カテゴリー別アーカイブ: 裁判資料

◆被告 国の準備書面、答弁書、書証(乙号証)など(2019/1)

準備書面

答弁書

書証

  • 書証につきましては,実物を見る前に,まず「証拠説明書」をご覧いただきますと,概略がわかるようになっています。とりあえず,そちらから見ていただくと良いと思います。

◆被告 関西電力の準備書面、答弁書、書証(丙号証)など(~2019/1)

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◆第22回口頭弁論 原告提出の書証

甲第480号証(第59準備書面関係)
甲第481~482号証(第60準備書面関係)
甲第483~490号証(第61準備書面関係)



★証拠説明書 甲第480号証(第59準備書面関係)
(2019年1月25日)

甲第480号証
口頭弁論要旨(原告 西郷南海子)

★証拠説明書 甲第481~482号証(第60準備書面関係)
(2018年1月25日)

甲第481号証
意見書「Fo-B~Fo-A~熊川断層地震M7.8(2018年大阪府北部地震M6.1のスケールアップ)による大飯原発サイトの強震動」(赤松純平)

甲第482号証
「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈」(原子力規制委員会)

★証拠説明書 甲第483~490号証(第61準備書面関係)
(2018年8月31日)

甲第483号証
原子力発電所の火山影響評価ガイド(原子力規制委員会)

甲第484号証
大山火山噴火履歴の再検甲第485号証討(山元孝広)

・甲第485号証
関西電力による大山火山の火山灰分布に関する調査結果について(原子力規制庁)

甲第486号証
火山活動可能性評価に係る安全研究を踏まえた規制対応について(案)(原子力規制庁)

甲第487号証
降下火砕物に対する施設の裕度について(関西電力)

甲第488号証
(補足)既許認可での降灰想定層厚に対する影響評価について(同上)

甲第489号証
大山火山の大山生竹テフラの噴出規模見直しに伴う規制上の対応について(原子力規制庁)

甲第490号証
平成30年度原子力規制委員会第47回会議議事録(原子力規制委員会)

◆第22回口頭弁論 意見陳述

口頭弁論要旨

西郷南海子

わたしは京都市左京区で三人の子どもを育てている西郷南海子と申します。わたしが住んでいる地域は、大飯原発から56.8kmに位置します。今日は、仕事をしながら子育てをしている立場から、大飯原発の運転差し止めを求める意見陳述をします。

2011年の東日本大震災まで、わたしは原発とは日本のエネルギーの3割を供給している発電方法だとしか思っていませんでした。ところが東京電力福島第一原発の事故を目の当たりにして、自分の考えが取り返しのつかない過ちであることを思い知りました。放射能には色も匂いもなく、いったん空気中に放出されてしまえば拾い集めることもできません。核種にはいろいろあるとは言え、半減期まで何十年とかかるものも多いです。こうした目に見えない放射能をどう避けたらよいのか、2011年当時まだ乳幼児だった子どもたちを抱えて途方に暮れました。

あの事故から8年が経とうとしていますが、子どもたちを被ばくから守るためには、原発を止めるしかないという結論にわたしは至りました。昨年2018年は、地震や台風などたくさんの自然災害がありました。そして災害が起こるたびに、家族はいつも一緒にいられるわけではないということを実感しました。

わたしには三人の子どもがいますが、それぞれ保育園と小学校に通っており、活動範囲は異なっています。万が一の災害の時、どうやって子どもたち三人と再会できるのだろうかと不安です。たとえば大地震が起これば、停電するかもしれないし、停電してしまうと情報のやりとりがしづらくなります。そうした中で、もし大飯原発で事故が起こっていたとしたら、わたしたちはどうやってそのことを知ることができるでしょうか。被ばくを避けるための情報はどのようにして提供されるのでしょうか。福島第一原発の事故では、原発からおよそ47kmの地点までが避難の対象となりました。実際には、原発の東の海の側に全体の6割とも8割ともいわれる放射性物質が放出されているので、陸側の47kmの範囲と同水準の放射性物質の降下がより遠方の広範囲に広がったのではないでしょうか。我が家は大飯原発から56.8kmに位置しますが、私の住む地域には避難計画すらありません。56.8㎞は、風速20km/hの風(これは、自転車をこいだときに感じる程度の風です)の場合、3時間未満で到達する距離です。災害の混乱の中こんなに短い時間で、家族全員と再会し、さらに遠くの場所へと避難することができるとは考えられません。大災害の時は、道路や線路が寸断され、交通機関が麻痺してしまいます。災害の時に遠くに逃げるということが、もはや非現実的なのです。京都市の中心部までも60kmしかありません。そもそも、百万都市からすべての人が避難することなど、現実的に可能なのでしょうか。

被ばくを避けるためには安定ヨウ素剤が効果的だと言われています。京都市では、大飯原発50km圏内の住民にはヨウ素剤を配布するとしていますが、災害の大混乱の中で配布がうまくいくとは思えません。しかも我が家は56.8km地点にあるため配布の対象となっていません。そこでわたしはアメリカから個人的にヨウ素を取り寄せましたが、そもそもここまでして事故に備えなければならない発電方法というのが非合理的だと思います。なぜ原発で発電し続けなければならないのでしょうか。原発を擁護する理由はもはやどこにもありません。裁判所のみなさんには、原発事故の取り返しのつかなさを胸に刻んだ上での判断をお願いしたいです。

以上

◆原告第61準備書面
火山影響評価に関する新知見と原子力規制委員会及び関西電力の対応について

原告第61準備書面
火山影響評価に関する新知見と原子力規制委員会及び関西電力の対応について

2019年1月28日

原告提出の第61準備書面

【目 次】

第1 はじめに

第2 火山影響評価について
1 火山影響評価とは(甲483)
2 原子力規制委員会における「新知見」の認定と報告徴収命令の発出
3 「新知見」に基づくと大飯原子力発電所の安全裕度が小さいこと
4 小結

