◆使用済み核燃料について、そして、「ふれあいの浜辺事業」をめぐる裏金疑惑

使用済み核燃料について、そして、
プルサーマル計画とカラ出張問題で国と県が結託し
 高浜町の森山元助役の手も借り
 「ふれあいの浜辺事業」で裏金疑惑

  (小浜市)松本 浩、『かたくり通信』掲載

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転載元の『かたくり通信』の注釈
『かたくり通信』2023年9月10日発行第50号→こちら
◆第23回学習会◆
*7月30日(日)、50年以上の長きにわたって福井県内で、原発や行政の不正に対する異議申し立てを様々な形で行ってきている福井県小浜市在住の松本さんを招いて学習会を行いました。今回は異議申し立ての一部を紹介していただきます。頁の都合等により内容は『かたくり通信』編集子が多少手を加えてあります。
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◆名古屋高裁金沢支部での意見陳述
 原発再稼働で増える使用済み核燃料をどうするのか
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人の手に 永遠に負へざる 核のゴミ
孫子に残す 罪をこそ思へ
     松本浩

【自己紹介を兼ねて、名古屋高裁金沢支部での意見陳述】

 松本浩と申します。今回の学習会では、前半は金沢の裁判所での意見陳述を読ませていただきます(編注:2015年9月14日、名古屋高裁金沢支部での大飯3、4号機差止訴訟の控訴審第5回口頭弁論での意見陳述)。後半では、ちょうどプルーサーマル計画導入と軌を一にして、国と福井県及び高浜町が関わって起きた奇妙な出来事について説明します。

*****<以下意見陳述>*****

 1939年7月14日生れの76歳(当時)です。大飯原発から10キロ圏内の、人口3万2000人ほどの福井県小浜市に居住しています。

【小学校の教師として】

 1962年の4月、私は敦賀半島の西海岸中ほどの町、美浜町の菅浜小学校に新任教師として赴任致しました。その翌年の春頃、近くの丹生集落に原子力発電所が誘致される話題が広がり始め、夏休みの夜、菅浜漁業協同組合の青年部長が校庭片隅の教員宿舎に私を訪ねて来ました。「先生、原発ってどんなもんや」。「いや、分からん」。「いっぺん調べてくれや」というやり取りがあって、私は、休みを利用して原発について調査し、結果をガリ版刷りの冊子にまとめたものを20部ほど学習会用として青年部長に渡しました。原発の構造や原理、イギリスの牛乳を汚染した事故の例、使用済み核燃料の毒が人の始末に負えないことなどを書いた私のつたない印刷物は、ある日青年部長らの手で菅浜漁業協同組合総会の会場に配られました。その翌日、小学校の狭い職員室は町や村の名士が集まって異様な雰囲気に包まれ、私を廻って激しい議論がありました。

 年度末の新聞報道で私は、4月に新設される病弱児養護学校に転勤になったことを知りました。開校といっても校舎などはなく、福井県や近隣の府県から肺結核や心臓病などで親元を離れて入院中の、幼児から中学生までの子供たち数十人が大部屋で闘病生活を送っている、旧陸軍病院の結核療養施設でした。私たちの仕事は、近隣の小学校の物置からまだ使えそうな椅子と机を分けて頂き、病室を教室にしつらえることから始まりました。

 さて、元の学校、菅浜小学校の教頭先生は、隣村のお寺の住職で酒と議論が大好きな人でした。宿直当番の夜などは、いつも私を呼んで議論を仕掛けてきたものでした。政治のこと、教育実践のこと、社会主義の理想と現実、騒ぎとなった原発のことなど、議論はよく深夜に及んだものでした。ある時、原発を動かた後に残る使用済み燃料の処理について、人間の手に負えないものを将来の世代に先送りする無貴任さについて私が話しますと、教頭先生は次のように言って私の話を遮りました。「君ね、人類は誕生以来300万年、さまざまな困難に遭遇して来た。しかし、人類の英知は、次々とその困難を解決して見事に今日の文明を築き上げてきた。原発の使用済み燃料の処理だって今後50年もすれば、人類の英知が必ず解決するよ。何も君が心配する必要はない」と。関電は校長会や教頭会、業者の集まりなどで同様の言い訳を流していたのでしたが、当時の私には反論のしようがなく、「そんなものか」と妙に教頭先生に納得させられてしまったものでした。

