◆関電、大飯原発1,2号機を廃炉?

【2017年10月27日,京都キンカンで配付。】

関電、大飯原発1,2号機を廃炉?

危険な原発の運転は、経済的にも成り立たない

◆10月17日~18日、報道各社は、「関電が、稼働して40年近くになる大飯原発1、2号機(両機とも出力は117.5万キロワット)の廃炉を検討している。これから2千億円を超えるとも言われる安全対策費を投じても、採算が取れない恐れが出ているため。11月中にも判断する見込み。」と発表した。この2基の原発は、構造が特殊で、安全対策工事に多額の費用を要することが廃炉に向かう一因である。ただし、関電は17日、「大飯1、2号機の運転方針に関する報道は、当社が発表したものでなく、廃炉の方針を固めた事実はなく、現在、原子炉設置変更許可申請の準備を進めている」と発表している。

◆東日本大震災後、原発の運転期間は原則40年と決められたが、政府は、最長20年の運転延長も認めている。大飯1号機は2019年3月に、2号機は2019年12月に稼働40年を迎えるが、それまでに「新規制基準」による運転延長審査が終了しなければ、自動的に廃炉となる。この審査には最短でも1年数か月を要するので、関電が近日中に運転延長申請をしなければ、大飯1、2号機の廃炉は決定される。なお、大飯1、2号機廃炉の報道について、福井県とおおい町は、「寝耳に水」とし、「地元に説明なく、廃炉を検討しているのであれば、立地自治体軽視。」とコメントしている。

大飯原発1,2号機は、特殊な構造をしていて、安全対策費がとくに膨らむ

◆原子力規制委員会(規制委)は、10月18日、重大事故時に格納容器(原子炉本体と重要機器を覆っている容器)の破損を防ぐための新たな炉内冷却装置の設置を義務化することを決めた。とくに、沸騰水型は、格納容器の容積が比較的小さく、冷却機能が失われると炉心温度の上昇で、内圧が高まりやすい。現行の規制基準では放射性物質(とくにヨウ素)を除去しながら内部の空気を外部に排気(ベント)するフィルター付きベント装置の設置などの対策を求めている(しかし、実際には設置を猶予している)。この日の会合で、規制委は、全ての沸騰水型と、格納容器の小さい加圧水型・大飯1、2号機に対し、格納容器内の水を外部で冷やして循環させながら原子炉の冷却に使う装置の設置を義務付ける案を提案した。事故時には、まず、この循環冷却装置を使用し、事態が収束しない場合には、フィルター付きベントを使用するとしている。この循環冷却装置は、柏崎刈羽原発6、7号機、東海第2原発が設置を決めている。

◆大飯原発1,2号機は、加圧水型であるが、すでに「新規制基準」審査に合格している3、4号機(加圧水型)に比べると、格納容器の体積が半分余りと小さいので、事故の際、沸騰水型と同様に炉心温度の上昇によって内圧が高まりやすく、格納容器を冷す対策をより厳しく行わなければならない。ただし、さまざまな機器や設備が入った狭い格納容器内での、配管の補修などの安全対策工事は難しい。一方、格納容器を覆う天井の厚さは、3、4号機の20%余りの30 cmほどで、事故の際、外部に放射性物質が漏れないようにするために天井を厚くする工事も必要である。

◆大飯原発1、2号機は、国内では例を見ない「アイスコンデンサー方式」といわれる過酷事故時冷却装置を採用している。格納容器の周りに設けられた1,944本のバスケットに、ブロック状の氷を入れ、事故時に発生する蒸気を急速に冷却し、圧力を下げて、格納容器の破損を防ぐ仕組みである。アイスコンデンサーには、計1,250トンの氷を常備している。格納容器を小さく抑えたため、過酷事故時に格納容器内の温度および圧力が上昇し易い原子炉で、アイスコンデンサーが有効に働かなければ、格納容器破損の恐れがあり、関電が1、2号機の審査を申請すれば、「アイスコンデンサー方式」の有効性が争点になり、規制委が大規模な改修を迫る可能性は高い。なお、大飯原発3、4号機には、格納容器のコンクリート壁内部にPC鋼撚(よ)り線(高強度線;テンドン、ピアノ線とも呼ばれる)を入れて、予め格納容器全体を締め付けておき、事故時に発生する圧力に耐える「プレストレスト・コンクリーㇳ(PC)方式」が採用されている。

原発廃炉の流れ

◆現在までに廃炉が決定されている原発は、美浜1号機(34万キロワット)、美浜2号機(50万キロワット)、伊方1号機(56.6万キロワット)、島根1号機(46万キロワット)、玄海1号機(55.9万キロワット)、敦賀1号機(35.7万キロワット)の6基であり、大飯1、2号機のような100万キロワット超の大型原発の廃炉は、事故を起こした東電福島第一原発を除いて、初めてである。100万キロワットを超える大型老朽原発の廃炉が決定されれば、老朽原発は規模を問わず廃炉となる可能性が高くなり、安倍政権の「2030年までに、ベースロード電源として、原発電力を20~22%とする。」という原発戦略にも影響する。それでも、関電にとっては、経営的に「背に腹は代えられない。」というところであろう。

◆原発比率を20%にするには、30基程度の再稼動が必要であるが、国内の原発45基のうち規制委の「新規制基準」審査に合格しているのは7原発14基で、再稼働した原発は5基のみである。福島第2原発を含む19基は再稼働申請をしていない。福島事故以降に規制基準が強化され(それでも、安全を保証するものではない!)、安全対策費が大幅に膨らんだことで、電力各社は、比較的古い原発の再稼働コストを見極めようとして躊躇しているのが実情である。

