◆関西電力 闇歴史◆024◆

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◆カルテル(不当な取引制限)の疑いで二度の立ち入り検査(2021年)
 関電主導のカルテルなのに、関電は課徴金なし(2022年)
 「主犯」が真っ先に「自首」して罰を免れる

 【付 課徴金減免制度(リーニエンシー)】
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【この項目は以下の順に記述】
◆電力カルテルとは
◆課徴金の金額の相違はどこから?
◆電力カルテル~これまでの経過(降順)

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◆電力カルテルとは
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▼2018年10月から2020年10月まで
▼大規模な工場やビル向けの「特別高圧」や
▼中小の工場や事業所向けの「高圧」の電力について、互いの営業エリアで顧客を獲得しないよう申し合わせたり、
▼官公庁への電力供給の入札をめぐり、競争にならないよう参加を制限したりしていたこと。
 
「自由化の精神」を無にした大手電力の重大な責任
橘川武郎(きっかわ・たけお)国際大副学長に聞く「カルテル問題」の本質
(東洋経済オンライン)によると
 
大手電力会社は安定供給の責任を果たしているという意識が強すぎるあまり、小売全面自由化後も市場は自分たちのものだというゆがんだ意識を持ち続けてきたのではないか。市場がオープンなものになったことの意味を理解せず、長年にわたる総括原価方式、地域独占時代の企業風土から抜け出すことができないでいる。(→こちら
 

▲電力カルテルの悪質性がよく分かる公正取引委員会の報道発表資料(2023/3/30)こちら
(出所:公正取引委員会)
(旧一般電気事業者=旧一電とは、大手電力10社のこと)

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◆課徴金の金額の相違はどこから?
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電力カルテルの各社への課徴金の違いは、どこから?

カルテル課徴金の算出はおおまかに言って「カルテル締結事業規模と締結期間中の売上げ額×算定率10%」となる。

・九州電力…民間企業向けではカルテルは認定されず、公共入札向けに限られ、約27億円の課徴金にとどまった。また、調査開始後に協力して30%減額されている…関電と同じく課徴金減免制度(リーニエンシー)の適用=調査開始後の協力で、減額された。

・中国電力…高圧・特別高圧の事業が対象とされたため、約700億円の課徴金。中国電は「製造業等」に分類され、課徴金はカルテル対象事業の売上高の10%だったことから、4社の中で最大となった。
(業種による課徴金の算定率の違いは2020年12月の法律改正で廃止された)
(今回の電力カルテルは、2020年10月29日以降に関電が申告した)

・中部電力…事業規模では中国電をはるかに上回るが、約275億円の課徴金にとどまった。中部電(中部電力ミライズ)は、JERA(ジェラ、東京電力FP=フュエル&パワーと中部電力との合弁会社)から電力を仕入れて小売りしていることから、「卸売業」に該当し、課徴金が2%になったため。発販分離していたことで、課徴金が5分の1で済んだ。

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◆電力カルテル~これまでの経過(降順)
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[16]カルテル関係の訴訟(2023年10月12日)

[15]関西電力が経産大臣に業務改善計画を提出(2023年8月10日)

「地域独占の意識からぬけず、自由化の趣旨を理解していなかった。
他人任せ、上意下達の組織風土に問題があった」
 ◆105◆

[14]経産省が業務改善命令

2023/7/14、経済産業省は、電気事業法に基づき、電気事業者に対して業務改善命令などを行った。
(1)「業務改善命令」…関西電力以下5社は、長期にわたって相互のエリアにおける小売りの営業情報の交換を行ってきた。電力の自由化を通じた競争促進は極めて重要であり、今回のカルテルは「電力システム改革」の趣旨に反している。
 ↓(5社)
・関西電力株式会社…2020年3月の原発マネー不正還流(◆018◆)による金品受領問題、2023年2月の情報不正閲覧(◆087◆[6])に続く3例目の業務改善命令。

