◆原告第52準備書面
第2 満杯になりつつある使用済み核燃料貯蔵プール

原告第52準備書面
-核ゴミ問題について-

2018年(平成30年)5月30日

目 次

第2 満杯になりつつある使用済み核燃料貯蔵プール

一、満杯になりつつある燃料プール
二、姑息で危険性を増す「リラッキング対策」について
三、関電の「空冷式にするから大丈夫」との弁解について


第2 満杯になりつつある使用済み核燃料貯蔵プール
(甲448「研究所」22頁 図1)


 一、満杯になりつつある燃料プール

1、2014年3月末現在、全国の原発が保管する使用済み核燃料の合計は14,330トンU(金属ウランに換算した場合の重さ)達し、これに六ヶ所村再処理工場の保管分を加えると約17,000トンUになり、使用済み核燃料の貯蔵プールの余裕がなくなりつつある。

2、各原発の使用済み核燃料の貯蔵量と、あと何年で各貯蔵プールが満杯になるかを経産省資料に基づきグラフにしたのが下記の図1(甲448 「研究所」22頁)である【図省略】。この図1は、経産省資料に基づいており一律に16ヶ月ごとに燃料交換をする前提で残り満杯になるまでの年数を計算している。但し、各原発の核燃料交換の現実の交換実績は16ヶ月より短い。従って、それに基づいて計算した東京新聞資料では、経産省資料に基づく残り年数より短くなっている。

3、甲448「研究所」23頁で指摘しているように、使用済み核燃料の貯蔵プールが満杯に近づきつつある大きな要因は、再処理工場の操業の目途が立っていないことである。
即ち、政府の計画では、使用済み核燃料を、貯蔵プールで3~5年間冷却をした後に「再処理工場」に送るはずであった。

ところが、青森県六ヶ所再処理工場はトラブル続きで、いまだに本格稼働ができていない。そのため、同再処理工場の使用済み核燃料プール(貯蔵能力は3000トンU)では既に2951トンUも貯蔵されており、もう受け入れる余地がほとんどなくなってきている。そのため、各地の原発の使用済み核燃料がどんどん溜まってきてしまったのである。

4、こうした「核ゴミ」については、当然のことながら、発生させた電力会社や国の責任において最後まで管理する責任がある。

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 二、姑息で危険性を増す「リラッキング対策」について

1、国や電事連は、貯蔵プールが満杯になりつつあることに対する当座しのぎの対策として、「リラッキング」で、当初予定の容量より詰め込んで満杯になるのを先延ばしにしようとしている。

2、本来、使用済み核燃料棒を貯蔵プールに保存する場合は、臨界状態(核分裂連鎖反応)になるのを防止するために必要な一定の間隔をおいた格子状の桝目の中に挿入する。

ところが、「リラッキング」とは、貯蔵プールの貯蔵可能量を増やすために、桝目の間隔を縮小することで、貯蔵可能量を増大させることである。

3、しかしながら、「リラッキング」は、使用済み核燃料棒の相互間隔を縮小することであり、使用済み核燃料が臨界状態になる危険性が増大する(甲448「研究所」23頁)。まさに、姑息な当座しのぎの危険な対策に過ぎないと言わざるを得ない。

4、各電力会社は、貯蔵プールの「リラッキング」でも追いつかないため、次の対策として「リサイクル燃料備蓄センター」(「使用済み燃料中間貯蔵施設」とも呼ばれている)構想を練っている。被告関電は候補地として、京都府宮津市の粟田半島の「宮津エネルギー研究所」、又は京都府舞鶴市の大浦半島を検討中のようであるが、地元の反対も予想され、具体化はしていない。

上記の「宮津エネルギー研究所」は、もともと、関電が以前、京都府久美浜町に計画した原発計画が地元をはじめ京都府民の大きな反対で挫折し、最終的に宮津市に火力発電所として建設した施設である。同施設は現在、「長期計画停止中」(=事実上の廃止)である。

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 三、関電の「空冷式にするから大丈夫」との弁解について

1、たしかに、使用済み核燃料を水冷式の貯蔵プールで数年間保存すれば発熱量が下がり、空冷による保管が可能になる。

2、しかしながら、先ず注意を喚起したい点は、「空冷式」で保管できるといっても、「使用済み核燃料貯蔵プール」が空になるわけでは決してないという点である。
貯蔵プールに保管中の「使用済み核燃料」の一部を取り出して「空冷式」保管に移したとしても、原発が運転を継続している限り、16ヶ月毎(現実には、もっと短い間隔で)核燃料の交換が行われ、「使用済み核燃料貯蔵プール」自体は満杯に近い状態が続くのであり、決して「満杯状態」が解消されるわけではないのである。

3、しかも「空冷式」での保管は、少なくとも30年ないし50年間という長期にわたり「中間貯蔵施設」に貯蔵し、さらに、最終的には「再処理」することが大前提である。この中間貯蔵をするために使用済み核燃料を詰め込む「キャスク」自体の安全性についても、4項末尾で指摘するような危険がある。

そもそも、「第3、三」で後述するように、中間貯蔵後の「再処理工場」の完成は全く目途すら立っていない。

4、青森県むつ市に、東京電力及び日本原電の共同出資で、国内初の「使用済み核燃料中間貯蔵施設」である「リサイクル燃料備蓄センター」を建設し、2016年10月操業を予定していた(甲448「研究所」24頁)。

他方、同「中間貯蔵施設」の「基本的安全機能の保障」は50年とされている(甲448「研究所」25頁下段右)。「中間貯蔵施設」での貯蔵が終了後は、「再処理施設」に送って再処理することになる。しかしながら、その「再処理施設」の耐用年数は30年に過ぎず、50年後には「再処理施設」の耐用年数を超過してしまっている。

この対策として、第二再処理工場建設を模索している。しかしながら第二再処理工場建設については、検討の目途さえ立っていない(甲448「研究所」25頁下段左)。再処理の目途が立たなくなれば、「中間貯蔵施設」での「一時的保管」が、事実上「永久保管」にならざるを得ない。

「キャスク」は50年以上も経過すれば劣化し放射性物質が漏れたり、あるいは臨界に達する危険もある。

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