◆大飯原発うごかすな!原発に頼らない社会をつくろう

【2018年2月25~26日,若狭湾岸一斉配布。】

◆原発は、事故の多さ、事故被害の深刻さ、使用済み燃料の保管や処理の困難さなど、あらゆる視点から、人類の手におえる装置ではありません。一方、福島原発事故以降の経験は、原発はなくても、電気は足り、何の支障もないことを教えています。そのため、ほとんどの世論調査でも、原発反対は賛成の2倍以上となっています。脱原発、反原発が人々の願い・民意なのです。

◆それでも、関西電力(関電)は、前原子力規制委員長までもが「安全を保証するものではない」と繰り返す“新規制基準”への適合を拠り所にして、高浜原発3,4号機を再稼働させました。また、来る3月、5月には、大飯原発3,4号機の再稼働を狙っています。関電の利益のために、民意を蹂躙し、人の命と尊厳をないがしろにするものです。許されるものではありません。

◆以下、原発を現代科学技術で安全に制御できない理由、とくに脆弱(ぜいじゃく)な使用済み核燃料プールの危険性、“新規制基準”の問題点を考え、原発が人類の手におえない装置であることを再確認したいと考えます。

【1】原発の安全確保は、最新の科学技術でも困難です

◆私たち人類を取り巻く環境は、化学反応で維持されています。化学反応ではエネルギーがやり取りされますが、この化学反応(例えば、石油の燃焼)のエネルギーを使って得られる温度は精々数1000℃です。一方、原発内で生じる核反応では、化学反応の100万倍ものエネルギーが放出され、数億度℃以上の温度が得られます。言い換えれば、核反応1反応によって100万に近い化学反応が爆発的に起こることになります。膨大なエネルギーを放出する核反応を化学結合でできた材料によって閉じ込めておくことは極めて困難であることは明らかです。

・原発は事故を起こし易く、被害は広域・長期に及び、事故収束は困難・大惨事は瞬時に進行する

◆核反応エネルギーは膨大ですから、原子炉は大量な水で冷やし続けなければならず、水がなくなると、瞬時に大惨事になります。原発の重大事故時には、膨大な核反応エネルギーに起因する熱によって、核燃料や被覆材などの原子炉材料が溶融し、水素ガスの発生・爆発あるいは水蒸気爆発(水の爆発的蒸発)が引き起こされ、メルトダウン、メルトスルーにつながります。

◆そのように瞬時に進行する事故への対応は至難で、進み始めた事故を止めることは困難です。例えば、重大事故に際して、海水を大量注入してメルトダウンを防ぐ判断を、会社の上層部や政府に仰いでいる暇はありません(海水の原子炉への大量注入は何千億円もする原子炉を使用不能にしますから、現場でその決断はできません)。事態を把握し、議論している間に、原子炉が深刻で取り返しのつかない状況になります。なお、今までの全ての重大事故では、事故を深刻でないとする判断(願望も含めて)を行い(例えば、計器の指示ミスと判断)、事態をより深刻にしています。

・原発重大事故は、原爆とは比較にならない量の放射性物質を放出する

◆原爆は、一瞬の核分裂で生成した放射性物質(死の灰)が放出されます。一方、原子炉内には、数年にもおよぶ長期の核分裂反応で生成した放射性物質が蓄積していて、原発重大事故では、それが放出されます。例えば、100 万キロワットの原子炉を1年間運転したときの生成放射性物質量は約 1トンで、広島原爆でばらまかれた放射性物質量750 グラムの約1,300倍です。放出された放射性物質を完全回収できるほど現在科学技術は進歩していないことは、福島事故の経験が教えるところです。

・原発の重大事故の被害は広域におよぶ(火災が10 km 先に飛火することは無い)

◆原発重大事故によって放出された放射性物質は、事故炉近辺を汚染させるだけでなく、風で運ばれた後、雨で降下しますから、汚染地域は極めて広範囲に広がります。福島事故でも、約50 km 離れた飯舘村も全村避難になり、約200 km 離れた東京や千葉にも高濃度の放射性物質が降下しました。海に流出した放射性物質は海流に乗って広範囲の海域を汚染します。避難計画や原発稼働への同意などでは、30 km圏(UPZ)内が対象とされますが、被害は30 kmをはるかに超えて広域におよびます。

