◆5月中旬以降に若狭で配布するチラシ

【2018年5月中旬以降に若狭でのアメーバデモで配付。】

大飯原発3、4号機の再稼働は許してしまいましたが、

反原発運動はますます重要になっています

◆福島原発事故から7年になりますが、この事故は、原発が重大事故を起こせば、人の命と尊厳を奪い、職場を奪い、農地を奪い、海を奪い、生活基盤を奪い去ることを、大きな犠牲の上に教えました。原発重大事故は、人が人間らしく生きる権利を根底から奪い去るのです。

◆一方、福島事故以降の経験によって、原発は無くても何の支障もないことが実証されました。原発は動いていなくても、電気は十分足りていました。そのため、脱原発、反原発は圧倒的な民意となっています。それでも、関西電力(関電)は、3月14日、5月9日に大飯原発3、4号機を再稼働させました。脱原発、反原発の民意を蹂躙し、脱原発に向かう世界の潮流に逆らうものです。

私たちは、全力で大飯原発再稼働に抗議しました

◆私たちは、この原発再稼働の暴挙を座視してはいませんでした。オール福井反原発連絡会、ふるさとを守る高浜・おおいの会、若狭の原発を考える会の呼びかけで昨年8月に結成された「大飯原発うごかすな!実行委員会」は、10月15日、4月22日に、それぞれ600名、700名の参加を得て、「関電包囲全国集会」と御堂筋デモを貫徹し、関電に原発再稼働阻止の決意を示し、市民や内外からの観光客に原発全廃を訴えました。

◆また、12月3日には500人の参加を得て、「おおい町現地全国集会」と町内デモを行い、おおい町の方々に原発再稼働反対行動への決起を訴えました。2月25、26日には、延べ220名の参加を得て、若狭湾岸一斉チラシ配布(通称拡大アメーバデモ)を実施し、5万枚以上のチラシを配布しました。

◆さらに、大飯原発3、4号機が再稼働されようとした3月13日(100名参加)、14日(70名参加)、5月9日(100名参加)には、おおい町現地でのデモと原発ゲート前での集会を行い、断固として再稼働に抗議しました。

大飯原発再稼働でもトラブルが発生しました

◆5月9日に再稼働した大飯原発4号機では、10日早速、蒸気発生器の水位計が異常を検知したことを示す警報が鳴り、出力上昇が中断されたと報道されています。関電は、蒸気発生器(2次系)の水位は規定値内であり、水位計に問題はなかったとして、出力上昇を再開しました。

◆しかし、関電の説明では、問題がなく正常な水位計が、水位に異常がないのに、警報を発したことになります。警報が鳴った理由は不明で、何かが隠されているとしか考えられません。
これで、福島事故以来再稼動した5原発(川内、高浜、伊方、玄海、大飯)の全てが再稼動前後にトラブルを起こしたことになります。トラブル率100%です。

◆2015年8月に再稼働した川内原発1号機は、再稼働10日後に復水器冷却細管破損を起こし、高浜原発4号機は、再稼働準備中の1昨年2月20日,1次冷却系・脱塩塔周辺で水漏れを起こし、2月29日には、発電機と送電設備を接続した途端(とたん)に警報が鳴り響き、原子炉が緊急停止しました。

◆さらに、伊方原発3号機は、再稼働準備中の1昨年7月17日、1次冷却水系ポンプで水漏れを起こしました。去る3月23日に再稼働した玄海原発3号機は、再稼働1週間後の3月30日に、脱気装置からの蒸気漏れを起こしました。配管に直径1.3 cmの穴が開いていたそうです。

◆何れも、重大事故に繋がりかねない深刻なトラブルです。なお、関電の関連企業は、1昨年3月以降、運搬中の鉄塔工事用の資材1トン近くをヘリコプターから落下させる事故を3度も起こしています。また、昨年1月20日には、長さ112メートルのクレーンを2号機の使用済み燃料プール建屋の上に倒壊させました。予測できる程度の強風で倒れたのです。信じられない幼稚な事故です。

◆このように、再稼働を進める全ての電力会社がトラブルを起こしているという事実は、
①原発の点検・保守や安全維持の困難さを示唆し、
②配管の腐食や減肉(げんにく:厚みの減少)、部品の摩耗などが進んでいることを示しています。また、
③傲慢で安全性を軽視することに慣れ切り、緊張感に欠けた電力会社が原発を運転する能力・資格を有していないことを実証しています。さらに、
④規制委員会が適合とした全ての原発が再稼働前後にトラブルを起こした事実は、原発の再稼働にお墨付きを与えた新規制基準が極めていい加減な基準であり、規制委員会の審査が無責任極まりないことを物語っています。

