関西電力 闇歴史」カテゴリーアーカイブ

◆関西電力 闇歴史◆112◆

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◆2024年4月、電事連会長、再び中部電力に
 背景に関電主導のカルテルについての「恨み」「不信感」

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 電力大手10社でつくる電気事業連合会(電事連)の会長職は1952年の発足以来、事業規模が大きな東京電力、関西電力、中部電力の「主要3社」で担当してきたが、2020年3月、九州電力の池辺氏が3社以外で初めて就任した。池辺氏は2023年に退任する運びだったが、大手電力によるカルテルや新電力の顧客情報を不正に閲覧するなどの問題が発覚して、なり手がなく、異例の4年目に入っていた。東電は事実上国有化され、関電はカルテル主導、中部電力はガスの販売で独禁法違反を指摘されている。盟主不在で後任選びが難航、電事連の影響力の低下を示した。

 2024年は関電が会長職に意欲を示していると言われていた。電事連は2025年の大阪・関西万博にパビリオンを出展する計画で、「おひざ元」の一大イベントを会長として迎えたいのでは…という声も業界内で聞こえたという。

 しかし、カルテルを主導したとされた関電が、課徴金減免制度リーニエンシー)にもとづいて調査前に自ら違反を申告して処分を免れたことから(◆024◆)、他社から「関電の会長就任は時期尚早」などの声が出ていた。カルテル事件で、関電に対する各社の不信感、感情論があったという。報道では「関電の下ではまとまれない」という声も紹介されている。

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◆関西電力 闇歴史◆111◆

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◆2年間で12億円の申告漏れ、特重施設の調査費などで
 追徴課税額は1億5千万円!

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 2024年1月23日の報道によれば、関電が大阪国税局の税務調査を受け、2021年3月期までの2年間に約12億円の申告漏れを指摘されていた。美浜原発3号機の「特定重大事故等対処施設(特重施設、いわゆるテロ対策施設)」を設置するための調査費用などの経費処理に問題があったとされ、過少申告加算税を含めた追徴税額は約1億5千万円で、既に納税した。

 特重施設の調査費は、19~20年度の費用約4億4千万円をまとめて経費計上した。しかし国税局は同施設は資産で、調査費を含めて取得費用は減価償却費にあたると判断。資産の耐用年数に合わせて経費を複数年度に分散して計上するよう指摘した。別に、ソフトウエアの開発費など約7億5千万円についても減価償却費に相当し、分割して計上すべきだと判断された。

 今回は美浜3号機についての課税だが、大飯や高浜はどうなっているのか、いろいろ検索してみたが、そこは不明。税務署が黙っているので、大飯や高浜は問題なかったかもしれないが、では、美浜だけなぜ??

【参考】関電の過去の所得隠し(Wikipedia 「関西電力」による)
(1) 同社所有の遊休地の取引に絡み、大阪国税局から、2008年3月期までの2年間で約6億円の所得隠しを指摘されていたことが、2009年4月17日の各新聞報道で発覚した。同社が所有権を持たない土地について、売却損益を架空計上したと判断された模様である。申告漏れの総額は約62億円に及ぶとされ、国税当局は重加算税を含め約21億円を追徴課税した。なお、同社はこの件に関して、一切公式サイト上でコメントをしていない。
(2) 2011年には、福井県美浜町などでの原子力発電所建設で生じた金属屑を、実勢価格よりも安い価格で地元業者に売却した際に、同国税局から「(課税対象となる)交際費である」とされ、2010年3月期までの5年間で約45億円の申告漏れを指摘された。

◆110◆←←関西電力 闇歴史→→◆112◆

◆関西電力 闇歴史◆110◆

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経産省の電力・ガス取引監視等委員会が、関電に業務改善勧告(2023/12/26)
 関電は、卸電力取引所(JEPX)のスポット市場において
 きわめてずさんな入札業務を行い、注意義務を怠った重大な過失で
 市場価格を上昇させる重大な影響を生じさせた!
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◆関電の「過剰買い入札」と「余剰全量供出の未達」
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 関電は、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場において、2022年12月26日及び2023年9月20日、21日における合計3日間、合計51.7GWh(予定の21.4倍)の「過剰買い入札」を行い、最大 30円/kWh程度 スポット約定価格を上昇させた。2023年9月21日には、「余剰全量供出の未達」(市場に出さなければならない電気の一部を供給しなかったこと。1.1GWh)があり、価格を最大 2円/kWh上昇させた。(電力・ガス取引監視等委員会→こちら
 
 関電によると、過剰買い入札はシステムの不備、余剰電力供出の未達は担当者の認識誤りが原因としている。(関電プレスリリース→こちら

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◆電取委が関電に業務改善勧告(2023/12/26)
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 関電が日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場への誤入札をくりかえしたことに対して、電力・ガス取引監視等委員会(電取委)は、電気事業法に基づく業務改善勧告を出した。
  
 関電には、自社が大規模発電事業者として市場に重大な影響を与えうる地位にあること、卸電力市場の信頼性を低下させうる行為を防止すべき注意義務を負うことの認識がないと指摘。役職員を含む社員の意識改革が必要と、勧告した。関電は、1月31日までに報告しなければならない。

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電取委「事案の詳細について(→こちら」より
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①【きわめてずさんな入札業務】関電は、複数回にわたって大量の過剰買い入札を行った上、同日に余剰全量を市場に供出しなかったなど、関電のスポット入札業務への対応はこれまで発生した他の誤入札事案とは同一視できない程度にずさんなものであった。

②【注意義務を怠り重大な過失】関電のスポット市場において占める売買入札量の大きさや、2021年から2023年にかけて頻発した誤入札を受けて、監視等委事務局が各社向けに注意喚起(※)を二度にわたって行っていたこと等に鑑みれば、関電には、誤入札を生じさせないように体制等を整備すべき高度の注意義務があった。それにもかかわらず、これを尽くさず、本来予定していた買い入札量の最大 21.4 倍にも及ぶ量の過剰な買い入札を行ったことには、重大な過失がある。

