関西電力 闇歴史」カテゴリーアーカイブ

◆関西電力 闇歴史◆118◆

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◆佐高信『徹底抗戦』(旬報社、2020年)より
 (1) 関西電力と原発推進の異常識
 (2) 関西電力の「二・二六事件」
 (3) 関西電力の反原発町長暗殺指令
 (4) 電力総連の責任も重い
 (5) 新“原発文化人”佐藤優
 (6) 札つきでない不良

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(1) 関西電力と原発推進の異常識(p.74)

  • 関電美浜原発2号機、蒸気発生器伝熱管の破断→緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動した事故(1991年2月9日)に関連して、飯田孝三・副社長の言動……資源エネルギー庁に呼ばれて指示を受けたときは神妙であったが、直後の記者会見では反発して居直った。それを知ったエネ庁が態度を硬化させると、あわてて謝罪し釈明した。佐高は「反発」がホンネで、「釈明」がタテマエであるとして「電力会社は役所と会社の悪い点を併せ持っている。」と書く。
  • 佐高信『佐高信の辛口100社事典』(七つ森書館)
  • 関電美浜原発2号機の事故について→ 関西電力 闇歴史◆002◆

(2) 関西電力の「二・二六事件」(p.76)

  • 芦原義重・代表取締役相談役名誉会長と腹心の内藤千百里[ちもり]・副社長らの取締役退任決議(1987年2月26日)。「小林(庄一郎・会長)によるクーデターと言われたが、起爆剤は『朝日ジャーナル』の奥村レポートだった。」
  • 奥村宏『関西電力 暗黒大陸』(朝日ジャーナル、1986年9月12日号)
  • 清水一行『小説財界』(集英社文庫)。内藤は藤井、芦原は芦塚として登場。
  • 関電のカネと社内権力抗争→ 関西電力 闇歴史◆036◆

(3) 関西電力の反原発町長暗殺指令(p.78)

  • 原発を積極的に推進しなかった今井理一・高浜町長(当時)の暗殺計画。「関電と警察がつるんで臭いものにフタをしようとしたのだろう。」
  • 斎藤真『関西電力反原発町長暗殺指令』(宝島社)
  • 関電のKという首脳の依頼→ 関西電力 闇歴史◆005◆

(4) 電力総連の責任も重い(p.156)

  • 2019年に森山栄治・高浜町元助役と関電幹部との間の原発マネー不正還流(→◆018◆)が発覚した。「関西電力のとてつもない腐敗について、それを知った監査役が公表しなかったことが問題になった。しかし、チェックできなかった責任は労働組合の方が大きいだろう。……関電労組を含む電力総連の幹部たちは果たして恥を知っているだろうか。」
  • 田中稔『忖度と腐敗』(第三書館)
  • 電力総連について→ 関西電力 闇歴史◆076◆

(5) 新 “原発文化人” 佐藤優(p.162)

  • 内藤千百里[ちもり]元関西電力副社長が朝日新聞の取材に対し、少なくとも1972年から18年間、歴代現職内閣総理大臣7人(田中角栄・三木武夫・福田赳夫・大平正芳・鈴木善幸・中曽根康弘・竹下登)に「盆暮れのあいさつ」として年2回1000万円ずつ政治献金する慣行があったと証言した。
  • これに対し佐高信は「私はこれは表の額に過ぎないだろうと思う。なぜなら、…… 選挙応援の額でさえケタ違いだからである」と書いている。札びらで頬をたたくやり方は「高木仁三郎のような筋金入りの反対派にさえ試みられた。」として、その額は3億円とのことで、高木はその著書で「現在だったら100億円くらいに相当しようか」と注釈をつけている。
  • 佐高信『原発文化人50人斬り』(光文社智恵の森文庫)
  • 高木仁三郎『市民科学者として生きる』(岩波新書)
  • 朝日新聞(2014年7月28日)の紙面→ 関西電力 闇歴史◆036◆

(7) 札つきでない不良(p.176)

  • 佐高信は、東京電力元会長勝俣恒久や関西電力前会長の八木誠の方が「札のついていないもっとも危険な不良」としている。「森山栄治を極悪人にし、八木や前社長の岩根茂樹は自分たちを被害者のように装ったこともあったが、恐るべき、あるいはコッケイな倒錯である。」
  • 原発マネー不正還流→ 関西電力 闇歴史◆018◆

◆117◆←←関西電力 闇歴史→→◆119◆(未)】

◆関西電力 闇歴史◆117◆

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◆九州電力、関西電力は「免震重要棟」建設を ネグレクト 軽視!
 九電は約束していた免震重要棟の建設を再稼働後に撤回、
 関電がこれに追従、いざという時の備えなし!
 電力各社は規制委をなめ、安全性をないがしろにしている!
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【1】福島第一原発では事故の8か月前に免震重要棟が完成】

 福島第一原発では、事故発生8か月前、2010年6月に免震重要棟が完成した。2011年3月の事故時には、前年7月に運用を開始したばかりの免震重要棟に対策本部が置かれ、吉田昌郎所長以下、 最大600~500人が昼夜をたがわず詰めた。免震重要棟内部は、 一時電源が切れて真っ暗になりながらも、原子炉制御機能と通信機能は生き残っていて、原子炉建屋の爆発が相次ぎ、放射性物質が漏れ出す中、原子炉の冷却にあたる最前線となった。東電「仮に免震重要棟がなければ(事故の)対応は継続不可能だった」。

【2】免震重要棟整備のきっかけは新潟県中越沖地震】

 2007年7月16日、新潟県中越沖地震が発生。東京電力柏崎刈羽原発では緊急時対策室の扉がゆがんで社員が入れず、野外の駐車場にホワイトボードを並べて仮の対策本部とするなど大混乱を呈した。そのため、当時の泉田新潟県知事は免震棟の設置を強く求めた。地震の後、東電は福島第一、 第二と柏崎刈羽の3原発に免震重要棟を整備した。免震重要棟は、 震度7クラスの地震が発生しても、初動対応に必要な設備の機能を確保できるよう、地震の揺れを抑える免震構造を採用している。

【3】九州電力、約束していた免震重要棟の建設を再稼働後に撤回】

 福島事故後の原発再稼働で先頭を切っていた九電は、最初は免震重要棟の建設を約束して新規制基準適合審査を申請していた。2013年の申請の際には2015年度に免震重要棟を設置すると明記していた。2015年8月に許可が出て川内原発1号機を再稼働させたが、免震重要棟の建設は2015年12月には撤回してしまった。この余りにひどい姿勢に対し、規制委は再稼働許可を取り消すこともなく、「不快感」の表明しかしていない。規制委もなめられたものだ。

