■ 第11回(2016年5月16日)
- 原告の陳述は,大飯原発からは約40kmの綾部市に住む斎藤信吾さん。仮に大飯原発で事故が起き,由良川ダムや由良川水系が放射性物質によって汚染されれば,京都府北部全体の住民が飲料水を確保することができなくなってしまうこと,綾部市計画では、災害時に要援護者について十分配慮すると書かれているが,視覚障害者はどうやって避難するのか。重度の障害を持った者はどうやって避難するのか,具体的な方法は書かれていないことを述べました。
- 弁護団からは,基準地震動以下の地震動でも大飯原子力発電所やその電源が損傷し,過酷事故に陥る可能性があること,大津地裁の高浜原発差し止めを命じる仮処分決定(2016年3月)の意義を主張しました。とくに後者は,出口治男・弁護団長が,最近の関経連関係者が語った「一地方の裁判官が勝手に原発を止めるな」のコメントを,人権の上にエネルギー政策があるのかのような不見識さだと,一刀両断に切り捨てました。
■ 第10回(2016年3月15日)
- 原告の陳述は,林 森一(はやし・もりかず)さん。京都市左京区久多に生家があり,京都市北区紫野に居住しつつ,久多が重要な生活の一部であり,そこで生活する者として陳述。林さんが町会長をしている左京区久多中の町は,大飯原発の30km圏内にある。そして,(1)避難訓練の結果、不安が増大したこと,(2)放射能線量を常時監視しモニタリングする測定器が設置されたが,汚染される前に避難したいこと,(3)地震の心配,(4)水の心配,(5)避難受け入れ自治体のこと,(6)原発事業者の責任について述べ,原発運転差止を求めました。
- 弁護団からは,避難困難性の敷衍(京都市左京区久多について),平成27年12月24日の福井地裁異議審決定の問題点を準備書面として提出しました。福井地裁異議審決定は,福島原発事故に正面から向き合わず,いまもなお続き,終わることのない破滅的な状況を忘却したか,あるいは無視していること,福井地裁異議審決定は,科学と裁判における謙虚さを欠いているのではないかとの主張を展開しました。
■ 第9回(2016年1月13日)
- 原告の陳述は,舞鶴市在住の阪本みさ子さん。大飯原発から20キロ地点の東舞鶴に住む阪本さんは,原発事故に際し避難がいかに困難か(不可能なこと)を明らかにしました。「私にとって大切な舞鶴の人たちが命をなくしたり,行き場をなくしたりするようなことがあってはならないと思うから,原告になることを決心しました。私達舞鶴市民は,原発に近いので,福島のような重大事故があれば全員避難しなければいけません。線量が高くなってからの避難では,放射能を避けることはできません。被ばくを覚悟せよということでしょうか。小さな分校に3000人を超える人を集めて,数人の市職員で対応することができるのでしょうか」。
- 弁護団からは,新規制基準の基準地震動の「標準・平均値」は矛盾に満ちていることを日本人の平均所得分布の図でわかりやすく説明されました。「2013年度の貯蓄高1739万円」の例を挙げながら,その問題点をわかりやすく説明しました。平均値で1739万円もの貯蓄がある世帯は,全体のわずか数パーセントに過ぎません。同じように,地震動にも大きなバラつきがあり,地震動の「標準的・平均的な姿」を前提に基準地震動を策定することは,原発の危険性を前提とすれば,合理性を欠くと主張しました。
■ 第8回(2015年10月20日)
- 全体の流れの中では,前回弁論までに原告側の主張が一回りしたことを受け,被告(おもに関西電力)から,原発の安全性に関する反論の主張が始まっています。関西電力は,これまでに大きな地震が発生しても大飯原発は安全だし,大きな津波は起きない,という型通りの主張をくり返しています。
- この回の弁論は,このような関西電力の主張に対して原告の側から反論するのが,おもな内容でした。具体的には,大飯原発周辺で発生し得る津波の規模が過酷事故につながり得るものであることや,関西電力による津波の想定の甘さについて,パワーポイントも用いながら説明しました。
- また,関西電力が想定する地震の規模についての見積もりが甘すぎるという点を,竹本修三原告団長(固体地球物理学,京都大学名誉教授) から,これまたパワーポイントも用いて,分かりやすく解説(弁論)しました。
■ 第7回(2015年5月28日)
- 原告の陳述は,菅野千景(かんの・ちかげ)さんで「原発事故からの避難」について。原発賠償京都訴訟の原告でもある菅野千景さんは,福島市から避難してきた体験から,平穏な生活をまるごと破壊した原発を告発しました。その訴えは,涙なしでは聞けませんでした。
- 弁護団からは,主張の総まとめという形で以下の準備書面を提出しました。
(1)福島の汚染状況,避難の現状,「事故収束」に向けた作業など。
(2)加圧水型原子炉の問題点。これまでの事故。
(3)水素爆発との関係について,新規制基準の問題点。
(4)核のごみ問題。高レベル放射性廃棄物の処理方法がないこと。
(5)再生可能エネルギーの可能性。
■ 第6回(2015年1月29日)