今回のカルテルは、外部からの通報により発覚した事案である点で、関西電力における法令等遵守、内部監査、コンプライアンス、リスク管理に係る社内体制がなお不十分であったことを示して余りあるものと言える。業務改善命令(→こちら)の内容は「事案の内容及び発生原因を社会に対して公表するとともに、関係者の厳正な処分を行うこと」など。
 以下、業務改善命令の中で、とくに注目される部分。
*****
2017年10月に行った経営層が参加する会議に配布された資料において、「各社が(ベースも含めた)供給力の絞込みを行い、需給構造の適正化、ひいては市場価格の適正化を実現することが重要。」との文言が記載されており、この資料に基づく方針が承認された。このような電力自由化の趣旨に反し、適正な競争を阻害しようとするものであって、電気事業の健全な発達に支障を及ぼすおそれのあるものといえる行為を行った。
*****

・中部電力ミライズ株式会社
・中国電力株式会社
・九州電力株式会社
・九電みらいエナジー株式会社

(2)「電気事業の健全な発達を実現するための対応についての指示」
1.各社が保有する電源の内外無差別な卸取引の強化及びこれを通じた短期から長期まで多様な期間・相手方との安定的な電力取引関係の構築。
2.各社における魅力的で安定的な料金・サービスの更なる選択肢の拡大。
 ↓(13社)
・北海道電力株式会社
・東北電力株式会社
・東京電力ホールディングス株式会社
・東京電力エナジーパートナー株式会社
・中部電力株式会社
・中部電力ミライズ株式会社
・北陸電力株式会社
・関西電力株式会社
・中国電力株式会社
・四国電力株式会社
・九州電力株式会社
・沖縄電力株式会社
・株式会社JERA

(3)「電気事業の健全な発達に向けた電事連活動の在り方についての指導」…電事連の活動の在り方について自ら検証を進め、電気事業の健全な発達に対する懸念を生じさせないよう、法令等遵守を徹底するための具体的な取組及び組織運営の透明性向上に向けて必要な取組を進めること。
 
・電気事業連合会

[13]発覚のきっかけは外部からの指摘

・全大阪消費者団体連絡会(大阪消団連)の機関誌(CYCLE、2023年6月25日、第1184号)によれば、カルテル発覚は、外部からの指摘とのこと。
・2023/6/8、関電による関西消費者団体連絡懇談会(関消懇、大阪消団連など5団体)への説明会では「2020年秋頃に、外部から独占禁止法上、問題ある行為をしているのではとの情報がもたらされ、社外法律事務所による調査を実施。問題ある行為を確認して、2020年10月29日以降に公正取引委員会に課徴金減免申請を行った。」(公取委の最初の立ち入り検査は2021年4月13日)。なお、「“外部”については公表しない」という。
・これまでの不祥事発覚は、関西電力良くし隊(◆041◆)、コンプライアンス委員会(◆032◆)を含めて内部からの指摘、告発によっていたが、カルテルの件は、外部からの指摘という。外部とは、どんなところだろう。

・中国電力では、カルテルの課徴金の責任をとって滝本夏彦社長と清水希茂会長が取締役を辞任(6/28)。関電はどうなんだ。課徴金を免れたからといって、責任がないはずがない。カルテル発覚のきっかけも、社外からの指摘となると、自浄能力の欠如を示しているわけで、より責任は大きいはず。

[12] 中国電力は、島根県、鳥取県にお詫び

「関西電力に損害賠償を請求すべき」
島根県知事、電力カルテル問題で中国電力に要求
(2023年4月14日)

・中国電力は、島根県関連で3件の不適切な入札があったと報告して謝罪した。島根県庁舎、島根県原子力防災センター、島根県中央病院で関西電力と電力カルテルを結んでいた。
・島根県の丸山達也 知事は「中国電力として生じる損害、課徴金の納付という損害、それが関西電力の不法行為として認定できるのであれば、そういう損害賠償請求を中国電力として、関西電力に求めていく、民法まで駆使してちゃんとやってもらうということを強く求めます」と発言。
・さらに、「民法上の損害賠償の請求を検討をされないっていうことであれば、理解しがたいです。検討されるんですか」と中国電力社長に問いただした。
・中国電力の瀧本夏彦 社長は「この場ではちょっと即答できません」と回答。
(全国市民オンブズマン連絡会議が情報公開請求→こちら

