◆関西電力 闇歴史◆066◆

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◆関電が風力発電を計画(2022年)→ 宮城県の件は断念、撤回
 宮城県知事、山形県知事「どうして関電なのか」
 宮城県知事は「誠意ない」「明確に反対」
 役場訪問の関電幹部に地元2町長は「白紙撤回を」「京都の嵐山に造ったら」
 自然環境への配慮が著しく欠如、北海道の1件も断念
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【2022年5月に開発計画】

・関電は、5/30に、宮城県1件、北海道4件の合計5件の陸上風力発電所開発を検討開始し、計画段階環境配慮書を公表。以下、いずれも仮称。

【宮城県】
・川崎ウィンドファーム事業… 川崎町。後に計画断念
【北海道】
・伊達・千歳ウィンドファーム事業…伊達市および千歳市。後に計画断念
・古平・仁木・余市ウィンドファーム事業…古平町、仁木町、余市町および共和町
・小樽・赤井川ウィンドファーム事業…小樽市、赤井川村、および余市町
・夕張ウィンドファーム事業…夕張市および栗山町

・日本自然保護協会(NACS-J)は、6/30、これら5件の計画が、他の陸上風力発電事業計画と比べても、自然環境への配慮が著しく欠如していると指摘した。
こちら

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◆宮城県での計画
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【宮城県川崎町で関電が風力発電事業を計画】

・当初計画では、川崎町前川地区の1600ヘクタールに高さ最大約180メートル、直径約160メートルの風車23基を建設する計画。最大出力9万6600キロワット。2028年度の着工、31年度の運転開始を目指すとした。予定地の一部に蔵王国定公園が含まれたため、県環境影響評価技術審査会が計画を疑問視。

・日本自然保護協会(NACS-J)は、自然度の高い広葉樹林、鳥類のバードストライク、土砂災害増大などへの影響が懸念されることから、事業計画を中止するか事業想定区域の抜本的な見直しを求めた。

・関電は6月20日の住民説明会で予定地から蔵王国定公園を外し、風車を19基に減らす方針を明らかにした。県環境影響評価技術審査会の答申では、「蔵王御釜」の展望台から風車が一切見えないように配置し、重要な野鳥の生息地を想定区域から除外することなどが盛り込まれた。

【以下、2022年6~7月の動き】

・宮城県の村井嘉浩知事は、「関西電力が東北にわざわざ出てきてこういったものを設置せずとも、関西でやればいいのではないか」と述べた。度重ねて違和感を表明してきた村井知事は定例記者会見で「蔵王はまさに宮城の誇りで、景観は何物にも代えがたい」「私も反対だ。明確に申し上げる」と述べ明確な反対意思を表明した。

・地元で開かれた住民説明会について、報道機関に原則非公開とした対応について、村井知事は定例記者会見で「誠意が感じられない」と批判した。

・予定地の一部に蔵王国定公園が含まれていたことは、知事も疑問視し、関電は公園を外す方針を明らかにした。知事は「そもそも入れるべきではない。より環境に配慮した計画にしようとする姿勢が見られないという(審査会の)非常に厳しい意見は、もっともだ」と指摘した。

・事業者に意見を表明できる「関係自治体」が川崎町のみとされている点についても「事業者に意見を表明できる「関係自治体」が川崎町のみとされている点についても「関電に対して蔵王町に相談し、丁寧な説明をするよう求めた」と述べた。」と述べた。

・地元の小山修作川崎町長は「関電の対応がもう少し誠実であれば安心できたが、納得できるものではなく、直接知事に伝えるべきだと思った。オープンな場で真摯(しんし)に意見交換を行うことが必要だ。信頼関係なしに計画に納得することはできない」と話した。

・関電の多田隆司執行役常務再生可能エネルギー事業本部長の訪問に対して、川崎町の小山町長は「白紙撤回を求める。他の場所でゼロから始めて」と強い口調で反対の意思を伝えた。同じく蔵王町では、村上英人町長が憤り「京都の嵐山に10基ぐらい造ったらどうか」と声を荒らげる場面もあったという。

【山形県でも反対の声】

・山形県の吉村美栄子知事は「事業者が関西電力と聞いて、どうして関西電力なのかという印象を持った。村井知事の話を知って、同じようなことを考えていると思った」と述べている。「蔵王は全山形県民にとって特別な山」とも。

・山形市の佐藤孝弘市長は7/11、「現在の計画に基づく事業は進めるべきではない」とする意見書を、山形県に提出した。
(宮城県と山形県の南部は、蔵王連峰が境界となっている)

【関電は】

・6月下旬。関西電力は住民説明会で、計画の見直しを強調。関西電力・市橋公平部長「宮城県の審査会で先生のご指摘を真摯に受け止めまして、国定公園エリアの方には設置しないといたしましたので、(最大23基から最大)19基と減らしております」「地元の声をしっかり聞き、計画を進めるかどうかも含めて検討する」
・そして、関西電力・多田隆司常務「私どもが非常に反省しているのは、地域の皆様の蔵王への思いとか、畏敬の念とか、十分ご理解することができていなかった。(環境アセスメントの次の段階である)方法書に進めるかどうか、これも含めて、しっかり考えていきたい」