【参考(1)…この項【3】について、詳しくは以下を参照のこと】
東京新聞(2016/1/27)の記事…約束ほご 九電に不信 規制委「免震棟撤回、根拠を」 川内原発・玄海原発
こちら

【4】規制委は免震重要棟建設を求めたが、及び腰】

 規制委は免震重要棟建設を電力各社に求めていた。しかし、巨額のコストがかかるので、コスト面での配慮から、免震棟設置を「中期目標」にし、すぐに建設しなくてもいいようにしていた。九電はこれをみて免震棟建設を撤回し、これに関電が追従した。両電力会社はいざという時の備えを著しく欠きながら、原発再稼働を強行している。

【参考(2)…この項【4】は以下を参照しました】
守田敏也さん明日に向けて(2457)」(20240904)
Blog→こちら
Web→こちら
電力各社は規制委員会をなめきり安全性をないがしろにしている
こんな会社に原発の稼働を続けさせてはダメ

【参考(3)…この項【4】には異論があります–以下、ご指摘のメール】
関西電力は「免震重要棟」建設をネグレクト!、ですが、福島事故後、規制委は「免震重要棟」建設を再稼働時要件にしたので、関電も7階建ての「免震重要棟」を立てますと公言していたのですが、いざ建てるとなると建設費用がかかるため、ごねて「免震」を「耐震」に変えて2階建てのもの(外部との連絡用だけで、それぞれの原子炉の状況監視計測・制御はできない—これは福島第一の吉田所長がいた部屋と同じ)を建てました。その後に4階建て(?)の免震棟(要員の待機や資材保管)を建てたと言っています。高浜は北門すぐ左手の建物らしいです。大飯や美浜は確認はできていませんが、一応、関電は建設をネグレクト、はしていない、と思っています。

【参考(4)】…美浜の会「福井県原子力安全専門委員会への特別要請書」では
要請書に引用されている福井県原子力安全専門委員会の資料(2021/7/22)によれば、関電は高浜、大飯、美浜原発において緊急時対策所(耐震)と免震事務棟とを計画。→こちら
なお、
免震=建物と基礎の間に免震装置を設置し、地盤と切り離す。建物に地震の揺れを直接伝えない構造。
耐震=地震の力に対し、おもに壁の強度を上げて耐える構造。建物が頑丈でも地震の揺れは建物内部に伝わる。2階、3階と上がるほど、揺れが増幅。

【5】電力会社、政府、規制委が一体となって次の原発過酷事故の道へ】

 電力各社は規制委をなめ、安全性をないがしろにして経済性を最優先しているし、規制委の方もきちんとした「規制」を行わず政府や電力会社の方針に追従している。こうした現状は、次の過酷事故に直結する道ではないか。

◆116◆←←関西電力 闇歴史→→◆118◆

◆関西電力 闇歴史◆116◆

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◆関西電力送配電、国や大阪府への虚偽報告で副社長が辞任!
 1998年ごろから柱上変圧器のPCB問題を把握するも
 2018年の台風被害で初めて認識したと装うよう隠ぺいを指示し
 25年以上も放置
(2024年10月発覚)
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 2024年10月1日、関西電力送配電(白銀隆之社長)は、低濃度のポリ塩化ビフェニールPCB)を含む柱上変圧器をめぐり、不適切な取り扱いがあったと発表した。25年以上前から事態を把握していたが、国や大阪府などに虚偽報告をしたとして、当時「隠ぺい」を指示をした高市和明・副社長に辞職を勧告。高市氏は同日付で退任、「長年続いていたとは言い出せなかった」と話しているという。白銀社長は「コンプライアンス最優先の組織改革が道半ばであると痛感した。再発防止を徹底していく」と述べた。なお、関電から送配電部門が分社化したのは2020年だから、これは関電時代からの不祥事といえる。

 PCBは電気を通さない性質から変圧器などに利用されたが、1968年に発覚した「カネミ油症事件」をきっかけに毒性が問題になり、72年に生産と輸入が禁止された。1980年代末には、電力各社で電柱の変圧器に低濃度のPCBが混入していることが発覚。関電は90年から修理と新品への交換を進め、2019年からは新品への交換のみに対応を切り替えていた。

 1998年と2002年のサンプル調査で、PCBを除く修理を経た変圧器の絶縁油からも環境基準を超える低濃度PCBが検出されたのに、調査や修理方法の変更などの対応をしなかった。しかし、2019年に、前年の台風で被災した修理済み変圧器から基準を超える低濃度PCBが検出されたため、修理をやめて全て新品に交換することにした。2019年に国や大阪府などに対して説明したとき「2018年に初めて修理品への低濃度のPCB混入を把握した」と虚偽の説明をした。

 こうした問題は2023年11月、社外に設けている公益通報の窓口に相談があり、発覚。社外弁護士らに依頼し調査した。同社は「法令違反は確認できていない」としつつ、「一部の人間だけが関わって組織として問題を把握することができなかった。重大な問題だと認識している」と説明している。

 関電送配電には、2024年3月末時点で柱上変圧器が約189万台あり、うち約163万台はPCBを含まないことを確認したという。残る約26万台のうち、PCBを含む可能性がある約19万台も26年度末までに取り換える方針としている。

◆115◆←←関西電力 闇歴史→→◆117◆

◆関西電力 闇歴史◆115◆

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◆関電の子会社 KANSOテクノス が
 環境省からの受託業務で水増し請求(2024年4月発覚)
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 関西電力の子会社KANSOテクノス(大阪市)が、2023年度に環境省から受託した海洋環境保全業務に関して虚偽報告と水増し請求を行っていた。不正が発生した業務は、CO2を回収、貯蔵する技術(CCS)に関する環境省からの受託事業。2008~2009年頃からこの事業を託していて、不正は約15年前から行われていた可能性がある。

 KANSOテクノスは、環境省の承認を得ずに4社に業務を再委託し、費用4200万円を補填するために人件費を増水し、実際の費用より1861万円が多い6061万円を請求していた。

 2024年4月に社外コンプライアンス相談窓口へ「実際には従事していない従業員が、当該事業の一部を実施したかのように装い、虚偽の作業日誌を作成して人件費を請求している」などと通報があり、不正が発覚。KAANSOテクノスは、社外弁護士による調査を進め、2024年9月に調査報告書を受領、原因究明と再発防止に取り組むとしている。岡田達志社長は「大変重く受け止める」と陳謝。

◆114◆←←関西電力 闇歴史→→◆116◆

◆関西電力 闇歴史◆114◆

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◆六ヶ所再処理工場が27回目の完成延期で
 2026年度に使用済み核燃料を搬出するという関電のロードマップが破綻!
 関電はまたも、その場しのぎの「不退転の覚悟」!
 【付 緊急声明–老朽原発うごかすな!実行委員会】
  使用済み核燃料に関して約束反古を繰り返す関電が、またも詭弁!
  老朽原発即時停止を求めよう!