第3 火山影響評価を巡る原子力規制委員会と関西電力の背信性について

第4 結語



第1 はじめに

本書面は、原子力発電所の新基準適合性審査の一つである、「火山影響評価」に関して、①平成30年11月21日に原子力規制委員会において認定された「新知見」を根拠に大飯原子力発電所が火山に対して裕度が小さいことを主張するとともに、 この火山影響評価に関する②規制委員会及び関西電力の背信性について主張するものである。


第2 火山影響評価について

 1 火山影響評価とは(甲483

原子力規制委員会の定める「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」第6条は、外部からの衝撃による損傷の防止として、安全施設は、想定される自然現象(地震及び津波を除く。)が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならないとしており、敷地周辺の自然環境を基に想定される自然現象の一つとして、火山の影響がある。

原子力発電所の火山影響評価ガイドは、火山影響評価の妥当性を審査官が判断する際に参考とするものであり、原子力発電所の運用期間中に火山活動が想定され、それによる設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価できない場合には、原子力発電所の立地は不適となる。
具体的には、火山影響評価ガイドは、原子力発電所に

  1.  降下火砕物堆積荷重に対して、安全機能を有する構築物、系統及び機器の健全性が維持されること。
  2.  降下火砕物により、取水設備、原子炉補機冷却海水系統、格納容器ベント設備等の安全上重要な設備が閉塞等によりその機能を喪失しないこと。
  3.  外気取入口からの火山灰の侵入により、換気空調系統のフィルタの目詰まり、非常用ディーゼル発電機の損傷等による系統・機器の機能喪失がなく、加えて中央制御室における居住環境を維持すること。
  4.  必要に応じて、原子力発電所内の構築物、系統及び機器における降下火砕物の除去等の対応が取れること。
    (直接的影響)
    原子力発電所外での影響(長期間の外部電源喪失及び交通の途絶)を考慮し、燃料油等の備蓄又は外部からの支援等により、原子炉及び使用済み燃料プールの安全性を損なわないように対応が取れること。
    (間接的影響)

を求め、降下火砕物については「周辺調査から求められる単位面積あたりの質量と同等の火砕物が降下するものと」して影響評価を行うものとされている。

6.原子力発電所への火山事象の影響評価
原子力発電所の運用期間中において設計対応不可能な火山事象によって原子力発電所の安全性に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価された火山について、それが噴火した場合、原子力発電所の安全性に影響を与える可能性のある火山事象を表1に従い抽出し、その影響評価を行う。
ただし、降下火砕物に関しては、火山抽出の結果にかかわらず、原子力発電所の敷地及びその周辺調査から求められる単位面積あたりの質量と同等の火砕物が降下するものとする。なお、敷地及び敷地周辺で確認された降下火砕物で、噴出源が同定でき、その噴出源が将来噴火する可能性が否定できる場合は考慮対象から除外する。
また、降下火砕物は浸食等で厚さが低く見積もられるケースがあるので、文献等も参考にして、第四紀火山の噴火による降下火砕物の堆積量を評価すること。(甲483-12)

 2 原子力規制委員会における「新知見」の認定と報告徴収命令の発出

上記の通り、原子力発電所の新規制基準適合性審査では、火山影響評価として火山灰の層厚の評価を行っており、原子力発電所の火山影響評価ガイド(甲483)を参照し、地質調査や文献調査等から評価された火山灰の層厚を確認するとともに、敷地周辺において火山灰の堆積が確認されない場合は、数値シミュレーション等により火山灰の層厚を求めている。

従前関西電力は、既存の知見に従い、大飯原子力発電所の降灰の厚さを最大10センチメートルと想定していた。

他方、原子力規制庁は、実用発電用原子炉の火山事象に係る安全規制の高度化に向けて、平成27年度及び平成28年度に、大山火山起源の降下火砕堆積物の分布を再度評価したところ、後述の山元孝広論文(甲484-大山火山噴火履歴の再検討)を根拠に既往文献(新編火山灰アトラス)についてデータの不確実性が含まれるものと評価し平成29年6月14日、関西電力に対し、大山生竹(DNP)[1]の火山灰分布について情報収集を求めた。山元孝広論文は、大山生竹の火山灰分布について、京都市越畑付近にて約30センチメートルの降灰層厚を報告しているものであり、関西電力の評価(10センチメートル)を大きく上回るものである。

平成30年3月28日、第75回原子力規制委員会において、関西電力の「新知見」は採用できないとの調査結果に対し、原子力規制庁は「越畑地点におけるDNPの最大層厚は山元(2017)において引用している文献値(30cm)よりやや小さい26cmとみなすことが可能である。」(甲485)とし、平成30年11月21日の原子力規制委員会においては、京都市越畑地点の大山生竹テフラ(DNP)の降灰層厚は25cm程度であること、またDNPの噴出規模は既往の研究で考えられてきた規模を上回る10km3以上と考えられることが新知見(以下「本新知見」という。)として認定された。

平成30年12月12日、第47回原子力規制委員会において、本新知見を受けて、原子力規制委員会は、「本新知見は、新規制基準に基づく既許可の原子力発電所(高浜発電所、大飯発電所及び美浜発電所。以下「本件発電所」という。)における敷地の降下火砕物の最大層厚に影響を与え、その結果、原子炉設置変更許可の評価に用いた前提条件に有意な変更が生じる可能性があると考えられる。」として、関西電力に対し、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第67条第1項の規定に基づき、関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)に報告徴収命令を発した。

