◆原告第2準備書面
 第5 活断層上に重要な原子炉施設があってはならないこと

原告第2準備書面 -大飯原発における地震・津波の危険性- 目次

第5 活断層上に重要な原子炉施設があってはならないこと

1 新基準等の内容

 (1) 「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」(平成25年原子力規制委員会規則第5号)は、以下のとおり定める。

 (設計基準対象施設の地盤)
  第三条
  2 耐震重要施設は、変形した場合においてもその安全機能が損なわれるおそれがない地盤に設けなければならない。
  3 耐震重要施設は、変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければならない。

 (2) これを受けて原子力規制員会の策定した「基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価に係る審査ガイド」は、以下のように定める。

 「原子炉建屋等が設置される地盤は、将来も活動する可能性のある断層等の露頭が無いことが確認された地盤」でなければならず、特に「耐震設計上の重要度分類Sクラスの建物及び構築物が設置される地盤には、将来も活動する可能性のある断層等が露頭していない」ことが要求される。

 (3) このように新基準は、原発における重要施設が活断層の直上にあってはならないとしている。そして、活断層上に原発が存在することの危険性からすれば、活断層の存在が100パーセント完全に否定されない限り、設置することは許されないというべきである。

2 大飯原発において指摘される活断層の存在

 この点、大飯原発については原子力規制委員会が、「大飯発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合」を設置して活断層の有無について議論を行ってきたところ、平成25年9月になって、大飯原発には活断層は存在しないとの方向での取りまとめを行った。しかし、同会合の結論については異論が極めて強い。それどころか、同会合の内部でも、大飯原発には活断層が存在する、あるいは存在しないとする被告関西電力の主張の根拠は薄弱であるなどとする意見が多く出され、活断層の有無について必ずしもコンセンサスが得られているものではない。
 本来の活断層の定義からすれば、同会合が問題にするような過去40万年間に同断層が動いた形跡があるかどうかではなく、より長期のスパンで検討すべきであるから、同会合での活断層に関する議論は極めて不十分である。断層が現に存在するということは、同断層が過去に動いたことは上記のとおり明白なのであるから、かえって活断層が存在するというべきである。疑わしきはより安全性を確保しうる方向で事実認定を行うことが、万が一の事故の発生を防止して国民の生命・身体を守るために必要であるから、有識者会合の中においてさえ意見が割れ、同会合の取りまとめに対する批判が強いことなどからすれば、むしろ、大飯原発の敷地には活断層が存在するか、少なくともその存在を完全に否定することはできないといわなければならない。

3 活断層の存在が否定できない大飯原発の稼働は許されないこと

 よって、活断層の直上に存在する、あるいは活断層の存在が完全に否定することができない場所に設置された大飯原発は、活断層上に重要施設を設置してはならないとする新基準を充たしておらず、その運転を継続することは違法であるから、直ちに運転が停止されなければならない。