中国電力 芦谷茂 副社長が鳥取県にお詫び(2023年4月13日)

・鳥取県庁を訪問した際の面談時の記録
中国電力 副社長……今回の公正取引委員会の独禁法に基づく対応については、我々、今まで競争の中で会社運営をやっていなかったということもあって、その辺の取組をあまり重視することなく、どちらかと言えば、今までどおり安定供給ということに重きを置いてやっておって、お客様目線の取組が欠けたということを今回の事案で学んだところであります。今後、そういうお客さん目線ということも大きな会社運営の柱として、今回の反省事項を取り入れ再発防止をやりながら、また、地域の皆さんに選んでいただく電力会社を目指して取り組んでいきたいという具合に思います……
(全国市民オンブズマン連絡会議が情報公開請求→こちら
  
「競争環境の未経験、安定供給に重き、お客様目線の欠如」など問題点は把握しているか。供給重視で、需要側(お客様)からの視点が欠落しているのは、地域独占と総括原価方式で巨大化してきた電力大手に共通する病となっている。

[11] 関電に対する経産省からの指示など(2023年2月~)

カルテルなどに関して
・3/30、電力・ガス取引監視等委員会が「小売電気事業の運営状況に係る報告徴収」。
 →4/12に報告。
・4/28、経済産業省が「小売電気事業の健全な競争を実現するための対応」に関する指示。
 (1)関西電力が保有する電源の内外無差別な卸取引を強化し、
  これを通じた、短期から長期まで多様な期間・相手方との安定的な電力取引関係の構築
 (2)魅力的で安定的な料金、サービスの更なる選択肢の拡大
について、速やかに、その具体化について検討を行うとともに、併せて、これを実現するための発電事業・小売電気事業の在り方も具体的に検討し、報告するよう指示。期限はなし。

不正閲覧◆087◆)に関して
・2/21、経済産業省が、緊急指示。
・4/17、経済産業大臣が、業務改善命令。

[10] 関電はカルテルを認め、社長ら13人に減給処分

・現経営陣における責任の所在…森望(社長)、稲田浩二(副社長)。
・カルテル行為に係る責任の所在…森本孝(前社長、特別顧問)、弥園(みその)豊一(当時副社長)、岩根茂樹(当時社長)ら。2013/4/12、関電プレスリリースはこちら
・なお、中国電力の清水希茂会長と滝本夏彦社長は、辞任した。

[9] 経産省、補助金交付や契約の指名を停止

 2023/04/03。カルテルのほか、不正閲覧◆087◆)による。
(下記「」の5社は電力・ガス取引監視等委員会が不正閲覧に関して業務改善命令を経産省に勧告していて、両方で処分)
補助金の交付の停止や発注する事業からの指名停止の措置を受けたのは、9社。
・中部電力と子会社の「中部電力ミライズ」
・関西電力と子会社の「関西電力送配電
・中国電力と子会社の「中国電力ネットワーク
・九州電力と子会社の「九電みらいエナジー」と「九州電力送配電
各社への措置の期間は4/3から、親会社については、
・関西電力と中国電力…1年
・中部電力…9か月
・九州電力…7か月

【カルテルで地方自治体も指名停止など】
・大阪府は4/3、関西電力や中国電力など4社に対して入札参加資格の停止措置を取った。
・福岡県は4/10、県が発注する事業について、10/6までの6か月間、九州電力を指名停止にした。
・福岡市も4/10、9/29までの6か月間、九電の入札への参加を停止した。
・鳥取県は4/14、中国電力を6か月の指名停止処分とした。
・広島県は、4/21、関電を2か月の指名除外、中国電力も4か月。
・広島市は市の規定に基づき、中国電力を広島市が発注する事業の入札に参加できない指名停止処分とした。処分の期間は4/24から6か月間。また関西電力も3か月の指名停止とした。
山口県は、中国電力が関西電力とカルテルを結んでいたとして、中国電力を指名停止とした。期間は4/21から1年間。
・島根県は中国電力と関西電力を、28日から指名停止とした。指名停止期間は、共に、県が4/28から6か月、県病院局は12か月間。