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■ 2023/10/13【使用済み核燃料の県外搬出計画の工程表に合意】

・福井県は、運転開始から40年を超える老朽原発の再稼働の条件として、関西電力が10/10に示した使用済み核燃料の県外搬出計画の工程表(→こちら)に同意した。「2026年度から青森県六ヶ所村の再処理工場に搬出を始める」ことを軸にしている。

・福井県知事の同意は、提示からわずか3日後に容認している。県民の声を聞こうとしない姿勢が、あまりにも明らか。

・その内容についても、当時から「再処理工場が予定通り完成しなかった場合はどうするのか」「使用済み核燃料の保管の長期化につながり、最終処分場になるのでは」との強い懸念が示されていた。

・関電は「使用済み核燃料を安全に保管し、円滑に搬出するため」「乾式貯蔵施設を新設しても、原則として使用済み核燃料の全体の貯蔵容量は増やさない」「計画通り完成させるのが最重要課題」「完成に向けて一生懸命頑張っている」。

・使用済み核燃料の県外搬出計画の工程表について、詳しくは
 ◆関西電力 闇歴史◆012◆
【付 関電の使用済み核燃料搬出計画(2023年10月)】

■2024/2/8【関電が「乾式貯蔵施設」の設置へ】

・福井県内にある全ての原発の敷地内に使用済み核燃料を一時保管するための「乾式貯蔵施設」を設置する計画に対する了解を求めて、福井県、美浜町、おおい町、高浜町に事前了解願を提出。2025年の着工を目指すとし、高浜原発で最大32基(使用済み核燃料768体分:2027年の運用予定)、大飯原発で最大23基(同552体:2030年の運用予定)、美浜原発で最大10基(同210体:2030年の運用予定)の計65基(1530体)のキャスクを有する乾式貯蔵施設を計画。

■2024/3/15【福井県が「乾式貯蔵施設」の審査申請を了承】

・この事前了解願に関して、福井県は、設置に向けて国に審査を申請することを了承し、関電は同日、原子力規制委員会に審査を申請。

■ 2024/8/29【六ヶ所再処理工場が27回目の完成延期】

・2024年9月末の完成を目標としていた六ヶ所再処理工場について、日本原燃は、27回目となる完成延期を発表、完成時期を2026年度中とした。これにより、2026年度に使用済み核燃料の搬出を始めるとしていた関電のロードマップは破綻。

・2024/8/29、宮下宗一郎 青森県知事「27回目の延期 着工から約30年ということで こうして新しい工程を示してもらっても直ちに信頼することはできない」

・再処理工場の完成延期について、詳しくは
 ◆関西電力 闇歴史◆003◆ 付(2)
【付 (2) ◆核燃料サイクルとその破綻–六ヶ所再処理工場の完成延期 】

■ 2024/8/30【関電が工程表の遅れを福井県に報告】

・関西電力は、福井県に対し2026年から開始するとしていた使用済み核燃料の県外搬出計画に、遅れが生じると報告。

・2023年10月の計画提示後、わずか1年足らずで変更せざるを得なくなった。その理由も、当初から強く懸念されていて、言い訳は通用しない。口から出任せ、その場しのぎを繰り返す関電の経営姿勢がまたも明らかになった。

・再処理工場の完成延期を受け、関西電力の水田仁 原子力事業本部長と資源エネルギー庁の山田仁 調整官が県庁を訪れ、鷲頭美央(わしず・みお)副知事に搬出計画の実行が遅れると報告。

・水田原子力事業本部長「できるだけ速やかにロードマップの見直しに着手するとともに、今後公表される日本原燃の再処理計画を反映した上で、ご報告させていただきます」。

・鷲頭副知事「計画通り搬出できなくなったということは、2023年10月の県との約束に反するもの。関西電力は2023年のロードマップを策定する前の議論に立ち返って『不退転の覚悟』を示すべき」として、これまで関電が幾度となく繰り返してきた発言を引き合いに出し、原発の稼働停止も視野に「確実に実行できる搬出計画の提示」を強く求めた。

■ 2024/8/31【福井県は使用済み核燃料の県外搬出計画の合意を否定】

・福井県の杉本達治 知事「大変遺憾。昨年10月の工程表の合意はなくなった」

■ 2024/9/5【関電が「不退転の覚悟」を表明】

・関西電力の森望社長は、福井県の杉本知事に「使用済み核燃料の県外搬出のロードマップを2024年度末までに見直して提示する」「万が一、この見直しができない場合は運転開始から40年を超える県内の原発3基、美浜3号機、高浜1、2号機の運転は実施しないという不退転の覚悟で臨みたい」
・杉本知事「福井県と関西電力との信頼関係に関わる重大な問題で極めて遺憾。(ロードマップを)年度末と言わず、出来るだけ早く示して欲しい」
・杉本知事「(昨年10月に工程表とともに関電が約束した立地地域の地域振興について)何ら目に見える形で進んでいない。具体的な内容や必要な財源を早期に明示するよう」

■ 2024/9/6【乾式貯蔵施設の設置について】

・杉本知事「実効性のある内容でなければ乾式貯蔵施設の設置について事前了解をしない」
・杉本知事「(工程表の実効性の考え方について)基本は使用済み核燃料の搬出容量が継続的、安定的に確保されること。ただ出てくればいいのではない」

■ 2024/9/6【経産省は関電に厳しく指導すると表明】

・齋藤経産相「工程表の見直しが必要な状況となったことは大変重く受け止めている。関西電力に対しては実効性のあるロードマップを提示するよう厳しく指導する」

■ 2024/9/7【経産省は言葉だけ】

・河本猛さん(美浜町議会議員)「過去の経過を見ると経産相が一番甘いこと言って、福井県知事を説得して原発を継続運転させてきたのに、こんな時だけ関電を厳しく指導っておかしくない。これまでお墨付きを与えてきたのは経産省なんだから、厳しく指導するなんてのは言葉だけですね。
経産省こそ、使用済み核燃料、中間貯蔵施設、最終処分場、再処理工場、核のゴミ問題を先送りするなよ!原発止めろ!」

■ 2024/9/9【福井県議会にて】

・力野県議会議員「ロードマップを示すまで、福井県が納得するまで、直ちに3基を停止するべき」
・野田県議会議員「大手電力会社として責任の取り方が甘いんじゃないか」

【付 緊急声明–老朽原発うごかすな!実行委員会】

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緊急声明
使用済み核燃料に関して約束反古を繰り返す関電が、またも詭弁!
老朽原発即時停止を求めよう!