③【市場価格を上昇させ著しく大きな影響】過剰な買い入札によってスポット市場の約定価格を最大で約 2.5倍の価格に上昇させるなど、スポット市場に著しく大きな影響を生じさせた

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(※)2021~2023年に、電取委の事務局が各社向けに出した注意喚起の趣旨
(→こちら
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 スポット市場における意図せざる入札、誤入札は、他の入札参加者の約定機会を奪う可能性があり、市場全体の信頼を損ねる行為となる。さらに、余剰電力の処分や追加供給力の調達の必要が生じる可能性があり、多大な損失を生じさせかねい。

 こうした入札行動が繰り返される場合、市場相場を人為的に操作する行為とみなされることもある。過怠金の賦課、取引制限等の処分、電気事業法上の業務改善勧告の対象となることもある。

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◆関西電力 闇歴史◆109◆

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◆関電の “安全無視文化” は、1980年代には既に定着!
 もうけ優先の結果、関電の原発で何が起こっていたか!

 (1) 一次冷却水のポンプが破壊寸前!――高浜原発、大飯原発
 (2) 放射能汚染水漏れを放置――美浜原発、大飯原発
 (3) 緊急停止回路を切っての曲芸運転!――美浜原発
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◆『決定版 原発大論争!』にみる関電の “安全無視文化”
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 この闇歴史◆109◆の内容は『決定版 原発大論争! 電力会社 VS 反原発派』(別冊宝島81号、1988年9月発行、1999年12月 宝島社文庫)によるものです。

 同書は、チェルノブイリ原発事故(1986年)以来、急速に高まる国民の批判の声を封じ込めるために、電力会社が作成した『内部資料・原子力発電に関する疑問に答えて』に対して、1988年、反原発派の論客、久米三四郎、小林圭二、生越忠、堀江邦夫、西尾漠、小出裕章、藤田祐幸、槌田敦、山口俊明、高木仁三郎ら15名が反論し、推進か廃炉かの「原発論争」を巻き起こした歴史的名著です。東海村臨界事故が起こった1999年に文庫版として復刻されました。現在も、amazonなどネット通販で中古本が入手できます。

 この闇歴史◆109◆の内容は、同書の中の「第三部 経済性 電力会社 VS 河田昌東」から、“傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」”(文庫版p.278~)に従ったものです。

 その著者、河田昌東さん(かわた・まさはる、同書肩書は名古屋大学助手)は、現在、「チェルノブイリ救援・中部」でボランティアをされています(関連記事→こちら)。関電はじめ電力会社の “安全無視文化” の闇歴史がいかに根深いものか、鋭く告発しています。

 以下、河田昌東さんの了承の下に引用してまとめ、その後に該当部分を転載しています。(転載は関電以外の部分は省略。漢数字の年号は算用数字に変換)

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1980年代から原発のコストダウン、経済最優先が叫ばれる!
 「ECCS(非常用炉心冷却装置)のような過度な付属設備は除去すべき」

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 1982~83年頃から、原発のコストダウンの必要性が声高に叫ばれだした。その背景には、原発の建設費が急上昇を続ける中、初年度発電原価が石炭とあまり変わらなくなったことがある。このままでは「原発の電気は安い」という経済性神話が崩れそうになってきた。その対処として、ハード面、ソフト面で対策が検討された。

ハード面では、原発建設費のコストダウン。
・設計の合理化。日本の原発は「安全すぎる」のでムダを省く。日本原子力産業会議の有沢広巳会長(当時)は「軽水炉のECCS(非常用炉心冷却装置)のような過度な付属設備は除去すべき」と主張(1986年)。
・原発設計の標準化。
・建設工期の短縮、つまり手抜き工事のすすめ。

ソフト面では、
・過剰検査の是正、つまり手抜き検査のすすめ。
・長期サイクル運転による稼動率向上。定期点検期問をできるだけ短縮し、運転期間をできるだけ延長する。

 このように、現代に至る「安全無視、経済性優先」の“安全無視文化”の流れが1980年代から始まっている。

【注】2023/11/15、関電は、原発の利用率向上に向けて、従来より長い期間の連続運転や点検の効率化に取り組む方針を示した。連続運転については、従来より2ヵ月長い15ヵ月への変更を検討とのこと。

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★以下は『決定版 原発大論争!』~傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」~から転載。
 
 原発のコストダウンの必要性が業界で声高に叫ばれだしたのは、原発の建設費が急上昇を続ける中、初年度発電原価が石炭とあまり変わらなくなり、このままでは“原発の電気は安い”という経済性神話が崩れそうになった1982~83年頃からである。
 
 この問題に対処するため、たとえば東京電力では、1982年9月、「原子力コストダウンプロジェクトチーム」を設置し、検討を始めている。原発メーカーや電力業界のワーキンググループが考え出した原発建設費のコストダウンのための処方筆は、次の三つである。
 
コストダウンの三つの処方箋
 
 第一に、設計の合理化。その具体的内容は、耐震設計や安全設計の見直し、というもので、要するに、日本の原発は“安全すぎる”のでムダを省いて身軽にし、これによって建設費の数%は下げられる、というものである。
 
 第二に、原発設計の標準化。これまでの原発建設は、建設地の地盤や地形などの地理的条件によって基礎工事などが違い、あるいは以前につくった原発で具合の悪かったところを手直ししたりしながら、一つひとつ、手作りに近いかたちでつくられていた。その結果がコスト上昇につながっている、と言うのである。だから“標準型を決め、余分な設計変更を行なわないようにしよう”というわけだ。
 
 第三は、建設工期の短縮、つまり手抜き工事のすすめである。工期が一ヵ月短縮されれば、建設費の0.2~0.3%程度は安上がりになると試算されていた。
 
 こうしたハード面でのコストダウンを実行すると同時に、ソフト面でも、たとえば、“過剰検査の是正”、つまり“手抜き検査のすすめ”や、“長期サイクル運転による稼動率向上”などが提案されている。
 
