◆関西電力 闇歴史◆087◆

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◆関電の小売部門が送配電子会社の情報を不正閲覧
 「電力システム改革」の重要課題に違反
 関電のコンプラ意識がさらに問われる事態
 【付 電力システム改革】

(エネ庁サイトへの不正閲覧→◆100◆
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▼二つの不正閲覧

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[9] 個人情報保護委員会(個情委)が行政指導
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・大手電力の小売部門が送配電部門の個人情報不正閲覧していた件について、個情委は個人情報保護法の規定に違反すると認定。北海道電力と東京電力を除く大手電力の小売り・送配電部門の計15社が対象。(2023/6/29)

・政府の個人情報保護委員会(個情委)は、エネ庁サイトへの不正閲覧でも、大手電力全10グループと送配電子会社など19社に対して、行政指導を行った(→◆100◆)。

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[8] 関電は16人を処分、送配電も8人を処分
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・関電は、2023/5/12、業務改善計画を経済産業省に提出するとともに、森望社長ら16人の報酬を減らすなどの処分を発表。

森 望   (取締役代表執行役社長)  月額報酬50% 3か月※
稲田 浩二 (取締役代表執行役副社長) 月額報酬30% 3か月
西澤 伸浩 (取締役代表執行役副社長) 月額報酬30% 3か月
松村 幹雄 (代表執行役副社長[ソリューション本部長]) 月額報酬50% 3か月
槇山 実果 (執行役常務[ソリューション本部長代理]) 月額報酬30% 3か月
宮本 信之 (執行役常務[総務室担当]) 月額報酬20% 2か月
荒木 誠  (執行役常務[経営企画室、IT戦略室担当]) 月額報酬20% 2か月
池田 雅章 (執行役常務[コンプライアンス推進室、経営監査室担当]) 月額報酬20% 2か月
高西 一光 (執行役常務[エネルギー需給本部長]) 月額報酬20% 1か月
杉本 康  (取締役監査委員会委員) 月額報酬10% 3か月
島本 恭次 (取締役監査委員会委員) 月額報酬10% 3か月
 上記の他、本件に関係する執行役員ならびに従業員(合計5名)についても、社内規程に基づき厳正に対処します。
※本件に関し、本年3月から6か月間、月額報酬の50%を自主返上中であり、上記処分を超える期間については、引き続き自主返上とします。
 なお、榊原 定征(取締役会長)から月額報酬の20% 3か月を、自主返上する旨の申出があり、受理しました。

【参考】2023年6月の「第99回  定時株主総会 招集ご通知」より

・関西電力送配電も、8人を処分。

土井 義宏 (代表取締役社長) 月額報酬50%、3か月※
白銀 隆之 (取締役副社長執行役員) 月額報酬30%、3か月
大川 博己 (取締役常務執行役員) 月額報酬30%、3か月
高市 和明 (常務執行役員) 月額報酬30%、3か月
津田 雅彥 (常任監査役) 月額報酬10%、3か月
戸田 誠一郎 (常任監查役) 月額報酬10%、3か月
 上記の他、本件に関係する執行役員ならびに従業員(合計2名)についても、社內規程に基づき厳正に対処します。
※本件に関し、本年4月から3か月間、月額報酬の50%を自主返上中であり、既返上分は自主返上の扱いとします。

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[7] 関電は短期間の営業自粛
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・新電力顧客情報の不正閲覧をめぐり、関西電力は3/24から4/30まで電気・ガスの販売で営業活動を初めて全面自粛すると発表。
・関電は4月中に不正に関する社内調査結果をまとめる予定だったが、4月17日に経産省から業務改善命令を受け、5月12日までに内部統制の強化策などを含む業務改善計画を公表することを求められている。そのため、営業自粛期間を報告提出まで延長した。
・ただし不祥事の続出で露呈したコンプライアンス(法令順守)意識の欠如が短期間で改善されるかは疑問。顧客からの契約申し込みは受け付けるなど、甘い形式的な自粛。

営業目的の閲覧が多数…なお、4/19、関電は、2019年11月からの約3年間で、社員62人が新電力の家庭向け契約5万4774件の顧客情報を営業目的で閲覧していたと明らかにした。このうち4000件近くは、閲覧後に契約が関西電力に切り替わっていた。2月の公表時点では、営業活動に使っていたのは社員35人で4332件と説明していた。また企業向けの契約でも、社員ら2千人超が1万940件の情報を不正閲覧していたことが新たに発覚した。