- 弁護団からは,「福島第一原発事故後作成された新規制基準は,原発立地審査指針を排除していて,原子炉の格納容器の加熱,破損,水素爆発などが起これば,住民をむき出しの危険にさらすことになる。福島の原発事故のような放射能の放出を仮定すると立地条件が合わなくなるから(田中俊一原子力委員長),従来より甘いルールに改定した。これは再稼働を可能にするためのルール作りだ」と批判しました。
- 舞鶴市在住の原告,三澤正之さんが意見陳述。「自分は8人家族で,高浜原発から15キロ。舞鶴の住民は,大飯原発からもほとんどが30キロ圏内。公表された舞鶴市の避難計画は,避難方向も,受け入れ先も明示がない。移動手段もバス利用1350台(うち600台がピストン輸送との計画)とされているが,道路が車であふれるなどの大混乱になることも想定され,浪江町では放射能汚染地域へ運転手が入らなかった。とても避難計画が機能するとは思えない。危険な原発をなくすことが一番だ」と述べました。
■ 第5回(2014年9月30日)
- 弁護士4人が新規制基準の問題点について要旨を陳述,原告2人が福島第一原発の被害実態や地域,都市計画に原発事故が欠落している問題などを訴えました。
- 広原盛明さん(京都府立大元学長)は,国土開発計画に原発の立地による災害の問題がまったく欠落していることを指摘。国土交通省の「国土グランドデザイン2050」では,原発災害,原発問題に関する記述が一切ない。3・11以後,国土計画を考えるにあたっては原発問題をどう扱うかが最大のテーマのはずと主張しました。
- 郡山市から避難してきた原告の萩原ゆきみさんは「2012年夏休みに子ら3人で自宅へ帰った。掃除をしたりしたが,子どもも私も鼻血を出した。京都に帰ったらやんだ」ことなど,放射能の恐ろしさを語りました。
■ 第4回(2014年5月21日)
- 裁判官全員が交代したので,第1回から第3回迄行ってきた意見陳述と弁論を,再度全てではないが,再現しました。
- 竹本修三原告団長は,「狭い日本で世界の地震の20パーセントが起こっている。ここに50基もの原発が存在することが異常。しかも海溝型巨大地震が2030年代終わりに南海トラフ沿いで起こることも予測される。原子力規制委員会は,大飯原発敷地内を活断層の有無だけにしぼって結論を出しているが,これは空しい議論だ。地震は,活断層から離れたところでも発生している。使用済み放射性廃棄物の処分問題も解決していない」として,子や孫の代に負債を残さないように求めました。
- 南相馬市から避難してきた原告の福島敦子さんは,自宅庭の土が入ったビンを示し「1平方メートル当たり93万ベクレル。チェルノブイリなら移住必要地域に当たるレベル」と述べました。
■ 第3回(2014年2月19日)
- 原告の宮本憲一さん(元滋賀大学長)が意見陳述を行いました。専門の公害環境研究者の立場から,福島第一原発事故によって多くの住民が故郷を失った苦難の事実を指摘し,福島第一原発事故は,足尾銅山鉱毒事件によって消滅した谷中村の悲劇よりもさらに大きくわが国史上最大最悪の公害事件であると指摘しました。
- 弁護団は,放射線被曝が人体に及ぼす影響,チェルノブイリ原発事故が人々に及ぼした影響を明らかにし,政府がこれまでにとってきた放射性物質に関する法規制がいかに杜撰であったか,そして今なお具体的な法規制が整備されていないこと,それにもかかわらず,大飯原発などの再稼働を推し進めようとしていることを強く批判しました。
- このような状況下において,司法の果たす役割は極めて重大で,裁判所は,大飯原発を含むあらゆる原発の危険性を認識し,市民の生命,身体の安全と健康を守り,子ども達の未来を守るため,大飯原発の運転を許さない判断を下すことを求めました。
■ 第2回(2013年12月3日)
- 私たちの訴訟の呼びかけ人でもある,聖護院門跡門主の宮城泰年さんが,宗教者の立場から危険な原発の稼働は認められないと,意見を述べました。
- すなわち 「大飯原発運転を差し止めることは,地球とそこに生きる私たち人間を含めすべての生物の安全を守ることです」として,宗教者として原子力と共存することはできないこと,とりわけ日本には自然への崇拝,山岳信仰があり,本山修験宗の総本山として,山岳自然を修行道場としてきたこと,そこは多様な生物の共生と命の循環によってみんなが生きているからこそ尊い世界であると主張しました。
- 弁護団は,福島の人達の悲惨な避難の状況を具体的に,写真等をまじえて明らかにし,原発事故がいかに多くの住民の人間としての尊厳を傷つけているかを訴えました。
■ 第1回(2013年7月2日)
- 第1回期日では,まず竹本修三原告団長(固体地球物理学,京都大学名誉教授) と福島から避難してきた原告の福島敦子さん,同じく大庭佳子さんが陳述しました。
- 竹本団長は「地震国ニッポンで,原発は無理!」というテーマで,パワーポイントを使い,空しい活断層議論,基準地震動について意見を述べ,大飯原発の運転差止を主張しました。
- また,福島県から避難してきた福島敦子さんと大庭佳子さんは,避難を余儀なくされた福島県の人々の苦難の実情を,深い憤りと悲しみを込めて訴えました。福島さんは「司法が健全であることを信じています。日本国民は,憲法により守られていることを信じています。」と結び,感動をよびました。