 建設費のコストダウンについては、日本原子力産業会議の有沢広巳会長(当時、1988年3月死亡)が、1986年4月8日に行なわれた同会議の第19回年次大会で、「軽水炉のECCS(非常用炉心冷却装置)のような過度な付属設備は除去すべきである。ある面だけ丈夫にしても、安全上意味がなく、ムダな投資である」と所信表明し、話題になった。ところが「それからわずか18日後の4月26日、ソ連のチェルノブイリ原発事故が起こると、日本では、原発推進側から、『(ゾ連炉は)欠陥炉だ、人為ミスだ」の声に混じって、「ECCSのスイッチを切っだのはけしからん」の大合唱が起こり、この有沢発言は、いつのまにか立ち消えになってしまった。もしチェルノブイリ原発事故がなかったら、日本の原発から、ECCSは省かれていたかもしれないのだ。
 
 さて、このようなコストダウン戦略の結果、日本の原発はどのような状況下に置かれることになったか、ソフト面に焦点をあてて見よう。
 
 コスト低減のために稼動率を上げるには、定期点検期問をできるだけ短縮し、運転期間をできるだけ延長する。これが長期サイクル運転である。そのために、さまざまな無理が行なわれ、原発事故につながっている。
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“安全無視文化”のもと、関電の原発では、何が起こったか!
 (1) 一次冷却水ポンプが破壊寸前!――高浜原発、大飯原発

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・1987年7月11日、定格出力運転中の高浜原発1号機で、一次冷却水ポンプの一台が異常音をたてて大きく振動したため、原子炉が手動停止された。原因は、関電が無届けで蒸気発生器内部に金具を取り付け、それが脱落したためと分かった。はずれた金具の一部は、原子炉内に入り込み、循環したらしい。

・この金具は、定期点検の期間短縮のために設置、その後は取り外すべきところ、次の定期検査に使えるとして、そのままにされていた。定期点検をたった四日間短縮するために、関電は、高浜1、大飯1、2、美浜2、3号機など、計5基の原発に同様の金具を取り付けており、さすがの原子力安全委員会も、これら原発の即時停止と金具の取りはずしを命じた。

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★以下は『決定版 原発大論争!』~傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」~から転載。
★冷却剤ポンプ破壊寸前!――高浜原発・大飯原発

 1987年7月11日、定格出力運転中の関西電力高浜一号で、一次冷却水ポンプの一台が異常音をたてて大きく振動したため、原子炉が手動停止された。原因は、それより三ヵ月前に、関西電力が通産省に無届で、蒸気発生器内に取り付けた重さ7.8キログラムの金具が、高速水流によって振動し、ボルトや止めピンがはずれて脱落、一次冷却水ポンプに巻き込まれたためとわかった。はずれた金具の一部は、原子炉内に入り込み、循環したらしい。この事故は、あと一歩すすめば冷却剤ポンプの破壊と停止、蒸気発生器細管の破断や燃料棒破損による放射能洩れにとどまらず、原子炉制御の最後の頼みの綱である制御棒の作動妨害など、メルトダウンにも核暴走にも発展しうる重大な事故であった。
 
 関西電力は、なぜこのような金具を付けたのだろうか。それまで、定期点検の際には、燃料棒の交換と蒸気発生器の点検を、順次、別々に行なっていたのだが、これを同時並行的に行なうことで点検期間を短縮しようとしたのである。そのために、蒸気発生器の一次冷却水の出入口に臨時の隔離蓋を取り付け、原子炉内の水が蒸気発生器内に流入しないようにした。点検が終わった後、この蓋は取りはずされたが、この蓋の取付金具は、次の定期点検でも使えるように、そのまま蒸気発生器に、ボルトで取り付けられたまま残された。これがはずれたのである。
 
 高浜一号の事故から五ヵ月後の12月17日、今度は大飯一号で同様の事故が発生し、住民の不安は高まった。関西電力は、高浜一号、大飯一・二号、美浜二・三号など、計五基の原発に同様の金具を取り付けており、たび重なる事故に、さすがの原子力安全委員会も、これら原発の即時停止と金具の取りはずしを命じざるをえなかったのである。この金具は、定期点検をたった四日間短縮するためのものだったが、経済性優先のために安全性を犠牲にした典型といえる。
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“安全無視文化”のもと、関電の原発では、何が起こったか!
 (2) 放射能汚染水漏れを放置――美浜原発、大飯原発

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・1987年5月28日、美浜原発3号機は、放射能を含む一次冷却水の水漏れがひどくなって原子炉を手動停止した。以前から毎時7.7リットルも漏れていたのだが、この日、12.5リットルにまで増加したので、やむなく原子炉を止め、修理した。

・1987年6月15日、大飯原発2号機で、放射能を含む一次冷却水が毎日100リットルも漏れながら、一年以上も放置、運転が強行されていたことが発覚。定期点検入りまでに470日間の長期連続運転を達成し、日本新記録をつくったのだが、こうした長期サイクル運転の裏には、30トン以上もの放射能汚染水漏れの放置という、信じがたい事態が続いていた。

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★以下は『決定版 原発大論争!』~傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」~から転載。
★150トンの放射能汚染水漏れを放置――美浜原発・大飯原発・福島第一原発

 1987年5月28日、関西電力美浜三号は、放射能を含む一次冷却水の水漏れがひどくなって原子炉を手動停止した。パイプのパッキング不良で、だいぶ前から毎時7.7リットルも漏れていたのだが、この日、12.5リットルにまで増加したので、やむなく原子炉を止め、修理したのである。
 
 1987年6月15日、関西電力大飯二号で、放射能を含む一次冷却水が毎日100リットルも漏れながら、一年以上も放置され、運転が強行されていたことが発覚した。関西電力は水漏れを知りながら、2月からの定期点検時までこれを隠し続けていたのである。実は、大飯二号は、この2月定期点検入りまでに470日間の長期連続運転を達成し、日本新記録をつくったのだが、こうした長期サイクル運転の裏には、30トン以上もの放射能汚染水漏れの放置という、信じがたい事態が続いていたのである。
 
