◆ 原告第10準備書面
第3 過去に大飯原発で実際に発生した事故

原告第10準備書面
-大飯原子力発電所のぜい弱性- 目次

第3 過去に大飯原発で実際に発生した事故

 燃料集合体漏出事故

 1 事故の概要

  (1) 燃料集合体2体から、漏れを確認2010(平成22)年2月1日(甲117)

大飯発電所1号機は、漏えいの疑いがある燃料集合体を特定するため平成22年2月6日1時に発電を停止し、同日1時47分に原子炉を手動停止した。停止後、原子炉に装荷されていた燃料集合体(193体)全数を取り出し、シッピング検査を実施した結果、2体の燃料集合体(KCHC51、KCHC55)で漏えいを確認しました。2体の燃料棒全数(264本/体)について超音波による調査*1を実施した結果、漏えいしている燃料棒がそれぞれ1本(計2本)確認された。

  (2) 4号炉で燃料集合体漏えい(2008年8月19日)(甲118)

2008(平成20)年8月19日、大飯発電所4号機に、1次冷却材中のよう素(I-131)濃度の上昇(約0.6Bq/cm3から 約1.1Bq/cm3)が認められたため、燃料集合体に漏えいが発生した疑いがあるものと判断された。このため、原子炉に装荷されていた燃料集合体全数(193体)について、漏えい燃料集合体を特定するためシッピング検査を行った結果、燃料集合体1体に放射性物質の漏えいが認められた。漏えい燃料棒の特定のため、超音波による調査※3を実施した結果、燃料棒1本に漏えいが認められた。

  (3) 2号炉で燃料集合体漏えいに(2009年8月31日)(甲119)

2009(平成21)年8月31日、大飯発電所2号機において、1次冷却材中のよう素(I-131)濃度と希ガス※1濃度が前回の測定値を上回ったため、燃料集合体に漏えいが発生した疑いがあるものと判断されたが、1次冷却材中の放射能濃度の測定頻度を上げて監視強化し、運転を継続された。その後、同年10月6日頃から希ガス濃度が上昇傾向にあったことから、漏えい燃料の特定調査を実施するため、10月21日に原子炉を停止した。その後、1次冷却材中の放射能を低減させた後、原子炉容器上部ふたを取り外し、同年12月4日から燃料集合体を取り出す作業を行い、同年12月7日からは漏えい燃料を特定するため、取り出した燃料についてシッピング検査実施したところ、2体の燃料集合体で漏えいが認められた。さらに、燃料集合体2体の燃料棒について、漏えい燃料棒特定のため超音波による調査を実施した結果、燃料集合体1体(KCHC81)の燃料棒3本、別の燃料集合体1体(KCHC88)の燃料棒1本で漏えいが認められた。

  (4) 燃料集合体漏えい(2004年2月25日)(甲120)

2004(平成16)年2月25日、定例の1次冷却材中よう素濃度(I131)のサンプリング分析(3回/週)を行った結果、通常値(0.6Bq/cm3)を上回る値(0.98Bq/cm3)が確認された。その後、1次冷却材中の放射能濃度測定頻度を増加して監視を強化していたが、その濃度はほぼ一定の値で推移しているものの通常値を上回るレベルであったことから、同年3月2日、燃料集合体に漏えいが発生した疑いがあるものと判断された。このため、今定期検査において漏えい燃料集合体を特定するため、燃料集合体全数(193体)について燃料集合体シッピング検査を行った。その結果、1体の燃料集合体に漏えいが認められた。さらに、超音波による漏えい燃料棒の特定を行った結果、燃料棒1本に漏えいが認められた。

  (5) 集合体に漏えいがあると閉じ込める機能が果たせなくなる。

燃料集合体に漏えいがあれば、汚染物質が一時冷却材の中に漏れる事になり、閉じ込める機能が果たせなくなる。

 1次冷却材漏出事故

 1 1次冷却材とは

核分裂で発熱した核燃料の「熱を冷やす」材料のことを原子炉冷却材という。原子炉冷却材によって核分裂による熱を原子炉から取出し発電に使う。

 2 1次冷却材が無くなると

冷やすことができなくなり、メルトダウンを引き起こす。

 3 事故の概要

  (1) 1次冷却材ポンプから水漏れ(2007年9月3日)(甲121)

2007(平成19)年9月3日21時15分頃、大飯発電所1号機から、体積制御タンク水位の低下及び加圧器水位についてもわずかに低下傾向にあることが確認された。 直ちに関連パラメータを確認したところ、原子炉補助建屋の床ドレンタンク水位の上昇が確認されたため、補助建屋内での漏えいと判断し、点検を行った結果、1次冷却材ポンプのA-封水注入フィルタ付近から漏水していることが判明した。

  (2) 1号炉で、余熱除去ポンプ空気抜き弁から1次冷却水漏れ(甲122)

