◆原発に頼らない社会を!

【2018年1月26日,京都キンカンで配付。】

原発はなくても何の支障もない

◆原発は、事故の多さ、事故被害の深刻さ、使用済み燃料の保管や処理の困難さなど、あらゆる視点から、人類の手におえる装置ではありません。一方、福島事故以降の経験によって、原発はなくても何の支障もないことが実証されています。そのため、ほとんどの世論調査でも、原発反対は賛成の2倍以上となっています。また、昨年末には、広島高裁が伊方原発3号機運転差止めを決定し、関電が老朽大飯原発1、2号機の廃炉を決断せざるを得なくなりました。これらは、福島原発事故の大惨事の尊い犠牲を踏まえて形成された脱原発、反原発の圧倒的民意を反映したものであり、脱原発、反原発の粘り強い闘いの成果です。

◆それでも関電は、前原子力規制委員長までもが「安全を保証するものではない」と繰り返す“新規制基準”への適合を拠り所にして、高浜原発3,4号機を再稼働させました。また、来る3月、5月には、大飯原発3,4号機の再稼働を企て、「原発銀座・若狭」の復活を狙っています。関電の利益のために、人の命と尊厳をないがしろにするものです。許されるものではありません。

◆ところで、私たちは、若狭やその周辺地域で、長期にわたって毎月2回・4日間のチラシ配布(アメーバデモ)、集会・デモ、原発ゲート前行動を展開し、住民の多くからご意見をうかがってきました。その中でも、「原発はいやだ」の声が圧倒的に多数であり、原発推進の声はほとんど聞かれていません。原発立地でも、表立ってはいないものの、脱原発、反原発が民意なのです。この民意が、顕在化すれば、原発を止めることができます。

◆ここでは、脱原発、反原発の声をさらに大きくするために、原発が地域の振興に障害であること、原発はなくても何の支障もないことを再確認したいと考えます。

【1】原発は地域を豊かにするか?

◆原発は、原発導入まで地域を支えてきた産業のほとんどを消滅させている。加えて、原発による繁栄はせいぜい50年で、一旦ことあれば、原発は「死神」である。また、せっかく原発マネーでハコモノを作っても、過疎化が進む原発立地には使う人がいなくなっている。その上、原発マネーがなくなったら、ハコモノの維持費もなくなる。その意味で、窪川原発反対運動での島岡幹夫さんの次の発言(1980年)は、傾聴に値する。「窪川町には農業と畜産で80億円、林業で30億円、加工産業は150億円近い収入があった。四国有数の食糧生産地なのに、たかだか20~30億円の税収に目がくらみ、耐用年数10年程度の原発のために2000年続いてきた農業を捨てるのは愚の骨頂。」

◆以下は、山崎隆敏著『なぜ「原発で若狭の振興」は失敗したのか』(白馬社)、第2章「原発で地域は振興できたのか?」の概要である。若狭の地域振興にとって、原発が桎梏(しっこく;手かせ足かせ)となっていることは明らかである。
(なお、以下、「嶺南」とは「若狭」とほぼ同義で、福井県南部の若狭湾沿岸の地域を指し、原発立地の高浜町、おおい町、美浜町、敦賀市、原発のない小浜市、若狭町が含まれる。「嶺南」とは、福井県の敦賀市以西の市町。南越前町以北は「嶺北」)

1.伸びない嶺南の製造品出荷額と雇用

◆1965年から2001年の36年間での福井県内の市町の製造品出荷額の伸びは、原発のない市町では13~88倍であったが、原発立地市町では5~11倍にとどまった。2001年度の敦賀市の製造業従事者は、人口が似ていて原発のない武生市、鯖江市の3分の1程度で、原発立地では雇用が伸びていないことを示す。

◆1967年から2013年の46年間での嶺南全体の製造品出荷額の伸びは4.4倍で、嶺北全体の伸び(9.2倍)の半分以下である。なお、1967年の一人当たりの出荷額は、嶺南で33万円で、嶺北で28.9万円であり、嶺南は貧しさゆえに原発を導入したという説は当を得ない。2013年の一人当たりの出荷額は、嶺南で143万円、嶺北で247.6万円と逆転している。

2.伸び悩む嶺南の観光

◆観光客の年間入込(いりこみ)数(受入数)は、1968年からの40年間で、嶺北では約2.5倍と大幅に増加したが、嶺北では約1.15倍と微増であった。なお、1968年の人口一人当たりの年間観光客入込数は、嶺北で12人、嶺南で35人であり、嶺南は美しい海岸と古刹寺社などの名所旧跡を有する人気の観光地であったことを示す。

◆嶺南の原発のない三方町(2005年に合併で若狭町になる)の2012年の年間観光客入込数は、1971年に比べて12%増で、原発立地の高浜町は48%減、美浜町は46%減であった。原発立地である大飯町は、良好な海水浴場がなかったために、1971年には高浜町や美浜町の1割に満たなかった年間観光客入込数を、2012年には高浜町や美浜町に匹敵するまでに増やしている。ポスト原発を見越した努力の成果であろう。