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[6] 経産省、関電に業務改善命令
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・経産省は、2/21、関電に対してコンプライアンスなどについて、緊急点検を指示した。
・電力・ガス取引監視等委員会は、経産省に対してカルテルや不正閲覧問題で該当する電力各社に業務改善命令などをだすよう勧告。
・これをうけた経産省は、2023/4/3、業務改善命令に係る弁明の機会の付与を通知。4/17、関西電力と関西電力送配電などに対し「業務改善命令」を出した。電気事業法に基づく行政処分としては、最上級に厳しい処分。関電の不正閲覧は、2022年12月までの約3年で、関電の社員と委託先の社員、計約1600人が、「新電力」の顧客情報約15万3000契約分にのぼることが判明。不正閲覧は常態化していた。関電に業務改善命令が出されたのは、原発マネー不正還流◆018◆)による金品受領問題に関連して出された2020年3月以来。つまり、関電は、3年間で2度の業務改善命令を受ける事態。参考→◆024◆
   
・業務改善命令…関西電力、関西電力送配電、中国電力ネットワーク、九州電力、九州電力送配電の5社。
・業務改善勧告…東北電力、四国電力など。故意に閲覧できるようにしていた関電より、悪質性は低いと判断。
・業務改善指導…沖縄電力など。

【自治体の処分】
・大阪府は2023/4/24、関西電力を2024/2/1まで「入札参加停止」とした。関電はすでにカルテルの問題をめぐり、大阪府から「入札参加停止」措置を受けていて、4/3以降、府の入札に参加できなくなっていて、今回は不正閲覧問題を受け、「措置が延長された形」。

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[5] 不正閲覧が拡大
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過去3年分(2019年11月~2022年12月)を調査……関西電力送配電と関西電力は、新電力の顧客情報を不正に閲覧していた問題で新たな調査結果を発表(2023年2月17日)。関西電力送配電は、託送システムへのログ件数の調査期間を、記録が残る過去3年分まで拡大。その結果、非公開情報を閲覧した関電社員は委託先職員を含め1606人で、契約数は15万3095件に上ることが新たに判明した。社員35人がオール電化の営業に使ったという。
・経済産業省は2月21日、関電に対し法令順守などに関する緊急指示を出し、資源エネルギー庁長官が経産省内で関電の森望社長に手渡した。

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[4] 大手電力、各社で同じ違法行為がまん延
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・大手電力による顧客情報の不正アクセスは、関西電力のほかに、東北電力、中部電力、中国電力、四国電力、九州電力でも報告されている。
・電力・ガス取引監視等委員会(電取委)は、大手電力に遠慮して、監視の役割を果たしていない。

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[3] 子会社「関電システムズ」からも不正に情報入手
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 関西電力は2022年10月まで4年半の間、システムの運営などを委託する子会社「関電システムズ」に依頼し、競合する新電力の顧客氏名や、スイッチング(契約切り替え)情報などを不正に入手していた。子会社側は関電の求めに応じ、送配電のシステムから共有を禁じられているライバル社の情報を渡していた。(2022/1/17 報道)

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[2] 電取委への報告で明らかな法令無視の姿勢
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 関西電力は、2023/1/13、社員および委託先社員を対象にしたアンケート調査の結果を発表。電力・ガス取引監視等委員会に報告書を提出。2022年9月から12月にかけての3か月間で、社員および委託先社員730人によるライバル関係にある新電力の顧客情報への不正なアクセスは、あわせて1万4657契約とのこと。このうち関西電力社員239人の4割が「電気事業法上の問題になり得る」と認識していた。社員30人が「関電として提案活動を行うため」と「オール電化」の営業活動に利用していた。関電の松村幹雄副社長は記者会見で「電力の公正な競争を揺るがすことと認識している」と謝罪した。「事業活動よりコンプライアンスを優先するという意識徹底が不十分であった」と。

・関電の「新電力顧客情報の取扱いに係る調査結果の報告について(電力・ガス取引監視等委員会からの報告徴収への報告)2023/1/13」→こちら

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[1] 不正アクセス事件とカルテル事件
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 関電の小売部門が子会社の送配電会社「関西電力送配電株式会社」の情報に不正アクセスしていたという報道があった(2022年12月27日)。この不正アクセス事件は、カルテル事件(◆024◆)と並んで、関電の「電力システム改革」無視、法令無視、倫理観欠如の姿を明らかにしている
【参考】森と暮らすどんぐり倶楽部 ブログ「関電  新電力の顧客情報不正閲覧!」→こちら