甲486-8ページ】《図省略》

甲484-2】《図省略》

[1] 生竹降下堆積物:黒雲母含有斜方輝石普通角閃石デイサイトの約8万年前に噴出したプリニー式降下火砕物で,大山から約10km東南東で2m以上の層厚を持ち,京都府越畑盆地(大山から約190km東南東)でも層厚30cmの降下火砕物の分布が確認されている(甲484参照)。

 3 「新知見」に基づくと大飯原子力発電所の安全裕度が小さいこと

関西電力は、大飯原発3,4号機は、10cmの降灰に対し前提に十分な裕度がある、また30cmの降灰に対しても対処可能である(荷重に対して健全性を維持できる)と述べる(甲487[2]甲488[3])。
ここで、関西電力は、その根拠として

  1. 積雪荷重(100センチメートル)と同時に考慮
  2. 建設時に屋根に見込んでいた設計時長期荷重(PA)の1.5倍を評価基準として、積雪荷重(100センチメートル)と降下火砕物(10センチメートル)による荷重を加算した荷重(PB)が、建設時に屋根面に考慮していた設計時長期荷重に対する比(PC)が1.5倍以内であることで健全性を確認
    ・裕度=1+(1.5PA-PB)/1500
    ・1500:降下火砕物(10cm)による単位面積あたりの荷重
    ・1.5:鉄筋コンクリートスラブに用いる鉄筋の、長期と短期の許容値の比
    ・PAは「設備図書に示す自重、積載荷重及び設計時長期積雪荷重の和」

とモデルを提示している。すなわち、100センチメートルの積雪+30センチメートルを仮定しても、モデル上は裕度があるという主張である。

甲488-3】《表省略》

しかしながら、仮にこのモデルが正しいとしても、最も裕度の小さい「原子炉周辺建屋」においては、わずか31センチメートルの降灰で、裕度がなくなる(裕度=1となる)ことになる[4]甲487)。

すなわち、大山生竹テフラ(DNP)の降灰層厚を前提とすると原子炉周辺建屋の裕度は非常に小さいのである。

ディーゼル発電機のフィルターの目詰まりについては,設計層厚を26センチメートルとした場合,これを10センチメートルとした場合と比較して,気中降下火砕物の濃度が大きくなり,現状の限界濃度を上回ることは確実である。したがってフィルターが目詰まりを起こしてディーゼル発電機による供給ができなくなるという危険がある。

また、山元孝広論文には、大山生竹テフラ(DNP)のみでなく、大山火山起源の複数の降下火砕堆積物の分布図が示されているところ、山元孝広氏は倉吉降下堆積物[5](DKP)を、大飯原子力発電所付近で50センチメートルと推定している。同堆積物は約6万年前の噴火によるものとされているが、火山影響評価ガイドは第四紀(258万年前から現在までの期間)に活動した火山を対象とするとしており、また、平成29年6月6日付原子力規制部安全規制管理官による「火山活動の可能性評価のための調査研究」(甲486別添)においても「大山倉吉噴火(以下、DKP噴火)は大山火山の約10~2.5万年前の活動の中でも特異的な火山活動ではないと考えることも可能である」として評価対象としている。したがって、倉吉降下堆積物(DKP)を評価した場合には、もはや、安全裕度は1を下回ることが予想されるのである。

[2] http://www.nsr.go.jp/data/000247984.pdf
[3] http://www.nsr.go.jp/data/000247985.pdf
[4] ∵降下火砕物Xセンチメートルによる単位面積あたりの荷重=150X(N/m2
  PB=PA+150X
  PA=9550
  裕度1となるXは
  1=1+(1.5PA-PB)/1500
  →PA+150X=1.5PA
  X=31.833333…
[5] 約6万年前の国内で最大規模のプリニー式噴火(甲484

 4 小結

以上より、すでに判明した事情を元にしても、大飯原発3,4号機は、火山に対する十分な安全性を有していないのであり、具体的危険性が顕在化している。


第3 火山影響評価を巡る原子力規制委員会と関西電力の背信性について

  1 関西電力の背信性

原子力規制委員会は、上述の通り、平成30年3月28日に本新知見を認めたが、関西電力は、その直前の同年3月1日の段階でも「山元(2017)に示される等層厚線図については、元になった大屋地点、土師地点、越畑地点の層厚が評価できなかったこと、大山池地点は等層厚線図と整合しているものの瀞川山地点は等層厚線図と整合しなかったことから、現時点では新たな知見として採用できない。」と強弁し、本新知見を否定していた。

関西電力が、科学的な知見から目を背け、原発の安全性確保を軽視する姿勢を取っていることはこの一事からも明らかである。そして、これは、原告ら大飯原発の周辺住民に対する背信行為に他ならない。

  2 規制委員会の背信性

また、原子力規制委員会も、問題点が本新知見によりあらたな問題点が指摘されているにもかかわらず、「噴火が差し迫った状況にあるものではないことを踏まえ、原子炉の停止は求めない」という判断をした(甲489甲490)。

しかし、火山の噴火がいつ発生するのかについて正確に予測することは本来的に不可能である。一方、原発の過酷事故は、一度発生すれば、回復不可能かつ重大な結果をもたらす。本新知見があり、関西電力の火山対策の弱点が露呈しながら、対策が未定の状態での大飯原発の運転を認める原子力規制委員会の姿勢は、安全性よりも関西電力の営利活動を優先するものであり、国民や、原告ら大飯原発の周辺住民に対して極めて背信的なものといわざるを得ない。これは、事前に巨大津波の襲来可能性を指摘されながら、原発を停止しなかったために過酷事故に至った福島第一原発の例からも明らかである。


第4 原子力規制委員会が依拠する科学的知見自体のぜい弱性

本新知見に典型的に現れているが、新たな科学的知見が発見される度に、原子力規制委員会が依拠すべき知見も更新されざるを得ない。そして、本新知見もそうであるように、原発の安全性に関わる科学的知見のほとんどは、原発の安全性を確保するために発見されるわけではなく、各分野の研究者の科学的関心に基づいて発見されるものである。