大飯発電所1号機、定期検査のため、2005(平成17)年9月20日00時00分に解列、同日2時36分に原子炉を停止した。蒸気発生器により原子炉の冷却を行うとともに、余熱除去系統を用いて冷却するため、同日、A-余熱除去ポンプによる冷却を開始した。その後、B-余熱除去ポンプの起動準備として、1次冷却水を同系統に通水し、系統の昇温と加圧を行ったうえで、20時47分頃、社運転員が、当該ポンプのメカニカルシール保護のため、シール水のクーラ出口にある空気抜き弁を少し開けたところ、漏斗形状の受皿に差し込まれている当該弁下流の配管端部から、水と蒸気(1次冷却水)が流れ出し、B-余熱除去ポンプ室内の漏水検知の警報と、火災警報が発信した。
この際、弁操作を行っていた運転員にしぶきがかかった。運転員は同室内から直ちに退避し、火傷や負傷、放射能による外部汚染、内部被ばくはなかったと関西電力は報告している。
その後、20時52分にB-余熱除去系統を隔離し、当該弁からの蒸気流出がなくなったことを確認した後、23時23分、当該弁を閉止した。
漏えいした水は、全て原子炉補助建屋サンプ(管理区域内)に回収しており、漏えい量は約2.6m3(漏えい放射能量:約1.5×109Bq)と推定された。

  (3) 1次冷却材から水漏れ(2005年1月9日)(甲123)

2005(平成17)年1月9日23時40分頃、大飯発電所1号機は、3台ある加圧器安全弁のうち、1台(C-加圧器安全弁)の出口温度が、通常範囲(~約70℃程度)を超え、上昇する傾向を示していることが認められた。
同年1月10日1時11分に「加圧器安全弁出口温度高」警報(設定値91.1℃)が発信した。C-加圧器安全弁の出口温度は、最大約107℃(同日11時頃)まで上昇したが、同日11時頃から下降し、12時43分に警報はリセットされ、18時頃には通常範囲内に戻った。
その後、温度が通常範囲を超えて緩やかな上昇傾向にあったことから、加圧器安全弁シート部から加圧器逃がしタンクへの流入が継続しているものと考えられたため、原子炉を停止して点検が行われた。当該弁を分解する前に漏えい確認を実施したところ、漏えいが確認された。また、弁体シート面および弁座のシート面の一部に漏えい跡が確認された。

  (4) 原子炉格納容器内に1次冷却水漏れ(2005年3月7日)(甲124)

2005(平成17)年3月7日15時50分頃、大飯発電所3号機原子炉格納容器内の格納容器冷却材ドレンタンク室内に水溜りがあることが確認された。1次冷却水である可能性があることから、原子炉を停止して漏えい箇所の特定や詳細な点検調査が行うため、同月8日5時02分に原子炉を停止した。
その後、原子炉格納容器内の点検を行ったところ、格納容器冷却材ドレンタンク室上部にある、加圧器気相部の試料採取系統配管で、約1mの範囲において、保温材外面に、白い付着物(1次冷却水中に含まれるほう酸)を確認された。
外面観察を行った結果、配管の接続部(カップリング)において、溶接部に直径約1mm程度の微小な穴から漏えいが認められた。

  (5) 2号炉で、湿分分離加熱器空気抜き管から蒸気漏れ(2007年12月15日)(甲125)

大飯発電所2号機において、湿分分離加熱器の加熱蒸気側水室に接続されている空気抜き管の保温材から僅かに蒸気が出ているのが確認された。
このため、加熱蒸気の供給を停止する措置を行った上で、保温材を取り外して確認したところ、空気抜き管の直管部で蒸気漏れが確認された。当該部はドレントラップ出口配管との合流部付近であった。

  (6) 3号炉の原子炉容器出口管台溶接部に割れが確認された(2008年4月17日)(甲126)

2008(平成20)年3月6日から3月10日にかけて、事前に当該溶接部内面の渦流探傷試験(ECT)を行ったところ、Aループ出口管台の600系ニッケル基合金溶接部1箇所で有意な信号指示(長さ約10mm)を確認された。なお、Aループ入口管台およびB、C、D各ループの出入口管台については、有意な信号指示は認められなかった。
傷の形状は複数に折れ曲がるとともに枝分かれした割れで、1次冷却材環境下における応力腐食割れの特徴を有しており、周辺に、引張応力が残留する可能性がある機械加工跡が確認された。

  (7) 3号炉で原子炉容器上蓋から1次冷却水漏れ。管台溶接部に割れ(2004年5月5日)

大飯発電所3号機において、平成16年5月4日、原子炉容器上部ふたの管台70箇所の外観目視点検準備を行っていたところ、制御棒駆動装置取付管台1箇所(NO.47)の付け根付近に白い付着物があることが確認された。
このため、5月5日、この付着物を分析した結果、1次冷却水に含まれるほう酸であることが確認され、また、当該管台について点検を行った結果、付着物は管台の周囲にのみ認められることから、当該管台からの漏えいであることが確認された。