◆原告第30準備書面
第3 木津川市地域防災計画の問題点について

原告第30準備書面
―木津川市避難計画の問題点について―  目次

第3 木津川市地域防災計画の問題点について

 1 基本方針について

木津川市防災計画は、「第3編第40章原子力災害発生時における対応第1節原子力防災に関する基本方針」において、「福井県の原子力事業所で、放射性物質が事業所外に大量に放出するような過酷事故が発生した場合、風向き等によっては、市においても退避又は避難が必要となる事態の発生が予測される。」とし、「放射性物質の放出による退避及び避難が必要とされる場合、市としては放射性物質による汚染状況に応じ、(1)屋内退避、(2)コンクリート屋内退避、(3)遠隔地避難の措置を実施する。なお、「屋内退避」や「コンクリート屋内退避」は遠隔地避難又は自宅復帰への一時的措置と位置づける。」と定められている。

しかし、放射性物質の放出状況によっては、屋内退避ではなく、宮津市外に避難する必要があるが、(3)遠隔地避難については、具体的な措置は、一切定められておらず、避難計画として不十分である。このように、具体的な措置を定められないことこそが、避難計画自体を定めることができないことを示している。

 2 迅速的確な情報伝達の非確実性

木津川市防災計画「第2節市における原子力災害応急対策第1緊急時の情報収集」では、「市は、原子力災害発生時(緊急時)において、府が国、福井県及び原子力事業者等の防災関係機関から収集した情報、又は府が独自に収集した情報について連絡を受け、緊急事態に関する状況の把握に努める。」と定め、国、府及び原子力事業者から、木津川市に正確に情報が伝えられることを前提として作成されている(甲339号証)。

しかし、原告宇野の体験からも明らかなとおり、福島原発事故では停電により情報発信そのものが十分できなくなったり、処理能力を超えてメール等の送受信ができなくなったことにより、迅速的確な情報伝達は行われなかったりしたことを考慮すると、上記前提自体が覆される可能性が高い。

木津川市避難計画は、この点を全く踏まえておらず、問題がある。

 3 具体性のない計画

  (1)退避措置について

木津川市避難計画は、「第3退避措置3退避指示」(甲339号証)について次のとおり定めている。

「3退避の指示
市は、放射能汚染が拡大し、市域への影響のおそれがある場合、原子力災害の危険性に配慮し、全住民に対し退避及び避難の措置を指示するものとする。」

と定めている。

しかし、どのような場合に、「市域への影響のおそれ」があるのか具体的な基準は定められておらず、また、どのようにして「全住民に対し退避及び避難措置を指示する」のか全く具体的な内容は記載されていない。

  (2)飲料水について

木津川市避難計画は、「第4飲料水、飲食物の摂取制限」について次のとおり定めている。

「市は、放射能汚染が拡大し、飲食物による住民の健康被害発生が予測される場合、飲料水、飲食物の摂取制限措置を実施し、府と連携し、安全な飲食物の供給を確保する。」

しかし、具体的に「飲食物による住民の健康被害発生が予測される場合」の基準は示されておらず、「府と連携し、安全な飲食物の供給を確保する」具体的な手段も示されていない。

原告第6準備書面において、大野ダム、和知ダム、由良川ダムは、大飯原発から35km~40km圏内に位置し、これらのダムや由良川水系が放射性物質によって汚染されれば、京都府北部全体において、飲料水の確保が極めて困難になる旨主張したとおり、現実には、飲料水の確保が極めて困難とため、具体的な手段が示さないのではなく、示せないのである。

ページトップ