原発の安全性に関わる新知見は今後も次々に発見されることが予測され、これは、現時点では、原発の安全性に関わる未発見の知見が多数あることを意味する。そうすると、新規制基準やそれに基づく審査というものが原理的に原発の客観的な安全性を保証できないことにならざるを得ない。

新規制基準や原子力木瀬委員会の審査は、原発の安全性を保証できるものでないことを前提に、審理がなされなければならない。

以上

◆原告第60準備書面
―大阪府北部地震を適用すると1280ガルが予測される―

原告第60準備書面
―大阪府北部地震を適用すると1280ガルが予測される―

2019年1月31日

原告提出の第60準備書面

目 次

1 大阪北部地震観測結果のFO-B~FO-A~熊川断層への適用
2 大阪府北部地震の観測
3 大阪府北部地震の震源破壊過程
4 大阪府北部地震の震源破壊過程を大飯に適用
5 スケールアップ
6 関電地盤モデルと3号炉モデル
7 関電地盤モデルが示す基準地震動の「平均像」
8 3号炉地盤モデルは1280ガルを示す


本準備書面は、大阪府北部地震(2018.6.18)の観測記録を基にすると、大飯原発における地震動は1280ガルに上ることが予測され、基準地震動856ガルは過小評価であることを批判するものである(赤松意見書「FO-B~FO-A~熊川断層M7.8(2018年大阪府北部地震M6.1スケールアップ)による大飯原発サイトの強震動」、甲481)。

1 大阪北部地震観測結果のFO-B~FO-A~熊川断層への適用

 ア 基準地震動の策定方法

原子力規制委員会は、基準地震動の策定方法について、「①敷地ごとに震源を特定して策定する地震動と②震源を特定せずに策定する地震動について、それぞれ応答スペクトル[1]を相補的に考慮することによって、敷地で発生する可能性のある地震動全体を考慮した地震動を策定すること、さらに、震源が敷地に近く破壊過程が地震動評価に大きく影響する地震については、①において断層モデルを用いた手法を重視すること、そのうえで基準地震動として①②それぞれについて設計用の応答スペクトルと地震波時刻歴とを、不確かさを考慮して策定すること」と定めている(丙27「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」平成25年6月)。

また、地盤の震動特性に関わる地盤構造について、「敷地及び敷地周辺における地層の傾斜、断層及び褶曲構造等の地質構造を評価するとともに、地震基盤の位置及び形状、岩相・岩質の不均一性並びに地震波速度構造等の地下構造及び地盤の減衰特性を評価すること。なお、評価の過程において、地下構造が成層かつ均質と認められる場合を除き、三次元的な地下構造により検討すること」と定めている(甲482「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈」、平成25年6月19日)。

[1] 応答スペクトル 地震動が建物等をどれだけ揺らすかを示すもの。建物等毎に固有周期が決っている(建物が一揺れするのに要する時間)。ある周期の地震波は、その周期を固有周期とする建物を大きく揺らす。周期毎にその周期を固有周期とする建物を揺らす程度を、変位(cm)、速度(cm/s)、加速度(cm2/s)で表わす。

 イ 断層モデル

「震源を特定して策定する地震動」評価は、応答スペクトルに基づいて地震動評価が行なわれ、地震の規模と震源から敷地までの距離との関係から経験的に地震動を求める手法(耐専式)が用いられている。ただし、震源距離が極めて近い場合には、耐専式を用いることが適当でないため、断層面を細分化して(小断層)、小断層から放出される地震波形を合成する手法(断層モデル)を用いて地震動評価を行なう(丙13、地震動予測手法「レシピ」)。被告関電は、大飯原発に近接するFO-B~FO-A~熊川断層の断層破壊モデルによって地震動評価を行っている。

「震源を特定せず策定する地震動」評価は、地震の規模(マグニチュード)や震源距離を定めて地震動を計算するのではなく、過去の内陸地殻内地震について得られた震源近傍の地震動観測記録に基づいて応答スペクトルを設定して策定するものである。(以上、被告関電準備書面(3)

 ウ 大阪北部地震観測結果適用の意義

上記のとおり、「震源を特定して策定する地震動」は、「レシピ」に依拠した平均的な地震像としての断層破壊モデルによって評価されている。これに対して、赤松意見書では、大阪府北部地震の観測データの逆解析(インバージョン解析)によって明らかにされた具体的な断層破壊過程を、FO-B~FO-A~熊川断層に適用して地震動を評価したものである。断層破壊過程に実地震記録を用いており、実際にあった断層破壊過程が用いられているから、地震動評価の信頼性は格段に高い。

2 大阪府北部地震の観測

大阪府北部地震は、防災科学研究所のKIK-netの大阪観測点(OSKH05)で観測されている。同観測点の地震計は、地中深くの(標高-981m)堅硬な(Vp=5660m/s、Vs=3050m/s)[2]岩盤内に設置されている。

[2] Vp、Vs VpはP波速度、VsはS波速度である。P波は地震波の進行方向と同じ方向の震動(縦波)、S波は地震波の進行方向と垂直の震動(横波)である。地震波速度は、地盤が固いと速く、軟らかいと遅くなる。

3 大阪府北部地震の震源破壊過程

大阪府北部地震は、周辺の強震観測網で観測された記録が逆解析(インバージョン解析)され、実際に起こった断層破壊過程が詳しく解析されて明らかにされている(断層の深さ、走向、傾斜、破壊開始点の位置、破壊進展方向、破壊伝播速度、断層のすべり量、断層面積等)。