◆若狭の原発の重大事故では、関西はもとより、中部、関東も高濃度の放射性物質で汚染される可能性があります。京都駅、大津駅は高浜原発、大飯原発から60数km、大阪駅は80数kmの位置にあります。250万人が住む京都府、150万人が住む滋賀県のほぼ全域が100 km 圏内にあり、この全域からの避難が不可能であることは自明です。琵琶湖の汚染は、1,450万人の飲用水を奪います。原発からの汚染水は日本海にたれ流されますが、日本海は太平洋に比べて比較にならないほど狭い閉鎖海域ですから、高濃度に汚染されます。美しい海岸線を持ち、漁獲豊かな若狭湾の汚染はさらに深刻です。

・放射性物質による被害は長期におよぶ

◆火事は長くても数十日で消火できますが、放射性物質は、半減期(半分になるまでの時間)に従って消滅するまで、放射線とそれによる熱を発生し続けます。例えば、半減期2万4千年のプルトニウムを1/10000に減少させるには約32万年かかります。それでも、安全なレベルになるとは限りません。

・原発事故の収束には、途方もない時間を要する;住民は故郷を奪われる

◆放射性物質は長期にわたって放射線を出し続けますから、事故炉の廃炉は困難を極めます。また、放射線による熱発生のため、冷却水が途絶えると、核燃料が再溶融し、再び核分裂を始める可能性もあり、長期間冷却水を供給し続けなければなりません。福島原発事故炉の完全廃炉には、50年以上を要するとの見解もあります。

◆原発事故では長期の避難を強いられ、住民は故郷を奪われ、家族のきずなを断たれ、発癌の不安にさいなまれます。通常の災害では、5年も経てば、ある程度、復興の目途が立ちますが、原発事故は、生活再建の希望も奪い去ります。福島事故では、4年経った2015年から、絶望のために自ら命を絶たれる避難者が急増していると報道されています。

【2】原発は、長期保管を要する使用済核燃料、放射性廃棄物を残す

◆原発を運転すると、核燃料の中に運転に不都合な各種の核分裂生成物(死の灰)が生成します。したがって、核燃料を永久に使用することは出来ず、一定期間燃焼させると、燃料となるウランやプルトニウムは十分残っていても、新燃料と交換せざるを得なくなり、そのため、使用済み核燃料がたまります。現在、日本には使用済み核燃料が17,000 トン以上たまり、原発の燃料プールや再処理工場の保管場所を合計した貯蔵容量の73%が埋まっています。原発が再稼働されれば、貯蔵限度を超え、原発の稼働は出来なくなります。

◆なお、混合酸化物(MOX)燃料が使用済み燃料となったとき、放射線と発熱量の減衰速度は、ウラン燃料の4倍程度遅く、4倍以上長く水冷保管しなければなりません。その点からも、MOX燃料は厄介です。

◆一方、日本には、低レベルおよび高レベル放射性廃棄物が200リットルドラム缶にしてそれぞれ約120万本および約1万本蓄積されていますが、その処分は極めて困難で、永久貯蔵はおろか中間貯蔵を引き受ける所もありません。

◆数万年を超える保管を要する使用済み核燃料、放射性廃棄物の蓄積の面からも、原発は全廃しなければなりません。


福島原発事故以降の経験は、原発はなくても電気は足りることを実証しました。
重大事故を起こしかねない原発を動かす必要はありません。


【3】使用済み燃料プールが危ない

◆前述のように、使用済み燃料プールは満杯に近づいています。若狭の原発13基が持つ使用済み核燃料貯蔵施設でも、7割近くがすでに埋まっています。その使用済み燃料プールは、原子炉本体である圧力容器に比べて、圧倒的に脆弱です。

◆燃料プールは、原子炉の上部横に設置されていて、水で満たされています。原子炉圧力容器中の使用済み核燃料を燃料プールに移送するにあたっては、原子炉上部の原子炉ウエルと言われるプールに水を満たし、圧力容器の上蓋を空け、クレーンで圧力容器内の燃料棒を原子炉ウエルに釣り上げます。沸騰水型では、原子炉ウエルの水中を移動させて燃料棒を隣にあるプールに移動させ、プール内のラックと呼ぶ仕切りの中に納めます。加圧水型では、燃料棒を原子炉ウエル中で横にして、トンネルをくぐって燃料プールに移し、プールで直立させて、ラックに納めます。プール中の水は、冷却材の役目だけでなく、放射線遮蔽材の役目も果たし、その水深は燃料棒の上端から7~8 m 程度です。

