◆第19回口頭弁論 意見陳述

2018年3月27日

口頭弁論要旨

小西洋一

私は京都府舞鶴市に住み、小学校教員をしている小西洋一と申します。

2011年3月11日、東日本で発生した大地震と大津波、そして福島第一原発の事故は、私が働いている舞鶴の学校現場の状況も大きく変えました。

【放射能被害から子どもたちを守れるのか】

京都府と舞鶴市の原子力防災計画が策定されましたが、実効性には疑問が多すぎます。原子力事故が発生した場合、とりあえず屋内退避が指示されています。屋内にいる場合は、急いで玄関で服などに着いた放射能を振り払い、屋内に避難するように指示されています。屋内への退避で放射能被爆をまぬがれることはできません。

昨年、市民からの強い要望もあって、安定ヨウ素剤の備蓄が舞鶴市内の6箇所から避難場所の32箇所に広げられました。本校でも約6000人分の安定ヨウ素剤が備蓄されています。また、福知山、綾部などの6箇所の中継避難場所にも備蓄されることになりました。安定ヨウ素材を放射線にさらされた直後、またはできるだけ早く24時間以内に服用すれば、甲状腺への放射性ヨウ素の集積を90%減らすことが出来ると言われており、甲状腺ガンから子どもたちを守るために大変有効です。しかし、原発事故や避難で混乱している時に、ヨウ素剤の服用の判断、指示を誰がするのか、判断された場合に児童・生徒全員に的確な配布と服用が出来るのか。それも訓練とシュミレーションが必要となっています。市の防災計画では、市民の避難集結場所は公共施設とともに多くの小・中・高の学校施設が指定されています。市内にある全校児童200人足らずのある小学校には、校区内の市民3千人の避難者が想定されていますが、市の職員の配置は3人だけです。3人で三千人の対応は無理です。

【保護者への引渡しはできるのか】

授業中に避難指示が出た場合は、児童・生徒は保護者へ引き渡し、避難することが前提になっています。仮に原発事故が起こった場合、舞鶴市内が原発事故と避難で混乱する中で、短時間でスムーズに全児童・生徒を保護者へ引き渡すことができるとはとても思えません。台風の襲来による一斉帰宅、保護者への引渡しを何回か経験しましたが、600人規模の学校でも2時に学校メールや電話連絡を入れて、保護者への引渡しが最後の一人まで完全に終了するまで4時間はかかります。それは、舞鶴市内が安定している場合です。時間がかかればかかるほど、その間にも放射能の汚染に子どもたちはさらされるということになります。

【子どもたちには何も罪はないのに】

震災後、京都府に、福島から避難した児童が転入してきました。その児童の転入先では、事前に転校の事情をくわしく丁寧に指導し、児童を迎え入れました。

児童の転入からまもなく、トラブルが起こり、お互いが口喧嘩になった時に、他の児童が転入してきた児童に向かって「お前なんか、福島の津波で死んだら良かったんや」と叫び、叫んだ児童には、そのことの意味を指導し、保護者へも連絡して再度指導してもらった例があります。

マスコミなどの報道によれば原発事故により避難した児童が「放射能がうつる。」「賠償金をよこせ。」などいわれのないいじめに遭っていることが報告されています。原発事故さえなければ、こんな悲しい思いをすることはなかったのに。子どもたちには何の罪もありません。避難先でいわれのないいじめや嫌がらせを受けている子どもたちの心情を考えると不憫で仕方がありません。今だに原発災害の避難者は7万人を超えています。

避難した児童は、いじめに遭う以外にも、なかなか、新しい環境になじめないこともあります。転校先の児童に嫌われないように気を遣ったり、意地悪されないよう目立たないようにしたり、転校先の児童に負けないように自分を大きく見せてつっぱたり・・・。児童一人一人によって様々な対応があるだろうと思います。

突然の大地震と津波、そして福島第一原発の過酷事故によって、生まれ育ったふる里を追われ、家族もバラバラにされ、仲の良かった友達とも別れて、見知らぬ土地への転居や学校への転校を余儀なくされた児童の緊張や不安、ストレスは私達の想像を遥かに超えています。

地震や津波は天災ですから避けることはできません。しかし、原発の事故は人災です。「想定外」などという言葉で責任を逃れることが出来るでしょうか。

未来を生きる子どもたちに放射能の心配のない日本を残すこと。これは、地震列島と言われるこの国に51基もの原発を作らせてきた私たち世代の責任ではないでしょうか。原発は、再稼働せずすべて廃炉に。

京都地裁の英断を心からお願いいたします。

ページトップ