3.「双子の町」・美浜町と若狭町の比較

◆同じ三方郡内で、原発を持つ美浜町と持たない若狭町(2005年、旧三方町と旧上中町が合併)の経済活動を比較すれば、原発に依存し自助努力を怠った美浜町と原発に依存できない財政運営・地域振興を図った若狭町の差は歴然である。

◆1965年の美浜町の年間製造品出荷額は3.7億円で、三方町の2億円、上中町の3億円と大差はなかったが、2004年には美浜町は約10倍の38億円になったのに対し、三方町は約105倍の212億円、上中町は約113倍の346億円と伸び率に大差が出た。

◆年間商品販売額、1964年には、美浜町が8.29億円、上中町が5.28億円であったが、2004年には、美浜町が114.53億円、上中町が123.52億円となり、人口(美浜町;11023人、上中町;8288人)が少ない上中町に美浜町は追い抜かれた。

◆年間観光客入込数は、1971年以降、美浜町が常にリードしてきたが、2000年を境に逆転し、2001年には美浜町101万人、三方町106万人となった。なお、合併してからの若狭町には通年型の集客力があり、原発のない街の健闘と努力が伺える。

【2】原発と自治体財政

◆原発は電源三法交付金、核燃料税交付金などの補助金や固定資産税などによって地方自治体財政を膨張させたが、次に問題点を指摘する電源三法交付金のように、原発に関わる財政補助には、様々な弊害があるから、「地域全体の経済や自治体経済に役立っている」とは言い難い。(注)電源三法;オイルショック直後の1974年、火力発電以外の電源(とくに原発)の開発のために制定された電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法。

1.電源三法交付金の問題点

① 依存性;地域が交付金に依存して自律性を失する。それまで地域を支えてきた産業は、ほとんど消えている。

② 時限性;恒久的ではない。・原発による繁栄は30~40年、一旦ことあれば、原発は「死神」。原発マネーがなくなったら、せっかく作ったハコモノや施設の維持費も出ない。

③ 目的限定性;その利用目的に柔軟性がない。ハコモノや施設の建設が中心。地域が過疎化し、老齢化すると、ハコモノや施設を作っても使う人がいなくなる。

2.原発立地の福井県と原発を拒否した徳島県の比較

(山崎隆敏氏の前掲著書、第3章「原発と自治体財政」より)

◆福井県と徳島県は人口、財政規模が類似している。2012年の福井県、徳島県の人口はそれぞれ約82万人、約81万人。2012年の福井県の一般会計歳入総額は4618億円、県税収入は926億円、国庫支出金は670億円、地方交付税交付金は1316億円であり、徳島県の一般会計歳入総額は4721億円、県税収入は695億円、国庫支出金は569億円、地方交付税交付金1528億円である。福井県の県税収入のうちの120億円は電力会社からの法人県民税、法人事業税、核燃料税の合計で、国庫支出金のうちの84億円は電源三法交付金であり、合計204億円がいわゆる「原発マネー」で、徳島県には入らない収入である。

◆福井県の県税収入、国庫支出金、地方交付税交付金の合計は2912億円で、徳島県の2792億円より120億円多いに過ぎない。徳島県には「原発マネー」はないけれども、地方交付税交付金を福井県より212億円多くもらっているのである。このことがもっと顕著なのは2010年で、福井県の県税収入、国庫支出金、地方交付税交付金の合計は2856億円(187億円の「原発マネー」を含む)で、徳島県の2854億円よりわずかに2億円多いに過ぎない。徳島県が地方交付税交付金を福井県より219億円多くもらった結果である。なお、「原発マネー」の多くは、原発がなければ必要がない避難道路の建設や放射線監視などの費用として消えている。原発はなくても、徳島県は福井県と大差のない財政運営をしている。また、県の借金残高(2007年度)は、福井県が7990億円(県民1人当り93万円)で、徳島県の6330億円(県民1人当り78万円)より多い。

【3】原発は農山漁村の魅力を失わせる

◆今、若者、ファミリー世代の農山漁村への移住希望が増え、30代女性の多くが「農山漁村での子育て」を志向しているといわれている。実際、都市から農山漁村への移住者は、2009年から2014年の5年間で4倍に増加したと報告されている。20~30代が中心で、女性の割合が上昇している。Iターンが多いが、これがUターンを刺激している。移住者は、いわゆる6次産業[農業、漁業(1次産業)+産物の加工(2次産業)+産地直送販売(3次産業)]を生業(なりわい)とする場合が多い。日本の食糧消費額74兆円であるが国内食用農水産物生産額は9兆円に過ぎず(現在自給率12%)、差の65兆円が6次産業の経済規模である。1%の移住者がいれば、地域が維持される。

◆上記のように、農山漁村の魅力は再発見されつつあるが、原発に依存する市町村がその対象とされ難い。

【4】原発はなくても大丈夫

1.多量エネルギーは本当に必要か

◆人類が1日当り使用するエネルギーの量は、火も使わず、動物に近い生活をしていた時代(数10万年前)には約2000キロカロリー(kcal)であった。ところが、現在は日本で160,000 kcal、米国で280,000 kcalである。こんなに多量のエネルギーを浪費しても良いものであろうか?

