◆9/30…第5回口頭弁論の報告

概 略

  • 今日の第5回口頭弁論は、多くの原告の皆さんが参加していただき、
    本当にありがとうございました m(_ _)m
  • 12:15スタートのパレードは、61名が参加。
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  • 13:00から受付の傍聴席は申込が多くて抽選になりました。抽選にもれた人など同時開催の模擬法廷には57名の参加がありましたので、傍聴席が約80名としても、140名ほどの原告、市民が裁判に結集したことになります。
  • 報告集会は、立ってご参加いただき、本当にご苦労様でした。
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  • また、カンパも数万円に上り、福島交流ツアー報告集、おおい町見学ツアー報告集やDVDもお買い求めいただきました。
  • 原則無料配付(カンパ要請)の紙芝居DVD「原発なくそう」(小学4年生からわかる)は、当方で用意した10枚ほどがすべてなくなりました。
  • 私たちの思いで、さらに裁判所を包み込み、裁判官の背中を押していくよう、今後とも力を合わせ、声を上げていきましょう。【このページの最初に戻る

参加した原告からの報告

  • 原告の村上敏明さんが、Facebookに感想を寄せてくれましたので、転載します。ただし、村上さんより「全面的な記録にはなっていませんので、その旨、ご理解の上、お読みください。」とのことです。
  • 大飯原発差し止め訴訟 京都地方裁判所にて 第5回目 原告の一員として参加 その雑感。この場は、再稼働反対の私の行動を支える原動力です。
  • 弁論や意見陳述を聞いて、被告である国や関電の対応にますます非人間的な姿を見せつけられました。今日は ①新規制基準の問題点 ②大飯原発過酷事故時に想定される被害 ③避難計画の問題点 ④5月21日の福井地裁判決について 以上 弁護士より
  • ⑤ 意見陳述 原告 萩原みゆきさん  311当時福島県郡山市に在住 事故後このままでは、福島は見捨てられる、放射能にやられてしまうかも・・そんな恐怖感にも襲われ 事故の1ヶ月後 生命が危ないと夫を残し、京都へ母と子で避難。外部と内部被爆で体力が極端になくなり、身体に鞭打つようにキンカン行動や、各種集会に参加、被災地に残った人々を思いながら、「見捨てられて良い命があるはずがない。」「諦められるはずがない!」と思ったからと原発の再稼働反対の声を上げているとの陳述。萩原さんの声、裁判官の胸に届いたでしょうか。
  • ⑥ 意見陳述原告 広原盛明さん 都市計画 京都府立大学名誉教授
    2014年発表の「国土のグランドデザイン2050・・国土の長期展望」に巨大災害、原発災害に関する項目が一切ない、政府のこれらの軽視を端的に表している。このことは、原発災害にについては国が将来展望を描くことができない存在だということを示している。原発が「日本国土の喉元深く突き刺さった骨」であり政府は、その骨を抜くことができなくなった状態なんだ。・・私は国民の生命、身体と財産を守るために、司法が英断をもって日本の全原発の再稼働を中止することを期待している。・・と力強く、陳述されました。
  • 私村上は国土計画の存在、そして国民軽視の計画が存在することを教えられました。
    そして 正義と真理、人間性豊かな裁判長の判断を期待して帰途に着くのでした。
  • 写真は、傍聴席は定員オーバーで抽選待ちの模様(京都地裁正面)。
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YouTubeに投稿されたビデオ

  • 撮影は、原告の正木斗周さんです。
  • 4分ほどで、パレードから報告集会まで、簡潔にまとまっています。

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第5回口頭弁論 弁論要旨及び意見陳述

(以下の内容は、当日に参加者に配付した資料です。)
(以下の内容は、PDFファイルとしてダウンロードできます。)
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第1 新規制基準の問題点

(全文は→こちら。)

[スライド1]
本書面では、昨年7月施行された適合性基準、いわゆる「新規制基準」の問題について述べます

[スライド2]
この規制基準については「世界最高水準」との喧伝がなされています。しかし、決して、最高水準といえるものではありません。では、なぜ、この訴訟において、新規制が問題となるのでしょうか。

福島第一原発事故は、福島第一原発のみでなく、既存の原子炉の問題点を明らかにしました。

したがって、新規制基準が、その問題点を修正するものでないならば、既存原子炉の脆弱性が審査されないまま、存置されるということになります。

すなわち、具体的な危険が存知されたまま、再稼働が認可される可能性があるいうことです。

[スライド3]
まず、簡単に、福島第一原発事故の経緯を確認します。
平成23年3月11日午後2時46分東北地方太平洋沖地震が発生しました。この地震により、送電線、開閉所の遮断機が損傷し、外部電源が途絶えます。
外部電源が途絶えた場合、非常用発電機が作動し、電源は保たれます。福島第一原発でも、非常用電源が作動したとされています。
しかしながら、同日午後3時37分頃、最も大きな津波第二波が押し寄せ、敷地が浸水します。
この浸水の影響により、非常用発電機及び配電盤が損傷し、全交流電源が喪失しました。いわゆるSBOーステーションブラックアウトです

[スライド5]
まとめると
地震により外部電源を喪失し、
津波により、全交流電源を喪失し
冷却系を維持することができず、炉心損傷に至ったということができます。

[スライド6]
国会事故調は、後に、このように提言をしています。
まず、規制機関を一元化し、独立性をもった組織とするべきであること。安全審査指針として、多重故障の想定、立地審査、全交流電源対策を行うべきこと
適切な防災のための法令を策定すべきことです。