老朽原発うごかすな!実行委員会・木原壯林

 日本原燃は、8月23日、核燃料再処理工場(青森県)の完成目標を2026年度内に変更するとした、27回目の完成延期を表明しました。
 これを受けて、関西電力青関電の県望社長は、9月5日、杉本達治福井県知事と面談し、関電の原発でたまり続けている使用済み核燃料の外搬出に向けた「ロードマップ」(昨年10月発表)を、「本年度末までに見直す。実効性のある見直しができない場合、老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を運転しない」と述べました。またも、原発全廃を求める多くの人々の心情を蹂躙する、白々しい詭弁です。森社長は、美浜町、おおい町、高浜町も訪れ、同様な面談を行っています。関電が倫理のかけらでも持ち合わせる企業であろうとするなら、2021年の約束(下記参照)を完全履行し、直ちに老朽原発を停止するのが当然です。

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 関電は1996年に「使用済み核燃料は福井県外に搬出する」と、当時の福井県知事に約束しました。青森県の再処理工場が稼働すれば、青森県に搬出できると楽観しての約束でした。しかし、1997年に予定されていた再処理工場の稼働は、延期を重ね、未だに稼働の見通しは立っていません。そのため、関電は「福井県外に中間貯蔵地を探す」という約束の反古を繰り返しています。

 2021年、関電は、福井県知事に「使用済み核燃料の中間貯蔵地を2023年末までに福井県外に探す。探せなければ老朽原発を停止する」と約束しましたが、未だに候補地を見出すことはできていません。老朽原発・美浜3号機、高浜1、2号機の再稼働への福井県知事の承認を得るための空約束でした。

 切羽詰まった関電は、昨年6月、使用済み燃料の一部(約200トン)を、電気事業連合会が行うMOX燃料再処理実証試験に供するために、フランスに持ち出す計画を示し、「県外に搬出されるという意味で、中間貯蔵と同等の意義がある」としました。しかし、搬出量は、福井県内の原発で保管する使用済み核燃料の5%程度で、搬出予定も今すぐでなく、2020年代の後半です。

 さらに、関電は中国電力と結託して、昨年8月、唐突に中間貯蔵地建設のための調査を上関町に申し入れました。原発建設に反対する住民の心情を逆なでにし、希少な瀬戸内海の生態系を破壊し、漁民のなりわいを奪おうとするものです。関電の原発電気を消費したことも作ったこともない上関や青森県に、交付金をチラつかせて、中間貯蔵を押し付けることがあってはなりません。
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 関電は、このように「何の成算もなく空約束し、約束を反古にしても、その口を拭うために小手先の策を弄した詭弁でさらに人々を欺く企業」です。

 使用済み核燃料の行き場に関して、福井県から説明を求められた関電は、昨年10月10日、「使用済み核燃料に関するロードマップ」を発表しましたが、これによって、関電の使用済み核燃料をめぐる情勢は一転しました。このロードマップで、関電は、再処理工場の活用、中間貯蔵施設の確保を盛り込み、いかにも近々使用済み核燃料の福井県外搬出が可能であるかのように見せかけていますが、いずれも実現の可能性はない「絵に描いた餅」です。

 それでも、関電は「使用済み核燃料搬出の円滑化のために原発構内に乾式貯蔵施設の設置を検討する」とし、福井県内での乾式貯蔵への布石をしました。関電の燃料プールは3~6年後に満杯になって、原発を停止せざるを得なくなるため、プールに空きを作ろうとする詭弁です。福井県知事は、わずか3日後にこれを容認しました。「原発の運転継続ありき」の出来レースです。

 関電は、本年2月8日、福井県内にある全ての原発の敷地内に使用済み核燃料を一時保管するための「乾式貯蔵施設」を設置する計画に対する了解を求めて、福井県、美浜町、おおい町、高浜町に事前了解願を提出しました。来年の着工を目指すとし、高浜原発で最大32基(使用済み核燃料768体分:2027年の運用予定)、大飯原発で最大23基(同552体:2030年の運用予定)、美浜原発で最大10基(同210体:2030年の運用予定)の計65基(1530体)のキャスクを有する乾式貯蔵施設を計画しています。この事前了解願に関して、福井県は3月15日、設置に向けて国に審査を申請することを了承し、関電は同日、原子力規制委員会に審査を申請しました。

 使用済み核燃料の福井県内「乾式貯蔵」を許してはなりません。
 何としても、関電と福井県に2021年の約束を履行させ、全ての老朽原発を廃炉に追い込みましょう!

2024年9月6日

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◆113◆←←関西電力 闇歴史→→◆115◆

◆関西電力 闇歴史◆113◆

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◆山口県の市民団体が上関町中間貯蔵施設建設計画反対で
 集めた署名263,230筆、段ボール箱17個を関電に提出
(2024/4/16)
 関電は、いつもの傲慢な姿勢でコミュニケーションを拒絶
 【付 関西電力グループ行動憲章】
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 2023年8月2日、中国電力と関西電力が山口県上関町に使用済み核燃料中間貯蔵施設の建設調査を申し入れ、あっという間に町議会の審議もなく、町長が同意した。

 関西電力の原発の使用済み燃料は、上関町や山口県とはまったく無縁のもの。上関町をはじめ山口県下のこれまでも中国電力の上関原発建設に反対してきた市民団体が中心となって呼びかけ、中国電力と関西電力の両者宛に「上関の中間貯蔵施設反対」署名に取り組んできた。

 4月16日この日は関電宛の署名を提出した。

 署名263,230筆は、段ボール箱17個に詰めて前日からフェリーで大阪へ運ばれた。署名は台車3台に載せてガードマンに誘導されて関電ビルの2階へ。そこには3人の男性社員が横並びに立っていて長机を二つくっつけた台が2列。その一つの上に、17個の段ボールを並べて置く。原水爆禁止山口県民会議議長の森本正宏氏より、関電広報室エネルギー広報グループ・リーダーの釜江幸慶氏へ提出。関電は人数を5人までと限り、時間も5分間に制限、写真撮影、報道関係はダメ。言いたいことがあれば後日文書でと。代表の5名の意見も聴く姿勢はまったくなし。この間約10分。

