◆原告第5準備書面
第4 規制組織及び原子力法規制の問題点

原告第5準備書面
-新規制基準の瑕疵について- 目次

第4 規制組織及び原子力法規制の問題点

1 規制組織の独立性・透明性への疑問

 2012(平成24)年9月19日、環境省の外局として発足した原子力規制委員会は、委員長ほか4名の委員で構成される。この原子力規制委員会の下に、事務局として規制庁がおかれ、2013(平成25)年3月現在で473名体制となった。
  しかしながら、国会事故調の提言の一つである、「独立性」については、当初から疑問視されていた。すなわち、田中俊一原子力規制委員会委員長は、2007(平成19)年1月に原子力委員会(当時)の委員長代理に就任しているが、この原子力委員会について「原子力の平和利用を推進する組織」であると自認している(原子力規制委員会ホームページ、委員長プロフィールより)。
 また、2014(平成26)年9月より委員に就任することが予定されている田中知氏は、規制委員会発足当時に制定されたガイドラインに反しているとの報道がなされている。すなわち、ガイドラインによれば、「就任直前の3年間に原発事業者などの役員や従業員だったり、年間50万円以上の報酬を受けていたりした人は委員から除外する」との規定があるが、田中知氏は、2014(平成26)年前半まで、原発事業者である日本原燃と三菱FBRシステムズから報酬を受け取っていたのである(甲62  平成26年7月5日朝日新聞記事)。
 以上のとおり、日本の原子力の規制組織は、正常な姿に改善されたとは到底いえない状況である。

2 原子力法規制の問題

 いわゆる新規制基準は、原子力委員会委員長自身が、安全審査ではなく、基準の適合性審査と強調するとおり(甲64 :原子力規制委員会委員長定例記者会見)、あくまで原子炉の適合性の審査にすぎず、市民の生命・身体の安全を第一の目的として策定されたものではない。
 また、後述するとおり、新規制基準は、国会事故調が明示的に列挙した(1)複合災害による多重故障の想定、(2)立地審査指針の見直し、(3)長時間にわたる全交流電源喪失へも実効的な対応をしていない。特に、(2)の立地審査指針については、国会事故調は、「被居住地域や低人口設定の前提となる放射性物質の放出量は、これらの区域・地帯が原子炉施設の敷地内に収まるように逆算されていた疑いがある」(甲3 6.1.3.2))と明確に指摘していた。しかるに、新規制基準作成にあたり、立地審査指針は見直されなかったばかりか、その運用・適用自体が事実上放棄されてしまった。
 さらに、依然として、「原子炉の安全性の確保と防災対策は、関係しない」ままである。すなわち、原子力規制委員会委員長は、深層防護の第5層の防災対策について責任をもつのは内閣府であり、規制委員会や規制庁の仕事ではないと繰り返し強調している。つい先頃行われた、川内原発の事実上の適合性審査発表後の定例記者会見においても、「私どもの規制の範囲外」「防災避難計画を作る、そのこと自身は規制委員会、規制庁の仕事ではない。」(甲64)と発言している。このように、原子力規制委員会及び規制庁は、市民の生命・身体の安全への責任を担う役割を放棄しているのである。

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