◆原告第16準備書面
第6 新規制基準においても変更のないこと

被告関電準備書面(3)(地震)に対する反論(2) 目次

第6 新規制基準においても変更のないこと

 1 新規制基準においても地震動想定手法は従前のままであること

では,3・11福島第一原発事故を受けて,原発の地震動想定手法は変更されたか。
結論から言えば,否であり,何ら見直しはされていない。
いわゆる新規制基準のうち,基準地震動の想定や耐震設計に関する「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド(案)」(甲239)を見ると,地震動想定手法は福島第一原発事故以前と同一であって,従前の考え方をほぼ踏襲しており,しかも,一部ではむしろ後退しているところも存在する。

同ガイドでは,多くの点で「適切に」評価することを確認する等とされているにすぎない。

例えば,同ガイドの「3.3 地震動評価」のみを見ても,

「適切に評価されていることを確認する」,
「適切に設定され,地震動評価がされていることを確認する」,
「適切に選定されていることを確認する」,
「適切に考慮されていることを確認する」,
「適切な手法を用いて震源パラメータが設定され,地震動評価が行われていることを確認する」

など,「適切に」といった文言が実に22ヶ所に登場する。また,同ガイドの「4.震源を特定せず策定する地震動」以下においても同様であり,多数の「適切に」といった用語が用いられている。

このように極めて多数の項目において「適切に」行う等とされているが,そこでは,何が適切かは全く記載されていない。断層や地震動の評価において,「適切に評価する,設定する」のは当然のことであり,ことさら審査の基準として「適切に行うように」等と規定しても,実際は意味がない。それが審査の基準となるためには,何が適切かをどう判断するかが記載されていることが必要であるのに,具体的な審査の基準の記載がない「審査ガイド」は全く基準の名に値せず,結局,規制委員会がどのような審査をしようとしているかは,この「審査ガイド」ではほとんど分からないのである。

 2 従前と同じ手法で地震動想定を続ければ,基準地震動を上回る地震動が原発を襲うこと

その結果,原子力事業者による地震動想定においても,現在も相変わらず,平均像を基本として地震動想定をしようとし,それに若干の「不確かさの考慮」をして地震動を算出しており,従来と何ら変わりがないものとなっている。

本来,地震動想定に失敗した原子力安全委員会,原子力安全・保安院や原子力事業者は,なぜ想定に失敗したかの原因を追求し,新たな想定手法を採用して,改めて地震動想定を行うべきなのに,単に結果としての地震動の数値を変えて対応しただけだった。失敗に学ぼうとする姿勢が,原子力安全委員会にも,原子力安全・保安院にも,原子力事業者にも全く欠けていたのである。そして,このことは,原子力規制委員会が設けられた現在においても同様と言わざるをえない。

このように,失敗した原因を追求せずに,失敗したのと同じ手法で地震動想定をし続けていれば,いずれは,大きくSs(新耐震指針における基準地震動)を上回る地震動が原発を襲うこととなる。

 3 「過去最大(既往最大)」を超えることも十分にあり得ること

基準地震動(Ss)の策定は,耐震設計の要である。その要である基準地震動(Ss)をどこまで上回る地震動が原発を襲うか分からないのでは,そもそも耐震設計のしようがない。

原発の機器・配管のどこが地震に耐えられないか,地震に耐えられない機器・配管が破壊された時にどのような結果となるか等という議論は,全て,襲来する地震動の大きさが分かってからでなければ,なしようがない。

とりわけ,平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震により,津波があれほど想定を大きく上回ってしまった原因は,自然現象が過去最大(既往最大)を容易に超えうることを無視したことにある。ここで,「過去最大(既往最大)」といっても,それは,たかだか数100年程度の知見でしかない。津波堆積物を考えても,せいぜい1000年~2000年程度の知見でしかない。ましてや,正確なデータに限ればここ20年の話でしかない。要するに,そもそも,「過去最大(既往最大)」の知見を得ること自体,容易なことではないが,さらに,その「過去最大(既往最大)」を超えることも十分にあり得る,ということである。

 4 失敗した従前の手法のままでは,原発の安全性は到底確保されないこと

以上に述べたとおり,2011年東北地方太平洋沖地震及び福島第一原発事故を踏まえれば,少なくとも,基準地震動(Ss)の策定は,少なくとも「既往最大」を基礎とした上で,さらにその「既往最大」を超える地震・地震動・津波が発生する可能性のあることを前提にして想定を行うことが求められているというべきである。

しかしながら,規制機関たる国も,原子力事業者も,失敗した従前の手法を繰り返しているだけである。

国も,原子力事業者も,何らの反省もなく,失敗した従前の手法を漫然と繰り返し,基準地震動を策定している。このような,過去の失敗に学ぼうとしない手法のままでは,原発の安全性は,到底,確保されようがないのである。