【島根県の丸山達也知事の発言】
「中国電力として生じる損害、そういう損害賠償請求を中国電力として関西電力に求めて行くということを強く求めます」
「働きかけてきた側が、何の損害も負わずに、のうのうとしている状況は、中国電力の利用者が理解できる内容ではない」
「損害賠償の請求をされないってことであれば理解しがたいです」

[8] 公取委、巨額の課徴金を命じる

 公正取引委員会は2023/3/30、独占禁止法違反にあたるとして、中部電力や中国電力、九州電力などに対し、合計1010億3399万円の課徴金の納付(10月末までに)と再発防止策を講じるよう命じた。
中国電力に、707億1586万円…旧法で製造業、課徴金は売上の10%
中部電力中部電力ミライズに、275億5590万円…旧法で卸売業、売上の2%
九州電力に、27億6223万円…対象が官公庁との契約のみであったこと、調査開始後に協力して30%減額されたことで、少額にとどまった。
・関西電力、課徴金減免制度で、課徴金はゼロ。

[7] 関電幹部が主導

 関電によると、2020年に外部からの指摘を受けて社内調査を行ったところ、「独占禁止法違反の行為があった」と認識し、公正取引委員会に報告したという。当時社長の岩根茂樹氏ら首脳陣が関西外での営業活動の縮小方針を決め、前社長で当時副社長の森本孝氏が他社に持ちかけたと明らかにした。当時の社長の岩根氏や前社長の森本氏、副社長だった弥園(みその)豊一氏らが営業縮小の方針を決定し、森本氏自ら中国、九州電力に伝達。中部電には川崎幸男常務執行役員=当時=が伝えたと、報道されている。

[6] 関電…安値、値引き攻勢の「取り戻し営業」、不正アクセス、カルテル

 2018年から2020年にかけてのカルテル事件(2021年発覚)は、「不正アクセス事件」(2022年発覚)(◆087◆)とともに、関電の「電力システム改革」無視、法令無視、倫理観欠如の姿を明らかにしている。このカルテルは、関電の極端な安値、値引き攻勢「取り戻し営業」、「不正アクセス事件」ともつながっているのではないか。

【参考】安値、値引き攻勢の「取り戻し営業」(◆087◆)からカルテルへ

日経エネルギーNext「電力カルテルはなぜ起きた? 関電が安値攻勢をかけた2017年からひも解く」(→こちら)によれば、
(1) 原発依存の高かった関電は、2011年福島第一原発事故後、原発停止期間が長引いて、2013年と2015年に電気料金値上げを実施。その後、2016年には、低圧までふくめた電力全面自由化が始まり、新電力や他の大手電力との競争が激しくなった。既存顧客を奪われる状況が続いた関電が反転攻勢に出たのは、原発が再稼働した、2017年後半から。
(高浜原発の再稼働が2017年6~7月、大飯原発の再稼働が2018年3月、5月)
(2)
電力自由化で競争環境が厳しくなった関電は、2017年から「取り戻し営業」としてすさまじい安値、値引き攻勢をかけるようになった。2018年の電力業界は、関電の極端な安値、値引き攻勢の話題で持ちきりであった。関電の小売部門は、送配電会社の情報を不正アクセスで入手し、新電力へ移行した顧客に攻勢をかけたのであろう。
・「関電の電力とガスのセット販売は、関西最大の都市ガス事業者の大阪ガスですら太刀打ちできないほどの低価格だった」
・ライバルの大ガスが出資する地域新電力「いこま市民パワー」に対して、奈良県生駒市の一部の住民が住民監査請求を提起したのも2018年。その理由は、関電が周辺自治体の公共施設の電力入札を軒並み極めて低い価格で落札しており、生駒市が周辺市より割高な電力を購入しているというものだった。
・関電の安値は、当時の日本卸電力取引所(JEPX)スポット市場価格を下回ることもあり、発電所を一定保有しているガス会社も含めて、新電力には、到底、提供できない水準であった。
(3) 新電力は、関電の値引き攻勢が不当廉売なのではないかと疑念。
・新電力の中には、「卸市場価格よりも安価な料金は不当廉売ではないか」「独占時代に建設した設備を利用した安値攻勢は私的独占に当たるのではないか」と、電力・ガス取引監視等委員会(電取委)や公取委に申告したところもあった。
(4) 極端な安値、値引き攻勢が続いた結果、料金設定が限界費用を無視したレベルに達し、内部で問題になり、その結果、2018年から2020年にかけてカルテルに走って競争を鎮静化する方向になったのでは?との推測。カルテルは、関電からの働きかけと言われている。
・関電をはじめ、大手電力各社は限界費用を正確には把握できていなかった可能性が高い。
・大手電力の場合、発電に関わる費用のすべてを発電部門が負担しているわけではなく、部分的に小売部門が負担しているケースなどもあるもようだ。
・安値、値引き攻勢をやめる必要が生じた際に、腰を据えて限界費用を管理するのではなく、より簡単な手段としてカルテルに走ったのではないか。

