◆ 原告第11準備書面
第4 まとめ

原告第11準備書面
-違法性論- 目次

第4 まとめ

  1.  2011(平成23)年3月11日の東日本大震災を端緒とした東京電力福島第一原子力発電所事故の発生からすでに4年以上が経過した。にもかかわらず、放射性物質の除染が進まず、いまなお福島県南相馬市、飯館村、大熊町、葛尾村、富岡町、浪江町、双葉町などでは帰還困難区域が広がり、国道の脇には、現代の竹矢来ともいうべき、金属製のバリケードが設置されて、立入りが規制され、これらの地域を走っていたJR常磐線の復旧工事は手つかずのまま放置され、JR常磐線の開通の目途はいまだに立っていない。
    このように原発事故による放射能汚染は、周辺地域に深刻な被害をもたらし、住みなれたふるさとを追われた大量の避難住民を生み出している。
  2.  しかるに、この国の政府は、上述した原発事故の被害がきわめて深刻で長期に及んでいることを知りながら、原子力発電所の再稼働に向けて、これを積極的に推進・容認する方針を打ち出している。
    このため、大飯原子力発電所3号機及び4号機についても、福島第一原発事故の発生後、抜本的な安全対策をなおざりにしたまま、いち早く再稼働に踏み切り、新規制基準施行後も、過酷事故に対して本来要求されている必要な安全対策を先送りし、また立地審査指針などの当然とるべき安全対策を棚上げしたまま、早期に再稼働を容認する姿勢をとっている。
    しかし、こうした国の方針・姿勢は、国民の生命と生活、その安全を根本から危険にさらすものであって、およそ許されるものでないことは言うまでもない。
  3.  以上から、大飯原子力発電所3号機及び4号機に対して、その安全対策に責任を負うべき所轄庁において、さきに述べたとおり、必要な規制権限を行使して、すみやかに停止命令を出し、さらには廃炉命令までも出して、国民の生命と安全を確保すべきであるのに、これを怠っていることはきわめて重大であって、上述した規制権限不行使の違法があることは明白である。
    この結果、原告らの生命と生活の安全が根本からおびやかされ、原発事故による放射線被曝等の重大な被害の危険にさらされることなく、平穏に日々の暮らしを営むという平穏人格権が侵害されていることは明らかである。
    したがって、被告国は上述した規制権限不行使の違法によって、原告らの人格権侵害という損害を生ぜしめているものであるから、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任があることはいうまでもない。

以上