◆ 原告第13準備書面
第7 再生可能エネルギーによる発電方法と、技術的課題の克服

原告第13準備書面
-自然代替エネルギーの可能性等- 目次

第7 再生可能エネルギーによる発電方法と、技術的課題の克服

 一、再生可能エネルギーによる発電方法

再生可能エネルギーによる発電方法(大規模ダム方式による従来型水力発電は除く)としては、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、小水力発電、地熱発電等がある。

 二、「風レンズ風車」発電の素晴らしい将来性

  1. 日本における風力発電は、当初は北欧型が中心であった。しかしながら、平坦地の多い北欧と、険しい山々が海の間際まで迫るところも少なくない日本とは、風などの自然条件が大きく異なる。また大きな風車は、騒音や鳥類を巻き込む等の公害問題もあり、近隣の農民・漁民・住民等の反対もある。京都府伊根町の「太鼓山」に導入された風力発電機は落雷等のため現在では全て故障して使えなくなっている。昔から落雷が多いから「太鼓山」と呼ばれてきたのに、地元の古老の意見も聴取せずに、こんなところに風力発電所を設置するのが根本的な調査不足である。
  2. ところが「風レンズ風車」は、こうした欠陥を克服した、素晴らしい未来性のある発電方式である。「風レンズ風車」の原理は、簡単にいうと風車の周囲にリングをつけ、このリングの一方の端に鍔(つば)をつけることで風力を強化し、同時に騒音も解消する点にある。
  3. 即ち、鍔の部分にあたった空気が、鍔を回り込んだ部分の気圧が低下する。その結果、気圧低下部分に周囲の空気が流れ込む。この原理によりレンズ風車の中の風速が1.3~1.5倍になる。「風レンズ」の中の風速が1.4倍になると約3倍もの発電が可能になる。鍔つきリングが風を集める作用を、レンズが太陽光を集める作用に対比して「風レンズ風車」と名付けられている。このアイデアは未来の自然エネルギー発電の展望を開くものとして、既に世界的な注目を浴びつつある。
  4. 風レンズ発電のアイデアは九州大学応用力学研究所の大屋裕二教授を中心とするグループが開発し、その実用化部品の80%を国内十数社の町工場で製作している。この町工場のリーダー的存在が園部町にある「有限会社共立機工」である。同社は瑠璃渓に向う道路沿いののどかな田園地帯の中にあり、夫婦と長男・次男の4人家族で運営している。風レンズ風車のすぐ近くまでいっても、鍔つきリングのおかげで騒音は殆どない。大屋教授は、もともと流体力学の専門家であり、強風被害から橋梁を守る等の研究をしてこられた方であるが、「風レンズ風車」のアイデアは、それまでの研究成果を180度逆転させることで到達したものだということである。
  5. また、園部町の「風レンズ風車」は内陸部にあるが、大屋教授研究グループは、海上に浮かべた六角形の浮きの上に「風レンズ風車」を設置する実験を成功させている。海上の「風レンズ風車」は相当強い台風にも立派に耐え抜くことが実験的に証明されている。六角形浮きを蜂の巣のように次々と拡大し発電量を増大させていくことが可能である。この浮きの下に魚の養殖場をつくるアイデアも提案されている。
  6. 日本の周囲は全て海であるから、この海上「風レンズ風車」発電は無限の可能性を秘めており、原発をゼロにしても充分電力を賄える。また「風レンズ風車」の原理は、そのまま「潮流発電」にも応用が可能である。
  7. 大屋教授グループの、もうひとつ凄いところは、部品製作について、大企業のオファーを基本的に断り、上述のように日本国内の優秀な技術を有する町工場グループと提携した点である。これは国内での地域経済の循環・発展という点でも日本の未来を切り開く大きな可能性を有していることは、既にドイツの経験が教えるところである。
  8. しかるに日本政府は、この素晴らしい「風レンズ風車」発電に「発電事業」としての認証をなかなか認めようとせず、大企業が参入する従来型の風力発電による海上発電には270億円もの補助金をつけながら、大屋教授グループの「風レンズ風車」研究には3年間で約3億円程度の補助金しかまわさないという態度である。
  9. しかしながら、「風レンズ風車」は、既に、カナダのプリンスエドワード島(“赤毛のアン”の舞台)で世界認証の試験を受けて、世界認証を取得しており、世界中の電力系統に接続できる国産初の小型風力発電となる。「風レンズ風車」発電は、既に世界的な注目を浴びている。大屋教授グループ及びこれを支える企業関係者は、商業ベースの実用化をめざして、さらなる改善の努力をしている。まさに夢と希望を与えてくれる「風レンズ風車」である。

 三、再生可能エネルギーの技術的問題点の克服

 1 はじめに

再生可能エネルギーの技術的問題点としては、天候や時間の影響によって発電設備の出力が変動して、送配電ネットワークを流れる電力の周波数が不安定となる、電力供給の不安定性が挙げられる。

  2 蓄電池

(1)この点、さまざまな地域で、蓄電器を利用し、蓄電器の充放電によって平滑化することにより電力系統安定化対策が図られている。

(2)宮古島メガソーラー実証研究では、大量の太陽光発電を導入した場合の電力系統安定化対策として、蓄電器を利用しているのが特徴である。日が陰って日射強度が下がると、太陽光発電の出力が瞬時に低下する。陽射しが強くなると、太陽光発電の出力が瞬時に上昇する。こうした太陽光発電の出力の急峻な変動を、蓄電器の充放電によって平滑化することにより電力系統安定化対策をとることができる。