【使用済み核燃料の処分は50年経っても解決せず】

 それから、やがて50年を迎えようとしていた2012年5月、大飯原発3、4号機の再稼働をめぐって開かれた小浜市民への説明会で私は、50年前の出来事を話して使用済み核燃料の処分、保管に何の解決の目処もないまま死の灰を生成し続け、それを平気で子孫丸投げすることの罪深さと無責任さを糾しました。「あれから50年経とうとしていますが、人類の英知は使用済み核燃料の問題を解決しましたか」と尋ねたところ、経済産業省の役人は「ただ今、プルトニウム239などの半減期の圧縮を研究中であり、高レベル放射性廃棄物の処分については地下埋設の場所と埋設の方法を探っているところです」という回答で、50年前の菅浜小学校の教頭先生と同じレベルの回答に過ぎませんでした。

【中国東北部を訪ねた際に出会った悲劇】

 2009年5月に、私は、旧日本軍が遺棄した毒ガス弾で被毒した少年「周くん・劉くんを応援する会」のお誘いを受けて中国東北部(旧満州)を訪ねました。吉林省敦化市の小学校に通っていた周くん・劉くんという二人の少年は、2004年7月、山村の両親の実家で楽しい夏休みを過ごしていました。ある日、近くの松林を流れる小川で水浴びをしていた二人は、岸の土手の中から頭を出している砲弾らしきものを見つけて掘り出し、旧日本軍が遺棄した毒ガス弾の廃爛性猛毒イペリットの飛沫を浴びてしまいました。旧日本軍はソ連軍の侵入に際して、触れれば必ず悲劇をもたらす国際法違反の大量の毒ガス弾を「満州」の各地に遺棄して逃走しました。地中に埋められたり川に投げ込まれたりして遺棄された毒ガス弾の数は40万発ともいわれています。60数年間、地中で眠っていた毒ガス弾は、その毒性を保ったまま21世紀の少年たちを襲いました。後遺症で見るからに弱々しい二人の少年の案内で訪れた松林には、無数の小旗が立てられていました。白い小旗は安全処理が終了したもので、赤い小旗は未処理で危険な状態にあるものを示していました。未舗装の道路から100メートルほどの距離を隔てた小川まで、小旗の間を縫うようにして一行を案内した少年たちは、毒ガス弾を見つけた小川のほとりに立って当時の様子を語りました。私は、少年たちの話を聞きながら、原発の使用済み核燃料が幾世代か後のある日、突然、罪のない子供たちに放射能を浴びせかける悲劇を想像し、暗然たる思いでした。その日のつたない私の短歌の中から2首、詠ませて頂きます。

・国策の すゑは危ふし「満州」の 大地に立ちて ふるさとを思ふ
・核のごみ 抱く若狭よ かなしかる 無告のなみだ 幾代ながさむ

【小浜市民は使用済み核燃料の貯蔵施設にNO】

 私が住む小浜市は若狭湾の中ほど、敦賀市と高浜町を結ぶ50kmのちょうど中間のあたりに位置し、「海のある京都」などとよばれるほど古いお寺の散在する町ですが、原発の建設については1970年以降これまで三度も誘致を拒否しています。私は、原発誘致勢力と原発反対運動勢力の間に存在したのは、明らかに人間としてのモラルの違いであったと考えています。10数年前、使用済み核燃料の貯蔵施設を小浜市に誘致しようとする動きと、これを阻止しようとする運動が激しく衝突したときのある集会で、誘致派の市民の一人が立ち上がって言いました。「反対派の皆さんは、さかんに50年後100年後の災いを心配しておられますが、大事なことは現在ただ今私たちのことではないでしょうか。町は不況で寂れ、商店街のシャッターは下ろされ人通りも途絶えています。もし、使用済み核燃料の貯蔵施設を小浜市に誘致したならば、どれほど街が賑わい活気に満ちることでしょう。50年後のことは、50年後の人々に委ねてはどうでしょうか」と。この発言者は人々の激しい批判を浴びて面を上げられないほどでした。また、福井県敦賀市の高木孝一市長は、原発誘致を巡って揺れる石川県志賀町の講演会に出かけて行って言いました。「50年後に白血病の子供が生まれるやら100後に生まれる子供がみんな片輪やら知りませんが、原発は金になります。今はおやりになった方がよい」と。志賀町の原発誘致派の人々は万雷の拍手でこの演説に応えていましたが、私は深夜、布団を被ってこの録音テープを文章におこしながら体が震えました。小浜市民はこのような考え方に「NO」の意志を表明したのです。