 報道では、関電とライバル関係にある新電力の情報が筒抜けだった可能性があり、不正アクセスが常態化していた恐れもあるとされている。電気事業法が禁止する行為として、電力・ガス取引監視等委員会は両社に報告を求める通知を出した。経済産業省は、今回の事態を重くみて、他の大手電力9社についても同様の問題がないかを速やかに調査、経産相は、調査結果を踏まえ適切な対応を取るとのこと。

 しかし、大手電力の意向に沿ってすすめてきた「電力システム改革」の当然の結末の一つだろう。カルテル事件でも、電力・ガス取引監視等委員会(電取委)はその不法行為を見逃していたことになる。どうして電取委は、カルテルにも気づかず、送配電部門の中立性確保ができていないことにも気づかなかったのか。

 新電力の関係者は「やっぱり」「今さら」「氷山の一角」と言うだろう。新電力と契約している客の名前や連絡先、電気の使用量などの情報が関電にもれていれば、関電の小売営業はひじょうに助かるはずだ。関電は、とくに高圧、特別高圧で新電力に流れた顧客を取り返す「取り戻し営業」に力を入れている。

【取り戻し営業】

・いったん関電から離脱して新電力に移った顧客を、再び、関電の契約に引き戻すという,関電の営業政策。とくに、法人の大口顧客の流出に対して、値下げを含めた「取り戻し営業」を強化。
・京阪電気鉄道は、2018年5月、大阪府や京都府を走る「京阪本線」の動力用の電気について、購入先を新電力のエネット(東京)から関電に切り替えた。関電の取り戻し営業が成功した例とされる。
・岩根茂樹社長(2018年当時)は、昨秋(2017年秋)以降の営業の動向について「企業向けでは顧客の取り戻しが離脱を少し上回るようになった」と言っている。
(産経新聞→こちら
安値、値引き攻勢「取り戻し営業」からカルテルへ◆024◆
「関西電力 闇歴史」番外編(1)関西電力 この11年(2022年末)こちら

【関電社内のコンプライアンス感覚】

・ 関電のプレスリリース(→こちら)によると、「本件は、12月9日、当社社員が新電力顧客情報を閲覧できることに気付き、12月13日に関西電力送配電株式会社に照会し、判明したもの」となっている。

「電力システム改革」の中でもっとも重要な課題に関して、当該の電力従業員らは何も知らないのか。知っていても、素知らぬ顔をしていたのか、あきれかえって、言うべき言葉もない。コンプライアンスは、お題目ではない。日々、職場の中で実践されるべき課題なのに、関電とは、何という会社か…分かっていることだが、改めて怒りがこみあがるニュースだ。

・電力システム改革の中で最重要課題の一つとも言える「送配電部門の中立性確保」について、一人の「当社社員」以外、関電社員は何も知らないのか。「12月6日から12日までの1週間で少なくとも329人の関電の営業部門の社員が1327件の顧客情報にアクセス」と報道されている。329人は、何を考えていたのか。自分の営業成績だけか。「行為規制」を知らなかったとしても、知ってて無視したとしても、重大な違反行為だ。

・知らなかったとしても、知っていても無視し続けてきたとしても、関電社内のコンプライアンス感覚がまったく最低レベルであることを示して余りある事態だ。

・オンラインコメント…「当時新電力として事業に携わっていましたが、高圧(事業用)以上の案件で旧電力からの契約切替の話が進むと、急にその需要家(顧客候補)に旧電力からの営業攻勢として大幅な値引き提案が入りご破産になることが多々ありました。この問題は公平な競争環境の構築による顧客メリットを大きく阻害しています。」
「関電の社員であれば電気事業法を理解しているはずであり、少なくとも一人ぐらいは問題視し、早期に対策(閲覧禁止)を取ったはずです。一人もそれに気づかない、気付いたとしても対策を取らない社員ばかりであるということは信じられません。関電を含め電力関係会社の情報管理能力およびその倫理観を含めて、再教育する必要があるでしょう。」

関電の広報には「厳格な情報遮断」を記載】

・「発送電分離は、小売全面自由化と並ぶ電力システム改革の大きなポイント」として、その「中立性の確保に向けて」の項目では、「日本では中立性を確保する方法として、送配電を行う会社を電力会社とは切り離し別会社とし……両者の間で厳格な情報遮断等を行うというものになります。」とある。

・言葉が踊っているだけ。「厳格な情報遮断」が聞いて呆れる。表面を取り繕うだけで、まるで内容がなく、社外向けの建前広報だけ。

【大手電力は解体して再編を】

・大手電力の権益温存をはかって進められている「電力システム改革」は、カルテル事件、今回の不正アクセス事件で、その限界が明らかになった。

・ 関電の発電部門、小売部門、送配電部門は、それぞれ完全に独立した別の会社にすべきだ(所有権分離)。9電力会社の地域独占の送配電会社は、統合して、全国単一の送配電網に整備すべきだ。
関電解体!