 1986年、東京電力福島第一原発二号で定格出力運転中、10月9日から一次冷却水漏れが始まり(毎分約4リットル、一時間約240リットル)、しだいに増加し続けたが、東電は25日間も運転を続行し、11月3日になってようやく原子炉を止めた。原因は、再循環系配管の溶接部に「振動によるひび割れが生じたためであった。この問に漏れた放射能汚染水は、何と150トンにも及んだ。
 
 このひび割れは、パイプの破断と一次冷却水喪失による炉心空だきへと進む可能性があり、非常に重大な事故である。これとまったく同じ事故が、前年7月29日、日本原電の東海第二原発で起こったのだが、電力会社はこの教訓を生かさず、点検を怠っていた結果、同じことを繰り返したのである。
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“安全無視文化”のもと、関電の原発では、何が起こったか!
 (3) 緊急停止回路を切っての曲芸運転!――美浜原発

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・1986年8月2日、美浜原発1、2号機は、落雷によるタービン停止で、原子炉も緊急自動停止することになっていたのに、停止させなかった。緊急停止(スクラム)回路を切って、出力低下(7%まで)のまま、各種機器を大急ぎで点検、操作し、再び出力を回復させるという、曲芸運転をやってのけた。その操作は、警報を鳴らし、点滅する約100個のアラーム・ライトの一つ一つに対応するものであった。操作を誤れば、暴走事故につながりかねない綱渡り、曲芸としか言いようがなかった。
(このあたりは前掲書『決定版 原発大論争!』文庫版のp.19あたりも参考にしています)

・わずか3か月前に起こったチェルノブイリ原発事故が、緊急停止回路を切っての出力低下試験中に発生したことの教訓はどこに行っていたのか。

・しかし、このはなれ技というべき操作をした運転員は、会社から、よくやったと表彰され、金一封をもらっている。原発は止めると、再起動まで時間がかかるし、その間のコストも大きくなることから、原発は止めないことが、電力会社の儲けそのものに直結する。運転の継続を最優先した、恐ろしい安全無視!

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★『決定版 原発大論争!』~傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」~から転載。
★緊急停止回路を切っての曲芸運転!――美浜原発

 1986年8月2日、日本原電敦賀一号と関西電力美浜一、ニ号から送電を受けている変電所に落雷があり、変電所からの送電がストップした。そのため、負荷を失った上記三発電所のタービンが自動停止した。それに伴い、原子炉も緊急自動停止することになっていた(安全審査資料)のだが、この時、敦賀一号はスクラムしたのに、美浜一、二号はなぜかスクラムせず、出力低下(7%まで)のまま、各種機器を大急ぎで点検し、再び出力を回復させるというはなれ技をやってのけたのである
 
 この時は、当然、タービン停止で発せられるスクラム信号回路を切っていたはずである。この操作をした運転員は、会社から、よくやったとほめられ金一封をもらったとのこと。それというのも、原子炉はいったん停止すると、燃料棒内にキセノン毒が溜まり、数日間は運転が再開できないので、会社にとっては大損害を与えるからである。一旦止めれば数億円の損害を出す、と言われる原発を、いかに止めないかは、電力会社にとって死活問題なのである。
 
 このような緊急停止回路を切っての曲芸運転がいかに危険かは、この事故のたった三ヵ月前に起こったチェルノブイリ原発事故で証明ずみのはずだ。その“意図的操作ミス”を片方で大声であげつらいながら、他方では、このような危険を冒しているのである。チェルノブイリの運転員と美浜の運転員の違いは、「結果良ければすべて良し」ということだけなのだ。
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関電では、事故の日常化、原因を究明しない杜撰な体質がめだっている!
 「金だけ、今だけ、自分だけ」という“安全無視文化”は根深い!

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 関電の原発トラブルは、現在も相変わらず続いている。たとえば、蒸気発生器細管の損傷は、高浜原発3、4号機で、定期検査ごとに連続して発見されている(→◆071-2◆)。しかし、関電は、抜本的な原因究明をせずに、原因を推定したとして運転を再開、継続している。蒸気発生器細管の損傷は、大事故にもつながりかねない大きな問題であるにもかかわらず、規制委も関電の言い分をそのまま認めている。「金だけ、今だけ、自分だけ」という関電の“安全無視文化”は根深い。

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★以下は『決定版 原発大論争!』~傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」~から転載。
★稼動率競争で傷だらけの原発たち

 以上述べてきたように、日本の原発は今、炉型の違いを問わず、傷だらけの状態で運転されており、言わば、事故の日常化現象が起こってきている。1970年に大阪万博ではじめて原子の灯をともして以来、18年(88年当時)がたち、部品の劣化による事故があちこちで頻繁に起こるようになっているにもかかわらず、今や石油にさえ追い抜かれてしまった発電コスト低減のために、電力各社は少々の事故が起こっても原子炉を止めず、運転を続けながら修理する、などの稼動率競争に明け暮れているのである。
 
 無理やり運転と同時に、事故隠しも少なくない。監督官庁であるはずの通産省(資源エネルギー庁)が、電力会社に対して事故隠しを指示している事実さえ明らかにされ、地元の人びとの怒りをかっている。
 
 1986年11月27日、衆議院科学技術委員会で明らかにされたところによると、1986年の9月16日に起きた敦賀一号のECCSの高圧注水系配管からの水漏れ事故について、資源エネルギー庁は日本原電に対し「非公開とすること」を要求していた。これも、公開によって批判が高まり、原子炉を停止せざるをえなくなる事態を避けたい、という意図のあらわれである。
 
 このように、事故の日常化と事故隠しの体質は、すでに確証された厳然たる事実として、我われの目の前に明らかにされている。安全性を「犠牲にしたコストダウンはあり得」ないという電事連の主張のデタラメさを、原発そのものが、自らの事故史によって激しく告発し続けているのである。
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◆108◆←←関西電力 闇歴史→→◆110◆