 署名提出後の関電前抗議集会では、、原発いらん!山口ネットワーク代表の小中進さんは、関電の傲慢な態度を批判しながら、「上関町でも6割、山口県全体では8割が反対している。署名の重みをしっかり受け止めるよう求めた」「危険がない、安全であれば、この大阪湾に、関西電力管内で出た核のゴミは、この関西電力管内で処理をすべきではないでしょうか。関西の皆さんにも、今回のこの申し出を機会に、この問題を自分たちの問題として捉えていただきたいと思います」と述べた。

 また、山口県からは、以下の発言もあった。
・昨年9月から今年1月までの5か月間での署名活動で、中国電力宛には2月7日に275,043筆の署名を提出した。
・上関は生物多様性の宝庫。環境省は生物多様性を保全するのは国家戦略としながら、調査の予算もつかないのに、中間貯蔵は何も分からないうちから交付金。自然豊かなところにしわ寄せをする。
・上関原発に反対して43年。金、権力、圧力で地域破壊をされてきた。
・関西で使った電気のゴミをなぜ山口県の自然豊かな上関に押し付けるのか。

 なお、関電前には大阪、京都などから市民グループの皆さんが駆けつけた。

【参考】小中進(こなかすすむ)ブログ → こちら
【参考】録画 関電本店前 上関町「中間貯蔵施設」反対行動 / たぬき御膳のたぬキャス→こちら

【付 関西電力グループ行動憲章】こちら
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3.適正な情報開示・管理と対話

 関西電力グループは、事業活動に社会の声を的確に反映させるとともに、適時的確な情報公開・発信や、社会のみなさまとのコミュニケーションを一層推進し、社会に対する説明責任を誠実に果たすことを通じて、透明性の高い開かれた事業活動を行います。また、個人情報をはじめとする各種情報を適正に管理します。

(一人ひとりの行動規範)

社会のみなさまとのコミュニケーションを積極的に行います。
・社会のみなさまへの情報提供や、事業活動をご理解いただく活動を公正に行います。
・事業活動に対して、お客さまや社会のみなさまが抱いておられるご意見・ご要望等を幅広く収集し、それを社内で共有し業務改善につなげます。
・個人情報、お客さま情報、企業秘密等は適正に管理します。
・業務に関する記録は厳正に取り扱います。
・業務運営上の不具合が発生した場合は、迅速かつ的確に事実を報告します。
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◆関西電力 闇歴史◆112◆

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◆2024年4月、電事連会長、再び中部電力に
 背景に関電主導のカルテルについての「恨み」「不信感」

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 電力大手10社でつくる電気事業連合会(電事連)の会長職は1952年の発足以来、事業規模が大きな東京電力、関西電力、中部電力の「主要3社」で担当してきたが、2020年3月、九州電力の池辺氏が3社以外で初めて就任した。池辺氏は2023年に退任する運びだったが、大手電力によるカルテルや新電力の顧客情報を不正に閲覧するなどの問題が発覚して、なり手がなく、異例の4年目に入っていた。東電は事実上国有化され、関電はカルテル主導、中部電力はガスの販売で独禁法違反を指摘されている。盟主不在で後任選びが難航、電事連の影響力の低下を示した。

 2024年は関電が会長職に意欲を示していると言われていた。電事連は2025年の大阪・関西万博にパビリオンを出展する計画で、「おひざ元」の一大イベントを会長として迎えたいのでは…という声も業界内で聞こえたという。

 しかし、カルテルを主導したとされた関電が、課徴金減免制度リーニエンシー)にもとづいて調査前に自ら違反を申告して処分を免れたことから(◆024◆)、他社から「関電の会長就任は時期尚早」などの声が出ていた。カルテル事件で、関電に対する各社の不信感、感情論があったという。報道では「関電の下ではまとまれない」という声も紹介されている。

◆111◆←←関西電力 闇歴史→→◆113◆

◆関西電力 闇歴史◆111◆

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◆2年間で12億円の申告漏れ、特重施設の調査費などで
 追徴課税額は1億5千万円!

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 2024年1月23日の報道によれば、関電が大阪国税局の税務調査を受け、2021年3月期までの2年間に約12億円の申告漏れを指摘されていた。美浜原発3号機の「特定重大事故等対処施設(特重施設、いわゆるテロ対策施設)」を設置するための調査費用などの経費処理に問題があったとされ、過少申告加算税を含めた追徴税額は約1億5千万円で、既に納税した。

 特重施設の調査費は、19~20年度の費用約4億4千万円をまとめて経費計上した。しかし国税局は同施設は資産で、調査費を含めて取得費用は減価償却費にあたると判断。資産の耐用年数に合わせて経費を複数年度に分散して計上するよう指摘した。別に、ソフトウエアの開発費など約7億5千万円についても減価償却費に相当し、分割して計上すべきだと判断された。

 今回は美浜3号機についての課税だが、大飯や高浜はどうなっているのか、いろいろ検索してみたが、そこは不明。税務署が黙っているので、大飯や高浜は問題なかったかもしれないが、では、美浜だけなぜ??

【参考】関電の過去の所得隠し(Wikipedia 「関西電力」による)
(1) 同社所有の遊休地の取引に絡み、大阪国税局から、2008年3月期までの2年間で約6億円の所得隠しを指摘されていたことが、2009年4月17日の各新聞報道で発覚した。同社が所有権を持たない土地について、売却損益を架空計上したと判断された模様である。申告漏れの総額は約62億円に及ぶとされ、国税当局は重加算税を含め約21億円を追徴課税した。なお、同社はこの件に関して、一切公式サイト上でコメントをしていない。
(2) 2011年には、福井県美浜町などでの原子力発電所建設で生じた金属屑を、実勢価格よりも安い価格で地元業者に売却した際に、同国税局から「(課税対象となる)交際費である」とされ、2010年3月期までの5年間で約45億円の申告漏れを指摘された。

◆110◆←←関西電力 闇歴史→→◆112◆

◆関西電力 闇歴史◆110◆

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経産省の電力・ガス取引監視等委員会が、関電に業務改善勧告(2023/12/26)
 関電は、卸電力取引所(JEPX)のスポット市場において
 きわめてずさんな入札業務を行い、注意義務を怠った重大な過失で
 市場価格を上昇させる重大な影響を生じさせた!
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◆関電の「過剰買い入札」と「余剰全量供出の未達」
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 関電は、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場において、2022年12月26日及び2023年9月20日、21日における合計3日間、合計51.7GWh(予定の21.4倍)の「過剰買い入札」を行い、最大 30円/kWh程度 スポット約定価格を上昇させた。2023年9月21日には、「余剰全量供出の未達」(市場に出さなければならない電気の一部を供給しなかったこと。1.1GWh)があり、価格を最大 2円/kWh上昇させた。(電力・ガス取引監視等委員会→こちら
 
