◆原告第48準備書面
第2 本件避難計画の概要

原告第48準備書面
―「大飯地域の緊急時対応」の問題点―

2018年(平成30年)3月23日

目 次(←原告第48準備書面目次に戻ります)

1 避難の対象
2 広域避難先
3 京都府内のUPZにおける防護措置



第2 本件避難計画の概要

 1 避難の対象

本件避難計画において避難の対象とされているのは、大飯原発から概ね30キロ圏内に居住する住民約15万9000人である(甲434「大飯地域の緊急時対応(全体版)」6頁、以下同じ。)。このうち、5キロ圏内のPAZに居住する住民は約1000人とされている。

対象となる自治体は、PAZは、福井県おおい町、小浜市のそれぞれ一部であり、UPZは、福井県おおい町、高浜町、小浜市、若狭町の全域と美浜町の一部、滋賀県高島市の一部と、後述する京都府内の各市町である。

京都府内の対象自治体は、PAZの対象となる地域はなく、いずれもUPZであり、舞鶴市、綾部市、京丹波町、南丹市、京都市のそれぞれ一部が対象となり、対象となる住民は約8万5000人とされている。とりわけ、舞鶴市は3万7868世帯、7万9354人と市民の大半が避難の対象とされている。大飯原発において重大事故が起きた際に避難を余儀なくされる住民は決してUPZ内にとどまるものではないが、少なくとも、被告国が避難計画の策定にあたって対象としている住民数で言っても、その半数以上が京都府内に居住していることとなる。

ページトップ

 2 広域避難先

(1) PAZ内市町(41頁)
PAZ内市町(福井県おおい町、小浜市)の広域避難先として指定されているのは、県内避難先として敦賀市内の中学校(おおい町)と越前市内の高等学校(小浜市)であり、県外避難先として兵庫県川西市内の小学校ほか3施設(おおい町)と同県姫路市内の施設(小浜市)である。

(2) UPZ内市町(58頁)
UPZ内市町の広域避難先として指定されているのは、福井県内の5市町については、県内避難先として敦賀市ほか4市町、県外避難先として兵庫県伊丹市ほか21市町とされており、滋賀県高島市については、県内避難先として高島市内ほか、県外避難先として大阪府大阪市ほか2市とされている。

京都府内のUPZ内市町の広域避難先は以下のとおりである。

舞鶴市については、府内の避難先として京都市、宇治市、城陽市、向日市が、府外の避難先として兵庫県神戸市、尼崎市、西宮市、徳島県鳴門市、松茂町、北島町が指定されている。綾部市については、府内の避難先として福知山市、亀岡市が、府外の避難先として兵庫県たつの市、太子町、佐用町が指定されている。南丹市については、府内の避難先として同市内が、府外の避難先として兵庫県洲本市、南あわじ市が指定されている。京丹波町については、府内の避難先として同町内が、府外の避難先として兵庫県芦屋市が指定されている。京都市については、府内の避難先として同市内が指定されている。

(3) 避難先までの主な経路(京都府内UPZ内市町、78~82頁)
舞鶴市から府内の避難先とされる京都市、宇治市、城陽市、向日市への主な避難経路としては舞鶴若狭自動車道、京都縦貫自動車道、京滋バイパス、国道9号、国道173号などが設定されている。また、府外の避難先とされる兵庫県神戸市、徳島県鳴門市などへの主な避難経路としては舞鶴若狭自動車道、中国自動車道、六甲北有料道路、山陽自動車道、神戸淡路鳴門自動車道などが設定されている。

綾部市から府内の避難先とされる福知山市、亀岡市への主な避難経路としては、府道1号、国道27号、府道8号、京都縦貫自動車道などが設定されている。また、兵庫県たつの市などへの主な避難経路としては舞鶴若狭自動車道、中国自動車道などが設定されている。

南丹市から同市内の避難先への主な避難経路としては国道162号、府道12号、国道27号、国道9号が設定されている。また、府外の避難先とされる兵庫県洲本市、南あわじ市への主な避難経路としては上述の経路に加え、国道173号、国道372号、舞鶴若狭自動車道、中国自動車道、六甲北有料道路、山陽自動車道、神戸淡路鳴門自動車道などが設定されている。