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【付 電力システム改革】
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(1) 2012年以来の「電力システム改革」とは
・第一段階…電力広域的運営推進機関(OCCTO、オクト)の設置(2015年度~)
・第二段階…小売全面自由化(2016年度~)
・第三段階…送配電部門の中立化=法的分離(2020年度~)、
 料金規制の撤廃(2020年度からは実施予定であったが、新電力未成長により未実施)

(2) 電力の小売自由化の中で、常に指摘されているのが、全面自由化後も日本の発電所の約80%を大手電力が所有しており、発電分野での競争が働かない状況が続いている点である。このため、大手電力が自社小売部門(もしくはグループの小売会社)と新電力を差別せず、公平に扱うこと「内外無差別」(「大手電力の発電部門と小売部門の相対取引」と、「大手電力と新電力との間の相対取引」とのイコールフッティングが担保されていること)が実現されない。そして、もう一つ、常に議論されてきたのが「送配電部門の中立性確保」の必要性。

【参考】内外無差別と常時BU
 北海道電力は2023/11/2、2024年度は新電力への常時バックアップ常時BU)を行わないと発表した。23年度年間物の電力の相対卸取引で、自社の小売部門と新電力を差別せず公平に扱ったこと(内外無差別◆102◆)を電力・ガス取引監視等委員会(電取委)が認めたため。2023/10に改定の「適正な電力取引についての指針(適取ガイドライン)」(→こちら)に、監視委が内外無差別性を確認すれば常時BUを行う必要はないとしたことを踏まえた措置。
 なお、常時BUとは、新電力が需要家に電力を供給する際に、大手電力(旧一般電気事業者)から継続的に電力を購入するしくみのこと。新電力が新しく参入する際に、ベースとなる電源供給量が足りないことや、新電力がベース電源となる発電所を新たに建設するのはコスト面で厳しく、参入の大きな障壁となるため、大手電力から一定量の電力を継続的に卸売りしてもらうしくみ。適取ガイドラインに基づく。

(3)  2003年…「送配電部門の中立性確保」のために「会計分離」が実施される。
(例)関電の中で、送配電部門とその他の部門の会計を分ける。しかし、送配電部門の中立性確保が不十分との指摘が絶えなかった。
(例)関電など大手電力の小売部門と送配電部門が共同して、新電力の小売営業を妨害するようなこと。

(4) 2020年…送配電部門の「法的分離」が実施される。ただし、この分離では、資本関係は維持される。
そこで、送配電会社の中立性、独立性を保つために「行為規制」が課されている。
(例)送配電部門を完全に独立した別会社にする「所有権分離」がもっとも厳格な制度であるが、関西電力送配電株式会社は関電の100%子会社。大手電力に配慮した政策。


▲資源エネルギー庁資料(→こちら)による。

(5) 行為規制…大手電力と新電力が、送配電網を公平に利用できるようにするための規制。会計分離以来、重要課題であったはずなのに、関電社員にはこれがまるで頭に入っていない。
・送配電部門(送配電会社)が託送業務を通じて知りえた情報の、目的外利用の禁止
・送配電部門(送配電会社)と発電・小売部門(親会社)との内部相互補助の禁止
・託送業務について、親会社と新電力との間での差別的取扱の禁止
・送配電会社と親会社で、取締役・執行役の兼職を禁止

(6) つまり、関電の場合では、以下の通り。
関西電力株式会社…発電部門、小売部門からなる。小売部門は、自社の顧客情報はもっているが、新電力顧客情報は知りうる立場にない、アクセスすることができないのが建前。

関西電力送配電株式会社…関電の100%子会社で、地域独占の送配電部門。関電エリア全体の顧客情報をもつが、親会社と情報が遮断されていることになっている。

(7)「発送電分離」の陰で進む大手電力会社による新電力潰しの実態
こちら(2020/4/24)

◆086◆←←関西電力 闇歴史→→◆088◆