 関電によると、過剰買い入札はシステムの不備、余剰電力供出の未達は担当者の認識誤りが原因としている。(関電プレスリリース→こちら

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◆電取委が関電に業務改善勧告(2023/12/26)
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 関電が日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場への誤入札をくりかえしたことに対して、電力・ガス取引監視等委員会(電取委)は、電気事業法に基づく業務改善勧告を出した。
  
 関電には、自社が大規模発電事業者として市場に重大な影響を与えうる地位にあること、卸電力市場の信頼性を低下させうる行為を防止すべき注意義務を負うことの認識がないと指摘。役職員を含む社員の意識改革が必要と、勧告した。関電は、1月31日までに報告しなければならない。

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電取委「事案の詳細について(→こちら」より
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①【きわめてずさんな入札業務】関電は、複数回にわたって大量の過剰買い入札を行った上、同日に余剰全量を市場に供出しなかったなど、関電のスポット入札業務への対応はこれまで発生した他の誤入札事案とは同一視できない程度にずさんなものであった。

②【注意義務を怠り重大な過失】関電のスポット市場において占める売買入札量の大きさや、2021年から2023年にかけて頻発した誤入札を受けて、監視等委事務局が各社向けに注意喚起(※)を二度にわたって行っていたこと等に鑑みれば、関電には、誤入札を生じさせないように体制等を整備すべき高度の注意義務があった。それにもかかわらず、これを尽くさず、本来予定していた買い入札量の最大 21.4 倍にも及ぶ量の過剰な買い入札を行ったことには、重大な過失がある。

③【市場価格を上昇させ著しく大きな影響】過剰な買い入札によってスポット市場の約定価格を最大で約 2.5倍の価格に上昇させるなど、スポット市場に著しく大きな影響を生じさせた

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(※)2021~2023年に、電取委の事務局が各社向けに出した注意喚起の趣旨
(→こちら
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 スポット市場における意図せざる入札、誤入札は、他の入札参加者の約定機会を奪う可能性があり、市場全体の信頼を損ねる行為となる。さらに、余剰電力の処分や追加供給力の調達の必要が生じる可能性があり、多大な損失を生じさせかねい。

 こうした入札行動が繰り返される場合、市場相場を人為的に操作する行為とみなされることもある。過怠金の賦課、取引制限等の処分、電気事業法上の業務改善勧告の対象となることもある。

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◆関西電力 闇歴史◆109◆

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◆関電の “安全無視文化” は、1980年代には既に定着!
 もうけ優先の結果、関電の原発で何が起こっていたか!

 (1) 一次冷却水のポンプが破壊寸前!――高浜原発、大飯原発
 (2) 放射能汚染水漏れを放置――美浜原発、大飯原発
 (3) 緊急停止回路を切っての曲芸運転!――美浜原発
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◆『決定版 原発大論争!』にみる関電の “安全無視文化”
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 この闇歴史◆109◆の内容は『決定版 原発大論争! 電力会社 VS 反原発派』(別冊宝島81号、1988年9月発行、1999年12月 宝島社文庫)によるものです。

 同書は、チェルノブイリ原発事故(1986年)以来、急速に高まる国民の批判の声を封じ込めるために、電力会社が作成した『内部資料・原子力発電に関する疑問に答えて』に対して、1988年、反原発派の論客、久米三四郎、小林圭二、生越忠、堀江邦夫、西尾漠、小出裕章、藤田祐幸、槌田敦、山口俊明、高木仁三郎ら15名が反論し、推進か廃炉かの「原発論争」を巻き起こした歴史的名著です。東海村臨界事故が起こった1999年に文庫版として復刻されました。現在も、amazonなどネット通販で中古本が入手できます。

 この闇歴史◆109◆の内容は、同書の中の「第三部 経済性 電力会社 VS 河田昌東」から、“傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」”(文庫版p.278~)に従ったものです。

 その著者、河田昌東さん(かわた・まさはる、同書肩書は名古屋大学助手)は、現在、「チェルノブイリ救援・中部」でボランティアをされています(関連記事→こちら)。関電はじめ電力会社の “安全無視文化” の闇歴史がいかに根深いものか、鋭く告発しています。

 以下、河田昌東さんの了承の下に引用してまとめ、その後に該当部分を転載しています。(転載は関電以外の部分は省略。漢数字の年号は算用数字に変換)

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1980年代から原発のコストダウン、経済最優先が叫ばれる!
 「ECCS(非常用炉心冷却装置)のような過度な付属設備は除去すべき」

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 1982~83年頃から、原発のコストダウンの必要性が声高に叫ばれだした。その背景には、原発の建設費が急上昇を続ける中、初年度発電原価が石炭とあまり変わらなくなったことがある。このままでは「原発の電気は安い」という経済性神話が崩れそうになってきた。その対処として、ハード面、ソフト面で対策が検討された。

ハード面では、原発建設費のコストダウン。
・設計の合理化。日本の原発は「安全すぎる」のでムダを省く。日本原子力産業会議の有沢広巳会長(当時)は「軽水炉のECCS(非常用炉心冷却装置)のような過度な付属設備は除去すべき」と主張(1986年)。
・原発設計の標準化。
・建設工期の短縮、つまり手抜き工事のすすめ。

ソフト面では、
・過剰検査の是正、つまり手抜き検査のすすめ。
・長期サイクル運転による稼動率向上。定期点検期問をできるだけ短縮し、運転期間をできるだけ延長する。

 このように、現代に至る「安全無視、経済性優先」の“安全無視文化”の流れが1980年代から始まっている。

【注】2023/11/15、関電は、原発の利用率向上に向けて、従来より長い期間の連続運転や点検の効率化に取り組む方針を示した。連続運転については、従来より2ヵ月長い15ヵ月への変更を検討とのこと。

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★以下は『決定版 原発大論争!』~傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」~から転載。
 
 原発のコストダウンの必要性が業界で声高に叫ばれだしたのは、原発の建設費が急上昇を続ける中、初年度発電原価が石炭とあまり変わらなくなり、このままでは“原発の電気は安い”という経済性神話が崩れそうになった1982~83年頃からである。
 
 この問題に対処するため、たとえば東京電力では、1982年9月、「原子力コストダウンプロジェクトチーム」を設置し、検討を始めている。原発メーカーや電力業界のワーキンググループが考え出した原発建設費のコストダウンのための処方筆は、次の三つである。
 
