◆原告第2準備書面
 第2 日本及び近畿地方(特に日本海側)における地震

原告第2準備書面 -大飯原発における地震・津波の危険性- 目次

第2 日本及び近畿地方(特に日本海側)における地震

1 地震大国日本

 (1) 狭い国土に原発が集中する日本

 日本は地震大国であるといわれるが、その理由は次図〈世界の地震分布図 省略〉から明らかであろう。世界で唯一4つのプレート境界がひしめく結果、世界中で発生する地震の1割が日本に集中し、マグニチュード6以上の地震に限れば約20%が集中する。単位面積当たりの地震の発生確率で見ると、日本のそれは地球全体の平均値の約130倍にもなる。日本列島のどこにも、大地震と大津波の危険性のない「安全な土地」と呼べる場所は存在しないのである。
 次図は世界における原発の分布を示したもの〈Distribution Nuclear Power Prants(2001) 省略〉である。そもそも日本には全世界の稼働中の原発の11パーセントが集中しているといわれるが、それ自体、日本の国土は地球の陸地のわずか0.25パーセント程度を占めるにすぎないことからすれば、異常な集中を示す数字である。しかも、そのように原発が異常に集中する狭い日本は、地震大国なのである。 これほどの地震大国に、これほどの原発が集中する国は、世界中を見ても他に例がなく、ただ日本のみである。

 (2) 活動期に入った日本の地震活動

 しかも、阪神大震災後、我が国は地震の活動期に入っているといわれてきたが、とりわけ、東北地方太平洋沖地震によって日本列島の地殻は大きく移動した。それまでは東西方向に圧縮されていた日本列島が、同地震によって太平洋プレートと北米プレートとのいわばタガが外れたため、今後、日本列島各所で地震がおきる可能性がさらに高まっている状況にある。

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2 近畿地方における巨大地震

 (1) 近畿地方で繰り返されてきた巨大地震

  ア 別紙地震一覧表について

 近畿地方に関して、被害の具体的な記述がある地震は、別紙地震一覧表のとおりである。これは、自然科学研究機構国立天文台が毎年発行している「理科年表」の平成25年版(丸善出版株式会社発行)の「日本付近のおもな被害地震年代表」(甲58)の中から、近畿地方に関連するもののうち震度の記載のあるものを抽出したものである。
 なお、1884年までの震度は次の文献に基づく。

  •  宇佐美竜夫 「最新版 日本被害地震総攬」 東京大学出版会 2003年
  •  宇津徳治 「地震活動総説」 東京大学出版会 1999年

 1885年ないし1923年7月の震度は以下の文献に基づく。

  •  茅野一郎・宇野徳治「日本の主な地震の表」(「地震の辞典」第2版 朝倉書店)

 1923年8月以降の震度は、気象庁がFTPサイトで公開した数字である。
 地域は1884年までは被災地等であり、1885年以降は震央地名(1923年以降は気象庁の区分)を表す。

  イ 別紙地震一覧表からわかること

 これによれば、近畿地域及び福井県で推定震度の記録のある地震のうち、西暦599年~1995年の1396年間でM7.0以上のものが21回、M8.0以上のものが6回である。従って、M7.0以上の地震は66.47年に1回(1396年間÷21=66.47年)、M8.0以上の地震は232.66年に1回(1396年間÷6=232.66)の割合で発生していることになる。
 また、別紙地震一覧表によれば、プレート内地震(内陸型地震)が多数発生していることもわかる。これはプレート境界から離れた地域にある若狭地域においても、プレート内地震(内陸型地震)が発生する可能性があることを示している。しかも、そうした内陸型地震が、大飯原発の位置する若狭の周辺地域においても過去に繰り返し発生していることもわかる。1325年には地震で敦賀の気比神宮が倒潰しているし、1662年には広大な地域に大きな内陸地震が発生し、1948年には「福井地震」、1952年には「大聖寺沖地震」、1963年には「越前岬沖地震」等が発生しているのである。
 さらに、陸地だけでなく若狭湾周辺の日本海でも地震が発生していることがわかる。例えば、1952年の「大聖寺沖地震」(福井・石川)、1963年の「越前岬沖地震」等である。
 そのほか、東海地震・南海地震あるいは両者が連動した東南海地震が歴史上何回も発生しており、これらの巨大地震が近畿地方に大きな影響を何回も与えている。例えば、887年にはM8.0~8.5の巨大地震が発生し、「五畿・七道:京都で民家・官舎の倒壊多く、圧死多数。津波が沿岸を襲い、溺死多数。特に摂津で津波の被害が大きかった。」と報告され、これは「南海トラフ沿いの巨大地震と思われる。」と評価されている。他にも、1096年、1099年、1361年、1520年、1707年、1854年にも、東海地震・南海地震あるいは両者が連動した東南海地震の巨大地震が発生し近畿地方に大きな影響を与えている。また、この歴史経過をみると、連動型巨大地震はほぼ150年~250年周期で発生しており、最後の1854年からは現在(2013年)まで約160年を経過している。従って、地震学者も東海地震・南海地震あるいは両者が連動した東南海地震が近い将来発生する可能性が大きいと警告していることは周知の事実である。
 また、これらの巨大地震は前後に連続して発生している場合も少なくなく、例えば以下のような地震を指摘できる。