【原発再稼働は使用済み核燃料を増やす】

 使用済み核燃料について福井県の栗田幸雄前知事や西川一誠知事は、「痛みを分かち合う意味で、中間貯蔵施設は電力の恩恵を受けた消費地に保管してもらうのがよい」と言っています。しかし、原発が危険な使用済み核燃料を発生させると知りながら誘致し、後始末は他所の町や後の世代に押し付ける、これほど無責任で恥知らずなことはありません。小浜市民が小浜市への使用済み核燃料の貯蔵施設の誘致を阻止したときの集会で「使用済み核燃料貯蔵施設の小浜への誘致を阻止したことはよかった。しかし、他所なら建設してもいいというものではありません」と一人の市民が発言しました。青森県なら「核の墓場」にしてもいいのか。「経済援助」と引き換えにモンゴルの荒野になら埋めてもいいのか。大電力消費地の大阪や神戸なら押し付けてもいいのか・・・この問いかけは、私たちに投げかけられたまま消えることはありません。若狭湾の原発がその敷地内に抱える使用済み核燃料は3550トン、そこに含まれる死の灰は広島型原子爆弾の27万3000発分に達するものです。猛毒プルトニウムの半減期は2万4000年、その毒性が半分になるのに2万4000年かかり、半分になったその毒性がまた半分になるのに更に2万4000年と際限なく続くのです。人類の文明が誕生してからでも高々5000年であることを思うと、気の遠くなるような歳月と言えます。

 もし、大飯原発3,4号機が事故もなく1年間動いたとすると、2基の炉の中にたまる死の灰は広島型原子爆弾の2000発分、生成されるプルトニウムは長崎型原子爆弾60発分と聞きます。その処分や安全な保管の方法を知らないまま、この膨大な量の死の灰やプルトニウムを私たちは子孫に残して行くのです。はるな未来の彼方から、「あなたたちは、まだ核のゴミを増やすのですか」と、問いかける悲しげな声が聞こえてくるように思われます。どうぞ、原発の再稼働を認めないでください。ありがとうございました。

***<意見陳述部分ここまで>***

【使用済み核燃料は悩みの種】

 この意見陳述を金沢の法廷で読上げて、裁判長を見上げたとき、「嫌なことを聞いたな」というような表情がちらっとうかがえました。裁判長が下そうとしている判決の内容とは相反する陳述であったので、聞かなければよかったというような思いが裁判長の脳裏をよぎったのではないかと思います。ああ、この控訴審では負けるなとそのとき思いました。そしてその通りになりました。

 ところでこの原発の使用済み核燃料については今でも、私たちの悩みの種になっています。数日前に小浜市で小さな集まりがあった際に一人の女性が、問題になっている新幹線の小浜回りのルートについて、もし新幹線が小浜を通ることになって小浜駅ができたとすると、それから50年後には小浜に人は住んでいるだろうか、とおっしゃった。その発言を巡ってその場の数人で意見が交わされました。結局その人が心配しているのは、この使用済み核燃料の問題です。関西電力は杉本知事(福井県知事)に、使用済み核燃料の中間貯蔵のための県外搬出について、フランスへ再処理のために200トンを送ることで、関電と福井県との県外搬出の約束は果たされたものと思うと言いました。これは福井県内の関西電力関連の使用済み核燃料のわずか2%です。具体的には美浜原子力発電所で470トン、高浜原子力発電所で1340トン、大飯原子力発電所で1740トン、合計3550トンの使用済み核燃料が溜まっているわけです。2023年12月末までに中間貯蔵施設を福井県外で決めると、もしそれが決まらなければ美浜3号炉と高浜1,2号炉の老朽原発は稼働しませんということを関電は福井県に約束した。ところが200トンをフランスへ持って行くことになったから、その約束は果たしたというのです。

