◆第6回口頭弁論 原告意見陳述 要旨

原告  三澤 正之

私は、福島へボランティア支援に行った一昨年、震災当時のまま店の前には商品が放置されたまま、倒壊したまま放置された家屋、そして、草に覆われたままの田畑、信号機だけが点滅する、人の気配も感じられない、まさに死の街を目の当たりにしました。立入禁止区域から仮設住宅に避難している方の話を聞くことが出来ました。その方は被災後、4~5回も避難場所を転々とされ、やっとの思いで今の仮設住宅にたどり着くことができたとのこと。話を聞く中で、一番感じたことは、放射能汚染で自分の家に戻れない、それに何よりも、田や畑で耕作できないこと、原発事故で職場がなくなったことで命の糧となる生活基盤を失った悔しさと無念さを語られたとき、私は胸を強く締め付けられる思いをしました。そして、いつ戻ることができるかも分からない将来への不安を思いやるとき、再び、原発事故で故郷や生活基盤を奪われる人が出ないように、そのためにも、原発再稼働をさせてはいけない、原発を無くしてきたい、その思いを聞いていただきたくて、ここに立たせて頂きました。

私の家族は、かわいい孫を含め、8人家族です。高浜原発から15キロ、舞鶴湾を臨むところに住んでいます。舞鶴は、高浜原発からも大飯原発からも、30キロ圏内にほとんどが入り、88,787人が避難対象者となっています。一旦、原発事故が起きたら、無事避難できるか、とても心配です。市民からは、「ヨウ素剤まで配って、再稼働せなあかんのか。」との声が聞かれます。

舞鶴市の避難計画を診ても、大枠は書かれていますが、まだまだ決まっていないことが多く、どこに避難したら良いのか分からない状況です。事故の際の「避難等に関する情報伝達」についてもテレビ・ラジオ・広報車・有線放送などあらゆる手段を使うとされていますが、住民の問い合わせる根本となる専用電話(現在は、舞鶴市企画管理部危機管理室危機管理防災課0773-63-1089)を備えた窓口の設置、人員配置を行うとしていますが、体制は具体化していません。一斉に市の代表電話にかかってくれば、対応できないでしょう。

また、避難先についても、南方面(京都府内)、西方面(阪神方面)の地域は公表されていますが、実際にどこに逃げたら良いのか、受け入れ施設も、まだ公表されておらず、どこを目指して行ったらいいのか分かりません。西方面の施設はほぼ決まっており、南方面の受け入れ施設は、まだ検討中で公表できないとのことです。

要支援者、病院、学校、園児については、「各施設、管理者が定める避難計画に基づき」となっていますが、決まっていません。「今後、京都府などで作成されるひな形に基づいて」となっているとか。私の家族の例を考えてみても、私は綾部に勤務しており、大人はそれぞれ職場におり、事故が起きれば、こどもを学校に迎えに行くのか、学校単位で避難してくれるのか判らず、本当に孫たちが無事避難できる保障がありません。
避難手段として、バス・乗用車となっていますが、避難時集合場所が自治会ごとに定められていますが、多いところは、4000名を超えています。倉橋小・新舞鶴小・倉橋第二小・青葉中などです。しかし、集まった市民を無事避難させる方法については全く展望が見えてきません。今、示されていることは、資料では、舞鶴市内における「協力に関する協定締結事業者一覧」のバス71台、ワゴン2台、タクシー121台の計3500人のみです。このような状況で、避難場所に集まった人々を避難させることは困難です。

京都府のホームページの「避難時間シミュレーション」では
(1) PAZ圏内においては避難指示から直ちに避難が始まり、1時間以内に圏内のすべての住民が避難開始。全ての住民が避難完了まで、6時間10分~8時間とされています。
(2) 5~10㎞圏については「PAZ避難開始から20時間後に避難開始(屋内退避)」とされ、「発電所からの距離に応じて、自治会単位で避難時集結場所に集結し、避難する」、10~20㎞圏、20~30㎞圏はそれぞれ前の圏の避難者が90%、UPZを離脱した時点で避難開始となっており、避難完了まで15時間10分~29時間20分とされています。

このシミュレーションは、

  1. 大混乱の中で、発電所からの距離で区切った段階的退避、時間差退避は実効性があるとは思えません。
  2. 一旦、過酷事故があった場合、約19分でメルトダウン、約90分で圧力容器に穴が空き、格納容器から放射性物質漏洩が始まります。この進行に対して逃げるのが間に合いません。
  3. 地震、津波、積雪の想定もしていません。国道27号線は海抜の低いところを通り、高速道路もこの間の大雨で度々通行止めとなっています。福島県では避難は地獄絵を見るようだったと言われましたが、複合災害となれば、舞鶴は一層の大混乱に陥ることが考えられます。
  4. 避難手段として、バス利用1350台(うち600台がUPZ内をピストン輸送)とされていますが、福島県浪江町の馬場町長さんの話でも、避難に貸切バスを確保したが、放射能汚染区域には運転手さんが入ってこなかった。運行管理者も入れなかった。外からバスは入ってこないと考えて、想定外の想定外の事態が起こる。実現性は難しい。と言われていました。

これらの不安は直近に行われた舞鶴市職労の市民アンケートでも

  1.   高浜・大飯原発の再稼働に賛成20%に対し、反対63%
  2.  避難方法について、知っている34%、知らない63%
  3.  避難計画がじっさいに機能すると思うかに対し、機能する・ある程度機能する17%、機能しない、あまり機能しない69%となっており、舞鶴市民への原発への思いがここに示されています。

これらのことからも避難計画が、現実に機能するとは、とても思えません。まして複合災害となれば、さらなる大混乱が考えられます。また、福島第一原発の原因究明が行われず、今なお事故が収束せず、福島県で12万人が避難している福島の現実を見れば、一旦事故が起きれば、いつ戻れるのか分からず、戻れたとしても子どもの事を考えると一緒に住めるかどうか、そして、生活基盤は失われ、仕事がなくなったとき家のローンは、これからの生活はと考えると不安は山ほどあります。そのためにも、再稼働はせず、原発そのものをなくすことが、一番だと思います。原発の再稼働を容認する人に「全ての生活が失われる覚悟があなたにありますか」と問いたいとの言葉は重く感じられます。

大きな力で、利権のための再稼働が間近に迫ってきています。いのちとくらしを守り、ふるさとで家族ともども安心して暮らせるよう、私たち庶民は世論と運動で、そして、憲法13条・幸福追求権、25条・生存権、29条財産権などをはじめ、法律・条例で守られる以外にありません。

賢明なる判断をお願い致します。

以 上