◆関西電力 闇歴史◆108◆

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◆関電などによるバイオマス発電事業が破綻(2022年12月)
 結局、発電事業は大東建託に事業譲渡(2023年7月)
 関電の電源構成→原発は20.3%だが、
        →太陽光0.3%、地熱、風力、バイオマスは各0.0%
 【付 RE100 】
 【付 関電の電源構成】

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(1) 2013年12月9日、兵庫県森林組合連合会(県森連)、公益社団法人兵庫みどり公社、ならびに関西電力は、兵庫県、兵庫県朝来(あさご)市と協働で、朝来市における木質バイオマス事業計画を本格的に検討していくことに合意、協定を結んだ。

・未利用木材(間伐材)の搬出から乾燥、燃料チップ製造、燃料チップを活用した発電までを官民協働で行う今回の事業スキームは、「兵庫モデル」といわれ、国内初の取組み。地元の間伐材の有効活用が期待された。関西電力グループにおいては、初めての木質バイオマス燃料専燃発電所。2030年までに50万kW程度の再生可能エネルギー電源を開発することを目標とした。

(2) 2016年から、バイオマス発電事業を開始。年間の発電量は3700万kWh。ただし、当初から赤字が続いた。関電の発電所は、子会社の関電エネルギーソリューション。

【参考】 関電サイト(→こちら)より、兵庫県朝来市における木質バイオマス事業の概要。

(3) 2022年末に破綻。兵庫県森林組合連合会(県森連)が2022年11月に事業撤退を申し出て、関西電力は、2022年12月24日に発電停止。協定は2022年12月25日付けで解約された。5者の協定により、県内の未利用木材=間伐材を搬出し、燃料チップの製造及びバイオマス発電までを行う事業に取り組んできたが、木材価格の高騰「ウッドショック」の影響で燃料となる木材チップの確保が困難となったという。県森連は関電側から損害賠償を請求される可能性を想定し、2022年11月、大阪地裁に特定調停を申し立てた。関電は事業の譲渡を検討。

(4) 2023年7月6日、大東建託(株)は、関電エネルギーソリューション、兵庫県森林組合連合会と、間伐材などを燃料にした朝来バイオマス発電所と、間伐材などの供給センターの事業譲渡契約を締結。2024年度中の再稼働をめざしている。

【参考】大東建託のWebサイト(→こちらこちらも)より。当社は、RE100に加盟し2040年までに、事業活動で消費する電力を100%自社発電の再生可能エネルギーにすることを目標として掲げています。今後は、本発電所で発電した再生可能エネルギーを利用することで、当社グループにおける再生可能エネルギーの国内導入率は50%に達する見込みです。

【付 RE100 】
Renewable Energy 100%、アールイー100。企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ(リーダーシップ)。世界や日本の企業が参加。世界的に有名な加盟企業としては、AppleやGoogle、Microsoftやスターバックス、IKEAやネスレなどが名を連ねている。
「RE100とは?日本企業一覧・取り組み事例やメリットをわかりやすく紹介」→こちら
「RE100とは?意味・読み方や国内外の加盟企業をわかりやすく解説」
(環境価値証書についても)→こちら

(5) 2023年10月19日、新聞報道によれば、衆議院議員(兵庫5区)と県議が代表理事を務める兵庫県森林組合連合会(県森連)に、県が貸し付けた9億円が回収困難となっている。県森連の財政状況が悪化しているとの指摘がある中、県が貸付額を増やしていたことがわかったという。バイオマス発電事業が県森連の資金繰りを悪化させたとみられている。

【付 関電の電源構成】(→こちら
・関電の電源構成は、火力と原子力が中心となっている。LNG火力が第1位で22.3%、続いて、原子力20.3%、石炭火力19.5%となり、この三者で計62.1%をしめる。
・再生可能エネルギーの割合は、大規模水力8.8%を除けば、ごく小さい。とくに、太陽光0.3%、地熱風力バイオマスは各0.0%。この四者で計0.3%にとどまるのは、お粗末としか言いようがない。
・関電の風力発電事業→◆066◆
(2022年度実績)(以下、グラフ及び注記は関電サイトより)


[グラフの注記]
※1 この電気のうち、非化石証書を使用していない部分は、再生可能エネルギーとしての価値やCO2ゼロエミッション電源としての価値は有さず、火力発電なども含めた全国平均の電気のCO2排出量を持った電気として扱われます。
※2 当社がこの電気を調達する費用の一部は、当社のお客さま以外の方も含め、電気をご利用のすべての皆様から集めた賦課金により賄われており、この電気は再生可能エネルギーとしての価値を有さず、CO2排出量については、火力発電なども含めた全国平均の電気のCO2排出量を持った電気として扱われます。
※3 この電気には、水力、火力、原子力、FIT電気、再生可能エネルギーなどが含まれます。
※4 この電気には、他社から調達している電気の一部で発電所が特定できないもの等が含まれます。
注1) 四捨五入の関係で合計が100%にならないことがあります。
注2) 経済産業省の制定する「電力の小売営業に関する指針(2023年4月)」に基づき、算定・公表しています。
注3) 当社は再エネ指定の非化石証書の購入により、実質的に、再生可能エネルギー電気の割合の向上をはかります。

◆107◆←←関西電力 闇歴史→→◆109◆

◆関西電力 闇歴史◆107◆

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◆関西電力送配電(株)、インバランス料金を複数回、誤算定
 電力・ガス取引監視等委員会が報告を公表(2023/7/28)
 誤算定の原因は、マニュアルの不備など事務の正確性欠如
 【付 インバランス料金】
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 関西電力の100%子会社である関西電力送配電(株)は、インバランス料金(発電計画などに対する電力の過不足に応じ、発電・小売り事業者と送配電事業者がやりとりするお金)について、誤算定を繰り返していた。

 マニュアルの不備、運用設定の誤り、システム改修時の誤り(仕様変更の認識不足)が原因とされている。インバランス料金は、卸電力市場における重要な指標の一つであり、電力小売業者にとっては、重要な経営指標。誤算定の結果、多くの小売電気事業者の会計処理に多大な影響を与えている。電取委は報告のまとめで、「重い事象」と指摘している。

