◆危険な六ヶ所村の再処理工場は直ちに閉鎖せよ!

 青森県六ヶ所村の再処理工場が完成すれば、原発の出す使用済み核燃料を切断、硝酸で溶かしたうえで、プルトニウムとウランを回収する予定だ。そのとき、極めて危険な高レベル放射性廃液が発生する。放射性廃液は、ガラス原料とまぜてガラス固化体にするが、それは強い放射線を出し、表面温度は200℃を超える。このため、専用の貯蔵施設で30~50年冷却した後、300m以深の地層中に処分することになっている。しかし、最終処分地については、候補地すら決まっていない。

 六ヶ所再処理工場は1993年に着工したが、トラブル続きで26回も完成が延期されている。当初約7600億円だった建設費は、4倍以上の3兆1千億円に膨れあがり、ランニングコストや廃止措置を含めた事業総額は約14.4兆円にものぼる。2006~2008年度に実施されたアクティブ試験(試運転)で、ガラス固化に失敗し、高レベル廃液が149リットルも漏洩した。現在も高レベル廃液がそのまま残っている危険な状況が続いている。

 再処理工場が稼働すれば、大気中や海洋に大量の放射性物質を放出する。公表されている月別放出状況によれば、試運転中の2007年10月のトリチウム放出実績は、平均濃度が約9000万ベクレルBq/Lであった。これは、原発に適用される告示濃度限度(排出濃度基準)6万Bq/Lの1500倍。原発から放出される水に含まれる放射性物質については、原子炉等規制法に基づき、核種ごとに告示濃度限度が設けられているが、これは再処理施設から海洋中に放出される排水には適用されない。原発と同じ濃度規制をかければ、再処理施設が動かせないほど、大量の放射性物質を排出してしまう施設なのだ。危険な六ヶ所村の再処理工場は直ちに閉鎖すべきだ。

 再処理で取り出したウラン、プルトニウムからMOX燃料(プルトニウムとウランの混合燃料)をつくり、一部の原発で使う計画をしている。しかし現段階ではMOX燃料は国内でつくれず、フランスに委託している。また、MOX燃料が使える原発は、高浜原発3、4号機、伊方3号機、玄海3号機などで、プルトニウムの余剰を増やさず、MOX燃料として使いきるには16~18基が必要と言われている。国はMOX燃料を使うことを奨励するため、受け入れ自治体には交付金を出すという。

 使用済みMOX燃料を処分することも、現状、国内では不可能だ。また、移動すら難しい。通常の使用済ウラン燃料であっても、乾式貯蔵所に移すためには燃料プールで15年間冷却する必要があるが、使用済みMOX燃料は熱量が高く、移動できる状態の発熱量まで下がるには100年以上かかるからだ。

 プルトニウムの余剰を持っていることは、核兵器への転用の可能性があるため、国際社会から厳しい目が向けられている。日本の保有量は約46トン。これは中国が軍事用に持っているとされる量の10倍以上で、核兵器の数に換算すると数千発分に相当する。

 原発推進の前提として進められてきた「核燃料サイクル」は、高速増殖炉「もんじゅ」の失敗ですでに破綻した。「もんじゅ」はプルトニウムを消費すると同時に、消費した以上のプルトニウムを生み出す「夢の原子炉」とされていた。しかし、相次ぐ事故や不祥事で、稼働可能であった20年超の期間中、稼働できたのはわずか250日、1995年にナトリウム漏れ事故と火災事故が発生し、その後、情報隠蔽も発覚。ようやく試験運転再開にこぎつけたわずか約3ヵ月後の2010年8月、炉内中継装置の落下事故が発生し、ふたたび停止。2016年12月に廃炉が決まった。「もんじゅ」には1兆円を超す国費が投入され、廃炉には3750億円かかると見積もられている。

 大きな矛盾とリスクをかかえつつ、それでも岸田政権は「核燃料サイクル」にしがみついている。そのツケを払うのは私たち国民と将来世代だ。

1993年 4月…日本原燃が建設工事を開始(当初の完成予定時期は1997年)
2001年 8月…使用済燃料貯蔵プール漏水
2006年 3月…アクティブ試験(試運転)開始
2008年10月…ガラス溶融炉に白金族が固着
2008年12月…ガラス溶融炉の天井のレンガが脱落(ガラス固化に失敗)
2009年 1月…高レベル廃液約149Lが漏えい
2014年 1月…原燃が規制委に審査を申請
2015年 8月…落雷で工場の主要建屋の計器が破損
2016年10月…「使用済燃料再処理機構」が発足(経済産業省の認可法人)
2016年12月…ウラン濃縮工場で虚偽報告が発覚
2017年 8月…非常用電源がある建屋に雨水流入
2020年 7月…規制委が新規制基準に「合格」判断
2020年 8月…原燃が完成時期の延期を発表。25回目の延期
2021年 6月…事業費がさらに増え、14.4兆円に
2022年 9月…原燃が完成時期の延期を発表。26回目の延期
2022年12月…完成目標時期を2024年度上期と発表

2023年10月12・13日
連絡先:原発ゼロをめざす左京の会 宗川吉汪(sokawaあっとsnr.kit.ac.jp)