◆関電は、再稼働で増やし続ける使用済み核燃料をどこで、どのように保管するのか

【2018年11月9日,京都キンカンで配付。】

関電は、再稼働で増やし続ける使用済み核燃料を
どこで、どのように保管するのか?

使用済み核燃料と使用済み燃料プール

◆原発を運転すると、核燃料の燃焼が進むにつれて、核分裂性のウランやプルトニウムが減少するので核分裂反応を起こす中性子の発生数と発熱量が低下し、また、核燃料中に運転に不都合な核分裂生成物(特に希ガスや希土類)が多量に蓄積し、核燃料の持続的な燃えやすさ(余剰反応度)が低下します。さらに、核燃料被覆材は、腐食や熱や振動によるストレス(応力)によって変形します。したがって、核燃料を永久に使用することは出来ず、一定期間燃焼させると、新燃料と交換せざるを得なくなります。そのため、使用済み核燃料がたまります。

◆交換直後の使用済み核燃料は、高放射線、高発熱量で移動させることが出来ませんから、原発内にある貯蔵プール(使用済み核燃料プール)で3年~5年ほど保管・冷却されます。このプールは深く、燃料の上部の水深は7~8 m程度あり、水によって冷却されるとともに放射線が遮蔽されています。プール内には、ラックと呼ばれる仕切りがあり、使用済み燃料集合体間の距離を一定以上離しています。燃料集合体が近づき過ぎると核分裂反応が起きる(臨界に達する)からです。(下図は使用済み燃料プールの概念図です。広瀬 隆著「白熱授業 日本列島の全原発が危ない!」を参照。)

◆燃料プールは、概念図のように、原子炉の上部横に設置されていて、水で満たされています。原子炉圧力容器中の使用済み核燃料を燃料プールに移送するにあたっては、原子炉上部の原子炉ウエルに水を満たした後、圧力容器の上蓋を空け、クレーンで圧力容器内の燃料棒を釣り上げます。沸騰水型では、プールゲートを開けて、燃料棒をプールに移動させ、プール内のラックの中に納めます。加圧水型では、燃料棒を原子炉ウエル中で横にして、トンネルを潜(くぐ)って燃料プールに移し、プールで直立させて、ラックに納めます。


▲沸騰水型原子炉の燃料プールの概念図


▲加圧水型原子炉の燃料プール(ピット)の概念図

燃料プールは「むき出しの原子炉」

◆使用済み燃料プールは、圧力容器から取り出した核燃料を何の防御もないプールで保管しているのですから、「むき出しの原子炉」とも考えられ、脆弱(ぜいじゃく)で、メルトダウンする危険性が高い施設です。例えば、地震によって配管が破断し、燃料プールの冷却水が喪失し、燃料が水から顔を出すと、ジルコニウム合金の燃料被覆菅が燃え上がり、発生した水素が爆発します。この状態になると、燃料は溶融し、核爆発に至ります。

◆原発重大事故に関して、原子炉本体の破滅的な事態の防止は重要な課題として検討されていますが、使用済み燃料プールに起因する重大事態の可能性についてはあまり関心が払われていません。例えば、原子炉は炉心溶融を避けるために、バックアップ・ポンプ、バックアップ電源供給システム、バックアップ冷却システムを有し、炉心溶融に備えて、放射性物質封じ込めシステムを持っていますが、使用済み燃料プールについては、それらに比較できるほどのシステムを持っていません。なお、原子炉圧力容器は、高温高圧にも耐える鋼鉄の閉じ込め容器ですが、使用済み燃料プールは、上部が解放されたプールで、閉じ込め効果はありませんし、プール倒壊の可能性も指摘されています。

リラッキングによって、
燃料プールはさらに危険になっている

◆先述のように、核燃料プール内では、ラックを用いて、燃料棒集合体の間隔を確保して、臨界を回避しています。ところが、使用済み核燃料の行き場に困窮した電力各社は、このラックを改造(リラッキング)して、燃料棒間の距離を近づけ、燃料棒をぎゅうぎゅう詰めにしてしまいました。例えば、高浜原発3、4号機では、2005年と2006年にリラッキングし、プールの貯蔵能力を2.67倍に増やしています。プールで核爆発が生じる危険性は大きくなったと言えます。

使用済み核燃料の中間貯蔵とは

◆水冷期間が過ぎて、放射線量、発熱量が低下した使用済み核燃料は、乾式貯蔵容器(キャスク;裏面の図参照)に保管することになっています。キャスクでは、水や電気を使わず、空気の自然対流(換気)によって燃料を冷却します。このキャスクの保管場所が中間保管地です。