[5] ずるいぞ!関電

 関電は他社を誘ってカルテルを主導したのに、減免の申告は他社を誘っていない。自分だけ申告、だから、余計にずるい。「金だけ、今だけ、自分だけ」が明らか。
・読売新聞では、下記の報道あり。九州電力、中国電力、中部電力が、関電が提案したカルテルに応じたのは問題だが、そのこと以外に、一人抜け駆けして、はしごを外した関電に対して怒るのは当然ともいえる。
 
中国電の関係者は「関電主導なのに、課徴金がないのは納得ができない」と話し、九電の関係者も「うちは関電から持ちかけられ、カルテルに応じた。関電がおとがめなしなのはおかしい」と怒りをあらわにした。
・産経新聞
 
(関電は)電力自由化の趣旨をないがしろにし、利用者の信頼を裏切ったとの批判は避けられそうにない。

[4] 関電だけは課徴金免除

 関電が主導したカルテルで、関電だけが課徴金を免除され、九州電力、中国電力、中部電力が多額の課徴金(2022/12/1報道)。九州電力に約27億円、中部電力とグループ会社に約275億円、中国電力には700億円を超える課徴金の納付を命じる見込み。九州、中国、中部の大手電力3社は2018年秋ごろから2020年10月頃まで、企業向けの特別高圧、高圧の電力供給をめぐり、従来の営業エリア以外では積極的な営業をしないよう、関西電力とそれぞれ合意を結んでいた。関電が各社に提案したとのこと。なお、特別高圧は2000年に自由化、高圧は2004~05年に自由化されていた。大手電力各社は、競争による価格の引き下げを避けようとして、ライバルと裏で手を握って一部顧客を欺いていたわけだ。
 また、今回、公取委がカルテルを摘発したということは、電力・ガス取引監視等委員会(電取委)はその不法行為を見逃していたことになる。どうして電取委はカルテルに気づかなかったのか、その点も指摘されている。