大飯原発の再稼働は許したものの、反原発運動の意義は大きいと考えます

◆大飯原発の再稼働を許したことは本当に残念なことですが、私たちの運動に限らず、各地で毎年行われている福島事故を忘れない3.11集会、全国で毎週行われている脱原発金曜行動などの反原発運動には、次のような意義があると考えられます。

◆第1に、現地での行動は、原発再稼働に抗議するだけでなく、表にはでていないものの、若狭などの原発立地に広範に存在する「原発は嫌だ」の声に呼応し、連帯するものです。

◆第2に、反原発の闘いが、老朽原発を廃炉に追い込んでいます。脱原発、反原発の圧倒的な民意に後押しされた大衆運動のために、傲慢な電力会社と言えども、原発を動かそうとするとき、多額の費用を要する安全対策を施さざるを得なくなり、安全対策費のかさむ老朽原発の廃炉を決意せざるを得なくなっています。昨年末からでも老朽大飯原発1、2号機、伊方原発2号機の廃炉が決定しました。これで、福島事故以降に廃炉が決定した商業原発は9機になりました。

◆第3に、脱原発、反原発の大衆運動は、原発重大事故を防いでいるとも言えます。大衆運動がなければ、電力会社は多額の費用を要する安全対策もせずに、老朽原発を含む原発を次々に動かし、重大事故の確率は格段に高くなっていたでしょう。

◆第4に、脱原発、反原発の大衆運動は、国内だけでなく世界にも拡がり、世界的に安全対策費を高騰させ、原発産業を成り立たなくさせています。東芝が破綻し、伊藤忠商事がトルコの原発建設計画から撤退すると報道されています(4月25日)。

◆第5に、反原発の大きな声が、裁判闘争を後押しし、司法を動かしています。福井地裁、大津地裁、広島高裁での原発運転差し止め決定など司法での勝利も、福島原発事故後、格段に多くなっています。

◆以上のように、反原発の大衆運動は、老朽原発廃炉、原発からの企業の撤退、裁判闘争の勝利に貢献していると言えます。

大飯原発3、4号機即時廃止、高浜原発3、4号機の再々稼働反対、
老朽高浜原発1、2号機、老朽美浜原発3号機の再稼働阻止の行動を
さらに大きくしましょう!

◆前述のように、反原発の大衆運動は、原発重大事故の確率を下げることには貢献していますが、完全に原発事故を避けるには、原発全廃しかありません。さらに大きな原発全廃運動を構築しましょう!

①大飯原発3,4号機は再稼働されたとは言え、大衆運動が高揚し、裁判闘争にも勝利すれば止めることができます。粘り強い原発全廃運動が肝要です。

②昨年再稼働された高浜原発4号機、3号機は、5月、8月に定期点検に入り、その2~3か月後に再々稼働されると報道されています。いい加減な定期点検で安全が保たれるものではありません。再々稼働阻止の行動に立ちましょう!
なお、高浜原発3、4号機は、とくに危険なMOX燃料プルサーマル炉です(裏面【1】をご参照ください)。

③高浜原発1、2号機(1974年11月、1975年11月営業運転開始)、美浜原発3号機(1976年3月営業運転開始)は、運転開始後40年を大幅に超えた老朽原発ですが、関電は、高浜原発1、2号機を2019年10月以降に、美浜原発3号機を2020年3月以降に再稼働させようとしています。全国の老朽原発の再稼働への道を開こうとするものです。

◆原発は、老朽になるほどトラブル率が急増します。圧力容器の脆化(ぜいか:金属などが軟らかさを失い、硬く、もろくなること:)、配管の腐食、配線被覆の老化、資料の散逸など、問題点は山積です(下記【2】をご参照ください)。

◆福島原発事故後、老朽大飯原発1、2号機、伊方原発2号機を含め、福島原発を除いても、9機の廃炉がすでに決定しています。膨大な安全対策費を要する老朽原発再稼働は阻止できる可能性があります。原発の40年越え運転を阻止し、原発新設を阻止すれば、最悪でも2049年には国内の原発はゼロになります。老朽原発再稼働阻止の闘いに今すぐ起ちましょう!