▲使用済み核燃料乾式貯蔵キャスクの例
(周囲に空気を循環させて空冷。)
(日本原電→こちらより)

◆国の核燃料サイクル計画では、中間保管地の使用済み核燃料は再処理工場に移送して、ウラン、プルトニウムを取り出し、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX) 燃料として再利用し、他の放射性物質はガラス状固化体の高レベル放射性廃棄物とした後、地層中に処分することになっていましたが、再処理工場の建設はトラブル続きで、すでに2兆2千億円をつぎ込んだにもかかわらず、完成の目途(めど)は立っていません。そのため、使用済み核燃料の多くは、各原発の使用済み核燃料プールに溜めおかれています。

使用済み核燃料の永久保管はもとより、
中間保管すら引き受ける場所はない:
それでも増やし続ける関電

◆経産省は昨年、「科学的特性マップ」を発表し、高レベル放射性廃棄物の保管場所は、日本中どこにでもあるように宣伝しています。それでも、高レベル放射性廃棄物の保管を引き受けるところはなく、使用済み核燃料についても、中間保管でさえ引き受ける場所はありません。

◆現在、日本には使用済み核燃料が17,000 トン以上たまり、原発の燃料プールと日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)の保管スペースを合計した貯蔵容量の75%以上が埋まっています。原発が順次再稼働した場合、数年後には満杯になります。

◆日本原燃・再処理工場の一時保管スペース(容量3,000トン)の貯蔵量は、2012年9月で2,945トン(占有率は98%)に達しています。青森県は「現在一時預かりしている使用済み燃料は、再処理の前提が崩れれば、各原発に返すだけだ」と強調しています。

◆福井県にある原発13基が持つ使用済み核燃料貯蔵施設の容量は5,290トンですが、その7割近くが使用済み燃料で埋まっています。高浜、大飯の原発を運転し続ければ、6年程度で貯蔵限度を超え、原発の稼働は出来なくなります。

◆それでも、関電は、高浜原発3、4号機、大飯原発3、4号機を次々に再稼働させ、行き場のない使用済み核燃料を増やし続けています。しかも、高浜原発3、4号機では、MOXを燃料に用いる危険度の高いプルサーマル発電を行い、大飯原発のプルサーマル化も企てています。MOX燃料が使用済み燃料になったとき、ウラン燃料に比べて、放射線量や発熱量が下がり難いため、長期の保管を要します(4倍程度の長期の水冷保管とそれに引き続く乾式保管が必要)。

「今年中に、使用済み核燃料保管地を県外に探す」と、
口から出まかせで、
福井県知事に約束した関電

◆関電の岩根社長は、昨年11月、使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、「2018年内に、福井県外で具体的な計画地点を見出す」と西川福井県知事に、記者団の前で約束しました。しかし、年末が迫っている現在でも、候補地の名前すら示していません。この約束は、大飯原発3、4号機の再稼働への知事の同意を取り付けるための、何の成算もない「口から出まかせの約束」であったことは明らかです。

◆その関電が、高浜原発3、4号機、大飯原発3、4号機を次々に再稼働させ、行き場のない使用済み核燃料を増やし続けているのです。

◆なお、関電の使用済み核燃料の中間貯蔵に、青森県むつ市にある他社の中間貯蔵施設を利用する案も出ていますが、地元は強く反発しています。

口から出まかせを承知で
再稼働に同意した知事

◆昨年11月27日、西川福井県知事は、関電の岩根社長の中間貯蔵施設に関する発言を受けて、その発言の信憑性(しんぴょうせい)も検証せずに、大飯原発3、4号機の再稼働に同意しました。「口から出まかせの約束」を承知の上での出来レースとしか考えられません。県民の安心・安全など念頭にないのです。

関電と福井県知事は
約束が履行(りこう)されなければ、
責任を明らかにせよ!

◆県知事が公の場で約束したとき、その約束は、県民との約束です。したがって、「年内に中間貯蔵地を探す」という約束が守れなかった場合、関電は、全ての原発を即時停止し、県民に謝罪すべきです。また、県知事は再稼働への同意を取り消し、使用済み燃料を生み出す原発の全廃を求めるべきです。

約束が反故(ほご)にされたとき、関電と県知事の責任を断固として追及しましょう!


11月7日、関電が高浜原発3号機の再々稼働を強行。
「原発うごかすな!@関西・福井」呼びかけの
原発ゲート前抗議行動に60名が参加。

ご参加の皆様、お疲れさまでした。有難うございました。


▲2018年11月8日新聞朝刊

2018年11月8日発行

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

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