コストダウンの三つの処方箋
 
 第一に、設計の合理化。その具体的内容は、耐震設計や安全設計の見直し、というもので、要するに、日本の原発は“安全すぎる”のでムダを省いて身軽にし、これによって建設費の数%は下げられる、というものである。
 
 第二に、原発設計の標準化。これまでの原発建設は、建設地の地盤や地形などの地理的条件によって基礎工事などが違い、あるいは以前につくった原発で具合の悪かったところを手直ししたりしながら、一つひとつ、手作りに近いかたちでつくられていた。その結果がコスト上昇につながっている、と言うのである。だから“標準型を決め、余分な設計変更を行なわないようにしよう”というわけだ。
 
 第三は、建設工期の短縮、つまり手抜き工事のすすめである。工期が一ヵ月短縮されれば、建設費の0.2~0.3%程度は安上がりになると試算されていた。
 
 こうしたハード面でのコストダウンを実行すると同時に、ソフト面でも、たとえば、“過剰検査の是正”、つまり“手抜き検査のすすめ”や、“長期サイクル運転による稼動率向上”などが提案されている。
 
 建設費のコストダウンについては、日本原子力産業会議の有沢広巳会長(当時、1988年3月死亡)が、1986年4月8日に行なわれた同会議の第19回年次大会で、「軽水炉のECCS(非常用炉心冷却装置)のような過度な付属設備は除去すべきである。ある面だけ丈夫にしても、安全上意味がなく、ムダな投資である」と所信表明し、話題になった。ところが「それからわずか18日後の4月26日、ソ連のチェルノブイリ原発事故が起こると、日本では、原発推進側から、『(ゾ連炉は)欠陥炉だ、人為ミスだ」の声に混じって、「ECCSのスイッチを切っだのはけしからん」の大合唱が起こり、この有沢発言は、いつのまにか立ち消えになってしまった。もしチェルノブイリ原発事故がなかったら、日本の原発から、ECCSは省かれていたかもしれないのだ。
 
 さて、このようなコストダウン戦略の結果、日本の原発はどのような状況下に置かれることになったか、ソフト面に焦点をあてて見よう。
 
 コスト低減のために稼動率を上げるには、定期点検期問をできるだけ短縮し、運転期間をできるだけ延長する。これが長期サイクル運転である。そのために、さまざまな無理が行なわれ、原発事故につながっている。
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“安全無視文化”のもと、関電の原発では、何が起こったか!
 (1) 一次冷却水ポンプが破壊寸前!――高浜原発、大飯原発

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・1987年7月11日、定格出力運転中の高浜原発1号機で、一次冷却水ポンプの一台が異常音をたてて大きく振動したため、原子炉が手動停止された。原因は、関電が無届けで蒸気発生器内部に金具を取り付け、それが脱落したためと分かった。はずれた金具の一部は、原子炉内に入り込み、循環したらしい。

・この金具は、定期点検の期間短縮のために設置、その後は取り外すべきところ、次の定期検査に使えるとして、そのままにされていた。定期点検をたった四日間短縮するために、関電は、高浜1、大飯1、2、美浜2、3号機など、計5基の原発に同様の金具を取り付けており、さすがの原子力安全委員会も、これら原発の即時停止と金具の取りはずしを命じた。

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★以下は『決定版 原発大論争!』~傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」~から転載。
★冷却剤ポンプ破壊寸前!――高浜原発・大飯原発

 1987年7月11日、定格出力運転中の関西電力高浜一号で、一次冷却水ポンプの一台が異常音をたてて大きく振動したため、原子炉が手動停止された。原因は、それより三ヵ月前に、関西電力が通産省に無届で、蒸気発生器内に取り付けた重さ7.8キログラムの金具が、高速水流によって振動し、ボルトや止めピンがはずれて脱落、一次冷却水ポンプに巻き込まれたためとわかった。はずれた金具の一部は、原子炉内に入り込み、循環したらしい。この事故は、あと一歩すすめば冷却剤ポンプの破壊と停止、蒸気発生器細管の破断や燃料棒破損による放射能洩れにとどまらず、原子炉制御の最後の頼みの綱である制御棒の作動妨害など、メルトダウンにも核暴走にも発展しうる重大な事故であった。
 
 関西電力は、なぜこのような金具を付けたのだろうか。それまで、定期点検の際には、燃料棒の交換と蒸気発生器の点検を、順次、別々に行なっていたのだが、これを同時並行的に行なうことで点検期間を短縮しようとしたのである。そのために、蒸気発生器の一次冷却水の出入口に臨時の隔離蓋を取り付け、原子炉内の水が蒸気発生器内に流入しないようにした。点検が終わった後、この蓋は取りはずされたが、この蓋の取付金具は、次の定期点検でも使えるように、そのまま蒸気発生器に、ボルトで取り付けられたまま残された。これがはずれたのである。
 
 高浜一号の事故から五ヵ月後の12月17日、今度は大飯一号で同様の事故が発生し、住民の不安は高まった。関西電力は、高浜一号、大飯一・二号、美浜二・三号など、計五基の原発に同様の金具を取り付けており、たび重なる事故に、さすがの原子力安全委員会も、これら原発の即時停止と金具の取りはずしを命じざるをえなかったのである。この金具は、定期点検をたった四日間短縮するためのものだったが、経済性優先のために安全性を犠牲にした典型といえる。
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“安全無視文化”のもと、関電の原発では、何が起こったか!
 (2) 放射能汚染水漏れを放置――美浜原発、大飯原発

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・1987年5月28日、美浜原発3号機は、放射能を含む一次冷却水の水漏れがひどくなって原子炉を手動停止した。以前から毎時7.7リットルも漏れていたのだが、この日、12.5リットルにまで増加したので、やむなく原子炉を止め、修理した。

・1987年6月15日、大飯原発2号機で、放射能を含む一次冷却水が毎日100リットルも漏れながら、一年以上も放置、運転が強行されていたことが発覚。定期点検入りまでに470日間の長期連続運転を達成し、日本新記録をつくったのだが、こうした長期サイクル運転の裏には、30トン以上もの放射能汚染水漏れの放置という、信じがたい事態が続いていた。

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★以下は『決定版 原発大論争!』~傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」~から転載。
★150トンの放射能汚染水漏れを放置――美浜原発・大飯原発・福島第一原発

 1987年5月28日、関西電力美浜三号は、放射能を含む一次冷却水の水漏れがひどくなって原子炉を手動停止した。パイプのパッキング不良で、だいぶ前から毎時7.7リットルも漏れていたのだが、この日、12.5リットルにまで増加したので、やむなく原子炉を止め、修理したのである。
 