[スライド7]
事故後、原子炉に関する規制は原子炉等規制法に一本化され、規制機関も原子力規制委員会に一元化されました。

[スライド8]
しかし、原子力規制委員会においては、すでに、審査の中立性・自立性については疑問がもたれる人事が行われようとしています。

[スライド9]
次に、安全審査指針の問題点について述べます。
すでに、原告ら第一準備書面で述べましたが、原子炉の安全については5層の防護という考え方が用いられています。
事故前は、第1層から第3層までしか規制されていませんでした。世界最高水準というのであれば、これら5層全てにおいて、厳しい規制がなされていなければなりません。

[スライド10]
しかしながら、第2層,第3層段階では、これらの問題が指摘されています。
まず、単一故障指針が見直されていません。単一故障指針とは,単一の原因によって、一つの安全機器のみが機能を喪失することだけを仮定して対策をすればよいというものです 。
先程述べた通り、福島第一原発では、一つの津波という原因によって、複数の電気機器が損傷することがSBOの原因となりました。しかし、新規制基準では単一故障指針が見直されていません。福島第一原発の教訓が生かされていないのです。
また、福島第一原発事故で問題となった、外部電源についても、最も耐震強度が低いCクラスに分類されています。この点でも、福島第一原発事故が教訓化されていないことがわかります。

[スライド11]
次に、第4層についてです。新規制基準では、シビアアクシデント対策が規制されました。しかしながら、その内容には、実効性がありません。例えば、電源対策については恒設設備ではなく,可搬式電源車や可搬式ポンプ等の可搬設備で対応することを基本としています。しかし、 可搬設備は、地震で敷地自体が土砂災害を被った場合に、有効性が保証できません。
また、安全設備についても、ドイツ・フランスの加圧水型原子炉に求められている規格に劣るものです。

[スライド12]
この表の通り、新規制基準は、多重性、コアキャッチャーの要否,格納容器熱除去設備、及び、格納容器の強度について、欧州規格に劣るものとなっています。

[スライド13]
次に、第5層レベルについて,問題点を指摘します。

[スライド14]
まず、新規制基準では、昭和39年より基準とされてきた、立地審査基準が,適用されないことになりました。これは、今回の規制の変更の中でも特に不合理な点です。
立地審査基準とは,仮に,原子炉にて重大な事故が起きたとしても、住民が被曝の影響受けないように、居住地域から、離れた場所に設置しなくては行けないという離隔条件を定めたものです。国会事故調では、福島第一原発事故を踏まえこの立地審査を見直すべきという提言がなされています。しかし、今回,立地審査は厳格化されるのではなく、むしろ削除されました。これは、福島第一原発事故規模の重大事故を仮定すると、既存原子炉の稼働が不可能となるからであると考えられます。立地については、今後詳細に論述する予定です。
次に、避難計画の問題があります。この点は、この後、具体的にのべますが、ここでは、避難計画の策定が稼働の条件となっていないこと、すなわち、避難計画がなくても,法令上は再稼働が認めらレルという問題点を指摘するにとどめます。

[スライド15]
以上の通り、福島第一原発で判明した問題点は、新規制基準によって解消されていません。

すなわち、既存の原子炉について、重大な不備が解消されないまま、行政による再稼働審査がなされているということになります。

しかし、本件は、人格権に基づく差止訴訟です。従って、行政の規制にかかわりなく、原子炉に具体的危険性が認められれば差止めが認容されます。
福島第一原発事故以後、原子炉施設に関する様々な問題点が明らかになっています。裁判所には、これら最新の知見をもとに判断して頂きたいと考えます。

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第2 大飯原発の過酷事故時に想定される被害

(全文は→こちら。)

次に、大飯原発をはじめとする若狭湾の原発で過酷事故が起こったときにどのような放射性物質の放出が想定されるのか、またどのような被害が想定されるのかについて述べます。

放射線被曝に関してはよく聞く「シーベルト」という単位がありますが、人体の放射線被曝については内部被ばく、外部被ばく全体に着目した「実効線量」と甲状腺に蓄積して短期集中的に被ばくする放射性ヨウ素に着目した「甲状腺等価線量」というものがあります。実効線量について、IAEAでは緊急時に「7日間で100mSv超」を住民避難の基準としています。甲状腺等価線量についてはIAEAは「7日間で50mSv超」をヨウ素剤の予防服用を行う基準としています。これに対して物質(例えば水)に含まれる放射性物質の崩壊数に着目し、「放射性物質が1秒間に崩壊する原子の個数(放射能)」を単位にしたものが「ベクレル」です。IAEAは、飲料水等の摂取制限の基準としてセシウム137について200Bq/L、ヨウ素131について300Bq/Lとしています。これらの基準はあくまで原子力の利用を推進する組織であるIAEAが定めたものであり、「これ以下であれば安全」という保障になるものではありません。例えば、厚生労働省は、水道水の平時の管理基準として10Bq/Lという数値を採用しています。

この間、若狭湾の原発については、様々な機関で放射性物質の拡散予測がされています。例えば、福島の事故後に京都府が公表した国のSPEEDIの予測では、甲状腺等価線量が50mSvに達する地域が、京都府北部はもちろん、南丹市、亀岡市、京都市右京区にまで広がる可能性があります。このような広範囲・多人数にヨウ素剤の配布を行うことはほぼ不可能に近いのではないでしょうか。

また、原子力規制委員会が2012年10月に公表した拡散予測では、大飯原発の南方32.2km地点の南丹市までが、「7日間で100mSv」という避難が必要となるレベルに達します。

兵庫県が2014年4月24日に公表した予測では、神戸市、姫路市、尼崎市、西宮市をはじめ、兵庫県の多くの地域について甲状腺等価線量が50mSvを超える可能性があることが指摘されています。兵庫県についても、このように広範囲・多人数に対してヨウ素剤を配布することはほとんど不可能でしょう。