【1】MOX燃料の危険性は、ウラン燃料より格段に高い

◆通常の原発では、燃料としてウラン酸化物を用いています。この燃料のウランは、天然にあるウラン(ウラン235約0.7%、ウラン238約99.3%を含む)とは異なり、核分裂し易いウラン235を2~5%(通常約4%)になるように濃縮したものです。

◆一方、MOX 燃料は、ウラン238とプルトニウム(239が主体)の混合酸化物 (Mixed Oxide;MOX) であり、プルトニウムの含有量は4~9%です。MOX燃料は、原子炉で使い終えた核燃料を溶解して、燃え残ったウランや新たにできたプルトニウムなどを分離抽出して(再処理して)つくります。すなわち、MOX燃料の製造には、危険極まりない再処理が不可欠です。

◆プルサーマル発電とは、プルトニウムを一般的な原子炉で燃す発電方法のことであり、MOXを燃料としています。プルサーマル発電において、原子炉内の燃料の1/3程度をMOX燃料、残りをウラン燃料とした場合、発電量全体に占めるプルトニウムによる発電量は平均50%強となります。高浜3、4号機に装荷されたMOX燃料は、各々24体(全157体中)、4体(全157体中)です。

◆高浜3、4号機のような既存原発のプルサーマル化では、元々ウラン燃料を前提とした軽水炉のウラン燃料の一部をMOX燃料で置き換えて運転するので、技術的な課題が多くなります。なお、原子力規制委員会の新規制基準適合審査における重大事故対策の有効性評価の解析対象は、ウラン炉心のみであり、MOX炉心については何ら評価されていません。

重大事故の確率が高い理由の例

◆プルトニウムの核分裂では、酸素と結合し難い白金族元素が生成し易いので、プルトニウム酸化物中でプルトニウムと結合していた酸素が遊離しますが、遊離した酸素が被覆管を腐食します。また、プルトニウムはα粒子を放出し易い元素ですが、α粒子はヘリウムガスになりますので、燃料棒内の圧力が高くなり、被覆管を破損させる可能性が高くなります。

◆当初はMOX燃料中のウラン、プルトニウムを均質に混合していても、核分裂によって高温になった燃料中では、不均質化(プルトニウムスポットの生成)が起こりやすいため、燃料の健全性が失われます。

◆ウラン燃料と比べて、MOX燃料では燃焼中に核燃料の高次化(ウランより重い元素が生成すること)がより速く進みます。とくに、中性子を吸収しやすいアメリシウム等が生成され易いため、高次化が進んだ燃料を含む原子炉では、運転や停止を行う制御棒やホウ酸の効きが低下します。

使用済みMOX燃料の発熱量は、ウラン燃料に比べて下がり難い。核分裂によってMOX燃料から生じる元素(死の灰)の種類は、ウラン燃料から生じるものとは異なりますから、使用済み核燃料の放射線量や発熱量の減衰速度も異なります。
使用済みMOX燃料の発熱量は下がり難いため、長期にわたって(使用済みウラン燃料の4倍以上)プール内で水冷保管しなければ、空冷保管が可能な状態にはなりません。取り出し後50年~300年の使用済みMOX燃料の発熱量は、使用済みウラン燃料の発熱量の3~5倍です。MOX燃料は、その意味でも、極めて厄介な核燃料です。

【2】原発の危険度は、老朽化に伴い急激に増加(理由の例)

◆原発は事故の確率が高い装置ですが、老朽化すると、さらに重大事故の確率が急増します。例えば、原発の圧力容器、配管等は長期に亘って高温、高圧、高放射線にさらされているため、脆化(下記注をご参照下さい)、腐食が進んでいます。中でも、交換することが出来ない圧力容器の脆化は深刻です。配管の減肉や腐食、電気配線の老朽化も問題です。

【注】老朽原発圧力容器の脆性破壊 鉄のような金属は、ある程度の軟らかさを持っていますが、高温で中性子などの放射線にさらされると、温度を下げたとき硬化しやすくなり、脆(もろ)くなります(脆化といいます)。脆くなると、ガラスのように、高温から急冷したとき破壊されやすくなります。原子炉本体である圧力容器は鋼鉄で出来ていて、運転中は、約320℃、約150気圧の環境で放射線にさらされていて、運転時間と共に脆くなる温度(脆性遷移温度)が上昇します。例えば、初期には‐18℃で脆化していた鋼鉄も、34年間炉内に置くと98℃で、40年を超えると100℃以上で脆化するようになり、脆くなります。したがって、老朽原子炉が、緊急事態に陥ったとき、冷却水で急冷すると、圧力容器が破裂する危険があります。とくに、不純物である銅やリンの含有量が多い鋼鉄で出来た老朽圧力容器の脆化は著しいと言われています。

【参考】若狭にも原発反対の声は多い

◆中日新聞2018年5月8日朝刊に、小浜湾を挟んで5 km 離れた対岸の集落・小浜市内外海(うちとみ)地区での世論調査の結果が掲載されていました。

小浜の5キロ圏住民、反対が多数 大飯4号機再稼働

◆新聞記事→こちらで読むことができます。

2018年5月発行

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)