◆ 原告第11準備書面
第1 国家賠償法1条1項における規制権限不行使の違法

原告第11準備書面
-違法性論- 目次

第1 国家賠償法1条1項における規制権限不行使の違法

国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関係において,国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である(最高裁平成13年(受)第1760号同16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁,最高裁平成13年(オ)第1194号,第1196号,同年(受)第1172号,第1174号同16年10月15日第二小法廷判決・民集58巻7号1802頁参照)。
また、次節以下で詳述するように、具体的な保安措置を包括的に下位規範である省令又は規則に委任した原子炉等規制法、電気事業法等においては、主務大臣(又は原子力規制委員会)の省令(又は規則)制定権限は,住民の生命、健康及び財産、並びに環境に対する危害を防止することをその主要な目的として,できる限り速やかに,技術の進歩や最新の知見等に適合したものに改正すべく,適時にかつ適切に行使されるべきものである(最高裁平成16年4月27日第三小法廷判決、平成26年10月9日 第一小法廷判決参照)。
以下、福島第一原発事故後の大飯原子力発電所の再稼働を巡る動き、及び、原子力規制の改正経緯を整理したうえで、国の規制権限不行使の違法性について検討する。