一方、滋賀県は近畿地方の水瓶である琵琶湖の汚染についてシミュレーションを行いました。この結果、飲料水に使う湖の表層水中のヨウ素131について、湖の北側では10日程度、南側では7日程度、IAEAの飲用制限値である300Bq/Lを超える可能性があることが分かりました。これは乳児はもちろん、大人ですら飲用を制限されるレベルです。

このように大きな事故が発生すれば、広い地域で避難が必要になったり、ヨウ素剤を服用しなければならない事態が発生することが分かります。一方、これらのシミュレーションに共通する最大の問題点として、福島第一原発事故並みの事故しか想定していないことが挙げられます。しかし、実際に起きた福島第一原発の事故は、全電源喪失に至った時点で想定された最悪のものではありませんでした。最悪の場合、東京都ですら避難の対象になる事態も予想されていたことは、政府の事故調査委員会報告書でも言及されています。これらのシミュレーションよりもさらに大きな被害が発生することは現実に起こりえることなのです。

では、実際に起こった福島第一原発事故の際、水道水の汚染状況はどのようなものだったのでしょうか。事故後の2011年3月22日、東京都の金町浄水場で210Bq/L、3月22日北千葉浄水場で336Bq/L、3月23日にはちば野菊の里浄水場で220Bq/Lの放射性ヨウ素を検出しました。これは原発から200kmも離れた地域ですら、水道水を飲用できない状態になる可能性が現にあることを示しています。また、首都圏の水道水汚染は、原発から比較的離れているのに放射性物質がまとまって降り注いだ「ホットスポット」の位置にほぼ合致しているのも特徴的です。
北千葉浄水場については、成人でも規制値を超えていましたが、実際に検査したのが後日であったため、この地域の住民は規制値超えの水道水を飲用していた可能性があります。結局、乳児の規制値100Bq/Lを超えていたため、乳児のみの飲用制限がなされましたが、情報が適切に行き渡ったかどうかも分かりません。

もし、大飯原発で過酷事故が起こったら、近畿地方の水道水はどうなるのでしょうか。近畿地方の主要都市部は、淀川水系の水を水道水として使っています。主要な水源は水系の上流にある琵琶湖や、日吉ダム、大戸川ダム、天ヶ瀬ダム、高山ダム、布目ダムやさらに上流にあるダムです。今名前を挙げた琵琶湖やダム、そして河川そのものや取水場、浄水場は、すべてが大飯原発から45~100km以内に入ります。滋賀県による琵琶湖の汚染予測はすでに紹介しましたが、それよりももっと大きな規模で、近畿地方一帯の水源が汚染され、長期間にわたって飲用できなくなる可能性は充分にあるのです。

実際に淀川水系の水を利用している自治体を見ていくと、まず滋賀県全域が琵琶湖の水を使用しています。そして、琵琶湖の南湖が汚染された場合に最も深刻な被害を受けるのは実は京都市です。琵琶湖疏水から取水した水を蹴上の浄水場で浄水し、市内の広い地域に配水する一方、それ以外に大きな水源がないためです。向日市、長岡京市、大山崎町、宇治市をはじめとする京都府南部の自治体も淀川水系の宇治川、木津川の水を使用しています。大阪府・市も深刻です。あの広い大阪平野全体が、淀川からの取水に頼っているのです。淀川からの取水は、神戸市、芦屋市、西宮市、尼崎市の兵庫県の都市部まで行われています。そして、奈良県の県庁所在地である奈良市も木津川の水を水源としています。このような広範囲で、仮に一時期でも、水道水を使えないことになったら、そこから生じる混乱は計り知れません。

結局、大飯原発で過酷事故が発生すれば、近畿一円の住民が水道水を飲めないことになり、その場合、飲料水を確保することは極めて困難となるのです。そのような場合、結局、私たちは、福島第一原発事故のときに首都圏の住民がそうだったように、知らず知らずの間に、または告知を受けた上、汚染された水道水を飲まざるを得なくなるのではないでしょうか。その時の政府の説明も容易に予想が付きます。「放射性物質が入った水を飲んでも直ちに健康に影響はありません」です。ひとたび事故が起これば、人体の健康を守るための規制基準すら、実際には機能しない可能性があります。

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第3 避難計画の問題点

(全文は→こちら。)

1.
次に、避難計画の不備・実現不可能性について弁論します。
福島原発事故により、原発事故を防ぐことはできないこと及び事故により甚大な被害が発生することが明らかになりました。
大飯発電所で過酷事故が起こった場合には、大飯原発立地自治体のみならず広範囲に放射性物質は拡散し、甚大な被害を生じさせます。
それにもかかわらず、大飯発電所から放射性物質が外部環境に放出された場合に、周辺住民の生命・身体に被ばくの危険が及ばないような環境は整備されていません。これから、詳しく述べていきます。

2.
原子力規制委員会の「原子力災害対策指針」(平成25年9月5日全部改正)では、防護措置が必要な区域として3つの区域が設定されています。
1つ目の区域は、PAZといわれる原子力施設から概ね半径5㎞の区域です。この区域は即時避難を実施する区域です。2つ目の区域は、UPZといわれる原子力施設から概ね半径30㎞の区域です。この区域は、確率的影響のリスクを最小限に抑えるため、緊急時防護措置を準備する区域です。3つ目の区域はPPAといわれる区域ですが、現時点で何ら具体的な範囲が定められておらず、放射線の影響は具体化されていません。

3.
しかし、規制庁が重点的に防災計画を進める地域を半径30㎞に限定することについては、今から申し上げる3つの問題点があります。
1つ目は、規制庁は、実際の想定において、福島第一原発事故以上の放射性物質が放出されることを想定してシュミレーションを行っていないという点です。
2つ目は、規制庁は、原発からの方位や距離別にどの程度の汚染濃度の可能性があるのかについての推定の際に、風向きの影響について過少評価して計算しているという点です。
3つ目は、従前の公衆の被ばく限度は、年間1mmシーベルトという原則や内部被ばくを無視しているという点です。
これらの点から、重点的に防災計画を進める地域を半径30㎞に限定することが間違っていることは明らかです。