◆なお、関電は、高浜原発1~4号機、大飯原発3,4号機、美浜原発3号機の7基を動かすために8,300億円を投じる計画であるが、さらに大飯原発1、2号機を動かせば、額が1兆円以上に膨らむ。関電は、2基を動かして、火力発電の燃料費を減らしても、安全対策費に見合うメリットはないとの判断に傾きつつある。(今になって、安全対策費に多額を投入しなければならない事実は、福島事故以前には、原発が、極めて不安全な状態で運転され続けていたことを実証している。)

膨大な費用がかかるのは、安全対策費だけではない

◆関電が大飯原発1、2号機の廃炉に向かっているのは、事故を防止するための対策費が膨大なると考えたからであるが、原発運転には、重大事故は無くても、膨大な使用済み燃料、放射性廃棄物の処理・処分・保管費がかかる。また、福島原発のような過酷事故が起れば、その対策費は天文学的金額になる。これらを勘案すれば、原発は経済的にも成り立たないことは明らかである。

電力会社が老朽原発再稼働を躊躇する原因は、経費の問題だけではない

◆福島原発事故以降のほとんどの世論調査でも、原発反対は賛成の2倍以上となっていて、脱原発、反原発が多数の人々の願いであり、民意であることを示している。規制委や電力会社といえども、この民意を無視することはできず、極めて不十分ながらも、安全性対策を強化しなければならず、それに多額を投じなければならないのである。原発全廃のために、原発事故の回避のために、脱原発、反原発の民意をさらに拡大しよう!

◆福井地裁の樋口判決、大津地裁の山本判決は、脱原発、反原発の民意を代弁し、脱原発、反原発を願う人々に大きな感動と勇気を与えた。一方、電力会社にとっては、運転中であっても運転中止を求めることができる司法の判断、いわゆる「司法リスク」に戦々恐々としなければならない事態となった。この「司法リスク」を避けるためにも、電力会社は安全対策を強化しなければならず、老朽電発の運転を躊躇せざるを得ないのである。「司法リスク」をさらに拡大しよう!

◆電力の地域独占の時代は終わり、家庭向け電力販売自由化で他業種からの参入が進み、激しい競争の中で、大手電力九社からの顧客流出が拡大している。脱原発、反原発の民意が顧客流出を加速している。再稼働すれば、経営が上向くという「経営神話」は、原発の「安全神話」と同様に崩壊している。関電を例にとれば、その発電量のうち、原発電力の割合は、福島事故前は40%程度であったが、福島事故後、企業や家庭で節電が進み、関電の16年度の電力販売量は、10年度の20%減となった。電力販売自由化で顧客流出が続く17年度には、さらに6%減が見込まれている。大飯の2基を廃炉にしても供給には余力がある。(それのみならず、原発は無くても電気は足りることは、経産省の外郭団体まで、公表している。)

脱原発は世界の潮流

◆世界では、多くの国が福島原発事故を当事国・日本より深刻に受け止めている。そのため、周辺住民の反対運動、訴訟などが活発化し、また、安全対策などで原発の建設費、維持費、安全対策費、事故保険などが高騰して、原発はビジネスとしての魅力を失っている。さらに、自然エネルギーやシェールガスによる発電が進み、発電法、蓄電法が高効率化したこと、節電の機運が醸成されたことがあいまって、脱原発に舵切る国が増え続けている。イタリア、ドイツ、リトアニア、ベトナム、台湾が脱原発に向かい、スイスが国民投票で原発新設を禁止した。また、韓国でも、40年超え古里原発1号機の永久停止を決定し、 2基の建設を中断した。アメリカでも、安全対策に膨大な経費が掛かり、他電源に比べても経済的にも成り立たない原発からの撤退が相次いでいる。

◆今、原発を推進しているのは、電力需要が急増している中国などの新興国と、人の命と尊厳は犠牲にしても、経済的利益を優先させようとする日本やフランスである。日本は、原発輸出を成長戦略の一つに挙げているが、この戦略が破綻していることは、東芝破綻の例を挙げるまでもなく、明らかである。

老朽原発の廃炉を進めて、原発の新増設への反発を弱めようとする策動を許してはならない。
安倍政権の原発推進政策を断固阻止しよう!

◆安倍政権は、なくても何の支障もないことが福島原発事故以降の経験によって実証され、経済的にも成り立たないため、電力会社まで、撤退しようとしている原発を、強引に動かそうとしている。それは、

①使用済み核燃料や事故による損失を度外視すれば安上がりな原発電力によって、電力会社や大企業を儲けさせるためであり、
②原発の輸出によって、原発産業に暴利を与えるためであり、
③戦争になり、石油や天然ガスの輸入が途絶えたときの基盤電源を原発で確保するためであり、
④また、核兵器の原料プルトニウムを生産するためである。

すなわち、安倍政権下での原発の再稼働は、「巨大資本に奉仕する国造り、戦争出来る国造り」の一環として行われている。

◆安倍政権の一部には、この政策の実現のために、原発の新設、増設を推進しようとする動きもある。また、老朽原発の廃炉を進めて、原発新増設への反発を弱めようとする狙いも見え隠れする。原発新増設の策動を許してはならない。


ご報告とお礼


人類の手に負えず、人類に不要な原発を動かして、
大きな犠牲を払うこと、
事故の不安に慄(おのの)くことはありません!

1、3月ともいわれる大飯原発3、4号機の再稼働を断固阻止し、
原発全廃を勝ち取りましょう!


12.3大飯原発うごかすな!現地集会・町内デモ

日 時:2017年12月3日(日)13時~
場 所:おおい町総合町民センター(町役場横)、集会後町内デモ
主 催:大飯原発うごかすな!実行委員会
呼びかけ:原子力発電に反対する福井県民会議、若狭の原発を考える会、ふるさとを守る高浜・おおいの会


2017年10月27日

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

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