【原発再稼働は到底許されない】

 関西方面から福井の小浜や美浜に来る人たちが、よく事故が起きた際の琵琶湖の汚染のことを話されます。もし大飯や高浜の原発で事故が起きて琵琶湖が汚染されたら関西の水がめが全部だめになると。京都、大阪、神戸などの飲み水がだめになると。私はそれはその通りだと思いますが、事故に際して一番最初に汚染されるのは小浜湾です。これは取返しのつかないことなんです。もし大事故が起こらないと仮定して、それでもこの使用済み核燃料には広島型原子爆弾27万3千発分の死の灰が含まれているわけです。それをよそへ持って行け、と知事は言っていて、関西電力も必ず候補地を探すと言っているんだけど、引き受け手はない。当然ですよね。この3550トンの使用済み核燃料は50年や100年、1000年でもその毒性が消えるものではない。少なくとも私たちの子や孫の代、今の私たちが全部死んでしまってもこの死の灰は残り続けるわけです。その保管や処分を誰がやるのか。私たちの子や孫や、さらに次の世代が担っていくわけです。その50年後のことを考えたら、その女性が言うのは、その大量の使用済み核燃料の管理のために小浜に将来世代の若い人たちが住み続けるのだろうか、ということなのです。僕は住まないだろうなと思います。使用済み核燃料の保管というものは何の生産性もない。何の価値も生み出さない。ただ危険というだけ。もしそれが漏れ出たとしたら、それは福井県だけではなく、関西圏もすべてこの死の灰・・・広島型原子爆弾27万3千発分の死の灰で汚染されてしまいます。それを漏れないように必死で守っていくのは私たちの次の世代なんです。電気の恩恵など1円ももらっていない将来世代がこの使用済み核燃料の保管という責務を担っていかなければならない。そのようなことは分かっているわけです。でもそれを分かっていて、関電はなお原発を稼働させようとしている。大飯原発1基を動かそうと思えば、さらに大量の放射性廃棄物が新たに生成されてしまう・・・これは人間の倫理に基づいても到底許されるものではない。

 ところで、関電は3550トンの全部を県外へ搬出するとは言っていない、そのほんの一部を県外へ搬出する・・・従って約束は守ったと言っている・・・このような人たちに原子力発電所を動かす資格は全くありません。ここまでが自己紹介を兼ねた前半です。

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◆プルサーマル計画とカラ出張問題で国と県が結託
 原発政策実現のため国は福井県の犯罪に協力し援助
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【高浜3、4号機のプルサーマル計画】

 後半に入ります。まず平成7年12月8日に敦賀市にある高速増殖炉もんじゅでナトリウム漏れ事故が起きました。そして平成9年に電気事業連合会が電力各社のプルサーマル利用計画を公表しました。核燃サイクルからプルサーマルへの転換があったということです。平成7年の事故で高速増殖炉が使えないということがはっきりしたので、ここでMOX燃料を普通の原発で使用する方針に転換した。もんじゅのナトリウム漏れ事故から、方針転換の公表まで概ね1年の期間があった。

 その間にいろいろなことが行われた。平成7年から8年にかけて全国的にカラ出張の実態が明らかにされました。この時期と、プルサーマル計画を福井県と高浜町に承認させようという動きがちょうど重なって起きてきている。平成9年の2月27日には当時の橋本首相が福井県知事に対してプルサーマル計画導入への協力を依頼するという働きかけを行い、3月に入って関西電力がプルサーマル計画を福井県に説明しています。このことを巡って反対の動きも出てくるわけです。11月11日には、国が主宰して福井市でプルサーマル計画についての公開討論会が開かれました。

 翌平成10年に入ってからは、2月10日には高浜町で「プルサーマルを考えるフォーラム」というのが開催されています。2月23日には関西電力が福井県と高浜町にプルサーマル計画の事前了解願を提出。5月8日に県と町が原子炉設置許可申請を国に対して出しています。同年7月16日には「プルサーマルを考える町民の集い」というのが開催され、厳しい状況の中で町民300人が参加しています。