これらに加えて、放射線は同心円状に拡散するわけではありませんから、放射線の影響を同心円状に捉えること自体も、放射線の影響が及ぶ範囲を不当に狭めていると言わざるを得ません。
これらのことから、原子力規制委員会の「原子力災害対策指針」による区域設定は機械的にすぎ、かつ不十分であることは明らかです。

4.
オフサイトセンター(緊急事態応急対策等拠点施設)は、原子力災害が発生した場合に、現地において、国や地方公共団体の災害対策本部等が、連携のとれた原子力災害対策を講じていくための拠点となります。具体的には、オフサイトセンターは、住民に対し避難指示を行い、広報を行います。

5.
しかし、大飯原発のオフサイトセンター(福井県大飯原子力防災センター)には問題があります。まず、そのオフサイトセンターは、大飯原発から約7キロメートルしか離れていない、おおい町内の海岸沿い・海抜わずか2メートルの場所にあるという点です。その敷地は海に接しており、護岸から施設までは100メートル足らずです。おおい町が作成したハザードマップにおいては、オフサイトセンターの位置する地域は津波襲来時の浸水地域であり、防波堤のかさ上げは予定されていません。オフサイトセンターの非常時の電源は、本館に隣接する建屋に設置されたディーゼル発電機1基であり、発電機と建屋は防水措置が取られていないため、排気口から水が入ると使用できなくなります。次に、オフサイトセンターの敷地は、建設残土を使用した埋め立て地で地盤が安定しない場所であるため、地震による液状化現象が生じた場合、護岸の崩壊・地盤沈下が生じる可能性が高いという点です。実際、敷地周辺には既に地盤に隆起や道路のひび割れが生じています。加えて、施設の空調設備に放射性物質の流入を防ぐ空気浄化フィルターは設置されていないという点です。オフサイトセンターの移転計画も、結局延期となっています。
東日本大震災では、海抜8メートルに位置した東北電力女川(おながわ)原発のオフサイトセンターに津波が押し寄せ、当時の所長や避難してきた住民らが犠牲になっています。
これらのことを考慮すれば、大飯原発のオフサイトセンターについては、災害時に機能を失う可能性が非常に高いと言わざるを得ません。
国が定めている情報伝達方法では住民が迅速的確な情報を得られる確実性
がないということです。

6.各原発周辺自治体における避難計画の問題点
大飯発電所から放射性物質が外部環境に放出された場合に住民の生命・身体に危険が及ぶ地域における避難計画にも多くの問題があります。今回、おおい町、高浜町、舞鶴市、宮津市、綾部市の避難計画を取り上げます。
まず、地域の防災計画は、県や市町村が国・関西電力のもつ正確な情報を迅速に受け取ることができるという前提で計画されています。しかし、そもそも迅速的確な情報が得られない可能性がありますから、その前提が崩れるということがあり得ます。
次に、避難手段についても、問題があります。綾部市は、避難計画において、そもそも具体的な避難手段を定めていないという点で最も問題があります。
ほかの地域においては、一応避難手段は定めていますが、その内容は非現実的で不十分です。

7.
まず、周辺地域の避難計画では、避難手段として、主に自家用車により避難する、とされていますが、これは非現実的です。
その理由として、①地震・津波等により、道路・橋が遮断されたり通行できなくなる可能性が高いということが挙げられます。積雪などの季節的問題もあります。次に、②渋滞の問題があります。避難が必要となった場合,周辺住民は一斉に自家用車を運転して,避難場所に向かうことになりますが、大飯原発周辺の主要な道路は,国道27号線しかありません。そして国道27号線は片側1車線の道路であるため,大飯原発周辺の住民が一斉に避難のために自家用車を運転して,国道27号線に入ってくれば,確実に渋滞が起こります。そして、渋滞が発生した後も次々と国道27号線に避難所に自動車が流入してきますし,原発に近い場所に住んでいる住民ほど,渋滞の最後方(さいこうほう)に付くことになるため,避難場所になかなか到着できず,被ばくの危険にさらされることになります。
この点、福井県において一斉避難した場合には、10㎞圏内の住民が10㎞圏外に出るのに5時間10分,20㎞圏外に出るのが6時間10分,30㎞圏外に出るのが7時間10分,避難先に到着するのに7時間40分かかるという試算も出ています。しかも、この試算はあくまで何のトラブルも発生せずに順調に避難が進んだ場合のものであり,実際にこの時間で避難が完了するとは到底考えられません。
そして、仮に自家用車で避難したとしても、避難受入先には少しの車しか駐車できません。とすれば、住民は、駐車可能な受け入れ先を探して限られたガソリンの中で移動しつづけるか、車を路上に放置するしかありません。そして、車が路上に放置された場合、渋滞を生み出し、道路を通行不可能にし、自家用車による避難を不可能にすることになるのです。

8.
この表は、福井県と京都府、そして大飯原発周辺の市町村の人口と自家用車台数・バス台数を示したものです。バスの台数が人口に比して圧倒的に不足していること、自家用車で避難するとしてもこれほど多くの人が一度に、これほど多くの台数で避難すると、渋滞が起こり、駐車場の不足が起こり、迅速な避難ができなくなることは明らかです。
これらのことから、住民が、被ばくすることなく、自家用車やバスで避難するというのは非現実的だということがおわかりいただけたかと思います。実際に、福島原発事故でも、避難道路の大渋滞・駐車場の不足・避難の際の津波の被害・深刻なガソリン不足が発生しています。
そのほか、自衛隊、海上保安庁等保有の車両等による避難もその数には限りがありますし、地震・津波があった時に、避難を指示する人自体が被災してしまっていて避難を指示する人員が不足するのではないかとの問題もあります。

