◆関西電力 闇歴史◆106◆

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中性子照射脆化の進み具合をみるのに、関電は、規制委の規格にない方法で測定!
 福井県には「規格にない図(WOL試験片)」を示していながら(2016年)、
 訴訟では「規格にある図(CT試験片)」を「イメージ図」として提示!(2021年)
 老朽原発40年廃炉訴訟(名古屋地裁)で明らかに!
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 中性子照射脆化の進み具合をみるための監視試験片のうち「破壊靭性試験片」は母材と溶接金属の2種類を毎回取り出して試験すべきところ、関電は、1回の取り出しでどちらかしか試験していないことも裁判で明らかとなりました(◆022◆)。

 さらに、意見書の書籍化(『原発の老朽化はこのように』→こちら)作業の中で、高浜1、2号機と美浜3号機の破壊靭性試験片は、今は使われていないWOL試験片というタイプで、規制委が破壊靭性試験の方法として採用している日本電気協会のJEAC4206-2007という規格にもないことを確認しました。この試験片は破壊靭性値を正しく測定できない問題があります。書籍のQ&Aで解説しています。

 関西電力が原子力規制委員会の審査で提出した資料では、破壊靭性試験片の型は明示されていませんでした。また、当訴訟では、国も関電も、破壊靭性試験については、「イメージ」図として、CT試験片とその試験の図を準備書面で示し、本件原発の破壊靭性試験片の型については明示していないので、CT試験片なのかと思っていましたが、以下のことから、WOL試験片であることがわかりました。

・意見書でも紹介している日本電気協会が規制委に提出した資料に、高浜1号炉であると特定できる図があるのですが、よく見ると、その「試験片種類」は「1X-WOL」と書かれている。(2020年1月10日 第5回原子炉圧力容器に対する供用期間中の破壊靱性の確認方法等の技術評価に関する検討チーム)

・辻元清美議員提出「原子力発電所の劣化状況の点検・評価・審査に関する質問主意書」(2023年3月13日)への答弁書(同年3月24日)において(→こちら)、国内の全ての原発の高経年化技術評価等報告書に記載された監視試験片の種類について、高浜1、2号機は記載がありませんが、美浜3号機は「WOL試験片」と記載。

・関電が福井県の原子力安全専門委員会に提出した資料には、高浜1、2号機と美浜3号機の破壊靭性試験片としてWOL試験片の絵が示されていることを確認(高浜1、2号機は2016年5月13日開催第85回、美浜3号機は同年11月2日開催第87回の各資料に記載。福井県原子力安全対策課WEBサイト掲載)。

 関電は、福井県の専門委員会にはWOL試験片の絵を提出しているのに<下記>、名古屋地裁の訴訟では、「イメージ」図として、CT試験片を図示しており、あまりに不誠実です。

 CT試験片は、二つの穴に棒を通して上下に引っ張って、き裂の進展が始まる限界の力を測定しますが、WOL試験片は、引っ張る片方にネジ穴が開けらていて、ネジを差し込んで引っ張るために塑性変形が起こり、引っ張る力が塑性変形に使われることで、より大きな力まで耐えられることになってしまうのだそうです。

 WOL試験片をCT試験片と同じように扱うために、WOL試験片にサイドグルーブと呼ばれる溝をつけて破壊しやすくするなどの修正を行う手法もあるそうです。関電が福井県の専門委員会に提出したWOL試験片の絵にはサイドグルーブがついているように見えます。しかし、審査において、WOL試験片の測定値の妥当性が議論された記録はありません。

 以上、『デンジャラスくん通信 第24号』(→こちら)より

▼破壊靭性試験片–CT試験片
名古屋地裁、2021年10月28日参加人 関電 高浜準備書面(11)より(→こちら

▼破壊靭性試験片–WOL試験片(図中「関連温度」とは、「脆性遷移温度」のこと)
・2016年5月13日開催 第85回福井県原子力安全専門委員会
「資料No.3[関西電力((株))]高浜発電所1、2号機の運転期間延長申請の概要について」より
(→こちら
・2016年11月2日開催 第87回福井県原子力安全専門委員会
「資料No.2[関西電力((株))]美浜発電所3号機の運転期間延長申請の概要について」より
(→こちら

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