 それから平成11年1月18日には高浜町議会が「プルサーマル計画の推進」を決議しています。5月17日には栗田福井県知事がプルサーマル計画の受入れを表明。5月24日には高浜町長が「プルサーマル計画推進」を表明。そして6月17日、福井県と高浜町は、高浜3、4号機のプルサーマル計画を事前了解。9月17日には、高浜町の住民組織「プルサーマルを問う住民投票を実現する会」が発足。プルサーマル計画の是非を住民投票で決めるための条例を制定せよ、というものです。10月22日には、この「会」が高浜町の今井町長に住民投票条例制定請求代表者証明書の交付申請を求めた。そこから2ヶ月程度の短期間で「会」は条例を制定せよという署名運動をやって、12月6日に2170人の署名簿を高浜町選管に提出。

 翌平成12年1月5日、今井町長に条例制定を本請求しました。高浜町議会は「プルサーマル計画の是非を問う条例案」を否決しました。これがプルサーマル計画をめぐる数年間の動きです。

【福井県のカラ出張の問題】

 次に福井県のカラ出張の問題です。例えば、福井県から一人東京へ出張したとしますと、二人出張したことにして二人分の旅費が出るわけですね。3人出張したことになっているけど、実際は一人しか行っていないとか。それがずっとやられ続けて、あろうことか福井県の監査委員がやっていたというのです。税金泥棒ですね。当時の福井新聞の記事はこう書いています・・・「(オンブズマン全国連は)自治体を監視する監査委員らがカラ出張すということは、その自治体は全庁的にカラ出張しているということだ」。

【カラ出張の弁済額は6億1937万円にも】

 この間の事情について私の書いた文章を読ませていただきます。

 「平成7年(1995年)から平成8年(1996年)にかけ、全国的にカラ出張の摘発や返還請求等の嵐が吹き荒れた。危機感を抱いた福井県は平成8年4月嶺南振興局を小浜土木事務所に新設して、やり手幹部の牧野百男を局長として若狭へ派遣、カラ出張旅費の返還等に備えた。原発立地若狭における牧野局長等の大型土木工事を舞台とした裏金作りの典型は、高浜町脇坂半島の掘削工事「ふれあいの浜辺整備事業」(国庫補助金約55%)であった。福井県は、自ら「不適正」としたカラ出張旅費「6億1937万円の返還」に、福井銀行からの借入金を当て、福井銀行への返済は県管理職者の自主返済金(旅費返還会)により弁済すると公表したが、実際には無残な自然破壊の補助事業、「ふれあいの浜辺整備事業」の工事費水増しと架空工事によって銀行への返済金を捻出したのである。しかも、福井銀行への返済に充てられた当該「ふれあいの浜辺整備事業」の原資は、福井銀行からの起債(20年償還)で賄うという内容であった。」ややこしい文章ですが、県の職員がカラ出張をして、その穴埋め資金を公金から支出したということです。例えば小浜土木事務所の忘年会の費用とか、所長の異動に伴う歓送迎会の費用とか、新規採用者の歓迎会とかで飲み食いをしたのが6億円に上りますよということです。税金がこれだけ飲み食いに使われたわけです。残りの十数億円は、パソコンなど備品に使用されているので、返還は不要という県の主張でした。続けて、私の書いた文章を読みます。

【県がカラ出張弁済の裏金作りへ】

 この驚くべき犯罪の背景には次のような事情がある。

1 高速増殖炉もんじゅのナトリウム漏れ事故の発生で破綻した国の核燃料サイクルを「プルサーマル計画」に転換し、その受入れを福井県と高浜町に同意させたい国の思惑(原発政策実現のためには立地自治体の犯罪にも協力と援助を惜しまない)。

2 県民の厳しい批判にさらされる福井県のカラ出張旅費21億円、市民オンブズマン福井の容赦ない追及(返還を求める監査請求や行政訴訟など)への対応に苦慮する福井県(「プルサーマル計画」への同意を条件に国の補助金を詐取する)。

