◆第10回口頭弁論 意見陳述 要旨

意見陳述

2016年3月15日
氏名 林  森 一

私は、京都市左京区久多中の町253番地に生家があります。私は、京都市北区紫野に居住していますが、生家には週に1から2回程度通っており、5年前から久多老人クラブ役員、3年前から町会長と京都市政協力委員久多自治振興会役員、京都市の福祉施設久多いきいきセンター運営委員などを兼任しています。またこの間京都市・左京区の区役所・消防署・警察署など共同で実施された全町・全住民参加の防災・避難訓練に参加しました。月1回開催される自治振興会役員会、町内会、区民行事、町の伝統行事、いきいきセンター、老人クラブの会議と行事、にも参加しています。昭和12年生まれです。去る2月24日に79歳になりました。今年は雪が少なく屋根雪降ろしは1回だけで助かりましたが雪解け水が少なくなりますので春からの琵琶湖の渇水が気になっております。久多は私の重要な生活の一部です。本日は、久多で生活を送る者として発言をします。
福井県若狭湾岸に13基の原子力発電所が存在します。なかでも私が町会長をしている左京区久多中の町は、大飯原発の30km圏内にあります。
5年前の3・11福島第1原発の事故を目の当たりにしてこの5年間の体験と思いを裁判官にそして被告席の皆さんに聞いていただきたいと思います。
京都市の左京区久多は60世帯90人の高齢化、過疎化の進む田舎町です。同じく左京区の花背の広河原と右京区京北町黒田と共に大飯原発の30㎞圏内になっております。さる2月23日京都府北中部の芦生の森や八丁平湿原を含む「京都丹波高原国定公園」の新しい指定が国に答申されました。この指定区域は京都市・南丹市・綾部市と京丹波町にまたがる約6万9千ヘクタールにおよび由良川、桂川、鴨川、安曇川の支流を網羅しています。久多の自治振興会でも公園指定を期待していました。
京都府の「森の京都」の構想3市1町の関係者もおおいに歓迎されていることだと思います。ただしこの地域はこの間、再稼働された高浜原発と大飯原発の30㎞圏・50㎞圏にすっぽり入ってしまいます。

【その1】
この5年の間に2回、左京区役所・下鴨警察署・左京消防署・久多の関係団体をあげての避難訓練を実施しました。避難訓練の結果、私の不安は増大しました。
5つの町内住人全てに避難の連絡・車での避難所集合が100%出来るのか、出来たとしてそこから先の避難移動はどうなるのか等の質問に対しては、京都市から迎えに来てくれると説明がなされました。
安曇川の支流である久多川、針畑川沿いに京都府道781号麻生古屋梅の木線を通り滋賀国道で避難させて頂くことになります。迎えの車が避難所の久多いきいきセンターに到着するには渋滞が無かったとしても、1時間以上かかってしまいます。何処の車で誰が運転して来てくれるのでしょうか。京都府道781号麻生古屋梅の木線は軽自動車でも離合が困難なところが何ヶ所もあります。冬は積雪もあり除雪がされていなければどうすることもできません。住人以外にも魚釣り、登山・ドライブ・山菜取り・キャンプなどのために来ている人はどうするのでしょうか。最低でもサイレンなどで全ての人に放射能からの避難を知らせないといけないのではないのでしょうか。キャンプ場で遊んでいる子供たちの姿を思い浮かべて放射性物質の被害から子どもたちを守るにはどうしたらいいのかと考えてしまいます。
左京区久多は、山の中にあり、京都市内へ行く道路は限られています。仮に、地震などにより、道路を通ることが出来なくなった場合、避難は不可能ですし、京都市から迎えに来ることなど出来ません。