 電力・ガス取引監視等委員会は、インバランス料金の誤算定を引き起こした東北、中部、関西、九州及び沖縄に対し、電気事業法に基づく報告徴収を実施した。2023/7/28、各社から報告された概要を公表した。(→こちら

 経緯としては、まず関西電力送配電(株)で発覚した。
  
(1) 2022年10月、関西電力送配電(株)の中央給電指令所システムにおけるデータ取込設定の誤りに伴うインバランス料金単価の公表値の誤りが発覚
(誤算定期間:2022年4月分~2022年10月分)
(2) 関西電力送配電(株)は誤算定を発生させたことから、中給システムの再点検を実施
(再点検期間:2022年11月~2023年3月末)
(3) 再点検の結果、新たな誤算定が発覚
(誤算定期間:2021年6月分~2023年2月分)
※2021年6月分~2022年3月分は旧インバランス料金単価の誤算定。

・電力・ガス取引監視等委員会(電取委)から報告徴収に対する関西電力送配電(株)の報告は
 
インバランス料金の誤算定に係る報告徴収への報告について(→こちら
2023年3月15日 関西電力送配電(株)

・関西電力送配電(株)のWebサイトにおける
インバランス料金に関連するお知らせ………数が多すぎ!
(→こちら
(→こちらも
 
・2023年5月17日 インバランス料金単価算定根拠となるデータ誤りについて
・2023年5月10日 【終報】インバランス料金単価算定根拠であるインバランス量算出のためのデータ取り込設定の誤りについて
・2023年4月25日 インバランス料金単価算定根拠となるデータ誤りの可能性について
・2023年3月30日 【続報】インバランス料金単価算定根拠であるインバランス量算出のためのデータ取り込設定の誤りについて
・2023年1月6日 【終報】インバランス料金単価算定根拠となるデータ誤りについて
・2022年12月17日 インバランス料金単価算定根拠となるデータ誤りの可能性について
・2022年11月10日 【続報】インバランス料金単価算定根拠であるインバランス量算出のためのデータ取り込み設定の誤りについて
・2022年11月1日 【続報】インバランス料金単価算定根拠であるインバランス量算出のためのデータ取り込み設定の誤りについて
・2022年10月25日 【続報】インバランス料金単価算定根拠であるインバランス量算出のためのデータ取り込み設定の誤りについて
・2022年10月14日 【訂正】インバランス料金単価算定根拠であるインバランス量算出プログラムの誤りについて
・2022年10月13日 インバランス料金単価算定根拠であるインバランス量算出プログラムの誤りについて
・2022年7月25日 【終報】6 月28 日のインバランス料金単価200 円/kWh の誤りについて
・2022年7月11日 【続報】6月28日のインバランス料金単価200円/kWhの誤りについて
・2022年6月29日 6月28日のインバランス料金単価200円/kWhの誤りについて
・2022年6月28日 新たなインバランス料金制度におけるインバランス料金単価算定根拠である「調整力の限界的なkWh 価格」の誤りについて
・2022年5月30日 【終報】新たなインバランス料金制度におけるインバランス料金単価算定根拠である「調整力の限界的なkWh 価格」の誤りについて
・2022年5月25日 新たなインバランス料金制度におけるインバランス料金単価算定根拠である「調整力の限界的なkWh 価格」の誤りについて

【付 インバランス料金】

 電力の小売業者が事前に確保した供給量に対し、実際には顧客の需要量の方が多くて、供給量が足りなくなった場合には、送配電会社が足りない分を供給することになっている。電力の小売業者は、需要を正確に見積もることが求められる。送配電会社が電力を融通することで、需要家に電気が届かなくなることはない。しかし、電力を融通してもらった小売業者は、送配電会社に「インバランス料金」という追加料金を支払う必要がある。(インバランス=アンバランス)
 このインバランス料金は、ペナルティ的な意味合いが強く、卸電力よりも高く設定されている。(需要が少なくて供給の方が多くなった場合は、送配電会社が余剰分を買い取る。)

◆106◆←←関西電力 闇歴史→→◆108◆

◆関西電力 闇歴史◆106◆

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中性子照射脆化の進み具合をみるのに、関電は、規制委の規格にない方法で測定!
 福井県には「規格にない図(WOL試験片)」を示していながら(2016年)、
 訴訟では「規格にある図(CT試験片)」を「イメージ図」として提示!(2021年)
 老朽原発40年廃炉訴訟(名古屋地裁)で明らかに!
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 中性子照射脆化の進み具合をみるための監視試験片のうち「破壊靭性試験片」は母材と溶接金属の2種類を毎回取り出して試験すべきところ、関電は、1回の取り出しでどちらかしか試験していないことも裁判で明らかとなりました(◆022◆)。

 さらに、意見書の書籍化(『原発の老朽化はこのように』→こちら)作業の中で、高浜1、2号機と美浜3号機の破壊靭性試験片は、今は使われていないWOL試験片というタイプで、規制委が破壊靭性試験の方法として採用している日本電気協会のJEAC4206-2007という規格にもないことを確認しました。この試験片は破壊靭性値を正しく測定できない問題があります。書籍のQ&Aで解説しています。

 関西電力が原子力規制委員会の審査で提出した資料では、破壊靭性試験片の型は明示されていませんでした。また、当訴訟では、国も関電も、破壊靭性試験については、「イメージ」図として、CT試験片とその試験の図を準備書面で示し、本件原発の破壊靭性試験片の型については明示していないので、CT試験片なのかと思っていましたが、以下のことから、WOL試験片であることがわかりました。

・意見書でも紹介している日本電気協会が規制委に提出した資料に、高浜1号炉であると特定できる図があるのですが、よく見ると、その「試験片種類」は「1X-WOL」と書かれている。(2020年1月10日 第5回原子炉圧力容器に対する供用期間中の破壊靱性の確認方法等の技術評価に関する検討チーム)