9.
そして、特に問題となるのが、要援護者をどのように安全に避難させるか、という問題です。
要援護者は長距離・長時間の避難により体調を崩しやすくなりますし、周囲の人も被災しているのですから要援護者に十分な配慮を行うことができない可能性もあります。実際に、福島原発事故では、要援護者の避難は困難を極め、平成23年3月末までの死亡者数は、福島第一原発から20㎞圏内の7つの病院や介護老人保健施設の合計で少なくとも60人に上りました。

以上のことからすれば、大飯発電所から放射性物質が外部環境に放出された場合に住民の生命・身体に危険が及ぶ地域において、迅速的確な情報に基づいた現実的な避難計画は定められていないと言わざるを得ません。

10.
最後に、大飯発電所のから射性物質が放出された場合、十分に対処できるのかという観点から考えてみましょう。
平成25年9月16日、台風18号により、高速増殖炉「もんじゅ」につながる一本道のトンネルの前後2か所で土砂崩れと倒木があり、外部からもんじゅとの行き来ができなくなり、もんじゅと原子力規制庁を結ぶ緊急時対策支援システム用の光ケーブルが破損し、原子炉の状況を伝送するシステムが一時停止しました
大飯発電所は、周囲を山・海に囲まれた場所に位置しており、大飯発電所への道路は県道241号線のみです。ですから、災害時に、もんじゅと同様に孤立し、大飯発電所から放射性物質が外部環境に放出されるような事態に迅速に対策・対処できなくなることとなる可能性があります。

大飯発電所周辺の地域においては、大飯発電所から放射性物質が外部環境に放出された場合に、住民が迅速・的確に避難し、被ばくの危険から身を守ることのできるような避難計画は作られていません。すなわち、放射性物質が外部環境に放出されることによる放射線の影響を緩和するため、オフサイト(発電所外)での緊急時対応を準備するという措置はなされておらず、IAEAの安全基準すら満たされていないということです。今、大飯原発が事故を起こせば、大量の放射性物質が広範囲に拡散するにもかかわらず、全住民が、被ばくすることなく安全に迅速に避難することはできない、ということなのです。

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第4 5月21日の福井地裁判決について

(全文は→こちら。)

1 判決内容
平成26年5月21日、福井地方裁判所は、人格権に基づく大飯原発の稼働差止め請求について、大飯原発から250km圏内に居住する原告の請求を認容しました。

2 判決の理由について
これまで、原発に関する訴訟において、裁判所は、国が作成した基準が信頼できる内容であることを前提に判断を行ってきました。しかし、このような判断の仕方では、実際に、福島原発事故を防ぐことはできませんでした。

福井地裁判決は、次のように述べ、これまでの裁判所の判断枠組みを捨て去りました。「改正原子炉規制法に基づく新規制基準が原子力発電所の安全性に関わる問題のうちいくつかを電力会社の自主的判断に委ねていたとしても、その事項についても裁判所の判断が及ぼされるべきであるし、新規制基準の対象となっている事項に関しても新規制基準への適合性や原子力規制委員会による新規制基準への適合性の審査の適否という観点からではなく、裁判所の判断が及ぼされるべき」であり、原発差し止めの判断の対象は、「生命を守り生活を維持する利益が極めて広範に奪われる事態を招く具体的危険性が万が一でもあるか」である。

このように、福井地裁判決がこれまでの、裁判所の判断枠組みを捨て、裁判所自身が原発の具体的危険性を判断するとしたのは、福島原発事故によって、原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさが十分明らかとなったからです。

取り返しのつかない甚大な被害をもたらした福島原発事故後においては、
「具体的危険性が万が一にもあるのかが」判断対象とされるべきであるという福井地裁判決の指摘は、まさに原告が訴状において主張してきた内容です。本裁判においても、京都地方裁判所は、福島事故の被害を踏まえた上で、同様の判断枠組みを採用するべきであります。

3 被告(関西電力)の主張に対する判断
福井地裁での裁判において、被告は、仮に原発を差し止めれば、経済的損失や二酸化炭素の増加による環境への影響があると主張しました。
しかし、福井地裁判決は、「極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じることはできない」「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富である。」「原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである。」旨述べ被告の主張を退けています。
本来、国民が安全に安心して暮らせる事こそが、何よりも大切にされなければならないことであり、経済的な利益のために、国民の安全な暮らしがおびやかされる事など許されるはずがありません。
福島地裁判決は、具体的危険性が万が一にもあるとの判断がなされた以上はいかなる反論も許さないとしました。

4 京都地裁に求めるもの
福井地裁判決は、「(福島原発事故のような)事態を招く具体的危険性が万が一でもあるのかが判断の対象とされるべきであり、」と判断枠組みを述べた後に続けて、「福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しい」と述べています。
実際に福島原発事故が起こり、回復不可能な損害を発生し、原発の危険性が誰の目にも明かとなった今、京都地方裁判所は、福井地裁判決が述べるように、裁判所に課された重大な責務を放棄することなく、大飯原発の具体的危険性を認定するべきです。

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第5 意見陳述(原告 萩原ゆきみ)

(萩原ゆきみさんの「陳述資料」は、以下には掲載していませんが、PDFファイルとしてダウンロードできます。)
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原告の萩原ゆきみと申します。

私は、原発事故前、郡山市で、夫と6歳と9歳の子供と4人で暮らしていました。3月15日に、子供二人と私の三人で大阪に避難し、 その約2年後より夫と共に京都市内で、暮らしています。

