を大きく設定して、基準地震動を過小評価している。

図39【図省略】

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7 速度構造と破砕帯の関係

以上、本件敷地は、西から東に系統的に速度が低下し、さらに3,4号炉建屋付近では低速度層が深く沈み込んでいることが明らかになった。これは、地質構造調査で明らかになっている破砕帯の分布に起因しているものと考えられる。被告関電は、この関係に目を向けようとしていない。

敷地内には、F-6破砕帯をはじめ、主要な15本の破砕帯が深さ200m以上にわたって確認されており(図39、図42)、それに付随して規模の小さい破砕帯が数多く存在する(図40)。特に、4号炉基礎岩盤に比べ3号炉基礎岩盤においてこれらの破砕帯が密に分布しており(図40、41)、3号炉側でP波速度が大きく低下しているという速度の場所による違いは、破砕帯の分布に大きく依存していることが明瞭に読み取ることができる。被告関電及び原子力規制委員会は、敷地内の破砕帯(断層)について、活動性評価のほかに、破砕帯が及ぼす地盤速度構造への影響を評価していない。地質学や地形学の知見が基準地震動策定のための地盤モデル構造に生かされていない。

図40【図省略】

図41【図省略】

図42【図省略】

図43【図省略】

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8 調査が表層部にとどまること

原告らは、第37準備書面で、2007年新潟県中越沖地震について、地震の前には、訴外東京電力が同原発は「揺れの少ない強固な岩盤上に建て」られており、「軟らかい地盤」「に比べ1/2から1/3程度」の揺れにとどまるなどと説明していたこと、ところが基準地震動の4倍の1699ガルの「想定外」の地震動が起きたこと、そのことについて訴外東京電力が、地下4~6kmの深部地盤に傾きがありそれによって波が集中したとか(約2倍)、地下2kmに褶曲構造があって地震波が1~4号機に集中したとかの(約2倍)後付け説明をしていること、しかしその説明が実証されているわけではなく仮設の域を出ないことを指摘した。いずれにせよ、地下4~6kmの深部地盤、地下2kmの敷地地盤に原因が求められた。

ところで、大飯原発の地盤特性については、反射法地震探査で陸域で地下500m位まで、海域では地下2~300mまでしか把握されていない。地震波干渉法による調査が地下4kmまで行われたとされているが、地下3kmから18kmにあるとされる震源断層の調査としては著しく不十分である上、地震波干渉法は、地震計間の地盤が平行な成層構造であると仮定して解析するもので、地下の褶曲や地層の傾斜、凹凸などは全て平均化されているから、地下4kmまでの不整形・不均質を調査したことにはならない。さらにそもそも地震波干渉法の調査からは、地震波を増幅させる低速度帯の存在が示唆されることについてすでに第35準備書面で述べたとおりである。

この点、島崎邦彦東京大学名誉教授が、①の震源特性に関して、被告関西電力の地盤調査が表層部にとどまっていて極めて不十分であると、次のように証言した(甲382「島崎証人調書」23頁)。

 「見て頂きたいのは、その右側のこれは詳細な活断層調査の中なんですけど、下の方にズレがあるところで断層が見えると思うんですけど、この深さは200~300メートルにすぎません。詳細な活断層の調査っていうのをやっていても、実はほとんど表層にすぎないんですね。ところがこの発電所では、地震発生層の厚さが、一番浅いところで3キロメートル、一番深いところで15キロメートルだといってます。だから3000メートルから15000メートルのところに震源断層が存在しているはずだ。それを僅か200メートルの調査で、どう詳細なものが分かるのでしょう。わかり得ませんね。だけどこれを詳細な活断層の調査と言っているわけです。」

島崎証人は、被告関西電力が地震発生層が地表から3kmから15kmの深さのところにあり、その範囲内に震源断層があることを認めているにも関わらず、活断層調査をしているのは200~300メートルという表層にすぎず、被告関西電力の地盤調査は極めて不十分だと指摘している。