・辻元清美議員提出「原子力発電所の劣化状況の点検・評価・審査に関する質問主意書」(2023年3月13日)への答弁書(同年3月24日)において(→こちら)、国内の全ての原発の高経年化技術評価等報告書に記載された監視試験片の種類について、高浜1、2号機は記載がありませんが、美浜3号機は「WOL試験片」と記載。

・関電が福井県の原子力安全専門委員会に提出した資料には、高浜1、2号機と美浜3号機の破壊靭性試験片としてWOL試験片の絵が示されていることを確認(高浜1、2号機は2016年5月13日開催第85回、美浜3号機は同年11月2日開催第87回の各資料に記載。福井県原子力安全対策課WEBサイト掲載)。

 関電は、福井県の専門委員会にはWOL試験片の絵を提出しているのに<下記>、名古屋地裁の訴訟では、「イメージ」図として、CT試験片を図示しており、あまりに不誠実です。

 CT試験片は、二つの穴に棒を通して上下に引っ張って、き裂の進展が始まる限界の力を測定しますが、WOL試験片は、引っ張る片方にネジ穴が開けらていて、ネジを差し込んで引っ張るために塑性変形が起こり、引っ張る力が塑性変形に使われることで、より大きな力まで耐えられることになってしまうのだそうです。

 WOL試験片をCT試験片と同じように扱うために、WOL試験片にサイドグルーブと呼ばれる溝をつけて破壊しやすくするなどの修正を行う手法もあるそうです。関電が福井県の専門委員会に提出したWOL試験片の絵にはサイドグルーブがついているように見えます。しかし、審査において、WOL試験片の測定値の妥当性が議論された記録はありません。

 以上、『デンジャラスくん通信 第24号』(→こちら)より

▼破壊靭性試験片–CT試験片
名古屋地裁、2021年10月28日参加人 関電 高浜準備書面(11)より(→こちら

▼破壊靭性試験片–WOL試験片(図中「関連温度」とは、「脆性遷移温度」のこと)
・2016年5月13日開催 第85回福井県原子力安全専門委員会
「資料No.3[関西電力((株))]高浜発電所1、2号機の運転期間延長申請の概要について」より
(→こちら
・2016年11月2日開催 第87回福井県原子力安全専門委員会
「資料No.2[関西電力((株))]美浜発電所3号機の運転期間延長申請の概要について」より
(→こちら

◆105◆←←関西電力 闇歴史→→◆107◆

◆関西電力 闇歴史◆105◆

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◆カルテル問題で、関西電力が経産大臣に業務改善計画を提出(2023年8月10日)
 「地域独占の意識からぬけず、自由化の趣旨を理解していなかった。
 他人任せ、上意下達の組織風土に問題があった

└─────────────────────────────────

 以下、( ) 付き数字 (1) (2) (3)…に書いた内容は、
関電プレスリリース「電気事業法に基づく業務改善計画の提出について」
(→こちら)の中の「業務改善計画」からの抜き書きです。

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◆関電「業務改善計画では、いくつか反省していますが、
 “ 原子力 ” などで大手電力間の協力もあったものですから……
(原発推進の政策を理由に「やむを得なかった」と弁解したいのか)
(独占時代の甘い環境を忘れられず “独占禁止” なんて無縁だと思っていたのか)
└─────────────
 ↓「業務改善計画」からの抜き書き
(1) 電力自由化の趣旨に反し、電力事業の健全な発達に支障が生ずるおそれのある事案を発生させました。
(2) 旧規制産業時代の意識から脱却しきれず、電力自由化市場で事業者として守るべきルールを守れませんでした。
(3) 独占禁止法や電気事業法の行為規制などにおけるルール違反がありました。
(4) 関西電力グループ行動憲章は独占禁止法遵守に関する直接の社内規程や違反防止のための仕組みを定めていませんでした。
(5) 自由化後も原子力その他の分野において旧一電(大手電力)との協力が求められる業務を行い、当社のエネルギー事業を担当するエネルギー・環境企画部門の活動においては独占禁止法の違反リスクはない、もしくは、低いといった誤った認識が存在していました。

┌─────────────
◆関電「組織風土に問題がありました!
 職位や所属の垣根が高く、
 上意下達になっていましたので……」
(責任は全役員にあるが、全従業員には責任を押しつけないで)
└─────────────
 ↓「業務改善計画」からの抜き書き
(1) 全役員・全従業員が、職位や所属の垣根を越えて自身の思いや気付きを率直に語り合えるような組織風土がありませんでした。
(2) 他人任せ、上意下達の組織風土がありました。

┌─────────────
◆関電「今後の具体的な対策いろいろ!
 競合他社との接触を禁止することなど……」
(不意に出てくる超難しい用語「慫慂」は、関電内では普通なの?)
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 ↓「業務改善計画」からの抜き書き
(1) 旧一般電気事業者(旧一電)を含む競合他社との接触を規制する規程等を定めます。
(2) 競合他社との接触を禁止し、例外的に接触する場合であっても競争に影響する情報を交換することを禁止します。
(3) 研修を実施する際には、研修受講率の把握や確認テストを実施します。
(4) 社内の法律相談窓口について周知し、活用を慫慂します。
(5) 法務部門担当者が、選定した会議に関する資料や議事録を確認します。

【参考】
慫慂(しょうよう)とは、周りの人がそうするようにオススメすること。
ポンと背中を押して、促してくれるという意味があります。
自分ではそうする意思がなかったのに、近くにいる人が呼びかけてくれる様子を示しています。
「慫慂」の「慫」も「慂」も、日常生活ではあまり見かけない難読漢字です。
「慫」はビックリする、お誘いするという意味があります。
また「慂」は誰かにオススメするという言葉。
つまり「慫慂」の熟語には、誰かに声をかけられて驚いているニュアンスも含まれているのです。
また最近では「おすすめする」の敬語として、慫慂が用いられることもあります。
それにしても関電の人は難しい言葉を使うんですね。
中味が伴っていると良いのですが (^ ^;;