・使用済み燃料プールの水が減少すれば、燃料溶融に至り、核爆発を起こす

◆鋼鉄ででき、高温高圧にも耐える圧力容器とは異なり、使用済み燃料プールには何の防御もないので、「むき出しの原子炉」とも考えられ、脆弱(ぜいじゃく)で、冷却水を喪失して、メルトダウンする危険性が大です。例えば、地震によって、燃料プールの水位が下がって、燃料が水から顔を出すと、水が沸騰し、無くなります。そうすると、ジルコニウム合金の燃料被覆管が燃え上がり、発生した水素が爆発します。燃料は溶融し、核爆発に至ります。直近にある原子炉本体も制御困難になります。

・福島第1原発4号機の燃料プールは、崩壊の危機にあった

◆福島原発事故当時、4号機の燃料プールには、使用済み核燃料1,535体が保管されていました。含まれる放射性物質の量は、事故で放出された放射性物質の量の27倍と推定されています。この4号機では、水素爆発のために、プールの下の支えが破壊され、プールは崩壊寸前でしたが、コンクリートで補強して危機を回避しました。当時、近藤俊介原子力委員長は、管直人首相に、プール崩壊による「首都圏壊滅」の最悪の事故シナリオを伝えていました。

・一刻も早く原発を全廃し、燃料プールを空にしよう!

◆人類は、原発を運転するという、大きな過(あやま)ちを犯してしまいました。この原発を全廃するには、生じた使用済み核燃料、放射性物質の処理と保管について、考えざるを得ません。これらを、盥(たらい)回しをしていても、原発廃炉は進みません。以下は、使用済み核燃料についての提案です。

① まず、原発の廃炉を決定し、危険極まりない使用済み燃料プールを一日も早く空にしましょう。満杯になったプールを空けて、新しい使用済み燃料の受け入れを可能にし、原発運転を継続しようとする策動を許してはなりません。

② 原発から取り出した使用済み核燃料は、耐震性、耐災害性を強化した使用済み燃料プールで一定期間保管して、放射線量、発熱量の減少を待ったのち、一刻も早く空冷保管可能な状態にしましょう。現在のプールでは、保管中に発生する大災害に耐えられません。少々改造しても、安全なプールの建設は不可能ですから、一刻も早くこれを空にし、使用済み核燃料をより安全性の高い空冷容器(キャスク)で乾式貯蔵しましょう。空冷保管法として、膨大な費用がかかっても、東京や大阪のような都市(原発電気の消費地)で保管しても不安が無いような、頑丈な方法を開発しましょう。

③ 危険極まりなく、放射性廃棄物を増やすだけの使用済み核燃料再処理は断念しましょう。再処理のように、それまで鞘(さや)に封じ込めていた使用済み核燃料を切断・溶解することは廃棄物を増やすだけです。また、再処理で出る高濃度放射性廃液はガラス固化することになっていますが、ガラス固化体は安全でもなく、廃棄物容量を膨大にするだけです。なお、将来、別の保管法が見つかったとき、放射性物質をガラス固化体から取り出して、新保管法を適用することは困難です。

【4】“新規制基準”に適合したからと言って原発は安全ではない

◆“新規制基準”、原子力規制委員会(規制委)審査は、次のように、原発の安全を保証するものではありません。

・福島原発事故の原因、知見、教訓に学んでいない“新規制基準”

◆福島原発事故で溶け落ちた原子炉は、高放射線で、内部の様子は事故から7年近く経った今でもほとんど分かっていません。したがって、福島事故が大惨事に至った真の原因が究明されたとは言えません。一方、汚染水はたれ流され続け、汚染土壌は、有効な除染法がないため、はぎ取ってフレコンバッグに袋詰めしているだけです。その袋も風化でボロボロになろうとしています。

◆このように、事故の収束の見通しも立たず、使用済み核燃料の処理処分法もなく、地震や火山噴火の発生時期や規模を予測することも不可能な状態が科学・技術の現状です。最新の科学・技術といえども原発の安全運転を保証するものでないことは明らかです。それでも、電力会社や政府は、福島事故から2年半もたたない2013年7月に施行された“新規制基準”を福島事故に学んで作った「安全基準」とし、“新規制基準”適合を拠り所にして、原発の再稼働を進めています。