(3)東北電力の南相馬変電所と九州電力の豊前発電所でも、大容量の蓄電池システムの導入が決まっている。東北・九州共に太陽光発電設備が急増した結果、既に送配電ネットワークに接続できる許容量を超えている。再生可能エネルギーで発電した電力を蓄電池に充電することにより、各地域の接続可能量を増やすことが可能になる。

(4)すでに東北電力の西仙台変電所では平成27年2月20日から大容量の蓄電池が稼働しており、接続可能量の増加が見込まれている。

(5)蓄電池については、近年技術革新が進んでいる。実証事業で使用される蓄電池の一つに「レドックスフロー電池」があるが、これはプラスとマイナスの電気を液体の形で別々のタンクに蓄えるという原理で、基本的には何年でも電気をロスすることなく蓄電することができる。タンクを増設するだけで大容量化も簡易なものであり世界的にも注目されている。日本国内でも三菱重工や日立などの企業が事業へ参入している。

  3 送電網の拡充

再生可能エネルギーの発電設備が多い北海道や九州などと、大消費地の首都圏や関西を結ぶ送電容量を増やすことで日本全体で電力の変動を吸収するという取り組みも行われている。

  4 スマートグリッド

スマートグリッドとは、IT技術を活用して、発電所の供給側と家庭や事業所などの需要側の電力需要を自動制御し、需要に応じて発電施設からの電力を効率よく配分する電力制御技術をもった電力網のことである。
需要と供給のバランスを調整するために単に電力供給を安定的に行うだけでなく、家庭や事業所などこれまで電力を消費していたところに太陽光発電などを導入し、地域で必要な電力地産地消の仕組みにも備えていることが特徴である。
スマートグリッドは、再生可能エネルギーの活用に資する。スマートグリッドの普及により、再生可能エネルギーの普及が進むこととなる。

  5 再生可能エネルギーの全国的利用

   (1)バイオマス発電

バイオマス発電は、木質燃料(製材廃材・建築廃材・林地残林等)・バイオ燃料(サトウキビ・トウモロコシ等)・バイオガス(生ごみ・家畜の糞尿)等、木屑や燃えるごみなどを燃焼する際の熱を利用して電気を起こす発電方式である。
発電した後の排熱も、周辺地域の暖房や温水として有効活用可能である。
したがって、日常生活で出る燃えるごみ等により発電できるため、発電のための資源の調達が容易である。

   (2)小水力発電

小水力発電は、河川から取水した安定した流水や、農業用水や上水道などの用水を用いる。水が天候に関わらず24時間流れ続けるため1日を通して発電できるという点で持続性及び安定性があり、水量を一定量確保することにより発電力変動を少なくすることができる。また、100年以上前から開発されている経緯があることから技術も確立されており、長い稼働実績を有しており耐用年数が長い。
したがって、小水力電力により、利用しやすく持続的・安定的な発電が可能となる。

   (3)地熱発電

地熱発電は、マグマの熱で高温となっている地中深く(地下1000~3000m程度)の地熱貯留層より地熱流体を取りだし、タービンを回転させて電気を起こす方法により発電をするものである。環太平洋火山帯に位置する日本には、発電ポテンシャルが2300万KW以上と、米国・インドネシアに次ぐ膨大な地熱資源量がある。
したがって、地熱発電により大量・継続的な発電が可能となる。

  6 スマートコミュニティ

蓄電池を搭載した電気自動車の普及のために、手軽に急速充電のできる充電ステーションの設置も民間企業では始まっている。
また、太陽電池などによって自宅で発電した電気をいつでも使用できるようにするため、三菱重工は次世代超省エネ住宅「エコスカイハウス」のモデルハウスを横浜市に設け、蓄電池を設けた自給自足の家を普及させるため検証している。
このような、低炭素社会の実現のための取り組みが行われており、再生可能エネルギーのみで電力をまかなうことができる社会の実現が図られている。

  7 スマート節電

(1)あわせて、そもそも使用電力を減らさない節電への取り組みも行われている。スマート節電とは、経済活動を停滞させることなく、情報技術を用い有効な節電を実現する節電方法である。

(2)キヤノンマーケティングジャパンの「省エネオフィス支援ソリューション」(分電盤などに計測用クランプを設置して電力消費量を管理・分析。照明や空調の制御方法を決める。)、三井情報の「GeM2」(クラウド型のエネルギー・マネジメント・サービス、各種センターで集めた電力消費量や室温などのデータをデータセンターで管理・分析した、空調や照明を整備)、ユビテックの「UGS」(照明や空調などのエネルギー消費量を最適化するためのシステム製品。)、NTTデータカスタマサービスの「RemotoOne」(客先にエネルギー消費量の測定と空調・照明などを制御できる装置を置き、そこから得られるデータをデータセンターに集めて管理・分析。)などがそれである。

(3)これらはいずれも電力消費量を目に見える形にすることで無駄な使用を発見したり、その解消に向けて照明や空調を制御したりするサービス・製品である。具体的には、照明の点灯状態や空調の状態、そのフロアのどの場所にどのくらいの人がいるか、外気温はどのくらいかといったデータを収集し、状況に応じて機器を制御することで電力を最小にすることを目的とする。京都弁護士会でも節電の努力を行い大きな成果をあげている。

(4)このような形で無理のない節電が進んでいる以上、原子力発電を使用せずとも、再生可能エネルギーのみで電力をまかなうことは十分可能である。