◆原告第14準備書面
第4 被告関電の津波高試算

原告第14準備書面
-津波の危険性について 目次

  第4 被告関電の津波高試算

 1 被告関電の津波高試算

被告東電は、「津波評価技術」を使用し若狭湾沿岸の海域活断層及び地すべり等に基づく津波高を下記の通り報告している。

 2 海域活断層

被告関西電力は、海域活断層として「大陸棚外縁~B~野坂断層」「FO-A~FO-B~熊川断層」を選択し、3、4号炉の海水ポンプ室前面の津波水位を上昇値T.P.+2.7、下降値T.P.-1.7と試算した。

【甲211「平成27年3月13日第206回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合資料3-5-1大飯発電所津波評価について」33、34頁より抜粋】【図省略】

 3 陸上地すべりの評価

被告関西電力は、「陸上地すべり」の可能性のあるエリアとして下記のエリアを選択し、3、4号炉の海水ポンプ室前面の津波水位を上昇値T.P.+2.2、下降値T.P.-1.2と試算した。

【甲211「平成27年3月13日第206回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合資料3.5.1大飯発電所津波評価について」74、89頁より抜粋】【図表省略】

 4 若狭海丘列付近断層(福井県モデル)

ここで、福井県(行政庁)は、「若狭海丘列付近活断層」[9]を影響力のある波源モデルとして選択した。そのため、被告関電は、「若狭海丘列付近活断層」を評価に繰り入れ、3、4号炉の海水ポンプ室前面の津波水位を上昇値T.P.+3.2、下降値T.P.-2.9と試算した。

【甲211「平成27年3月13日第206回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合資料3.5.1大飯発電所津波評価について」97頁より抜粋】【表省略】

[9] 関電は、「若狭海丘列付近断層」93km(福井県の評価)を、最大38kmと小さく評価していた(甲203)。

 5 海底地すべりによる津波評価

被告関西電力は、「海底地すべり」の可能性のあるエリアとして下記のエリアを選択し、3、4号炉の海水ポンプ室前面の津波水位を上昇値T.P.+4.2、下降値T.P.-2.7と試算した。

【甲211「平成27年3月13日第206回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合資料3.1.3大飯発電所津波評価について」40、68頁より抜粋】【図表省略】

 6 重畳適用(津波の組み合わせ)

被告関電は、地震と地すべりが同時に生じた場合を組み合わせて評価している。

組み合わせのパターンは、(1)若狭海丘列付近断層と隠岐トラフの海底地すべりの組み合わせと、(2)FO-A、FO-B、熊川断層との陸上地すべりの組み合わせである。

これらの組み合わせの結果、(1)若狭海丘列付近断層と隠岐トラフの海底地すべりの組み合わせが最も大きい影響力を有し、3、4号炉の海水ポンプ室前面の津波水位を上昇値T.P.+6.2、下降値T.P.-4.6と試算した。「若狭海丘列付近断層」は「隠岐トラフ」に隣接するため(下図参照)、位置的にこれらが連動する可能性は高くこの2つの組み合わせを考慮することは合理的である。

他方、被告関電は、3、4号炉の海水ポンプ室前面の津波水位を上昇値T.P.+6.2m、下降値T.P.-4.6mという数値を試算した後、「同時計算(一体計算)」の結果、最大水位上昇値をT.P.+5.9m、最大水位下降値をT.P.-3.4mとした。

しかし、「津波評価技術」には「一体計算」の試算方法について記載はない。また、「基準津波及び耐津波設計方針に係る審査ガイド」(丙27)は、「3.5.1基準津波の選定方針」にて、「(1)基準津波は、発生要因を考慮した波源モデルに基づき、津波の伝播の影響等を踏まえた津波を複数作成して検討した上で、安全側の評価となるよう、想定される津波の中で施設に最も大きな影響を与えるものとして策定されていることを確認する。」「(2)数値計算に当たっては、基準津波の断層モデルに係る不確定性を合理的な範囲で考慮したパラメータスタディを行い、これらの想定津波群による水位の中から敷地に最も影響を与える上昇水位及び下降水位を求め、これらの津波水位波形が選定されていることを確認する。」として保守的に基準津波を設定すべきことを述べている。すなわち、被告関電が行ったような、津波水位を低く見積もる数値操作を行うことは予定していないのであり、被告関電の「一体計算」は不合理である。

図表(1)若狭海丘列付近断層と隠岐トラフの海底地すべりの組み合わせ【図省略】

【甲211「平成27年3月13日第206回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合資料3.5.1大飯発電所津波評価について」119、122頁より抜粋】【表省略】

図表(2)FO-A、FO-B、熊川断層と陸上地すべりの組み合わせ【表省略】

【甲211「平成27年3月13日第206回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合資料3-5-1大飯発電所津波評価について」124、126頁より抜粋】【表省略】

 7 小括

以上より、被告関電の試算によれば、「若狭海丘列付近断層」(地震)と隠岐トラフ(エリアB)の海底地すべりの組み合わせ(重畳)が、3、4号炉の海水ポンプ室前面にて最も高い水位上昇値「T.P.+6.2」と下降値「T.P.-4.6」を示す結果となった[10]。

【甲211「平成27年3月13日第206回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合資料3-5-1大飯発電所津波評価について」128、129頁より抜粋】【表省略】

[10] 「一体計算」を行うことが不合理であることは上述のとおりである。