・杜撰(ずさん)かつ非科学的な事故対策でも容認する規制委審査

◆関西電力は、重大事故対策の目玉として、原発重大事故で空気中へ飛散した放射性物質は放水銃で打落すといい、海へ流出した放射性物質は、吸着剤と吸着性シルト(沈泥)フェンスで食い止めるといいます。放水で放射性物質の拡散が防げるのはほんの一部であり、放水された水は結局汚染水になります。吸着剤とシルトフェンスだけで放射性物質を除去できるのなら、福島での放射性物質流出防止に適用すべきです。規制委の審査では、こういう子供だましの対策でも可と評価しています。

・住民避難計画は規制委審査の対象外:それでも規制委の審査結果が再稼働を左右する

◆原発事故時の避難計画について、規制委では審査せず、立地自治体や周辺自治体に丸投げしています。一方、自治体は、どこかでできたパターンに沿って避難計画を作成しています。そのため、避難計画では当該自治体の地理的、人的特殊性はほとんど考えられていません。しかも、自治体の作成した避難計画たるや、数日のピクニックにでも出かけるような計画であり、過酷事故では、永久に故郷を失うという危機感がありません。

◆また、避難地域は100 km 圏を超える広域に広がり、若狭の原発事故では、京都、大阪、滋賀の数100万人の住民避難の可能性もあるという認識がありません。さらに、避難指示解除に関して、住民の意向を聴きませんし、避難指示が解除されても、帰還先は高放射線量で(放射線量20ミリシーベルト/年で解除)、必要な生活基盤も整っていないこと、帰還後一定期間の後には賠償金や支援が打ち切られること、種々の事情で避難継続を選択すれば、賠償や支援はないこと、などの非人道性も念頭にありません。

【5】原発に頼らない社会を創りましょう!

◆「大飯原発うごかすな!」実行委員会を構成する団体は、福島原発事故以降、若狭やその周辺地域で、多くの住民の方々のご意見を直接うかがってきました。その中でも、「原発はいやだ」の声が圧倒的に多数であり、原発推進の声はほとんど聞かれていません。原発立地・若狭でも、表の声にはなっていないけれども、脱原発、反原発が民意なのです。今、原発を推進している人の多くまでもが脱原発時代は来ると考えています。関電も、昨12月に老朽大飯原発1、2号機の廃炉を決定しました。一方、原発の新設を企む議論は全くと言ってよいほどありません。したがって、原発のない時代は近いうちにやってきます。日本の原発の多くは老朽ですから、60年運転されたとしても、2030年には18機、2049年には0になります。

◆しかし、それを待っている間にも、老朽原発が重大事故を起こし大惨事になる可能性があります。事故が起こる前に、目先の便利さや経済的利益のためにのみ運転される原発を全廃し、人間の尊厳(人格権)を大切にし、地球に負の影響を与えない社会を考えましょう。

◆今、若者、ファミリー世代の農山漁村への移住希望が増え、30代女性の多くが「農山漁村での子育て」を志向しているといわれています。実際、都市から農山漁村への移住者は、2009年から2014年の5年間で4倍に増加したと報告されています。移住者の多くは、いわゆる6次産業[農業、漁業(1次産業)+産物の加工(2次産業)+産地直送販売(3次産業)]を生業(なりわい)としています。日本の食糧消費額は74兆円ですが、国内食用農水産物生産額は9兆円に過ぎず(現在自給率12%)、差の65兆円が6次産業の経済規模です。1%の移住者がいれば、地域が維持されるといわれます。

◆上記のように、農山漁村の魅力は再発見されつつあります。しかし、原発に依存する市町村がその対象にされることは難しいと考えられます。

◆若狭には、豊かな漁場と美しい海岸があり、第6次産業や観光に適した資源があります。例えば、これらの資源を生かした町づくりも考えられます。この他にも、様々な町おこし策があるはずです。原発は早晩なくなります。今から「原発に頼らない社会」を考えることは、現在に生きる私たちの未来に対する責務ではないでしょうか。


重大事故が起こってからでは遅すぎます。原発全廃の行動に今すぐ起ちましょう!
事故の原因=原発を廃止することこそ原子力防災です


2018年2月

大飯原発うごかすな!実行委員会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)