◆7/16 第42回口頭弁論の報告 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1526 2024年8月5日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

「原発事故起こればすべて終わり」
大飯原発差止京都訴訟で原告が証言

◆福井県の大飯原発の稼働停止と損害賠償を求めて京都などの住民3,477人が関西電力と国を相手に起こした訴訟の、第42回口頭弁論が、7月16日京都地裁(第6民事部合議係齋藤聡裁判長)101号法廷で開かれました。今回から人証調べに入り、傍聴者が見守る中、この日は原告5人が証言台に立ちました。
尋問した原告代理人弁護士と証言した原告、証言要旨は次の通り。

岩橋多恵弁護士 ― 村上道子さん

大飯原発から約16キロ圏内の福井県名田庄村で71歳同士の夫と2人で暮らす。850世帯2,300人はほとんどが高齢者、自治体職員4人。自然は豊かでホタルもいる。キノコ、キュウリも栽培している。能登半島地震のようなことが起こればどうなるか不安で一杯だ。避難は南丹市美山町に抜ける国道しかない。トンネルがあり、出たところからはいたるところに落石注意とある。雪が降れば迅速な避難などできない。70cmの積雪が去年は2,3回はあった。室内待機もできない。密閉しても放射能が入ってくる。500マイクロシーベルトを超えて初めて避難指示がでるというのは理解できない。訴えたいのは、夫のふるさとで安心して余生を送りたいこと。住民が植えてつくった桜並木のきれいな街を残したい。原発の稼働は止められる。

これに対して関電側代理人弁護士は、県や国の避難計画、マニュアルを示し知っているかと尋問。職員からの説明を聞いたと答えるのに「読んでいない」「知らない」との言質を引き出して無知識を印象づけようとしました。執拗な質問で尋問時間がオーバーし裁判長が注意をしました。最後には、関電や国などがベストを尽くしていると思いませんかと質問。村上さんは、ベストを尽くしても間に合わないと答えました。

秋山健司弁護士 ― 斎藤信吾さん

原発から45キロ圏の綾部市に住む。福島原発事故では全村避難となった飯館村の福島第一原発からの距離に相当する。ここは上林かんばやし断層が走っている。原子力災害対策計画を市がつくっているが、市の計画では大飯原発から概ね32.5キロ圏内の住民が対象で私は対象外だ。風向き等によって避難が必要となる地域は変わるはず、納得できない。水源となる由良川が汚染される恐れもある。しかし市の具体的対応計画はない。私は視覚障害があるので避難は特に困難。福知山方面に避難する経路が想定されるが、地震による崩落や交通量などで通行止めになるケースが考えられる。私は障害者協会の役員をしているが、約1000人の障害者が取り残されない取り組みはなかなかできない。放射能汚染をもたらす原発と動物、人間とは共存できない。これをやめて少しでも良い方向にもっていきたいと裁判を起こした。原発を止めて欲しい。きれいな川を守って欲しい。

反対尋問では、関電代理人弁護士が、市の計画や基本条例を示して対策をとっている。これらの文書を「読んだか」などと質問、「ざっと読んだ」のやりとり。原告代理人の再尋問で、市からは直接説明したり個別に文書を配ったりはなかったと証言しました。

秋田智行弁護士 ― 添田光子さん

私は、舞鶴市の由良川近くの宮津市との境で農業を営んでいる。高浜原発とは27キロ、大飯原発は32.5キロの距離で、福島第一原発では飯館村に相当する。9軒の集落があり、避難するには山道を車で下るルートしかない。冬場は130センチの積雪がある。事故があればまず子どもを由良川沿いの学校に迎えにいかなければならない。福島の事故のような放射能汚染になれば農産物は売れない。酪農もしているが、これもだめ。子どもたちへの影響も心配でモンモンとした生活を送る。原発事故が起こったらすべて終わり。原発はあってはならないものだ。

反対尋問なし。

森田基彦弁護士 ― 林 森一(はやし もりかず)さん

京都市北区に住んでいる87歳。生家の左京区久多に週1、2回帰っている。そこの町内会長などの役もしている。京都駅から車で峠道を走って1時間程かかる。大飯原発からは30キロ圏内にある。山間の集落は50軒ほどで、100パーセントが高齢者。買い物も自治会も大変。買い物は左京区高野、滋賀県堅田市のスーパーへ行く。医者は月2回往診にきてもらう。冬は雪が1メートル積もる。防災訓練したことはある。一地点に集合したら迎えに来てくれるだろうと思う。原発事故ではどうなるか心配。起これば実際の避難は難しい。役割も決まっていない。福井大地震の経験もあり、地震が起こったらどうなるのか関心があり、原告に加わった。

反対尋問で市の防災計画はしっかりみていないと答え、原告代理人の再主尋問には、市のホームページを見たりしたが、市からは計画があるという説明はなかったと証言しました。

尾崎彰俊弁護士 ― 原 龍治さん

私は美山診療所(南丹市美山町)の事務長をしていた。京都市内の自宅から約50キロあり、1年目は週6日通勤し、その後は週3、4日は宿泊するようになった。町内は車一台がすれ違うのがやっとの道でタイヤが外れ、引き揚げたこともある。雪は12月から3月に30センチから50センチ積もり、通行止めや倒木に出会うこともしばしばある。診療所には5、6人が通う。停電も起こるし、インターネットが不通になることもある。予備電源を備え、30分から4時間はもつようになった。車はスタッドレスタイヤで往診する。ブルドーザーで除雪しないと出られないときもある。10センチ以上でないと出してくれない。総出で雪かきをしないと通路が確保できない。こんなところに原発事故が起こったから避難せよといってもできない。避難は机上の空論。放射能汚染も止められない。人の能力を超えたことをやる原発稼働は考えられない。

反対尋問なし。

◆次回口頭弁論期日は、9月17日(火)午後2時から、101号法廷で。