4 大阪府北部地震の震源破壊過程を大飯に適用

大飯原発で基準地震動を策定したFO-B~FO-A~熊川断層の断層モデルに、大阪北部地震観測データの逆解析による震源破壊過程を適用して、FO-B~FO-A~熊川断層で生じる地震波、地震動を予測することができる。

5 スケールアップ

地震動の予測にあたり、大阪府北部地震のマグニチュード(M)は6.1であるのに対して、FO-B~FO-A~熊川断層で起きるマグニチュードは7.8を想定しているから、大阪府北部地震をM7.8にスケールアップしなければならない[3]
M7.8のFO-B~FO-A~熊川断層の断層面積は、M6.1の大阪北部地震の約17倍であるから、FO-B~FO-A~熊川断層を、大阪府北部地震の断層(54km2)が17個集まったものと考え、震源から破壊が広がって17個の小断層が破壊し、それぞれの小断層がM6.1の地震波を生じさせ、それらが合成されると考える。

下記グラフ《図省略》は、17個の小断層が、順に破壊して地震波を生じさせ、それらが全体として合成地震波を生じさせたものである。

地震動は883ガル[4]にのぼり、基準地震動856ガルを超えている。

[3] ω2則による(経験的グリーン関数法による波形合成の方法、横井・入倉、1991)。
[4] ガル 地震動は加速度で表わし、その単位がガル(cm/s2)である。

6 関電地盤モデルと3号炉モデル

 ア 関電地盤モデル

上記地震波グラフは、スケールアップした大阪府北部地震の断層破壊過程をFO-B~FO-A~熊川断層に適用した結果の予測される地震波であるが、地盤については、関電地盤モデルを用いている。

関電地盤モデルは、下記③のとおり《図省略》、原子炉建屋は堅硬な岩盤に設置されていて(Vp=4.6km/s,Vs=2.2km/s)増幅しにくい上[5]、当該岩盤の減衰係数[6]は大きく設定されていて(h=3%)、地震波が大きく減衰するとされている。

[5] 増幅特性 地震波は、固い地盤では増幅しにくく、軟らかい地盤では増幅する。
[6] 減衰係数 地震波は、固い地盤での減衰は小さく、軟らかい地盤での減衰は大きい。減衰係数は、hで表わし、hは地震波が1サイクルで何%減衰するかを表わしている。

以上から、地震波が、堅硬な岩盤から軟らかい地盤に差しかかると、一旦、増幅して振幅が大きくなる。しかしその後、減衰してゆく。軟らかい地盤が一定の厚みを持っている場合には、地表近くに到達する頃には大きく減衰していることとなる。

 イ 関電地盤モデルはごまかし

ところで、関電地盤モデルは微動アレイ観測の観測結果の逆解析によるインバージョンモデルを基に設定されている。

観測結果の逆解析から直接導かれるインバージョンモデルは①のとおりであり、原子炉建屋が軟弱な表層地盤に設置されていることを示している。

そこで原告らは、インバージョンモデルは軟弱な表層地盤が存在することを示しているのに、関電地盤モデルはこれを無視していると批判した。

これに対して被告関電は、確かに表層地盤はあるが、原子炉建屋は岩盤地盤に建っているから、層厚80mの表層はカットしたと反論した(②、③)《図省略》。

上記のとおり《図省略》、被告関電は自ら表層地盤が層厚80mあると言い、その80mの表層地盤をカットしたと言うが、そうだとすると、原子炉建屋は空中に浮かんでいることとなって明らかにおかしい。

地盤調査結果は3号炉の地盤に破砕帯が密に存在し、P波速度は3.86km/sであることを示しおり4.6km/sを下回っている。

原子炉建屋が直接、堅硬な地盤(Vp=4.6km/s、Vs=2.2km/s)に設置されているとする関電地盤モデルは、自らの主張とも、地盤調査結果とも整合しない。

関電の地盤モデルは、曖昧な議論と不確かな実験によって、減衰係数(h)を3%と設定している。

減衰係数は、岩盤地盤(堅硬な地盤)では小さく、土質地盤(軟らかい地盤)では大きい。大阪観測点の地盤は土質地盤であるところ、観測結果に拠ると、減衰係数はh=3%を下回り、大きくてもその1/1.5の2%迄であることが判明している[7]

大飯の地盤では、堅硬な地盤は-40m以深である。他方、大阪観測点では-600mまで土質地盤が続き、25m厚の風化岩層をはさんで-625m以深でようやく硬い岩盤地盤が表れる。表層すぐ近くまで岩盤地盤となっている大飯の減衰係数は、大阪観測点をさらに相当に下回るはずである。

以上のとおり、h=3%と設定している関電の地盤モデルの減衰係数は、過大に過ぎる。

[7] 大阪観測点の地盤の減衰係数は不明であるため、赤松意見書では、大阪観測点の地盤増幅特性から減衰係数を検討している。右の図の太線は、地表(標高1m)と地中(標高-981m)の各地震計で観測された地震波の強さの比較である(フーリエ・スペクトル比)《図省略》。(1)~(5)は、大阪観測点の地盤の減衰係数をいろいろ変化させて与えた増幅特性である(左側のhは200m以浅、右側の右は200m以深である)。下記グラフから、大阪観測点の地盤の減衰係数が、(3)と(4)の間にあることが明らかとなり、上記では控えめに(4)として論じている。

7 関電地盤モデルが示す基準地震動の「平均像」

ところで、このように地震動を過小評価する関電地盤モデルによっても、前述のとおり、合成波形の加速度ピーク値は883ガルであり、基準地震動856ガルを超えている。これは、基準地震動が「平均像」に基づいて策定されているからである。

断層モデルは、各小断層の破壊が均質と仮定しているが、実際には、各小断層の破壊が不均質に進展しており、そのため前後の地震波に強弱が生じて重なりが不均質になり、合成波が大きくなったと考えられる。