3 巨額の土木事業によるカラ工事代金の取得とプルサーマル計画受入れに伴って約束された24億円の核燃料サイクル交付金を当て込んだ森山栄治高浜町元助役の暗躍。

 この事件は見過ごせないということで私と仲間3人が福井地裁に裁判を起こしました。これは棄却されましたけれども。この事件の背景というか、私が一番言いたいのは、「福井県は森山元助役の手を借りて、高浜町企画の脇坂公園化計画を強引に横取りして、カラ出張旅費返済の裏金作りに乗り出した」ということです。

【森山元助役の手を借りて事業費は拡大】

 ここに航空写真があります(次の航空写真参照)。

 若狭富士と呼ばれる青葉山山麓の海岸に海に突き出た小さな半島があるのですが、この半島の先端部分を削って、海水浴客などのために駐車場を作ろうという計画を高浜町が立てて工事を開始しようとしたのですが、福井県の西川元副知事がそこに介入して、森山元助役の手を借りて、この高浜町の企画を横取りしたという事実があります。これは高浜町の平成9年度の事業計画で、事業費11億3400万円となっています。若狭湾国定公園の半島を削り取るわけですから、これは自然破壊ですね。高浜町はこのときに福井県に対して、平成9年9月8日に若狭湾国定公園の特別地域内における土地の形状変更の許可を受けるための申請をして、福井県が10月2日に許可しています。これは自然公園法の規定によって、土地の形状を変更したり、建物を建てたりする場合にはこういう許可が必要になるのですね。初めは高浜町が許可を申請して、福井県がこれが許可した。そして高浜町で工事が始まろうとした頃です。資料を読みます。

 「平成9年の秋ごろ、高浜町の城址公園整備事業の地元説明会で、森山企画課長の説明をさえぎった森山元助役が、「この私に何の相談もなくこんなちゃちな計画をたておって、お前は一体何様のつもりじゃ」と、娘婿の課長を激しく面罵した事件があり、以後、この事業への批判はタブーになった・・・」

 この半島の南に森山元助役の出身集落があります。この集落の集会で、森山元助役の娘婿でもある役場の企画課長が説明をしたんですね。この11億3400万円の事業について。この出来事が、娘婿と示し合わせてやったことなのかどうかは分からない。ただ集会の最中に激しく娘婿を罵倒したというのは事実です。そしてこのちゃちな計画と言われた事業計画は、1年後の平成10年、福井県によって今度は平成10年から12年にかけての工事として、事業費9億円で自治大臣宛てに提出されます。福井県が事業主体の計画としてです。これは国もかんでいるのです。自治大臣官房室長宛てということで、これは国の事業の規定に従って提出されている。「平成10年度地域総合整備事業債(ふるさとづくり事業分)を要望する事業に係る事業実施計画書等の提出について」という件名になっている。件名に続いて「平成10年3月23日付自治画第46号で通知のありました標記の件について、別添のとおり提出いたします。」とある。これを平成10年4月に事業申請をした。そしてそれが、平成11年度では事業費19億7000万円の事業計画になっている。さらに1年後の平成12年7月21日付の当時の栗田幸雄知事から自治大臣官房企画室長宛てに出された事業計画では事業費が28億5000万円に跳ね上がっている。事業規模が全く同じではないが、三段跳びで跳ね上がっている。

 この28億円の事業規模については平成10年度から14年度までの事業に相当するものですが、その前の事業費19億7000万円も事業年度は平成10年から14年度となっている。同じ事業年度で事業費が約10億円増えている。そしてこの平成13年6月に県から国に出された事業計画の申請では、事業費が45億円になっている。

