◆原告第47準備書面
第4 竹本論文のまとめ

2018年(平成30年)3月23日

原告第47準備書面
―1026年の万寿津波と大飯原発の危険性―

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第4 竹本論文のまとめ

このように、竹本論文では、万寿津波の検討を行い、これが通常の海底断層の上下変位に伴う地震と津波としては説明がつかず、島根沖の大規模海底斜面崩壊を想定することにより、地上に到達した津波高の伝承を含めて矛盾なく説明できる可能性が見いだされた。大規模海底斜面崩壊の再来周期が不明なことから次に益田地方が大津波に襲われる時期は特定できないが、図8で示された島根沖の海底堆積性斜面崩壊の領域を見ると、同論文で検討した万寿津波の波源よりもずっと広い範囲に分布しており、島根原発(島根県松江市鹿島町)の北方にも達している。このことは、1026年の島根沖の海底定積性斜面の崩壊で被害を受けた益田地方が再び津波に見舞われるより、もっと東側の堆積性斜面の崩壊で島根原発が津波被害を受けるほうが先ではないかと考察している。少なくとも2014年8月に調査検討会が公表した日本海西南部の原発所在地の津波高予測は小さすぎると結論づける。
さらに図8では、岡村によれば、堆積性斜面の崩壊が発生している場所として、島根沖の外、若狭湾沖が指摘されている。万寿津波の例が堆積性斜面の大規模崩壊で説明できる場合、若狭湾沖の堆積性斜面の崩壊についても再考が必要となるのは当然である。となれば、被告関西電力が美浜、大飯、高浜の各原子力発電所で行っている津波対策にも見直しが求められる。

竹本論文では、最後に、理科年表における、日本国内・近海における歴史地震を再検討している。すなわち、理科年表では、「『701年の大宝地震では、丹波国(後に丹後国に分国、現京都府北部)で大地震が発生し、三日にわたって揺れがあり、若狭湾内の凡海郷(おおしあまのさと)が海に没した』という『冠島伝説』があるが、疑わしい。」との記載がある。そのため、これまでは、701年の大宝地震・津波を専門家は無視していた。しかし、2011年に東北地方太平洋地震が起き、869年の貞観地震・津波はすでに見直しがされている。1026年の万寿津波も島根沖の堆積性斜面崩壊により益田地方を20~25mの津波が襲った可能性が否定できないとなると、701年の大宝地震・津波の見直しも必要となる可能性がある。

以上

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