◆人口一人当たりのエネルギー消費量は、日本では原発が商業運転を始めた1965年からの10年間で約4倍に増加し、韓国でも20年遅れて同様な増加を見せ、中国では現在、増加の途上にある。人類史上、10年間でエネルギー使用量が4倍にも急増したことはない。この事態に、人類は、文化的、精神的に、また、地球環境との共存の視点から、真に対応できているのであろうか?

2.エネルギー使用量(要求量)を減らすことは可能か?

◆以下のように考えれば、可能であることは明らかである。ただし、人類が麻薬依存症のように、いつまでもエネルギー依存、便利さ要求を拡大し続ければその限りでない。「欲を少なくし、足るを知り、質素でも心豊かな生活を求める」価値観への転換も重要である。

・エネルギーの開発より今の 1/10 のエネルギーで働く装置の開発を!

◆近年の科学技術は、省エネルギー機器の開発を可能にしている。例えば、1948年に発見されたトランジスターは、真空管とは比較のしようもないないほど小さな電力で真空管と同じ機能を発揮する。もし、真空管で携帯電話を働かせようとすれば、ナイヤガラ瀑布の水を全て使っても、発熱を冷却しきれないであろう。また、近年普及が進んでいるLEDは。蛍光灯の1/10の電力で、蛍光灯と同等の明るさを与える。さらに、軽くて丈夫な素材(炭素繊維、軽金属、有機材料)の開発も進み、軽量で燃費の少ない車、航空機の製造を可能にしている。

◆原発に費やす人材、資金、時間を省エネ機器の開発に回せば、エネルギー使用量の削減は可能になろう。

・貴重な資源とエネルギーの投棄を見直そう!

◆50年前には、少なくとも田舎では、ゴミ収集車は来なかったが、現在は、膨大な量のゴミが焼却され、埋め立てられている。現在、日本での食べ残し食料は、1日800万食と言われる。一方、明治以来、水洗便所の普及率が文明の尺度と勘違いされ、水洗トイレによってし尿が垂流されている。しかし、ごみ、食べ残し食料、し尿は、貴重な資源である。

◆とくに、し尿は、臭いと寄生虫がなければ、立派な肥料(窒素、リン酸源)である(リンは、細胞膜を構成するなど、生体に不可欠の成分であるから肥料として植物に与える)。今、世界のリン鉱石が枯渇しかかっている。し尿の垂れ流しを止めて有効利用しなければならない。

・修理より買った方が安い社会構造の見直しを!

◆現在、修理を依頼しても、「修理できない」、「買い替えた方が安い」と断られることが大抵である。そのため、ゴミとして廃棄される。エネルギーの無駄使いでもある。

・エネルギー投入型生産の見直しを!

◆戦前までのように、人力を主体とし、化学肥料、農薬を使わない農業をやれば、現在の1/10 程度のエネルギーで米や野菜を生産できるという。難点も多々あろうが、見直すこともできると考えられる。

3.少し待てばエネルギー増産は不要になる

◆現在は増加している世界の人口は50年以内に減少に転じ、エネルギー使用量も減少する。一方、省エネ機器の開発、水力・火力・その他の発電法の効率化と新発電法の開発、大容量蓄電法の開発なども進み、エネルギー生産を減少させても何の支障もない時代が到来すると予想される。ましてや、負の側面しか持たない原発など不要となり、原発を利用した過去を後悔することになろう。なお、原発はなくても、そのような時代を待つに十分なエネルギー源は十分存在する。石油は200年、石炭は1000年以上現在のペースで使い続けても枯渇しないといわれている。太陽光、風力、波動、地熱、天然ガス、メタンハイドレート、オイルシェールなどもある。

福島原発事故以降の経験は、原発はなくても電気は足りること、節電は大きな困難もなく実行できることを実証しました。また、覚悟して備えていれば停電も怖くないことも体験しました。人類の手におえない原発を動かす必要はありません。


2月25日(日)~26日(月)
大飯原発うごかすな!
若狭湾岸一斉チラシ配布(拡大アメーバデモ)

関電原子力事業本部へのデモと申し入れ、原子力規制事務所への申し入れ

主催:大飯原発うごかすな!実行委員会

呼びかけ:オール福井反原発連絡会、若狭の原発を考える会、ふるさと守る高浜・おおいの会

連絡先:木原(090-1965-7102:若狭の原発を考える会)、宮下(090-2741—7128:原子力発電に反対する福井県民会議)
ご参加、ご支援、カンパをお願いします。
(カンパ郵便振込先;加入者名:若狭の原発を考える会;口座記号・番号:00930‐9‐313644:お振込みにあたっては、通信欄に「若狭湾岸一斉チラシ配りへのカンパ」とお書きください。


2018年1月26日

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)