3月12日に原発が爆発しライフラインが断たれました。ラジオが原発の様子を漠然と伝えていましたが、枝野官房長官は「直ちに健康に影響はありません」と繰り返すだけで、避難を勧告するどころか、放射能の危険から身を守る術さえ教えてくれませんでした。

原発事故の後、残された人々は、食べ物と飲み物、ガソリンを確保するために、外で、毎日、何時間もスーパーや自衛隊の給水車の行列に並び続けてしまいました。

私は、次にいつ、食べ物や飲み物が手に入るかわからない恐怖に怯えました。一日にコップ一杯分の水分しかとれず、食事もいつもの4分の1しか摂れなかったからです。
子供 たちさえ、お腹半分しか食べられませんでした。

13日だったと思いますが、大阪の親戚から「原発が危ないから避難した方がいい」と、言われました。しかし、夫婦共に全くピンときませんでした。

それから私は、「おかしい」と思い始めました。道路が寸断されたわけでもないのに物資が届かないの は、「福島が放射能で汚染され、怖くて物資が届けられないんだ!?」「福島は見捨てられたのでは?! このま ま福島にいたら、餓死するかも?!放射能にやられてしまうかも?!」と底知れぬ恐怖に怯えました。

実際、4月に入ってしばらくするまで、物資は殆ど手に入らなかった。しかし県外を一歩出ると売っていた。と言うのです。

14日に、出先で「かなりの高い確率で一週間以 内に本震と同程度の地震が来る」と聞きました。私は、この話が、真実であれば、原発は本当に危ないのかも?「命が危ない! 直ちに避難しなければ!!」と思い、夫が避難できないなら私達3人が福島を離れ、せめて夫の食糧を確保しなければ!と焦りました。
そこで家まで走り続け、10分で荷造りをし、着の身着のままで、空港に行き、1000人以上かと思われるキャンセル待ちをしました。「いつ大量の放射能が入って来るのだろうか?!」と恐怖に震えながら空港で眠れぬ一夜を明かし、翌日午前の便に乗りました。

大阪に着いてやっと安心して深呼吸をしましたが、ビオラの花 を見たとたん、涙が溢れ続けました。

今でも、毎日のようにあらゆる所で福島を思い出し胸が苦しくなります。町並みを見ても、山梔子や金木犀の香りをかいでも、望郷の念はつのるばかりです。

私たちは、原発事故の9年前に、夢のマイホームを建てました。両家の両親と同居を夢見てアレルゲンを抑えた建材で造った思い出深い、愛しい家を手放すのは身を切られるように辛かったです。

夫は郡山の自宅から二本松の勤務先にバイクで30分かけて通勤していたので、被ばくが心配でした。市民放射能測定所で、通勤に来ていたジャンパーを測定してもらい衝撃を受けました。629.45ベクレル/kgの放射性核種で汚染されていました。
この数値は、原発事故前であれば低レベル放射性廃棄物の範疇です。広域処理により焼却する場合でも焼却炉によって240Bq/kg以下又は480Bq/kg以下のものしか焼却出来ません。

これは空気が恐ろしく汚染されていたことを意味しており、夫の 肺の中は、汚染され続けました。何故なら、「肺や心臓に入った放射能は取れない」と言われているからです。

それから、我が家の庭の土は370 kBq/㎡(5700 Bq / ㎏)でした。これはチェルノブイリで言えば「移住権利ゾーン《185~555 kBq / ㎡の汚染地》」に入る汚染度です。(空間線量で言えば、5mSv/年以上の所があり、移住義務ゾーンになります。)

又、2012年の夏休みに私達3人は、震災後初めて自宅に帰りました。

乾いた布で埃とりをした日より5日間、上の子は毎日鼻血を出し、下の子は3回、私は2回鼻血を出しました。事故前も、事故後も出していなかったし、京都に帰ってからも出しませんでした。

そして、次の年の(2013年)4月に夫が避難して来た直後に、また子供達が鼻血を出すようになりました。
放射線量を測ってみると私達母子だけが暮らしていただけの時は0.07μSv前後でしたが、それより上がって0.08μSv前後ありました。今の市営住宅近くの道路は0.03μSv位です。

荷物の大部分は処分してきましたが、夫と共に福島の荷物が増えていたのです。
それから1ヶ月位は子供達が毎日、鼻血を出していたのですが、出さなくなったので、線量を測ってみると、3人で暮らしていた時よりも線量が低くなっていました。
夫がマメに掃除、(除染)をしてくれたからだと思います。

しかし、それから1年6ヶ月が経った現在、子供達がまた、鼻血を度々出します。この現実を認めたくなくて放射線量を測っていませんでしたが、この陳述を切っ掛けに家の中を測ってみるとやはり放射線量が更に上がっていました。
夫が来てから、親戚に預けていた福島からの荷物を少しずつ持ってきたり、福島で使っていた車に乗り降りしているせいかと思います。

上の子が毎晩二段ベッドの上に上がると寝付くまでずっと咳をします。数字がドンドン上がっていく線量計を見ながら、愛しい我が子が毎晩眠るベッドだというのに、私は息を止めていました。線量計は0.096μSvを示していました。誰か助けて下さい!