┌─────────────
◆関電「組織、制度などを新設します!
 あれもこれも作りますので……」
(組織や制度を作るだけならすぐにできるが、魂を入れるには?)
└─────────────
 ↓「業務改善計画」からの抜き書き
(1) 社長を議長とする「組織風土改革会議」を新設します。
(2) 法務情報発信サイトとして「法務ポータルサイト」を立ち上げます。
(3)「 コンプライアンス推進本部」を新設し、コンプライアンス推進の最高責任者としてCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)を設置する。コンプライアンス推進本部によるモニタリングを確実に実施します。
(4) 独占禁止法違反行為に係る調査に協力した者に対する懲戒処分等の減免規程等、いわゆる「社内リニエンシー制度」をつくります。
(5)「独占禁止法遵守に関する規程」を定め、すべてのグループ会社に通知します。

◆104◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆106◆

◆関西電力 闇歴史◆104◆

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◆被ばく労働に頼らないと動かない原発の非人間性、非倫理性を告発
 『原発ジプシー』『原子炉被曝日記』
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 「原発を動かしてはいけない 10のわけ」◆101◆)の中に、
【事故が起こらなくても】
(4) 定期点検などで労働者の被ばくが不可避。非正規労働者が多く、健康管理は不十分。
(5) 日常的に放射性物質の希ガス、トリチウム、その他の汚染物質を放出し、環境を汚染。
が挙げられていますが、これらを明らかにするルポルタージュを、2編。

 日々の被ばくという恐怖にかられながら、隠された被ばく労働の実態を告発している。労働者の健康と生命を引き換えになりたつ発電装置。結局は人海戦術、被ばく労働に頼らないと動かない原発の非人間性、非倫理性を鋭く指摘。

┌─────────────
◆原発ジプシー…美浜原発での二次系、一次系作業
└─────────────
『原発ジプシー[増補改訂版]――被曝下請け労働者の記録』堀江邦夫 著。現代書館2011/05/31。四六判 上製、 352ページ(なお、旧単行本1979/10/26、講談社文庫1984/10/01あり)
美浜原発、福島原発、敦賀原発で原発下請労働者として働いた告発ルポルタージュ。放射能に肉体を蝕まれ「被曝者」となって吐き出される棄民労働の全て。

【目 次】(◇図解はとくに興味深いもののみ)
Ⅰ 美浜原子力発電所(1978/09/28~12/02、1~3号機が稼働)
 二次系での作業の日々

採用決定
原発労働者の過去
貝の腐臭の中で
粉塵まみれの”ネッコー”作業[p.033…高圧給水加熱器内のピン・ホール検査 ]
健康を守るために
鉄板の上をイモ虫のように[◇p.051…湿分分離加熱器での作業 ]
元漁師の青年たち
「ケガした者は、電力さんにあやまれ!」
“完全装備”
白血球が下がった“鬼軍曹”
定検を“無視”した原発の設計[◇p.075…科学技術庁のポスター「エネルギー・アレルギー」(1978年)。セミ・ヌードの女性
「わしらを差別するのか」

 いよいよ一次系へ

管理ナンバー21851639
ピンハネの実体
マンジュウの味
全面マスクの労働者
「死の影」
スイッチ押し作業
防護服やマスクは自己流で…
「計画線量」の無計画性
“出向”という名の使い捨て
“救いの神”と“死神”
赤ランプ――汚染
「早く出なければ!」
エア・マスク
破壊される海
“休職勧告”された老人
減少する発汗量
美浜原発との分かれ

Ⅱ 福島第一原子力発電所
(略)
Ⅲ 敦賀発電所
(略)

┌─────────────
◆原発被曝日記
└─────────────
『原発被曝日記』森江信 著。技術と人間1979/11/20 。四六判 上製、252ページ(講談社文庫1989/01、樋口健二さんが解説)

 福島原発、敦賀原発、島根原発、玄海原発、東海村、大阪に事業所をおく原発関連サービス会社で、原子炉の清掃などに従事した労働者の体験ルポ。福島原発、浜岡原発、伊方原発など六つの現場で、約三年間にわたり放射能洗浄などの仕事をした日々をつづる。

興味深い図…床除染作業p.21、洗浄装備p.24、復水器断面p.28、スミヤろ紙とスミヤの取り方p.30、フィルターエレメント取り外しp.34、給水スパージャー交換工事p.201

◆103◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆105◆

◆関西電力 闇歴史◆103◆

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◆大飯1、2号機の廃炉によるクリアランス金属を
 弁に加工して、大飯3、4号機で使用と発表
 放射性廃棄物で循環型社会を形成?!
(2023年7月)
└─────────────────────────────────

 2023/7/13の関電の発表によると、関電は今後の大飯3、4号機の定期検査において取り替える弁を、クリアランス金属にするとのこと。大飯1、2号機の燃料取替用水タンクの解体工事に伴い発生した金属を利用。大飯4号機は2023年8月、大飯3号機は2024年2月から定期検査の予定。
(→ こちら
(→ 放射性廃棄物の「クリアランス制度」◆057◆

 関電は「当社は、引き続き、原子力発電所の運転・保守や解体に伴って発生する放射性廃棄物の低減に向けて取り組むとともに、クリアランス制度を活用し、循環型社会の形成に貢献してまいります」としている。

 しかし、「放射性廃棄物の低減」なら原発を止めるべき。一方で老朽原発まで再稼働し、放射性廃棄物を増大させているではないか。本来なら手間と費用をかけて処理すべき放射性廃棄物を、手間と費用を惜しんで簡便に済まそうというだけの話。基準を変えて放射性廃棄物の量を減らしているだけなのに、よく言うよ。

 また、「循環型社会の形成」は、放射性廃棄物を循環させることではない。再利用が進めば、基準以下とはいえ、クリアランス金属加工品が市中に出てくる。次世代にそのような生活環境を押し付けていいのか。まず、放射性廃棄物、クリアランス金属の発生を止めよ。

 このように、関電の主張する「放射性廃棄物の低減」「循環型社会の形成」って、唖然とする内容。ホント、詭弁、出まかせ、居直り、ごまかしだよね。


▲「はんげんぱつ新聞」(第546号、2023.9)

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