断層破壊モデルは、断層面が1枚の平面であることを前提としているが、2016年の熊本地震(M7.3)では複数の断層面が斜交し、2000年の鳥取県西部地震(M7.3)では共役関係にある断層破壊が生じた《図省略》。

断層破壊モデルは、現実に起こる単純でない断層破壊の不均質な破壊過程が考慮されていない。

「平均像」から基準地震動を策定することによって、地震動を過小に評価していることとなる。

8 3号炉地盤モデルは1280ガルを示す

3号炉モデルに拠れば、波形の加速度ピーク値は1280ガルにも及び、クリフエッジの1260ガルを超えることとなる《図省略》。

FO-B~FO-A~熊川断層のM7.8の地震の地震動は、1280ガルとなって、基準地震動だけでなく、応答スペクトルも基準地震動を大幅に超え、原子炉建屋破壊が強く懸念される。

さらに、小断層No.9のみの断層破壊によるM6.1の地震によっても、応答スペクトルは基準地震動を超えており、3号炉側の地盤の脆弱性が危惧される《図省略》。

以上、大阪府北部地震の観測結果をFO-B~FO-A~熊川断層に適用した結果から、被告関電の基準地震動が過小に評価されており、基準地震動超えの地震動発生の危険が改めて明らかとなった。

◆原告第59準備書面
-避難困難性の敷衍(左京区における問題点について)-

原告第59準備書面
-避難困難性の敷衍(左京区における問題点について)-

2019年(平成31年)1月24日

原告提出の第59準備書面

原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面で左京区に在住する原告の西郷南海子の日々の暮らしをもとに、左京区区民の避難困難性に関する個別事情について述べる。

1 原告西郷南海子について

原告西郷南海子(以下「原告西郷」という。)は、住んでいる地域は、大飯原発から56.8kmに位置している。原告西郷は、仕事をしながら、京都市左京区で三人の子どもを育てている。

2 2011年東日本大震災までの原告西郷の認識

2011年の東日本大震災まで、原告西郷は原発とは日本のエネルギーの3割を供給している発電方法だとしか思っていなかった。しかし、原告西郷は、東京電力福島第一原発の事故を目の当たりにして、自分の考えが取り返しのつかない過ちであることを思い知った。放射能には色も匂いもなく、いったん空気中に放出されてしまえば拾い集めることはできない。核種にはいろいろあるとは言え、半減期まで何十年とかかるものも多い。原告西郷は、こうした目に見えない放射能をどう避けたらよいのか、2011年当時まだ乳幼児だった子どもたちを抱えて途方に暮れた。

3 原告西郷の避難困難性

原告西郷は、子どもたちを被ばくから守るためには、原発を止めるしかないという結論に至った。昨年2018年は、地震や台風などたくさんの自然災害が発生したが、災害が起こるたびに、原告西郷は、家族はいつも一緒にいられるわけではないということを実感した。
原告西郷には、三人の子どもがいるが、それぞれ保育園と小学校に通っており、活動範囲が異なっている。仮に、万が一大飯原発において事故が発生した場合、原告西郷が、活動範囲が異なる三人と子どもと再会することは困難である。これは、原告西郷に限らず、家族がいる者については、同じ事が言える。例えば、大地震が起これば、停電するかもしれないし、停電してしまうと情報のやりとりが困難となる。大地震が起こったという情報を得ること自体困難になる。被ばくを避けるための情報を受けるとることも難しくなる。福島第一原発の事故では、原発からおよそ47kmの地点までが避難の対象となった。実際には、原発の東の海の側に全体の6割とも8割ともいわれる放射性物質が放出されているので、陸側の47kmの範囲と同水準の放射性物質の降下がより遠方の広範囲に広がっていた可能性がある。原告西郷の自宅は、大飯原発から56.8kmに位置するが、原告西郷の住む地域には避難計画すら無い。56.8㎞は、時速20km/h(風速5.5m/s)の風(自転車をこいだときに感じる程度の風)の場合、3時間未満で到達する距離である。災害の混乱の中、3時間という短い時間で、家族全員と再会し、さらに遠くの場所へと避難することは、不可能である。被ばくを避けるためには安定ヨウ素剤が効果的だと言われている。京都市では、大飯原発50km圏内の住民にはヨウ素剤を配布するとしているが、災害の大混乱の中で配布が、適切に行われないことも十分に想定される。原告西郷の自宅は、56.8km地点にあるため配布の対象となっていない。そこで、原告西郷は、アメリカから個人的にヨウ素を取り寄せた。このようなことをしなくとも、原発を止めれば、問題は解決するのである。

4 最後に

これまで原告等が主張してきたとおり、大災害の時は、道路や線路が寸断され、交通機関が麻痺してしまう。災害の時に遠くに避難するということが、もはや非現実的である。そもそも、百万都市からすべての人が避難することなど、現実的ではない。

以上

◆第21回口頭弁論 原告提出の書証

甲第464~466号証(第54準備書面関係)
甲第467~476号証(第56準備書面関係)
甲第477~478号証(第57準備書面関係)
甲第479号証 (第58準備書面)



証拠説明書 甲第464~466号証(第54準備書面関係)
(2018年8月31日)

甲第464号証
判決書(抄本)(京都地方裁判所第7民事部)

甲第465号証
判決要旨(東京地裁民事第50部)

甲第466号証
安全目標と新規制基準について(議論用メモ)と題する書類(原子力規制庁)


証拠説明書 甲第467~476号証(第56準備書面関係)
(2018年8月31日)

甲第467号証
大飯発電所の地盤構造について(赤松純平)

甲第468号証
大飯3,4号炉設置許可基準規則等への適合性について(地盤)【抄本】(被告関電)

