◆原告第27準備書面
第4 原発再稼働は許されない

原告第27準備書面
―高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点― 目次

第4 原発再稼働は許されない

 1 高浜原発広域避難訓練が明らかにしたこと

本件訓練は、原発事故からの避難や広域避難の困難さを明らかにした。原発周辺の各自治体は、国の指示を受けて原子力防災計画や住民避難計画を策定しているが、これらはあくまで机上の計画にとどまっている。本件訓練は、それらの計画のごく一部を実施しようとしたに過ぎず、行政や防災業務従事者の業務手順の一部を確認したにとどまるものと言うほかない。それにもかかわらず、上述したように、様々な問題が噴出したのである。

とりわけ、市内全域が高浜原発のPAZ圏内、UPZ圏内に入り8万3000人が居住する舞鶴市、同じく市内全域が高浜原発のUPZ圏内に入り1万9000人が居住する宮津市などにおいては、これだけ多数の住民を、自治体を超えて広域避難させなければならないことになる。原発事故からすべての住民を安全に避難させることがいかに困難なことであるかが明らかになったと言わなければならない。

 2 住民が安全に避難できる避難計画の策定が不可欠

  1. 現在、国は原発再稼働政策を推し進め、関西電力は、大飯原発3、4号機に加え、高浜原発1号機から4号機、美浜原発3号機の各原発の再稼働を計画している。しかしながら、上述したとおり、本件訓練の状況からしても、現状の避難計画を前提にして、原発事故からすべての住民を安全に避難させることは極めて困難というほかない。現在、新規制基準に基づく適合性審査が進められているが、その審査基準の中に、住民の避難計画は含まれていない。新規制基準が、東京電力福島第一原発事故を受けて策定されたものであるとするならば、住民が安全に避難できる避難計画の策定が不可欠の基準とならなければならないことは論を待たない。国は、避難計画の策定を含めない新規制基準をただちに改めるべきである。
  2. 住民が安全に避難できる避難計画が策定されないかぎり、原発の再稼働は許されない。しかし、その一方で、現在稼働していない原発であっても、大量の使用済み核燃料が保管されている。地震や津波等の災害によって事故が発生すれば、これら使用済み核燃料から大量の放射性物質が外部に流出することも十分に考え得る事態である。そうであれば、再稼働を行う、行わないにかかわらず、原発を廃炉にし、使用済み核燃料の最終処分が終了しないかぎり(なお、使用済み核燃料の最終処分については、その目処すらいまだにたっていないのが現実である)、住民の避難計画は必要不可欠である。国と関西電力をはじめとする電力会社は、自治体任せにすることなく、住民を安全に避難させることのできる避難計画を責任を持って策定し、実施しなければならない。

 3 再稼働せず、ただちに廃炉に向かうことが住民の安全を守る唯一の道

本件訓練は、原発事故からの避難や広域避難がいかに困難であるかを明らかにした。そして、原発の再稼働によって、地震や津波といった災害時に起こり得る原発事故の被害はより拡大することになる。

東京電力福島第一原発の爆発事故によって、原発の安全神話はもろくも崩れ去った。原発でも過酷事故は起こり得る、という現実を前にしたとき、原発事故からすべての住民を安全に避難させることはおよそ不可能というほかなく、原発の再稼働は許されない。そして、上述したとおり、再稼働がなされなくとも、原発には大量の使用済み核燃料が保管されており、この使用済み核燃料が過酷事故を引き起こすことも十分に想定し得る事態なのである。

住民の安全を守る唯一の道は、ただちに廃炉に向かい、今ある使用済み核燃料の最終処分をすすめていくことである。過酷事故発生時の被害を拡大し、さらには、危険な使用済み核燃料をさらに増やすことになる原発再稼働は決して許されない。このことが、本件訓練が示す最大の教訓である。

以 上

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