  •  881年(京都)・887年(南海トラフ沿いの巨大地震と思われる)・890年(京都)
  •  1093年・1096年(東海沖の巨大地震とみられる)・1099年(南海道・畿内)
  •  1350年(京都)・1361年8月1日(畿内諸国)・1361年8月3日(畿内・土佐・阿波)(南海トラフ沿いの巨大地震と思われる)
  •  1854年(東海地震、その32時間後の南海地震)・1858年(飛騨・越中・加賀・越前、丹後宮津)
  •  1936年(北丹後地震)・1948年(福井地震)・1952年(大聖寺沖地震)・1952年(吉野地震)・1963年(越前岬沖地震)

  ウ 東北地方太平洋沖地震後に地震が頻発していること

 また、2011年の東北地方太平洋沖地震(M9.0、Mw9.1)によって我が国が地震の活動期に入ったことを述べたが、このことは余震や誘発地震の発生状況から裏付けることもできる。すなわち、同地震以後に発生した同地震の余震・誘発地震はM7.0以上で6回、M6.0以上で97回にも及んでおり、さらに2011年3月12日には同地震の遠方誘発地震として、その震源地から遠く離れた内陸部の長野県・新潟県の県境地域でM6.7(Mw6.3)の地震が発生しているのである。
 このことからすれば、東南海沖には近い将来巨大地震が発生する危険性が指摘されているが、これに伴う遠方誘発地震が近畿地方の内陸部ないし日本海側に発生する危険性も大といえるのである。

  エ 以上のとおり、近畿地方でも巨大地震が繰り返されていることは史実から明らかであり、また、東海沖地震との連動による巨大地震が発生する可能性も十分に存在するのである。

 (2) 近畿地方ないし若狭湾周辺で大地震が発生する危険性は高いこと

 若狭湾周辺には多数の活断層があり、もともと地震の多発地帯である。 しかるに、上述のとおり近年は大きな地震に見舞われておらず、他方でその周辺地域では、濃尾地震(1891年、マグニチュード8.0)、北丹後地震(1927年、マグニチュード7.3)、福井地震(1948年、マグニチュード7.1)、鳥取県西部地震(2000年、マグニチュード7.3)等の大地震が発生している。そうすると、1×10のマイナス4乗の歪みが蓄積した段階で地震が起こる危険性が高いということを踏まえれば、大飯原発周辺は地震の空白域になっており、現在は歪みが蓄積し続けている状態であるといえる。
 よって、次の大地震が、地震の空白域である大飯原発周辺で発生する可能性は決して低くない。

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3 若狭湾周辺に存在する断層・活断層

 (1) 断層・活断層の存在は地震発生の危険性を強く示すこと

 上述のとおり、地震はいつどこで発生するか分からず、断層がないからといってその場所で地震が起こりえないということにはならない。しかし、現に断層が存在すれば、過去にそこで地震が発生したことは明白であり、将来的に同じ場所で地震が発生する可能性が高いことが看取できる。そこで、断層の存在は、当該地域における地震発生の可能性を示す重要な要素である。

 (2) 若狭湾周辺地域にも断層・活断層が存在すること

 この点、若狭湾周辺地域には多数の断層がある。とりわけ、美浜原発はC断層の直上に、大飯原発はFO-A断層・FO-B断層の直近に位置する。また、美浜原発の直近には白木-丹生断層があり、それ以外にも若狭湾周辺には、野坂断層・B断層・大陸棚外縁断層、和布-干飯崎沖断層、甲楽城断層、柳ケ瀬断層、ウツロギ峠北方-池河内断層、浦底―内池見断層、白木-丹生断層、敦賀断層、三方断層、熊川断層、上林川断層等がある*18。当然、断層との距離が近いほど地震によって受けるエネルギーは大きくなり、地震動とともに、隆起や地割れなど地形が変形する影響も大きくなる。
 それにもかかわらず、世界で活断層から1キロメートル以内に原発があるのは、もんじゅ、敦賀、美浜の3機だけなのである(2011年5月11日の衆院経済産業委員会における、日本共産党の吉井英勝衆院議員の質問に対する寺坂信昭原子力安全・保安院院長の答弁)(甲39)。

 *18 このうちの活断層は、訴外日本原電が認めているものだけでも、C断層(約18㎞)、野坂断層(約12㎞)、B断層(約21㎞)、大陸棚外縁断層(約14㎞)、和布-干飯崎沖断層(訴外日本原電が認めている断層長さ約42㎞、以下同じ)、甲楽城断層(約19㎞)、柳ケ瀬断層(約31㎞)、ウツロギ峠北方-池河内断層(約23㎞)、浦底―内池見断層(約18㎞)、白木-丹生断層(約15㎞)、敦賀断層(約23㎞)、三方断層(約27㎞)がある。更に、和布-干飯崎沖断層と甲楽城断層、大陸棚外縁断層、B断層と野坂断層は、いずれも同時活動を考慮しなければならず、その場合の断層長さは、前者が60㎞、後者が49㎞になり、予想地震規模は、前者がマグニチュード7.8、後者がマグニチュード7.7に達するとされる。

 (3) 地震学者も若狭湾一体の原発のリスクの高さを指摘していること

 世界有数の地震・津波大国である日本に原発を集中立地することが危険極まりないことは既述のとおりであるが、さらに若狭湾周辺では、密集する断層に世界でも例がない極めて近接した箇所に原発が設置されており、とりわけ危険性が高いのである。実際、地震学者の石橋克彦神戸大学名誉教授は、2011年5月23日に開催された参議院公聴会において、浜岡原発(静岡県御前崎市)の次にリスクの高い原発がどの原発かとの質問に対し、「若狭一帯の原発」と答えているところである(甲40)。

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