New!◆関西電力 闇歴史◆127◆

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◆仮処分の審尋 2025/7/11で、関電が傲慢で攻撃的な姿勢!
 関電「原発の運転は、本来行使できる権利であり、自由」
 →いいえ、関電にはそんな権利や自由はありません!
 関電「原告住民側は被害者ではないので、立証責任を負う」
 →いいえ、立証責任の転換は公正な裁判に必須です!

 【付 原発差止裁判の立証責任】
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◆美浜3号機運転差し止め仮処分
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◆美浜3号機運転差し止め仮処分

  • 福井県の住民10人が2023/1/13、福井地裁に提訴。関電の老朽原発、美浜3号機を動かしてはならないことを求めた。
  • しかし、福井地裁では2024/3/29却下の決定。

◆美浜3号機運転差し止め仮処分の即時抗告審

  • 住民側は、名古屋高裁金沢支部に即時抗告。
  • 名古屋高裁金沢支部では、2025/7/11の第4回審尋で終了。
  • 2025年内には決定が出るか。
  • 関電は、第4回審尋の中で、傲慢で攻撃的な姿勢をあらわにしてきた。
    週刊金曜日 脱原発弁護団全国連絡会(2025年8月7日)

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◆関電の傲慢で攻撃的な姿勢
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◆2025/7/11の第4回審尋において

  • 関電は
    ①「原発を運転することは、本来行使できる権利であり、自由である。」
    ②「抗告人=住民側らを被害者とみなして、立証責任の転換をすべきではない。」
    (抗告人=住民側は被害者ではなく、被害を立証する責任は住民側にある。)
    と主張。
  • これに対して、井戸謙一弁護士は「関電は、今までこのような主張はしていなかった。この姿勢の変化は注意しなければならない」と述べている。

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◆原発運転は、本来行使できる権利や自由ではない!
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◆関電に権利や自由がない理由

  • 原発は事故が起こったときの被害は他の災害に比べて桁違いに大きいので、安全性を最優先にしなければならない。そのため、事業者=電力会社が、一存で決める「権利」や「自由」はない。
  • ①許可・認可制であること…原発は原則的に禁止されており、原子力規制委員会(規制委)が許可(新規制基準に適合)した場合にだけ例外的に運転が認められている。原発の設置、運転には、規制委による審査と認可、および経済産業大臣による認可が義務付けられている。
  • ②法制度による制約…「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」のように、原発の活用を促進する仕組みは、既存の法制度の下で行われている。これは、国がエネルギー政策の一環として原発の利用を位置づけているわけで、事業者=関電が自由に選択する権利とは異なる。関電は、国策のお先棒を担がせてもらっているのに過ぎない。
  • ③安全性の確保と規制…関電は、原発の運転において安全性の確保を最優先事項とすべきであり、規制委の厳格な審査と安全基準に適合する必要がある。そのため、自由な運転はできない。安全規制の遵守や地元自治体の理解、さらには法制度の変更に従う必要があり、単純な権利や自由とはいえない。

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◆住民側は被害者であり、立証責任は関電側にある!
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◆住民側は被害者である理由

  • 原発事故の可能性が否定できない以上、住民側は潜在的被害者であり、事故が起こらなくても事故の危険におびえて生活しなければらないことだけでも被害者である。
  • 過酷事故が起こってしまった後でしか、被害を主張できないとすれば、被害の巨大さからして理不尽極まりない。

◆立証責任は関電側にある理由

  • 「住民側=原告が許容限度を超える被ばくの具体的な可能性があることを相当程度立証すれば、電力会社側=被告が具体的な危険がないことを立証しなければ、危険があると推認する」という立証責任の転換は、住民側の負担を減らし、公正な裁判を実現するために不可欠。社会的インフラという公的役割を担う、巨大な電力会社には、資力もあり社会的責任もある。

◆原告の立証ハードル

  • 原発の運転差止めを求める裁判で、立証責任が原告側に課されたり、再転換された場合、原告側には、次のような高い立証ハードルが課せられる。
  • 具体的な危険性の主張・立証: 原告は、原発に安全性を欠く点があることを具体的に主張、立証する必要がある。
  • 訴訟継続中の状況変化: 訴訟が長引く中で、新規制基準の策定や審査結果、また科学的知見の変化などが生じるため、原告はその都度、最新の知見に基づいて安全性の問題を立証しなければならない。
  • 科学的知見の専門性: 原発の安全性をめぐる議論はきわめて専門的であるため、科学的知見をもたない裁判官が判断することの難しさがある。

【付 原発差止裁判の立証責任】
・日本の民事訴訟における立証責任は、元々、原告(原発裁判では住民側)にある。しかし、原発差止裁判では、原子力分野という専門性の高い特殊性を考慮し、原告の立証負担を軽減するため、裁判所の判断によって、実質的に被告である事業者や国側に立証責任が転換されたり、立証の必要性が認められたりしてきた。こうした立証責任の転換、緩和は、多くの公害事件や薬害事件の裁判の中で確立されてきた。
・福島事故後、転用方式を是正した川内原発仮処分宮崎支部決定(2016/4/6)では、立証責任は、事実上被告に転換された。
・その内容は ↓
・被告事業者は、具体的審査基準に不合理な点のないこと、適合判断に不合理な点がないことを主張立証しなければならず、これを尽くさない場合は、具体的審査基準に不合理な点があること、適合判断に不合理な点があることが事実上推認される。
・原告の立証活動は、被告事業者の主張立証に対する反証となる。
・こうした「立証責任の転換」は、その後の伊方仮処分広島地裁決定、伊方仮処分松山地裁決定、広島高裁決定でも採用され、定着するかに見えた。しかし、その後、原告側の立証負担を増加させる“再転換”の判断が出てきている。「基準地震動を上回る規模の地震の具体的危険性は、利益を受ける原告側が主張・疎明責任を負う」などという判決である。
・井戸謙一弁護士は『原発訴訟における立証責任転換論とは』において、“再転換”は「日本の公害裁判の歴史を50年巻き戻し、この50年間の学者、法律家、裁判所の努力を無にする」と言う(下記図解とも)。

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