【参考:課徴金の金額】
 課徴金は、九州電力に約27億円、中部電力とグループ会社に約275億円、中国電力には700億円を超える額と報道されている。この金額はそれぞれ、どのようにして計算されているかというと、公正取引委員会のWebサイト→こちらに計算方法が明示されている。
 それによると、課徴金の算出はおおまかに言って「カルテル締結期間中の売上げ額×算定率10%」ということらしい。それにしても、中国電力が九州電力に比べて、金額がかなり多いのは何故か。
 今回のカルテルの課徴金対象は、高圧及び特別高圧の各社の売上げと考えられるが、九州電力エリアでは自由化以降、新日鐵等の新電力のシェアが伸びているのに対して、中国電力エリアでは新電力のシェアが限定的。その分、中国電力は高圧、特別高圧の売上額が多くて、その結果、課徴金も多額になったとの見方も。エリア(以前の独占地域、現在の送配電地域)ごとの大手電力と新電力の力関係が、課徴金の金額に影響を与えたという見方だ。
 また、日経エネルギーNext「電力カルテルはなぜ起きた? 関電が安値攻勢をかけた2017年からひも解く」(→こちら)によれば、
・九電…民間企業向けではカルテルは認定されず、公共入札向けに限られ、約27億円の課徴金にとどまった。
・中国電…高圧・特別高圧の事業が対象とされたため、約700億円の課徴金。中国電は「製造業等」に分類され、課徴金はカルテル対象事業の売上高の10%だったことから、4社の中で最大となった。(業種による課徴金の算定率の違いは2020年12月の法律改正で廃止された)
・中部電…事業規模では中国電をはるかに上回るが、約275億円の課徴金にとどまった。中部電(中部電力ミライズ)は、JERA(ジェラ、東京電力FPフュエル&パワーと中部電力との合弁会社)から電力を仕入れて小売りしていることから、「卸売業」に該当し、課徴金が2%になったため。発販分離していたことで、課徴金が5分の1で済んだ。

[3] 課徴金を課すか

 2022年11月25日、公正取引委員会がカルテルを結んだ中部電力中国電力九州電力に、少なくとも計数百億円の課徴金納付命令を出す方針を固めたとの報道。最初に違反を申告した関西電力は課徴金減免制度リーニエンシー)で課徴金は免れる見通しともいわれる。しかし、このカルテルは関電の役員がもちかけたとの報道もある。

【付 課徴金減免制度(リーニエンシー)】
 事業者自らが関与しているまたは過去に関与したカルテルや談合などについて公正取引委員会に対して自主的に申告した場合に、当該事業者の違反行為に対する課徴金がその申告した時期・順位に応じて免除(100%減額)または減額(30%もしくは50%の範囲)される制度。公取委の調査開始前なら100%か50%の減額、調査後なら30%の減額となる。ただし、減免は5社まで。公取委が立ち入り検査を行った段階なら、立ち入り検査を受けた事業者は一斉に社内調査を開始し、課徴金減免制度の利用を検討することになるので、速やかに社内調査を実施し、申請の可否を判断することになる。
 2006年に制度がスタートした当初は運用企業数は3社だったが、2010年の制度見直しで5社に拡大された。申請件数は2016年3月までの約10年間で938件、課徴金が減免されたのは計264社。申し出があった場合だけ申請企業を公表しているが、2015年6月の申請分からは全企業名を公表しており、公取委幹部は「順調に定着してきた」としている。
 なお、リーニエンシーとは、寛大、哀れみ深さ、慈悲、寛容といった意味。つまりは、カルテルの仲間割れを促す制度。

[2] 二度目の立ち入り検査

 公正取引委員会は2021年7月13日、電力販売で互いに顧客の獲得を控えるカルテルを結んでいた疑いが強まったとして、九州電力とそのグループ会社、関西電力中国電力の4社を立ち入り検査した。公取委は4月にも、電力や都市ガス販売でカルテルを結んだ疑いで、関電や中部電力、東邦ガスなどに立ち入り検査を実施した。容疑が事実なら、電力やガス市場の競争を不当に損ない、消費者を裏切る許されない行為である。

[1] 最初の立ち入り検査

 事業者向けの電力供給をめぐり、互いの営業活動を制限するカルテルを結んでいる疑いがあるとして、公正取引委員会は2021年4月13日、中部電力と販売子会社の中部電力ミライズ(いずれも名古屋市)、関西電力(大阪市)、中国電力(広島市)の4社に対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査をした。公取委がカルテル容疑で電力会社に立ち入り検査に入るのは初めて。「特別高圧」の電力供給をめぐるもの。各社が従来、電力を供給してきた区域外では積極的な営業活動をせず、顧客を奪い合わないようにしていた疑いがある。合意は2018年から2020年にかけて、関電と中部電、関電と中国電それぞれの間で交わされていたとみられる。

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