【4件の架空工事で4億7484万円の詐欺、国と県が共謀】

 次の図面は、私たちが西川知事相手に福井地裁で裁判を起こしたときに、被告の知事から出された工程図です。色は私が分かりやすいように塗ったものです。

 この断面図の真下に三松第二トンネルというのがあります。これは国道27号線から高浜原発へ行く唯一のルートです。このルート上にあるトンネルの上にある山を削り取ったわけです。この削り取った山の部分の一番上の部分が平成14年に工事をした部分です。これは「ふれあいの浜辺整備事業その2」と呼ばれるものです。これは1億8590万円で吉田開発が請け負っている。平成14年のこの工事は、削った土砂を運び出すものですが、この工事が終わらないのに「ふれあいの浜辺整備事業その3」というその下の地層の工事が始まっているのです。この図面から分かるのですが、この無着色の「H14の2」は平成14年8月8日に請負契約されていて、先ほどの吉田開発が1億8590万円で受注したものです。この工事の終了は平成15年12月17日。その下の地層の工事である「ふれあいの浜辺整備事業その3」については、平成14年11月6日に1億8752万円で契約され、終わったのが平成15年12月17日です。図面で明らかなように、上の工事と下の工事が同時に竣工するということは、実際問題としてはあり得ない。カラ工事です。ここまでは県側は詳細な資料を出さなかったので、私たちは問題にしませんでしたが、着色の部分については裁判にしました。

 これは「ふれあいの浜辺整備事業15-1工事・15-2工事・15-3工事・15-4工事」という工事で、工事の終了はいずれも平成16年3月25日です。これについては断面図でみると、15-1は緑色の部分です。その下の薄い青色の細い部分が15-2、その下のピンク色が15-3、さらにその下の濃い青色が15-4です。この4つの工事の工事代金は4億7484万円となります。私がかつて書いた文章を読ませていただきます。

 「平成14年度工事(特別枠)とした左記15-1~15-4の工事は全件が平成16年3月25日竣工としているが、地山を上部から掘削、搬出して平地を造成する工事で、上部の工事と下部の工事が同時に完成するということはあり得ない。なぜなら、工事完成検査は請負契約された工事内容が設計どうりに施行されているか、その出来形を見るのであり、本件のように地山を上部から下部へ掘り下げる工事においては、前の掘削、搬出工事の完成検査前に後の掘削、搬出工事が着工されることはあり得ない。残土処理を残したまま工事完成検査が行われることもあり得ない。15-1~15-4の工事のいずれも前の工事が竣工してないので、上部に大量の土砂が残ったままだから着工は不可能であり施行されていない。この架空工事に支払われた「代金」は4億7484万円であるが、その50~55%は償還時に補填される国の交付金であり、他は県民の税金である。国と県が共謀した詐欺である。」

【さらに2件、1億7386万円の架空工事】

 そして次に「ふれあいの浜辺整備事業16-1」、「ふれあいの浜辺整備事業16-2」についてです(次図参照)。

 内容はこれまでとはちょっと異なるのですが、「詐欺」であることは間違いない。この「①着工不可能の工事請負契約」と「②施行余地のない工区変更契約」の図の青く塗ったところです。青く塗った部分の土砂を搬出するのが16-1の工事と16-2の工事です。こんなことがよくできるなあという開いた口が塞がらないというか、信じられないような工事です。この図面は福井県が出してきた図面なんです。16-1と16-2の工事に青い色を塗ったのは私です。先に申し上げたように、これは国道27号線から高浜原子力発電所に至る県道の途中にトンネルがあって、その上に脇坂半島の山があるわけです。トンネルの上に大量の土砂が重なって山になっているわけですが、そこを削り取っていくと、それまで加えられていたトンネルに対する圧力が解放されていって、トンネルの内側が割れが生じて、そこから水が漏れ始める。つまりトンネル上部の土砂を搬出するたびに、トンネル内部への水漏れ状態を調査して、大丈夫かどうかを検討しながら搬出を進めなければならない。でもどれだけ水が漏れてもこの掘削工事は止められない。①の図面の左上にはH16.7.22という記載がありますが、平成16年7月22日現在で標高35mまで掘削しましたということです。ところがこの「ふれあいの浜辺整備事業16-1」(青色の層)が契約されたのはいつかというと、平成16年7月14日なんです。1週間ほど前なんですね。ところが7月14日に請負契約されたこの工区の標高は25.0m~19.0mなんです。これは裁判所に提出された図面です。つまり7月14日からこの区間の掘削工事を始めようとした時点で、その上にまだ10mの厚さの地層があるということです。小浜土木事務所はこれについて全く答弁できなかった。この16-1の契約をしたときに、この標高25m~19mまでの工区の土砂の掘削をどうするつもりだったんですか。トンネルみたいに掘り出すのですか。そんなことはできないでしょう。実際には契約時には工事に着工できない。