 1987年6月15日、関西電力大飯二号で、放射能を含む一次冷却水が毎日100リットルも漏れながら、一年以上も放置され、運転が強行されていたことが発覚した。関西電力は水漏れを知りながら、2月からの定期点検時までこれを隠し続けていたのである。実は、大飯二号は、この2月定期点検入りまでに470日間の長期連続運転を達成し、日本新記録をつくったのだが、こうした長期サイクル運転の裏には、30トン以上もの放射能汚染水漏れの放置という、信じがたい事態が続いていたのである。
 
 1986年、東京電力福島第一原発二号で定格出力運転中、10月9日から一次冷却水漏れが始まり(毎分約4リットル、一時間約240リットル)、しだいに増加し続けたが、東電は25日間も運転を続行し、11月3日になってようやく原子炉を止めた。原因は、再循環系配管の溶接部に「振動によるひび割れが生じたためであった。この問に漏れた放射能汚染水は、何と150トンにも及んだ。
 
 このひび割れは、パイプの破断と一次冷却水喪失による炉心空だきへと進む可能性があり、非常に重大な事故である。これとまったく同じ事故が、前年7月29日、日本原電の東海第二原発で起こったのだが、電力会社はこの教訓を生かさず、点検を怠っていた結果、同じことを繰り返したのである。
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“安全無視文化”のもと、関電の原発では、何が起こったか!
 (3) 緊急停止回路を切っての曲芸運転!――美浜原発

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・1986年8月2日、美浜原発1、2号機は、落雷によるタービン停止で、原子炉も緊急自動停止することになっていたのに、停止させなかった。緊急停止(スクラム)回路を切って、出力低下(7%まで)のまま、各種機器を大急ぎで点検、操作し、再び出力を回復させるという、曲芸運転をやってのけた。その操作は、警報を鳴らし、点滅する約100個のアラーム・ライトの一つ一つに対応するものであった。操作を誤れば、暴走事故につながりかねない綱渡り、曲芸としか言いようがなかった。
(このあたりは前掲書『決定版 原発大論争!』文庫版のp.19あたりも参考にしています)

・わずか3か月前に起こったチェルノブイリ原発事故が、緊急停止回路を切っての出力低下試験中に発生したことの教訓はどこに行っていたのか。

・しかし、このはなれ技というべき操作をした運転員は、会社から、よくやったと表彰され、金一封をもらっている。原発は止めると、再起動まで時間がかかるし、その間のコストも大きくなることから、原発は止めないことが、電力会社の儲けそのものに直結する。運転の継続を最優先した、恐ろしい安全無視!

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★『決定版 原発大論争!』~傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」~から転載。
★緊急停止回路を切っての曲芸運転!――美浜原発

 1986年8月2日、日本原電敦賀一号と関西電力美浜一、ニ号から送電を受けている変電所に落雷があり、変電所からの送電がストップした。そのため、負荷を失った上記三発電所のタービンが自動停止した。それに伴い、原子炉も緊急自動停止することになっていた(安全審査資料)のだが、この時、敦賀一号はスクラムしたのに、美浜一、二号はなぜかスクラムせず、出力低下(7%まで)のまま、各種機器を大急ぎで点検し、再び出力を回復させるというはなれ技をやってのけたのである
 
 この時は、当然、タービン停止で発せられるスクラム信号回路を切っていたはずである。この操作をした運転員は、会社から、よくやったとほめられ金一封をもらったとのこと。それというのも、原子炉はいったん停止すると、燃料棒内にキセノン毒が溜まり、数日間は運転が再開できないので、会社にとっては大損害を与えるからである。一旦止めれば数億円の損害を出す、と言われる原発を、いかに止めないかは、電力会社にとって死活問題なのである。
 
 このような緊急停止回路を切っての曲芸運転がいかに危険かは、この事故のたった三ヵ月前に起こったチェルノブイリ原発事故で証明ずみのはずだ。その“意図的操作ミス”を片方で大声であげつらいながら、他方では、このような危険を冒しているのである。チェルノブイリの運転員と美浜の運転員の違いは、「結果良ければすべて良し」ということだけなのだ。
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関電では、事故の日常化、原因を究明しない杜撰な体質がめだっている!
 「金だけ、今だけ、自分だけ」という“安全無視文化”は根深い!

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 関電の原発トラブルは、現在も相変わらず続いている。たとえば、蒸気発生器細管の損傷は、高浜原発3、4号機で、定期検査ごとに連続して発見されている(→◆071-2◆)。しかし、関電は、抜本的な原因究明をせずに、原因を推定したとして運転を再開、継続している。蒸気発生器細管の損傷は、大事故にもつながりかねない大きな問題であるにもかかわらず、規制委も関電の言い分をそのまま認めている。「金だけ、今だけ、自分だけ」という関電の“安全無視文化”は根深い。

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★以下は『決定版 原発大論争!』~傷だらけの原発たちが告発する電力会社のコストダウンと「金儲け」~から転載。
★稼動率競争で傷だらけの原発たち

 以上述べてきたように、日本の原発は今、炉型の違いを問わず、傷だらけの状態で運転されており、言わば、事故の日常化現象が起こってきている。1970年に大阪万博ではじめて原子の灯をともして以来、18年(88年当時)がたち、部品の劣化による事故があちこちで頻繁に起こるようになっているにもかかわらず、今や石油にさえ追い抜かれてしまった発電コスト低減のために、電力各社は少々の事故が起こっても原子炉を止めず、運転を続けながら修理する、などの稼動率競争に明け暮れているのである。
 
 無理やり運転と同時に、事故隠しも少なくない。監督官庁であるはずの通産省(資源エネルギー庁)が、電力会社に対して事故隠しを指示している事実さえ明らかにされ、地元の人びとの怒りをかっている。
 
 1986年11月27日、衆議院科学技術委員会で明らかにされたところによると、1986年の9月16日に起きた敦賀一号のECCSの高圧注水系配管からの水漏れ事故について、資源エネルギー庁は日本原電に対し「非公開とすること」を要求していた。これも、公開によって批判が高まり、原子炉を停止せざるをえなくなる事態を避けたい、という意図のあらわれである。
 
 このように、事故の日常化と事故隠しの体質は、すでに確証された厳然たる事実として、我われの目の前に明らかにされている。安全性を「犠牲にしたコストダウンはあり得」ないという電事連の主張のデタラメさを、原発そのものが、自らの事故史によって激しく告発し続けているのである。
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◆108◆←←関西電力 闇歴史→→◆110◆