【つまり】

・原発立地と同じやり方ではないか。関電という会社は、とくに関西で、お殿様(→◆036◆)として特別扱いを受け続けてきて、チヤホヤされてきた。なので、自分の思い通りに進めることしか念頭にないのでは。自分が社会の中でどう見られているか、なんてことには気がついていない。関電のご威光が行き届いていない東北地方なので、社会から当たり前の反応を受けているだけ。
参考→こちら ほか。

【結局、断念して撤回】

・7/29の報道によれば、関電は、宮城・蔵王山麓への風力発電計画を断念して撤回したとのこと。景観への影響などから地元の強い反発があったことから、当然の結果。
・森望 社長「蔵王に対する畏敬の念に十分思いが至らなかった。」

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◆北海道での計画
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【北海道の4件の計画】

 以下、いずれも仮称。
(1) 伊達・千歳ウィンドファーム事業
(2) 古平・仁木・余市ウィンドファーム事業
(3) 小樽・赤井川ウィンドファーム事業
(4) 夕張ウィンドファーム事業


▲関電の風力発電の計画。この地図は画像なので、リンクは入っていません。
支笏洞爺国立公園にかかる「伊達・千歳ウィンドファーム事業」は中止。

・Google地名連動リンク入りの地図(配慮書中の地図)→こちら
こちらの地図では、赤い枠線部をクリックすると、それぞれの名称が表示される。
地図中の今金(いまかね)風力発電事業は、関電ではなくて、インベナジー・ウインド合同会社による。

・日本自然保護協会(NACS-J)は、北海道のそれぞれの事業の計画段階環境配慮書についても意見書を提出。
(1)…イヌワシやクマタカなどの鳥類や自然度の高い広葉樹林への影響、支笏洞爺国立公園への影響が懸念されることから、事業計画の中止を求めている。→後に、宮城県の件とともに断念。
(2)~(3)… 自然度の高い広葉樹林、鳥類のバードストライク、土砂災害増大などへの影響が懸念されることから、事業計画を中止するか事業想定区域の抜本的な見直しを求めている。
(4)…田園景観維持を目指している「栗山町景観計画」への配慮を求めている。

【北海道の市民「北海道の素晴らしい景観を壊さないで!」】

 石狩市在住、佐々木 Minagawa 美保さんのFB投稿(2022年7/2)より。
~北海道に於ける関電ほかによる五ヶ所の風力発電事業への~「意見書」
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 コロナ外出規制等の情報不足の中、関電だけでも四ヶ所もの風発事業が、僅か1ヶ月そこそこの縦覧期間で、全て纏めて、意見書提出期限が6月30日締切の(縦覧最終日と同日)と、それだけでもたいへん不遜な、“意見など聞く余地なし”との企業姿勢が窺えて、その事にまず、厳重に抗議します。
 最初に、私は個人的に風発そのものは、エコエネルギーとして数十年前から着目、理論を超え、感情的にも感性としても大好きでした。
 が、それはあくまでも、人類に利便性をもたらすエネルギーのあり方としてエコロジカルであり、持続可能な生態系を維持する技術であるとの観点からです。しかしながら今回の関電による風発事業は、手付かずの自然が数多く残る「日本全体の宝」とも言える北海道の大開発を伴うものであり、私の思う風力発電とは大きく乖離しており、五つの風発事業のいずれも賛成とは言いかねるもの。
 エコロジカルなビジネス(事業)とは、まず、その地に暮らす人々や動植物との共存等々の質・協力・保全を指向するものでなければならず、エコエネルギーの為に、ある程度の自然破壊も止むなしは、本末転倒甚だしい理屈です。
 そもそも何故自然エネルギーを目指さなければならなくなったかに立ち帰ると、現代の企業活動が、経済的“量の拡大”を求めるあまり、欲しいままの自然破壊と膨大な量のCO2放出を繰り返し、自然の循環性を損ない、生態系のシステムを狂わせてしまったことによる気候変動問題が、根底にあります。
 風発も現在では各種技術開発が進み、大型でもブレードのないもの、又、日本の家屋の庭にでも設置可能なツリー型の安価なものさえあります。 巨大電力会社は長い送電線の無駄を再度検証し、多くの国民に支持されるマイクログリッド構築にこそ、大企業の誇りをかけて取り組むべきと考えます。
 何にも代え難い北海道の自然は関西の一企業のものではない!
 北海道の素晴らしい景観を壊さないで!
 生態系を守り自然を守ることは、人類の未来を守ることにつながり、今回の関電の風発事業は、その真逆の結果をもたらします。
 以上、非常な乱筆乱文、ご容赦!!
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(佐々木 Minagawa 美保さんの了承の元に転載)

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