外国製の線量計で測ったら、もっと高い値が出ます。

鼻血や咳位なら良いのです。しかし、今後、「晩発性の被曝症状が出てくるのかしれない」と思うと健康不安は底知れぬ恐怖となって襲ってきます。

私たちの、この避難の経験から3点、申し上げます。

① まず、「大飯原発で事故があった時にも、政府が真実を伝えてくれるとは思えません」

夫が買い出しに並んでいた頃、(後で知ったことですが)郡山でも既に20μSv/hの放射性物質が降っていましたが、妊婦さんも赤ちゃんを背負ったお母さんも並んでしまいました。15日の午後から夜にかけて、と、22日には放射性プルームが広がり、大量の放射能が降りました。福島の人達はこれを無防 備に浴びさせられました。スピーディー(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の結果も知らされませんでした。

② 次に、策定されつつある避難計画は、被災地と被災者の実態に全くそぐわないです。政府の指示の下、整然と避難するよう想定されているようです。

しかし、被災地には生身の人間が暮らしています。食料、他の物資は届けられるのでしょうか?これらがないのに、指示があるまで屋内に退避しておれと言うのでしょうか?

③ 最後に、避難区域が狭すぎると思います。

避難区域は、5キロ、30キロとされています。しかし、大飯原発差止め福井判決は、半径250キロの範囲に取 り返しのつかない被害が出ると言いました。次起きる原発事故が福島原発事故程度に留まるとどうして言えるのでしょうか。

仮に福島の事故程度に留まるとしても、私たちが暮らしていた郡山市が福島原発から60キロの距離にあったことを ご紹介するまでもなく、被害範囲と避難の実態から、かけ離れた計画だと思います。

私は、このような余りにもいい加減過ぎる避難計画で、原発周辺の住民に納得せよというのは、酷すぎると思います。

アメリカの西海岸の放射線量も福島原発事故後は4万倍になりました。
それなのに、日本の原発が一基でも再稼働する事になれば、世界中の反感を買う事になるのではないでしょうか?

又、原発事故の影響は、同心円上に等しく拡がるものではなく、関東からの避難者に健康被害が出ていると何度も聞いています。

更に、空間線量の低い所でも、食べ物等を通して放射能の影響で苦しむ人々がいます。私達母子は郡山市に放射能が大量に飛ぶ前に福島を離れましたが、それでも2011年の初夏より、数々の酷い被曝症状に苦しんでいます。今も、症状がいくらか出ています。

私は体力が極端に無くなりました。それでも身体にムチ打つように毎週金曜日関電前行動や各種集会等へ数多く行っていました。それは単に、夫を始め被災地に残った人々を思いながら、「見捨てられて良い命があるはずがない!諦められる筈がない!」と心に強く思ったからです。

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第6 意見陳述(原告 広原盛明 地域計画、都市計画 京都府立大学名誉教授・元学長)

はじめに

私は地域計画、都市計画の研究者です。専門資格は工学博士、都市計画及び地方計画技術士、そして一級建築士です。阪神・淡路大震災に際しては被災地の調査研究をはじめ、弁護士会、建築士会、不動産鑑定士会、税理士会など各種の専門職能団体を網羅した「阪神・淡路まちづくり支援機構」を組織し、中長期にわたる復興支援活動を続けてきました。東日本大震災においても支援活動に参加し、被災自治体の復興計画の検討など専門的な助言活動に携わってきました。今回は、私の専門分野から主として原子力規制委員会の原発新規制基準の問題点について意見を述べたいと思います。

原発立地・再稼動問題に関する3つの課題

原発立地・再稼動問題に関しては、検討すべき3つの課題があります。第1は、原発自体の安全性に関する技術的工学的な検討です。第2は、原発立地に関する地域計画・都市計画的な検討および万一事故が発生した場合の防災計画や避難計画の検討です。第3は、原発稼動にともなう使用済み核燃料や高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設や最終処分場に関する検討です。これらの検討課題は、原発立地・再稼動に際してはいずれも切り離すことができない三位一体の検討課題ですが、私は主として自分の専門分野とかかわる第2の検討課題について意見を述べたいと思います。
この点に関する最大の問題は、新規制基準において従来の原子炉立地審査指針が適用されなくなったことです。この立地審査指針は、原子炉の万一の事故においても公衆の安全を守り、人の生命・身体を保護するための極めて重要な審査指針です。詳細な内容は時間の制約のため省きますが、要するに万一原発事故が発生した場合においても、周辺住民が放射線障害を受けないように、あるいは万一被爆してもそれが重大なレベルに達しないように、原発の位置を住民の居住地域から遠く離さなければならないという審査指針です。
地域計画や都市計画の分野では、土地利用規制と施設立地規制を組み合わせて国民生活の安全を守り、自然環境の保全に努めることになっています。国土や地域が無秩序な開発によって荒廃し、生活環境が破壊されて国民の生業や生活に悪影響が及ぶことを防止するため、国土・地域の開発や土地利用に関するルールを定め、そこに立地する各種施設の種類や規模を規制することで地域空間の秩序と安寧を守る仕組みになっているのです。
ですから、史上最大の危険施設である原発に対しては史上最大の立地規制が求められます。従来の原子炉立地審査指針が示すように、第1に原発周辺地域は非居住地域でなければならず、第2にその外側の地域は人口低密地帯であることが必要条件であり、さらに第3は人口密集地帯から遥か遠く離れていなければならないとする立地原則です。しかし「原発安全神話」が横行する時代に建設された中国電力島根原発は、驚くべきことに10キロ圏内に島根県庁、松江市役所、原子力防災センター、県警察本部、島根大学などの公共施設が集中し、30キロ圏内の避難計画区域には県人口70万人の実に6割に近い40万人の住民が暮らしています(私の妻の実家も10キロ圏内にあります)。これは従来の原発立地審査指針がいかに恣意的に運用されてきたかを示すものです。