甲第469号証
原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合第59回議事録【抄本】(原子力規制委員会)

甲第470号証
第21回審査会合 資料1-1 大飯発電所の地下構造把握について【抄本】(被告関電)

甲第471号証
第21回審査会合 資料1-2 大飯発電所の地下構造把握について(データ集)【裏紙のみ・抄本】(被告関電)

甲第472号証
第78回審査会合 資料2-1 大飯発電所内敷地破砕帯の評価について【抄本】(被告関電)

甲第473号証
第92回審査会合議事録【抄本】(原子力規制委員会)

甲第474号証
第89回審査会合 資料3 大飯発電所地盤モデルの評価について【抄本】(被告関電)

甲第475号証
大飯発電所3・4号機の現状に関する評価会合第4回議事録【抄本】(原子力規制委員会)

甲第476号証
第206回審査会合 資料3-4 大飯発電所地震動評価について(参考)大深度地震計設置の取組状況【抄本】(被告関電)


証拠説明書 甲第477~478号証(第57準備書面関係)
(2018年8月31日)

甲第477号証
口頭弁論要旨(原告 西川政治)

甲第478号証
スライド(原告 西川政治)


証拠説明書 甲第479号証(第58準備書面関係)
(2018年11月14日)

甲第479号証
2018年6月18日大阪府北部の地震(M6.1)について(竹本修三)

◆第21回口頭弁論 意見陳述

2018年9月4日

※ この意見陳述はスライドと合わせてお読みください。

口頭弁論要旨

西川政治

(スライド1) 私は、京丹後市網野町にある丹後ふるさと病院、たちばな診療所を運営する特定医療法人三青園の常務理事・事務局長と特養「ふるさと」の経営責任を持つ理事を務めています。

1、病院・特養の沿革と現在の状況

(スライド2) 丹後ふるさと病院は1983年8月に52床で開設され、2003年に160床に規模拡大しました。
急速な高齢化を迎え2012年に60名規模の特養を建設、2016年に同規模を増設しました。

(スライド3) 現在、病院の許可病床160床、特養は120名の収容規模で運営しています。職員は、2018年7月末現在で、正規雇用・非正規雇用含めて318名、常勤職員換算では258.7名になります。7月末現在の病院の入院患者数は158名、特養の入所者数は112名の合計270名になります。

(スライド4) 私たちの病院・特養は京都府の最北端、丹後半島の京丹後市網野町に位置し、2施設の南に国道178号線が通り、京都府で一番大きな湖である離湖、離湖古墳公園があり、裏側にあたる北方面に小高い林があり防風林の役目を果たしています。

病院の標高は5m弱、離湖は3m弱、海水逆流防止の可動式の防潮堤が設置されていますが、北風が吹くと海抜0mになります。離湖から日本海への水路の距離は約500mです。日本海側で地震が発生すれば離湖の水位は、一気に上昇するでしょう。北側も500m前後で日本海の沿岸になります。その間に40m~100mの丘があります。津波が発生すると、この丘以外に避難する場所はありません。病院・施設前の国道178号線は海抜約3~4mであるために自動車は通行不可能になります。これは網野町の50~60%が4~5mの海抜の範囲に入り町全体が機能不全に陥ります。

(スライド5) 我々の病院・特養は、大飯原子力発電所とは直線距離で58.1km、高浜原子力発電所とは46.3kmの位置にあります。京丹後市と高浜原発との最短距離は30.2km、大飯原発とは41.9kmとなっています。

(スライド6) 政府の原子力損害賠償紛争審議会(会長=能美義久学習院大学教授)は、2011年12月5日「東京電力福島第一原発から50km圏にある自治体の住民まで、損害賠償の対象を広げる方針を固めました。また、検討していた自主避難者への補償を加えました。

アメリカ政府は2011年10月8日に「妊婦、子供、高齢者は30km圏内には入らない事、80km圏内に一年以上は住んではいけないと勧告」しています。

福島第一原発事故後、50km圏内を計画的避難区域が設定されましたが、我々の2施設も、上記、原子力損害賠償紛争審議会の補償対象地域、アメリカ政府の勧告から見て、安全が保障されたとは言えません。

今回、私は、事故発生による避難移動の不可能といえる状態について述べたいと考えています。

2、入院患者、特養入所者の施設内外での移動方法

(スライド7) 病院の患者、特養の入所者が、避難する場合には、国道178号線を利用することになります。しかし、地震や津波の影響で、国道178号線が、通行止めとなった場合、避難することは出来ません。入院患者、入所者の移動方法について2018年5月15日(病院入院患者)・16日(特養入所者)に調査したところ、ストレッチャー移動の入院患者・入所者は91名、車椅子移動は155名、自分で歩行不可能な方246名、自分で動ける人が16名の合計262名でした。

仮に、国道178号線が通行できるとして、ストレッチャーを乗せる救急車と、車椅子を乗せる事の出来るリフト車が必要な患者・入所者が246名になります。

現在も病院・特養から建物の外に出る場合は、ストレッチャーの方は救急車、車椅子の方は車椅子ごと乗れるリフト車での移動になっています。

(スライド8) 移動手段である自動車は、ストレッチャー1台乗りの救急車が1台、車椅子2台乗りのリフト車が2台、車椅子1台用のリフト車が2台の計5台、同時に7名の移送が限度です。網野町消防分室が救急車1台、町内にある特養にリフト車はありますが其々が使用します。ストレッチャー移動の方は、病院、特養の施設内はベッドで移動しています。移動にあたっては、ストレッチャー移動の方には職員2名、車椅子は1名が付添う必要があります。

