◆原告第24準備書面
第2 規制基準の合理性等

原告第24準備書面
-被告関西電力が反論していない原告の主張について- 目次

2016年(平成28年)9月12日

第2 規制基準の合理性等

1 原告第1準備書面との関係

国会事故調報告が指摘するとおり、日本は、訴訟リスク回避のため、世界標準である5層の深層防護に基づく法規制を行っておらず、新規制基準においても第5層が未整備のままである。

また、大飯原発3・4号機は、新規制基準策定前に政治判断で強引に稼働され、事実上の事前審査で新規制基準を満たしていない点が認められたにもかかわらず、稼働を停止しなかったという大きな問題がある。

かかる原告の主張に対し、被告関電は認否・反論をしていない。

2 原告第5準備書面との関係

国会事故調は、福島事故は人災であり、訴訟リスクにより知見の反映を判断するという本末転倒な規制の抜本的な見直しが必要と指摘している。

しかしながら、現行の規制組織も独立性・透明性に問題がある。また、新規制基準も、立地審査指針を除外している、単一故障の仮定が見直されず、外部電源に関する重要分類及び対審重要分類が変更されていない、重大事故対策が不十分、深層防護の第5層の避難計画が義務づけられていない、安全上重要な系統設備の多重性などの世界基準に到達していないという問題がある。

司法は、新規制基準の適合性の可否という観点にとらわれず、福井地裁のように市民の安全の視点から独自に判断すべきであり、それが福島第一原発事故後に求められるあり方である。

かかる原告の主張に対し、被告関電は認否・反論をしていない。

3 原告第7準備書面―立地審査指針―との関係

原告の主張の概要は以下の通りである。

  1.  「原子炉立地審査指針及びその摘要に関する判断の目安について」(昭和39年5月27日原子力委員会決定以下「立地審査指針」という)は,昭和39年5月27日以降,原子炉の設置審査において適用されてきた。立地審査指針の目的は、重大事故,仮想事故が起こり,それに起因する放射性物質が漏出したとしても,原子炉から一定の距離を非居住区域とすることにより,公衆の被曝を予防することにあり、事故前は、実務上国際基準である100mSvを基準として運用されてきた。この基準は、IAEA,及び米国においても採用されている。
  2.  平成24年12月、原子力規制庁が福島第一原発規模の事故を仮定して、放射性物質の拡散シュミレーションを行った結果、大飯原発では,放射性物質が南北方向に拡散し,陸側では,実効線量が100mSvとなる距離が,最大32.5km地点となる試算結果が報告された。したがって、かつての立地審査指針を厳格に適用すれば、大飯原発に敷地に立地できないことが明らかになった。
  3.  しかしながら、平成24年11月14日付原子力規制委員会記者会見において,田中委員長は,立地審査指針を100mSv基準に改正した上,再稼働の要件とする旨述べていたにもかかわらず,平成25年7月の新規制基準には,公衆の被曝量を基準とする立地審査指針は含まれず,審査指針として運用されない方針が採用された。すなわち,現在,公衆の被爆量を基準とする立地審査指針は,既設炉の審査基準とされていない。立地審査指針を採用しないことの問題点は、(1)代替措置たる「フィルタ・ベント」が放射性物質を完全に除去できないこと、その結果(2)シビアアクシデント時に住民を放射線被曝の危険を放置することである。すなわち、立地審査を行わない新規制基準は、公衆の被ばく限度の観点から審査を行っておらず、原発立地地域付近住民を被曝の危険に晒したまま放置しているものと評価できる。

以上の原告の主張に対し被告関電は反論を行っていない。