◆原告第3準備書面
 第1 はじめに

原告第3準備書面
-原子力発電の根源的危険性と日本の法制度の不備- 目次

第1 はじめに

 本件で差し止め請求の対象となっている関西電力株式会社大飯発電所(以下「大飯原発」という)は原子力発電所であり、その燃料として低濃縮ウラン燃料を利用して発電を行なっている。後述するとおり、天然におけるウランの存在比はウラン238が約99.3%であり、ウラン235が約0.7%であるが、このウラン235の濃度を3~5%まで高めたものが低濃縮ウラン燃料である。そして、低濃縮ウラン燃料に含まれるウラン235の原子核分裂反応によって放出されるエネルギーを利用して水蒸気をつくり、タービンを回転させて発電を行なっている。

 ウラン235が原子核分裂反応を起こす際、さまざまな放射性核種が生成される。代表的なものとしてはヨウ素131、キセノン133、セシウム137、ストロンチウム90などが挙げられる。また、その発電過程の中で、低濃縮ウラン燃料に含まれるウラン238からはプルトニウム239が生成される。これらの放射性核種は、いずれもその原子核の構造が不安定であるため、それぞれの物質ごとの性質に応じて安定的な別の物質に変化していく。これを(放射性)崩壊というが、放射性核種が崩壊する際には、それぞれの物質の性質に応じて放射線を発生させることとなる

 大飯原発をはじめとする原子力発電所において、ひとたび事故が発生すれば、原子炉内の放射性核種が、原子炉はもとより発電所外にも広範に飛散することとなる。飛散した放射性核種は人体の内外で放射線を発生させ、人体に多大な影響を及ぼすこととなる。本準備書面においては、放射線とその人体への極めて有害な影響について論述するとともに、1986(昭和61)年4月26日に爆発事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所における被害の実相を明らかにすることで、大飯原発をはじめとする原子力発電所のもつ本質的な危険性を明らかにする。

 そして、放射性物質や原子力発電所のもつ危険性に比して、日本における生命・身体の安全や環境を保護するための法制度は極めてずさんなものであり、大飯原発の再稼働はもとより、およそ原子力発電所を稼働させることは許されないことを明らかにする。