(スライド9) 避難先は、兵庫県北部が考えられます。綾部・福知山が避難先として可能になれば敦賀・舞鶴方面からの避難先になるからです。豊岡病院は大飯原子力発電所から直線距離で76.6km、丹後ふるさと病院から約35km、通常の道路事情で移動に1時間は必要です。事故が発生すれば数時間必要になると想定されますし、そもそも輸送する自動車の調達は不可能です。自動車で避難するとなれば、点滴や排泄等に対応する人員の確保や、装備等の備蓄状況から考えると全く困難です。われわれの所有する車両台数だけでは、1回7名の避難で246名の避難を完了するためには36往復が必要です。大型バス等が確保できたとしても、バスに乗せ換える事も当然不可能です。又自分で歩行可能な方も一人で移動することは困難で、必ず付き添いが必要です。しかし、以下に述べるとおり、原発事故が、起きれば、職員自身も避難せざるを得ず、付添にあたる職員の人数を確保することは、不可能です。

3、職員の避難について

(スライド10) 丹後ふるさと病院、特養「ふるさと」は大飯原発から58.1km、高浜原発から46.3kmの距離にあり、京丹後市は、高浜原発の事故に際しては、京都府の指導はありませんが、独自に避難計画は作成しています。しかし、政府、京都府の予算が付かないために、実施には時間がかかる模様です。我々の施設では、火災時の避難訓練は年2回実施していますが、原発事故に対する対策は立ててません。

(スライド11) 職員は、2018年7月末日時点で、実数で病院227名、特養91名、合計318名、常勤職員換算で病院173.8名、特養84.9名、計258.7名、週日の日勤は、病院113名、特養52名、土曜日の午後と日曜日の日勤は病院46名、特養38名、夜勤は病院17名、特養7名になります。原発事故が起きた場合、その勤務状態での対応になりますが、とても人員は足りません。そもそも、事故が起きれば、職員自身も業務を行えるとは限りません。

(スライド12) たとえば、2011年の福島原発事故において、高野病院では、看護職員33名の内、職員自身が避難したりするなど様々な事情のため、半数以下しか、勤務を継続できませんでした。福島県の高野病院は、福島第一原発から22kmに位置し、原発のある双葉郡内で唯一、入院できる病院として被災地唯一の医療を担っていました。当時、高野病院には70代~100歳の寝たきりの患者が37名いました。院長の「私が残るから皆は逃げなさい」との言に、看護師が怒って「院長一人残していけるわけがないでしょう。点滴やオムツ交換はどうするのですか」と言って、何人かのスタッフが残っていったと現理事長である娘さんが述べています。

職員の家族構成、勤務時間制限、病院、特養の事故に対する認識等により、原発事故が起きた場合、職員が、業務を継続できるとは限りません。また、病院としては、決して強制することはできません。我々は、どんな事があっても、どんな方法であっても、患者を守り抜く決意を持っていますが、福島原発事故では、移送を選択した病院・施設は、移送中や到着後に、大量の死亡者を出した事例が生まれています。我々の選択肢は出るも地獄、残るも地獄だと考えています。

先にも述べたように、我々は、火災時に建物外への搬送訓練は行っていますがそれ以外は実施していません。政府、京都府、京丹後市の責任ある対応に沿いながら検討します。

4、入院患者・入所者の高齢化の状況

(スライド13) 入院患者・入所者は高齢者がほとんどです。2018年5月15日(病院入院患者)・16日(特養入所者)に調査したところ、100歳以上が12名、80歳以上では221名、70歳以上で見れば262名中248名にもなります。この年齢構成での避難行動は、施設内行動さえも介助が必要であり、施設外への避難行動は全く不可能です。

(スライド14) 京丹後市の高齢化率は1980年14.5%、2000年30.9%、2015年35.0%、2018年4月1日の住民基本台帳では、人口55,426名、高齢者19,566名、35.3%になっています。人口は1950年の83,001名から急速に進む人口減少と高齢化は、我々の病院・特養と同じ状況であり、お互いに助け合いながら避難する事など到底考えられません。

5、入院患者、施設入所者の家族構成

(スライド15) 病院2017年10月15日と特養2018年5月23日に調査したところ、入院患者・入所者の家族構成は、高齢者独居世帯が87名で33.5%、高齢者夫婦世帯が51名で19.6%、2~3世代世帯が121名の46.5%となっています。高齢者独居世帯・高齢者夫婦世帯を合わせれば138名、53.1%に達します。この様な状況では家族による避難の援助も不可能です。

京丹後市で見ると(2015/4/1国勢調査)20,469世帯の内・高齢者独居世帯2,795世帯13.6%、高齢者夫婦帯2,825世帯13.8%の計5.620世帯27.4%になります。65歳以上のいる世帯は12,377世帯60.5%となっており、病院・特養の避難時に家族の援助を望むべくもありません。

6、終わりに

(スライド16) 『福島』に続いた日本で二番目の原発事故が発生すれば、私たちの病院・特養の患者・入所者は、当然避難できません。建物は、放射線に対して、防護機能はありません。建物の中に残ることは非常に危険です。しかし私たちは、『福島』の高野病院が選択した、「患者・入所者を見捨てないで残る道」しかないと考えています。私たちは、避難しても残っても多数の死者を出すでしょう。
そこで犠牲になる人たちは、事故がなければ安らかな終焉を迎える事が出来たはずですが、それをも奪われて行くことになります。

[1] 我々大人が解決すべきツケを、全部次世代に残していく事で若者たちは、将来に希望が持てるのでしょうか。
[2] 科学が今日の経済成長戦略に屈するのか、社会や科学に対する不信感は大きくなるばかりです。
[3] 人間が社会や自然を変革していく歴史的経過の中で現実に自然破壊が進行し、それをこれまでの様に「想定外」で済ませてよいのでしょうか。

我々はこの様な事態にならない世の中を作る努力が必要と考えています。

以上