【その2】
放射能線量を常時監視しモニタリングする測定器が設置されました。京都府内の30㎞圏内31ケ所と聞いています。30㎞圏外にある15ヶ所ある線量計は一時移転基準の20シーベルトは測定できないと新聞に書かれていました。国はPEEDI(スピーディー)データーを使わず、計測データーの濃度があがった時点で避難勧告を出すということになっていると理解しています。私たち久多の住民は「汚染される前に避難したい」と考えています。国には、迅速に避難勧告を出していただきたいと思います。

【その3】
12才の時(1948年6年28日)に福井地震がありました。この日私はスモモの木に登っていましたが、木々の枝がシュワシュワと大きく縦揺れして驚いてスモモの木にしがみつきました。近くの畠にいた母親が慌てて見に来ました。後に福井でマグネチュード7.1の地震があり死者3769人・負傷者22203人全壊家屋36184戸の大きな地震だったことを知りました。大飯原発は熊川断層の上にあると知らされると本当に驚いてしまいます。あわせて火山の爆発などによって全国の原発への影響と事故についても同じことが言えると思います。

【その4】
水の問題です。国定公園に指定される3市1町の四つの川の支流の広大な山々と川と琵琶湖の水が汚染されたらどうなるのでしょうか。
嘉田由紀子前滋賀県知事は、2月17日付京都新聞で「琵琶湖が汚染されたら滋賀・京都・大阪・兵庫にまたがって1450万人の命の水源である琵琶湖の価値保全に責任がある知事として若狭湾岸に集中立地する原発の万一の事故に格別の関心を示さざるをえなかった。とのべて情報共有、避難計画での交通上の実効性について頭を痛めた。6万人近く、196集落の高島市と長浜市の住民を短時間で非汚染地域に誘導避難できるか、自家用車の避難は渋滞をもたらすので500台でのバス避難を計画した。最も悩ましいのが運転手の確保だ。事業者は従業員を危険区域に送れないし、知事に運転手を派遣させる権限はない。」と言っておられます。1450万人が琵琶湖の水が飲めないことになったらどうするのでしょう。
3・11の日、東京にいる息子さんのお嫁さんとお孫さんがすぐ京都のおばあちゃんのところへ避難せよと京都へ向かい新幹線の車中で福島の原発の爆発のニュースを見たとのことでした。東京へ戻られた後も1年以上もお孫さんに牛乳を送り続けておられました。

【その5】
避難受入れの自治体の問題です。京都市は舞鶴市民65000人の受け入れ責任がありますがどんな計画ができているのでしょうか。私たちの避難を受けてくださる施設は何処になるでしょうか。安定ヨウ素剤の用意は、食料や水はと考えますが、その前に60キロの京都が避難の対象になってしまったらと思うと胸が苦しくなります。

【その6】
原発事業者の責任の問題です。東京電力の元会長ら3人の強制起訴が決まりました。新聞には3人は津波で全電源停止になるとは聞いていなかった。知らなかったと無罪を主張するだろうと書いていますが信じられません。そんな会社に原発を管理運営する資格があるのでしょうか。この間関西電力の高浜原発の水漏れ、原子炉の自動停止なども原因を調査しているとして万一の時緊急対応を負わされている自治体に何時間も知らせない、なにも報告しない隠蔽と無責任体質はどうしても納得できません。
昨年8月6日の広島被爆70周年の平和記念式典では広島で被爆し、この1年に死亡が確認された死没者は5359人となり、あわせて29万7684人となった。8月19日の長崎では死没者3373人、昨年までの死没者とあわせて16万8767人となりました。2つの原爆で被爆し被爆者健康手帳を持つ被爆者は18万3519人となり平均80歳を超えました。被爆者はいまなお続く原爆の後遺症に苦しみながらも原爆体験の継承、核兵器廃絶への歩みを続けています。日本国民は核兵器も原発も無くしてほしいと願っています。
使用済み核燃料の問題を真剣に考えず対策もないまま再稼働ばかり追及している電力会社の無責任さを強く批判します。その運転をさしとめて頂くよう訴えます。

以上