 そしてこの②の図面では、平成16年11月11日現在で、標高25.0mまで掘削が進んだ。ちょうどこの日、11月11日に設計変更が行われた。工区を変更するということが行われた。工区を29.3m~25.8mまでの工区に変更するというもの。既に25.0mまで掘削は進んでいるのだから、もう土砂はないんですよ。にもかかわらず、工事を上に向けて(何もない空間に向けて)工事を進めるように工区を変更する。架空工事です。これで1億7386万円。さっきの4つのと併せると6億4870万円の架空工事代金ということになる。

【架空工事の代金は県の起債借入で】

 この代金はどこから出ているのかというと、平成15年3月31日に栗田幸雄知事が「ふれあいの浜辺整備事業」の起債発行許可申請を片山虎之介総務大臣宛てに出している。起債というのは福井銀行からの借金ですね。どうして福井県が起債発行に際して国の承認を得なければいけないかというと、起債を返すときに50%~55%の交付金が国から出るんです。だから国が了承しないと起債発行はできない。その内容は福井銀行からの借入額9億9000万円で、年利7%以内、償還期間は20年。その内訳は地域総合整備事業債が8億2500万円で、交付税率は55%。財源対策債が1億6500万円で、交付税率は50%。後は20年かけて福井県民が返していく。

 この9億9000万円の起債が承認されて、平成15年5月31日に西川知事が福井銀行から2億9700万円の起債借入を行った。おそらくこれが森山元助役が設立したところのオーイング社に渡っている。それから平成16年3月31日、西川知事が福井銀行から6億9300万円の起債借入をしている。

【4つの架空工事と2つの架空工事で起債借入を返済】

 このようにして4つの架空工事と2つの架空工事で福井銀行への返済はすべて済む。この返済は本来ならば県の管理職者が5年ほどかけて自分の管理職手当の12.5%を毎月返還会に自主的に返納することになっていたはずでした。私は平成14年に県に電話をした。福井銀行から金を借りて、カラ出張の金を福井県に戻したが、福井銀行への借金は誰が払うのか。これは福井県の当時の西川副知事が会長をしていた旅費返還会が返すことになっていた。私は文書公開請求をして、旅費返還会の会計を見せてくれるよう求めた。結果は非公開。理由は、旅費返還会にそういう帳簿があったとしてもこれは任意の団体であり、公的な団体ではないから、公開できないというものでした。私は福井新聞の報道部の長谷川という記者に、平成14年の何月かに電話でこの件の調査を頼んだけど、分からないという。そこで福井県の学校の管理職やら身近な人にも尋ねてみた。誰一人として返還している者はいない。この返還会というは公的なものではないんですね。公的なものなら、給料を支払うときに天引きする。でもそんなことはできない。では自主的に返還しているかといえば誰もそんなことはしていない。

【まだある、裏金ねん出の事例】

 まだまだ裏金ねん出の事例があるのです。山を削って土砂を搬出するということは、捨てる場所が必要になる。この時に森山元助役と当時の西川副知事は、捨てる場所の公有水面埋立と今まで説明させてもらった山を削る工事の時期を故意に3年ずらしたんですね。これは町民からの投書で明らかになった。そうすると仮置き場が必要となる。土砂を一時的に積んでおく場所を用意して、3年後に埋立の許可が出ると仮置き場から埋め立て地へ運ぶ。土砂の運搬作業が2回行われた。これをやったのが熊谷組・平川建設共同企業体であり、その2度手間の工事の費用は10億円でした。時間がないので、この件についてはここまでとします。

*「ふれあいの浜辺整備事業」に関連する記事です。

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【本Webサイトへの転載にあたって】
罫線の大タイトル 
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および、カッコの小タイトル 
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は、『かたくり通信』からの転載にあたって、
著者の了承の下に、新たに付加しました。
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高浜町「ふれあいの浜辺事業」脇坂公園 の件は、以下も参照ください。

関西電力 闇歴史◆051◆

~脇坂公園の造成でカラ工事の疑惑~

~「ちゃちな計画」が公金詐取の大謀略に(1997年~)

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