京丹波町から同町内の避難先への主な避難経路としては府道51号、府道12号、国道27号、国道9号が設定されている。また、府外の避難先とされる兵庫県芦屋市への主な避難経路としては上述の経路に加え、京都縦貫自動車道、名神高速道路などが設定されている。

京都市から同市内の避難先への主な避難経路としては、対象となる地域ごとに府道110号から国道367号、府道38号から国道477号、国道162号がそれぞれ設定されている。

ページトップ

 3 京都府内のUPZにおける防護措置

(1) 一般住民(77頁)
大飯原発において重大事故が発生した後、全面緊急事態となった場合、放射性物質の放出前の段階において、UPZ内の住民は屋内退避を開始することとなる。その後は、被告国の原子力災害対策本部において、緊急モニタリングの結果に基づき、OIL1及びOIL2に該当するとされた地域に対し、一時移転等が指示されることとなるが、一時移転等の指示がなされるまでは、当該地域の住民は屋内退避を継続することとされている。

一時移転等の指示がなされると、対象となる住民は徒歩等で一時集合場所に集合し、上述した避難先の各施設へと避難することとされている。京都府におけるUPZ内住民の避難については、渋滞抑制の観点から、原則バスによる移動を実施するとされている。その一方で、輸送能力の確保の点では、「住民の75%がバスによる一時移転等が必要になると想定」して、必要車両台数を1417台と想定し、京都府内のバス会社保有車両台数2298台と比較して必要台数を確保するとしている。

(2) 学校・保育所等
本件避難計画においては、UPZ内の学校・保育所等の防護措置として以下の手続が定められている(73頁)。

震度6弱を超える大地震や大津波などの警戒事態が発生した時点で、各学校等は「学校等における原子力防災マニュアル」によって行動を開始し、各市町の教育委員会の指示により保護者への連絡及び児童等の引き渡しを実施する。児童等の引き渡しが完了しないまま全面緊急事態に事態が進展した場合には、屋内退避指示に従って校舎内で屋内退避を行うこととなる。さらに、一時移転等指示が出された場合には、引き渡しの完了していない児童等は、職員等とともに避難先へ避難し、避難先で保護者への引き渡しを行うとされている。

(3) 要支援者等
京都府におけるUPZ内の医療機関・社会福祉施設の避難については、2016(平成28)年6月1日時点におけるUPZ内施設入所者数2260人に対し、UPZ外に受入候補施設として121か所、受入可能人数約3460人分を確保したとされている。そして、一時移転等の防護措置が必要となった場合には京都府災害時要配慮者避難支援センターが受入先の調整を行うこととされている(74~75頁)。

京都府における在宅の避難行動要支援者については、2017(平成29)年1月時点でUPZ内に6183人いるとされており、そのうち、3708人については同居者や支援者がいるとされている。同居者や支援者がいる場合には、それらの者の協力を得て屋内退避や一時避難を行うとされているが、支援者のいない者(2475人)については、今後支援者を確保していくとされ、支援者が確保できない場合には、市町職員、自治会、消防職員・団員等の協力によって屋内退避や一時移転等ができる体制を整備していくとされている(76頁)。

(4) 自然災害等における防護措置
本件避難計画においては、UPZ内の半島及び沿岸部、中山間地域については、自然災害の発生等により道路が使用できず、住民が孤立した場合の対応として臨時ヘリポートと整備するとされている。しかしながら、具体的な例として挙げられている舞鶴市大浦半島、綾部市奥上林地域のいずれにおいても指定されているのは「ヘリポート適地等」に過ぎない。また、半島や沿岸部については船舶による避難をするとされており、具体的な例として挙げられている舞鶴市大浦半島においては、成生漁港、田井漁港等が利用する港の例として挙げられている(83頁)。

そして、海路や空路での避難態勢が整うまでは屋内退避を実施し、避難態勢が十分整った段階で一時移転等を実施するとされており、実際に重大事故が発生し、全面緊急事態となり一時移転等の指示が出た場合であっても、避難態勢が整うまでは一時移転等が実施できないこととなる。

本件避難計画においては、京都府及び関係市町による毎年度の除雪計画、国土交通省近畿地方整備局及び高速道路会社の除雪計画をもって降雪時の避難経路の確保策としている(37頁)。そして、暴風雪や大雪時など特別警報等が発令された場合には、天候が回復し安全が確保されるまでは屋内退避を優先し、天候回復後に一時移転等を実施するとされている(90頁)。

ページトップ