◆「高浜原発 規制委が認可」の報道に接して
 竹本修三 原告団長のコメント

2015 年2 月14 日
「高浜原発 規制委が認可」の報道に接して
竹本修三(大飯原発差止京都訴訟原告団長、京都大学名誉教授)

◆原子力規制委員会は、2015 年2 月12 日に高浜原発3・4 号機が新規制基準を満たすと認めて、再稼働を承認した。規制委員会の新規制基準には、「原子力施設の設置や運転等の可否を判断するためのもの」で、「絶対的な安全性」を確保するものではないと書かれている。つまり、ここでは「安全審査」ではなく、「適合性審査」行うものであり、規制委員会は、原発稼働にお墨付きを与えるための委員会であるから、電力会社が対応可能な改善策を提示し、その対応を見たうえで、「運転にあたり求めるレベルの安全性は満足した」という審査書を出すことは、あらかじめ予想されていた。これは規制委員会と電力業界のなれあいの茶番劇であり、こんなことを許していては、無辜の国民は救われない。

◆2014 年 5 月 21 日に福井地裁で「大飯原発3,4 号機運転差止請求の訴訟」の原告側勝利の判決が樋口英明裁判長から言い渡された。判決文の主文には、運転コストが安く、安全である原子力発電を推進したいという被告側の主張を退けて、「大飯発電所3 号機及び4 号機の原子炉を運転してはならない」という原告側の主張がはっきりと記載されている。その後、2014 年11 月27 日に大津地裁で「大飯原発3,4 号機、高浜原発3,4 号機の再稼働差し止め仮処分申し立て」に対して、山本義彦裁判長は申し立て却下を言い渡した。しかし、その決定内容には基準地震動の策定方法に関して関電から何ら説明がないことや住民の避難計画の策定が進んでいないことも述べられている。その現状で、原子力規制委員会がいたずらに早急に、再稼働を容認するとは到底考えにくいとして、申し立てを却下した。この判決が出てすぐに、筆者は新聞社からコメントを求められ、「原子力規制委員会が早急に再稼働を容認するとは考えられないという裁判長の判断は楽観的すぎる」と返事をした。今回の原子力規制委員会の対応をみると、まさに筆者が指摘した通りの結果であった。

◆福井地裁の樋口裁判長は、「地震大国日本において、基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない上、基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険と評価できる」と述べている。また、大津地裁の山本裁判長は、住民の避難計画の策定が進んでいないことも指摘している。

◆これらに加えて重要なことは、貯まり続ける高レベル放射能廃棄物の永久処分をどうするかという問題である。筆者は、2015 年2 月5 日に岐阜県瑞浪市にある日本原子力研究開発機構(JAEA)の東濃地科学センター・瑞浪超深地層研究所を訪問した。この研究所は、高レベル放射性廃棄物の地層処分をめざして、地下の環境や地下深くでどのような現象が起こっているのかを解明するための「地層科学研究」を行っている。現場の当事者から説明を聞いたあと、深さ500m まで掘られた直径6.5mの立坑内の12 人乗りのエレベーターに乗り、深さ100m、200m 及び300m の横坑に置かれた観測計器を見せてもらったが、断層・破砕帯が縦横に走っており、湧き出す地下水を常時ポンプを使って排水しないとたちまち坑内は水没すると聞いて、こんなところで高レベル放射性廃棄物の地層処分は土台無理だ、とつくづく思った。

◆今回訪問した瑞浪超深地層研究所が特殊な地域でなく、日本全国どこでも立坑を掘れば似たような状態だと考えられるので、「日本で高レベル放射性廃棄物の地層処分が本当に可能なのか?」と担当者に聞いてみたが、はっきりした返事はなかった。どうも研究はあまり進んでいないようだ。さらに驚いたことには、この研究所は平成34 年2 月に廃止が決まっており、平成32 年度から深層ボーリング孔の埋め戻し作業が始まるとのことである。JAEA がもう1 カ所やっている北海道の幌延深地層研究センターも同じタイミングで廃止になるそうだ。

◆高レベル放射性廃棄物の地層処分の目途が立たないのに研究施設を廃止してしまうのは、「トイレなきマンション」をそのままにして、負債は後世に残そうとするのか。放射性廃棄物の処分方法も決まらないのに原発再稼働をやろうとして、原発輸出まで目指す安倍首相は絶対に許せない。