ところで、深部地下構造地質調査はできる。地下20㎞あるいは30㎞に達する大規模な地下地質構造調査が現に行われている。ひずみ集中帯プロジェクトによる日本海東縁のひずみ集中帯における地下構造探査や(中核機関は独立行政法人防災科学技術研究所)大都市大震災軽減化特別プロジェクトの大規模地殻構造調査研究である(文部科学省)。例えば「ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究プロジェクトの総括成果報告書」(甲413)によると、各調査によって新潟県から秋田県にかけての一部領域における深部地下構造のイメージングが行われ、地下10km程度ないしそれ以深の範囲の断層の存在が明らかになっているのである。

東京電力も、平成10年度国内石油・天然ガス基盤調査陸上基礎物理探査「西山・中央油帯」の地震探査記録や昭和44年度天然ガス基礎調査基礎物理炭鉱「長岡平野」の地震探査記録を適合性審査資料で引用し、地下数km~6km程度の地下構造を示している(甲414,415)。

調査は可能なのに、被告関電は実施していない。費用を出し惜んでいるとの誹りを免れない。

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9 被告関電は主張を裏付ける根拠資料を提出しておらず主張立証責任を果たしていないこと

平成29年12月13日、四国電力の設置する伊方原発3号炉は地震や火山に対する安全性が確保されていないとして周辺住民らがその運転の差し止めを求めた仮処分申立事件の抗告審において、広島高裁は、運転差し止めを認めなかった原決定を破棄し、決定後9か月余りの期間に限ってではあるが、同原発の運転を差し止める決定を下した。高裁レベルで原発の運転の差し止めを命じた初の判断として極めて意義のある決定であるが、その中で広島高裁は、主張立証責任に関し、「発電用原子炉を設置する事業者は、原子炉施設に関する上記審査(注:原子炉規制法に基づく原子力規制委員会の審査)を経ることを義務付けられた者としてその安全性についての十分な知見を有しているはずである。このことと、前記の原発事故の特質(注:発電用原子炉施設の安全性が確保されないときは、人の生命・身体や環境に対して深刻な災害を引き起こすおそれがあること)に鑑みると・・・当該発電用原子炉施設の設置運転の主体である被告事業者の側において、まず、「当該発電用原子炉施設の設置運転によって放射性物質が周辺環境に放出され、その放射線被曝により当該施設の周辺に居住等する者がその生命、身体に直接的かつ重大な被害を受ける具体的危険が存在しないこと」(以下「具体的危険の不存在①」という。)について、相当の根拠資料に基づき主張立証する必要があり、被告事業者がこの主張立証を尽くさない場合には、具体的危険の存在が事実上推定されるなどとして(175~178頁)、事業者側が主張立証責任を果たしたというためには相当の根拠資料を示すことが必要であると判示した。

これは極めて当然の判断である。そして被告関電は、「相当の根拠資料」を何ら示していない。すなわち、例えば、被告関電は①震源特性と②伝播特性について具体的な主張立証をそもそも行っていないのであるから、これのみでも「相当の根拠資料」が示されていないことは明白であり、主張立証責任を果たしていないことは疑いないが、③地盤の増幅特性(サイト特性)についても、PS検層について2号炉と1号炉のデータを示しておらず、反射法地盤探査についても深度断面ごとの速度値を開示していないのであるから、「相当の根拠資料」が示されていないことに変わりはないのである。また、反射法地盤探査に関して2次元探査しか行っておらず3次元探査が可能であるのにこれをあえて実施しておらず、当然その結果を示していないし(単点微動観測に関しても同様)、地盤調査も地下10km程度ないしそれ以深の範囲の断層の調査を行うことは可能であるにもかかわらず意図的にこれらを行わず、もちろんその結果を示していないのである。

よって、上記広島高裁決定に照らして被告関電が主張立証を行っていないことは明白であるから、それらを採用する余地はない。

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10 まとめ

被告関電は、基準地震動策定が「平均像」であることを認めた上で、地域特性を十分に把握できており、その地域特性に照らせば、基準地震動を超える地震発生の可能性は否定できると主張している。しかし、主張をするばかりで保有している根拠資料すら提出せず、それどころか原発の地域特性の調査として当然になすべき重要な調査が懈怠されたままである。また実施された調査結果が、科学技術を冒涜する所作以外の何物でもないと批判されるべきほどに、基準地震動が小さくなるよう歪めて評価されている。

それを容認し追認している規制委員会も同様に批判されなければならない。

以上、本件原発は、地震に対して極めて危険だと言わなければならない。

以上

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