新規制基準に立地審査指針が適用されなくなった理由

しかし福島第1原発事故以降、このような恣意的運用は許されなくなりました。立地審査指針を厳密に適用すると、狭い日本国土のどこにも原発立地が認められなくなり、ほとんど全ての原発を停止せざるを得ないといった状況が生まれたからです。このため、政府は原発を再稼動させるために立地審査指針を適用しないという極め付きの政治的判断を下し、しかも30キロ圏内の避難計画の実効性を保障しないまま原発を再稼動させるという危険極まりない政策決定を行いました。これは、国民の生命・身体及び財産を守るために原発を規制するのではなく、原発を再稼動させるために規制基準を曲げるという本末転倒した考え方に他なりません。
日本の国土はそれほど大きくはありません。しかも、世界4大プレートの交差点に位置する日本列島は、大地震が集中的に発生する世界有数の地震発生地帯です。そんな所に54基(世界第3位)もの原発が稼動していたのですから驚く他ありませんが、その危険性を余すところなく実証したのが福島第1原発事故でした。福島第1原発事故が発生したとき、最悪の場合、退避区域が原発から200~300キロメートルも離れた首都圏全体に及び、3千万人に及ぶ住民の避難が一時検討されるといった緊急事態が生まれました。そして、首相官邸や国会を西日本に移転させる可能性さえが検討されたのです。
この事態を重く見た福井地裁大飯原発3、4号機運転差止請求事件判決は、当時の原子力委員会委員長が福島第1原発から250キロメートル圏内の住民に対する避難勧告を検討した経緯や、チエルノブイリ原発事故の場合も住民の避難区域が同様の規模に及んでいることを指摘し、原発から250キロメートル圏内に居住する住民に具体的な危険があると認めました。この判決を適用すると、日本国土は沖縄地方と北海道根室地域の一部を除いてすべて原発250キロメートル圏で覆われることになり、原発再稼動は不可能になります。
ところが政府は、規制委員会が規制基準に合致していると判断すれば、後は地元自治体の同意や理解が得られれば原発再稼動は可能だと言っています。しかも地元自治体は原発立地自治体に限定され、政府が避難計画の策定を義務付けている原発30キロ圏内の自治体は含まれていません。これでは、地元自治体はもとより国土全体にわたって多大の影響を及ぼす原子力災害から国民を守ることはできません。

巨大災害・原発災害を見落とした国土審議会委員会

それでは、政府の原発立地・再稼動政策は国土計画上どのように位置付けられているのでしょうか。2005年に国土総合開発法が改正され、国土形成計画法と呼ばれる法律が新しく制定されました。この法律にもとづく国土計画は国土形成計画と呼ばれ、国土交通省の諮問機関である国土審議会の答申にもとづいて閣議決定されることになっています。現在の国土形成計画は2008年に策定されたもので、次の国土形成計画の準備のための作業がすでに2010年9月から始まっていました。国土審議会政策部会に長期展望委員会が設置され、5ヵ月後にはやくも次の国土形成計画の素案となる「国土の長期展望」(中間とりまとめ)が発表されました。この日は奇しくも、東日本大震災による原発事故が発生する僅か18日前の2011年2月21日のことでした。
ところが驚くべきことに、「2050年頃までの国土の長期展望を行い、将来的な国土の重要課題について検討する」ことを目的にした国土形成計画の素案には、 長期展望の前提となる「人口減少と高齢化」「気温の上昇等の気候変動」「世界の状況変化とグローバル化の進展」の3大潮流は取り上げられていましたが、巨大災害はもとより原発災害に関する項目が一切ありませんでした。このことは、国土計画を検討するに当たって、政府がいかに巨大災害と原発災害を軽視していたかを端的に示すものです。

原発災害・原発問題に触れない「国土のグランドデザイン2050」

国土交通省は「国土の長期展望」(国土形成計画素案)の根本的な見直しを迫られました。しかしながら、今年2014年7月に発表された「国土のグランドデザイン2050」においては、「国家の存亡」にかかわる2つの危機のうち人口減少問題のほうは詳述されているのですが、巨大災害問題については原発災害・原発問題に関する記述が一切ないのです。そんなことはあり得ない、何かの間違いではないかと思い、数百頁に及ぶ本文と資料の隅々まで読み返してみたのですが、それらしき箇所がいっこうに見つかりません。「原発災害」「原発問題」「原発再稼動」など「原発」に関する記述が徹底的に削除され、見事なまでに「原発抜き」の国土グランドデザイン(国土形成計画素案)になっているではありませんか。
3・11の福島原発災害以降、およそ日本の国土計画を考えるに当たっては原発問題をどう扱うかが最大のテーマであり、我が国に課せられた国際的責任でもあるはずです。もっと言えば、人口が密集するこの狭い日本国土において原発問題をどう処理するかは、これからの地球環境をサステイナブルに維持していくための世界史的課題にもつながっています。このことがこれまでの国土計画策定作業とは決定的に異なる点であり、原発問題への対応を示さない国土計画などあり得ないし、考えられもしません。巨大災害問題であれエネルギー問題であれ、原発災害や原発問題をどう考えるかによって、日本の国土デザインの方向は180度変わるといっても過言ではないからです。

原発は日本国土の喉元深く突き刺さった骨

しかるに、日本国土の将来像を描く「国土のグランドデザイン2050」の策定作業において原発災害・原発問題に関する一切の議論が封印され、あろうことか「原発抜き」の国土計画構想が公表されるという前代未聞の事態が起こりました。この事態は、原発災害・原発問題への対処がもはや政府の能力をはるかに超える難題であり、国そのものが日本の将来展望を描くことができない存在であることを示したものといえます。このことはまた、原発が「日本国土の喉元深く突き刺さった骨」であり、もはや政府自らがその骨を抜くことができなくなった状態を示しています。
政府が解決できなくなった原発災害・原発問題への対応をこのまま続けることは許されません。わたしは国民の生命・身体と財産を守るために、司法が英断をもって日本の全原発の再稼動を中止することを期待して、私の意見陳述を終わります。

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以上