◆原告第50準備書面
―避難困難性の敷衍(避難所の問題点について)―

原告第50準備書面
―避難困難性の敷衍(避難所の問題点について)―

2018年(平成30年)3月23日

原告提出の第50準備書面[163 KB]

目 次

第1. 舞鶴市避難計画の問題点
第2. 避難の問題性
第3. まとめ


原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面では、舞鶴市避難計画の問題点及び実際の避難における問題点について述べる。


第1. 舞鶴市避難計画の問題点

 1. 避難計画の策定

2013(平成25)年3月、舞鶴市防災会議によって、「舞鶴市原子力災害住民避難計画」(以下「舞鶴市避難計画」という(甲77号証))が策定された。同避難計画は、2017(平成28)年3月29日付で改定された(以下「平成28年3月29日避難計画」という。)(甲438)。

 2. 舞鶴避難計画の内容と問題点

平成28年3月29日避難計画では、原子力事故が発生した場合、「UPZ(B、C、D、E、Fゾーン)は屋内額を基本として、放射能物質が環境に放出された段階で緊急時モニタリングを実施し、その結果に基づき、基準を超えるゾーンが特定された場合に、特定されたゾーン事に段階的に避難を実施する。」(甲438号証9頁)と記載されている。しかし、災害時において、どのように、ゾーンを特定し、特定後、避難を実施していくのか具体的な記載は一切無い。

また、安定ヨウ素材に関する記載はあるものの(同11頁)原発事故や避難で混乱している時に、ヨウ素剤の服用の判断、指示を誰がするのか、判断された場合に児童・生徒全員に的確な配布と服用が出来るのか、具体的な対策は一切なされていない。

平成28年3月29日避難計画では、避難時集結場所として複数の小・中・高の学校施設が指定されている(同7頁)が、全校児童の数を大きく上回る避難者を想定しており、現実的な避難計画とは言えない。

平成28年3月29日避難計画では、園児、児童、生徒等への対応について「園児、児童、生徒等が各施設で修業等をしている場合は、状況に応じて各施設管理者が定める避難計画に基づき、舞鶴市教育委員会や舞鶴市災害対策本部等と連携して対応する。
」(同28頁)と記載されており、何らの具体性ない。仮に原発事故が起こった場合、舞鶴市内が原発事故と避難で混乱する中で、短時間でスムーズに全児童・生徒を保護者へ引き渡すことなど不可能である。

 3. 小括

このように、改定された避難計画においても、改訂前の避難計画の問題点は何ら解消されていないが、これは、現実的な避難計画等作成することは不可能だからである。

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第2. 避難の問題性

震災後、京都府に、福島から避難した児童が転入してきた。その児童の転入先では、事前に転校の事情をくわしく丁寧に指導し、児童を迎え入れた。

児童の転入から、まもなく、トラブルが起こり、お互いが口喧嘩になった時に、他の児童が転入してきた児童に向かって「お前なんか、福島の津波で死んだら良かったんや」と叫んだため、叫んだ児童には、そのことの意味を指導し、保護者へも連絡して再度指導した例がある。

マスコミなどの報道によれば原発事故により避難した児童が「放射能がうつる。」「賠償金をよこせ。」などいわれのないいじめに遭っていることが報告されているが、原発事故さえなければ、子供たちが、こんな悲しい思いをすることはないのである。

仮に、いじめに遭わなかったとしても、避難した児童は、なかなか、新しい環境になじめないこともある。転校先の児童に嫌われないように気を遣ったり、意地悪されないよう目立たないようにしたり、転校先の児童に負けないように自分を大きく見せてつっぱたりする等、本来抱える必要のない極度のストレスを抱えながら、生活を送らなければならないのである。

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第3. まとめ

以上のとおりであり、避難計画をどれだけ整備しても、避難事態が困難であり、仮に避難できたとしても、その後の生活において、非常に強いストレスを抱えながら生活を送らざるを得ないのである。根本的な解決のためには、原発自体を廃炉にするしかない。

以上

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